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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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クロス貼りや床、軽天ボードを請ける内装工事。忙しいのに手元に残らない——その正体は、㎡いくらの手間請けと材工の現場が混ざって採算が見えなくなることにあります。原価を「手間」と「材料」に分け、現場ごとに締める見方を、架空の計算例つきで解説します。
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クロス貼り、床、軽天ボード……工務店やリフォーム会社、ゼネコンの内装下請けから、仕事は途切れずに入ってくる。手が足りないくらい忙しい。なのに、月末に数字を締めてみると「あれ、思ったより手元に残っていない」。内装屋の社長さんなら、一度は感じたことのある違和感ではないでしょうか。
その「忙しいのに儲からない」の正体は、多くの場合、社長さんの働きが足りないからでも、単価が安すぎるからでもありません。㎡いくらの手間請けの現場と、材料まで自社で持つ材工の現場が混ざったまま、月末にまとめて請求してしまうと、「どの現場でいくら残ったのか」が見えなくなる——内装という仕事の構造そのものにあります。
この記事では、内装の原価を「手間」と「材料」の2本柱に分けて見るやり方を、順を追ってお伝えします。粗利率の"目安"の持ち方から、㎡単価を人工に換算する見方、材料のロスの捉え方、そして現場ごとに採算を締める手順まで。むずかしい会計の話は抜きにして、明日から自分の現場で試せる形にしました。(※これから出てくる金額・数量は、すべて説明のための架空の例です)
先に結論からお伝えします。内装の採算を見えるようにする一番の近道は、現場の原価を「手間(人にかかるお金)」と「材料(モノにかかるお金)」の2つに分けて、それぞれ別々に記録して振り返ることです。
なぜ2つに分けるのか。内装工事は、ざっくり2種類の請け方が混ざっています。ひとつは、クロスを㎡いくらで貼る「手間請け」。もうひとつは、材料も自社で仕入れて張り込む「材工(材料+手間)」。この2つは、儲けの出どころがまったく違います。手間請けは"人の動き"で稼ぐ仕事、材工はそこに"材料の差益"が乗る仕事です。
ところが、請求書は現場ごとに分かれていても、原価のほうは「今月いくら職人に払った」「今月いくら材料を買った」と、月単位のどんぶりで見てしまいがちです。これだと、手間で稼いだのか材料で稼いだのか、どの現場が沈んだのかが混ざってしまう。だからまず、原価を手間と材料に分解するところから始めます。
内装の原価をざっくり分解すると、次のような形になります。

図のとおり、内装の原価は大きく「手間(自社職人の人工+応援・常用の外注)」と「材料(クロス・床材などの定価×掛率+ロス)」、そしてそれ以外の「外注(他業者に出す一部工事)」と「現場経費(車両・運搬・道具・駐車場など)」に分かれます。売上からこれらを引いた残りが、粗利です。まずはこの分け方を頭に入れてください。あとの話は、全部この地図の上で進みます。
「で、うちの粗利って、同業と比べて高いの低いの?」——たぶん、いちばん知りたいのはそこですよね。ただ、ここで正直にお伝えしておかないといけないことがあります。「内装業の粗利率は◯%です」と一発で言える便利な数字は、実はあまりあてになりません。
内装工事を含む「職別工事業」の業種平均のような数字は、中小企業庁の中小企業実態基本調査や、TKC経営指標(BAST)といった資料で公表されていて、参考にする価値はあります。ただ、内装の粗利率は、同じ「内装屋」でも次のような条件で大きく振れます。
これだけ振れ幅があると、「業種平均◯%」を自社にそのまま当てはめて一喜一憂しても、あまり意味がありません。平均より低ければ落ち込み、高ければ安心してしまう。でも、その平均には材工中心の会社も手間請け中心の会社も混ざっているので、そもそも土俵が違うのです。
だから、内装の粗利の"目安"は、他社の平均ではなく「自社の過去の推移」に置くのがおすすめです。去年の同じ時期と比べてどうか。手間請けの現場と材工の現場、それぞれで例年どのくらい残っているか。この自社基準さえ持てれば、「今月の現場は、いつもより手間が食った」「この得意先の仕事は、材料が薄い」と、具体的に手を打てるようになります。粗利率という言葉の一般的な意味や原価の全体像をおさらいしたい方は、建設業の原価管理とはや工事原価の内訳もあわせてどうぞ。
手間請けの現場は、突き詰めると"人工商売"です。㎡単価がいくら良く見えても、貼るのに人がかかりすぎれば残りません。逆に、単価がそこそこでも段取りよく少ない人工で仕上げれば、しっかり残る。だから手間請けは、㎡単価だけでなく「1人工あたりいくらの稼ぎになったか」まで落として見るのがコツです。
やり方はかんたんです。その現場の手間売上を、実際に投入した人工の数で割るだけ。ひとつ、架空の例で計算してみます(金額・数量はすべて説明用の作り話です)。
この「45,000円/人工」を、自社で決めた"最低ライン"と比べます。職人1人を1日動かすのにかかるお金(給料・法定福利費・車・道具・現場までの経費)に、残したい利益を足した線です。仮にそれを1人工40,000円と置くなら、45,000円ならプラス5,000円。この現場は合格です。
問題は、手間が伸びたときです。同じ400㎡でも、柄物で柄合わせに手こずり、手直しも出て、結局10人工かかったとします。すると——
売上は同じ360,000円なのに、1人工あたりは36,000円まで落ちました。自社の最低ライン40,000円を割り込んで、1人工あたり4,000円のマイナスです。㎡単価は1円も変わっていないのに、採算は赤に沈む。「忙しく貼ったのに残らない」現場の正体は、たいていこの"人工の伸び"です。㎡単価の交渉と同じくらい、「予定の人工で終わらせる段取り」が効くことが、数字で見えてきます。
もうひとつ、内装屋さん泣かせの構図があります。「応援をたくさん頼んだ月に限って、なぜか手元に残らない」。これも人工で見ると理由がはっきりします。
自社の職人さんの人件費は、忙しくても暇でも毎月ほぼ固定で出ていきます。一方、応援や常用は「1人工いくら」でその都度出ていく変動費です。ここで、さっきの2つの現場に応援を1人工あてたと考えてみます(応援の常用単価は架空で23,000円/人工とします)。
同じ応援単価23,000円でも、現場の手間の出来しだいで、1人工から残るお金が22,000円と13,000円で1万円近く違います。応援そのものが悪いのではありません。「手間が伸びている現場に、変動費の応援を重ねる」と、残りが一気に薄くなる——これが正体です。だから応援を入れるかどうかは、「その現場が1人工あたりいくら稼げているか」とセットで判断するのがおすすめです。稼ぎが薄い現場ほど、応援より段取りの見直しが効きます。
なお、応援や常用を外注費として扱うか給与として扱うかは、働き方の実態によって税務上の判断が分かれます。区分に迷うときは、自己判断せず顧問税理士に相談してください。
手間を人工で見るようになると、次に効いてくるのが「手直しの工数を分けて記録する」ことです。下地が悪くて浮いた、柄がずれて貼り替えた、指示が変わってやり直した——こうしたやり直しの人工を、通常の施工とごちゃ混ぜにして「この現場は10人工」とだけ記録してしまうと、あとで「なぜ人工が伸びたのか」が分からなくなります。
おすすめは、通常施工の人工と、手直し・貼り替えの人工を、ざっくりでいいので別の行に分け、手直しには原因を一言そえることです。「下地」「柄合わせ」「指示変更」——このメモが積み重なると、「うちはいつも柄物で人工が伸びる」「あの得意先は指示変更が多い」といった傾向が見えてきます。傾向が見えれば、次から柄物に人工を厚めに見る、指示変更は口約束にせず追加として先に握っておく(内装工事の請負契約書の考え方が役立ちます)、といった自衛策が打てます。工期や段取りの組み方は、内装工事の工程表の整理も参考になります。
手間の次は材料です。材工の現場では、この材料の見方が甘いと、手間でせっかく残した利益を静かに食われます。材料でつまずくポイントは大きく2つ。「単価(定価×掛率)」と「数量(ロス)」です。
内装材の多くは「定価×掛率」の世界です。クロスでも床材でも、メーカーの定価があって、そこに仕入れの掛率がかかって実際の仕入れ値が決まります。見積もりのときに拾った材料単価と、実際にその現場で仕入れた単価がズレていないか——これを現場ごとに突き合わせるのが第一歩です。
掛率は、仕入れ先との付き合いや発注量で動きます。「いつもの掛率のつもり」で見積もったら、その品番だけ掛率が悪くて実際は高かった、ということも起こります。特に、施主支給の指定品や、ふだん使わない特命の輸入クロスなどは要注意です。見積もりの材料明細と、実際の仕入れ伝票を現場単位でひもづけておくと、この差がはっきりします。材料をどう見積もりに落とし込むかは、内装工事の見積書の書き方もあわせて参考にしてください。
材料でもうひとつ効くのが、単価ではなく"数量"のほうです。内装材は、正味の面積ぶんだけ買えば足りるわけではありません。切りしろ、端材、柄合わせのためのリピート——どうしても「捨てるぶん」が出ます。この見込みが甘いと、単価は合っていても数量で足が出ます。
架空の例で見てみます(数量・単価は作り話です)。あるクロスの仕入れ値が550円/m。ある現場で、正味では100mで足りる計算でした。手間で利益を取る方針なので、見積もりでは材料に利を乗せず、実費見合いの100m × 550円 = 55,000円で材料を見たとします。ところが実際は、柄合わせと切りしろで115m使いました(ロス15%)。
単価は同じ550円なのに、ロスを数量に見込まなかったせいで、8,250円が消えました。ロス率は、柄の有無・下地の状態・割付のうまさで変わります。だから「一般にロスは何%」と決めつけるより、自社の現場で「この材はだいたい何%見ておく」を実績から貯めていくのが確実です。無地は少なめ、大柄のリピート物は多めに、といった自社のものさしができると、見積もりの精度が一段上がります。
ここまで来ると、冒頭の「手間と材料を分ける」がなぜ大事か、腹落ちしてくるはずです。手間請けの現場は、粗利のほとんどが"人工の差"から生まれます。材工の現場は、そこに"材料の差益とロス"が乗ってきます。
だから、たとえ2つの現場が同じ「粗利率20%」でも、中身はまったく違います。手間請けの20%は、段取りと人工でつくった20%。材工の20%は、そこに材料の出入りが足し引きされた結果の20%です。両者を月末にまとめてしまうと、材料で食われたぶんを手間の稼ぎが埋めて、問題が平均のなかに隠れます。分けておけば、「材工の現場は材料で毎回ロスしている」「手間請けは優秀」と、打ち手のある形で見えてきます。材料比重の高い工種と労務比重の高い工種で勘所が変わるのは内装に限らず、たとえば塗装業の原価管理でも、材料と手間を分けて見る発想は共通です。
手間と材料を分けて記録できるようになったら、仕上げは「現場ごとに締める」ことです。完工したら、その現場の"見積もり時に想定していた粗利"と"実際に出た粗利"を並べて、差がどこから来たのかを見ます。
架空の現場で、まるごと1本やってみましょう(金額はすべて説明用の作り話です)。戸建てリフォームの内装一式(クロス+床の材工)を、請負80万円で受けたとします。
項目 | 見積もり(受注時) | 実際(完工後) |
|---|---|---|
売上(請負金額) | 800,000円 | 800,000円 |
手間(自社人工+応援) | 380,000円 | 430,000円 |
材料(定価×掛率+ロス) | 200,000円 | 220,000円 |
外注(他業者への一部発注) | 40,000円 | 40,000円 |
原価合計 | 620,000円 | 690,000円 |
粗利 | 180,000円 | 110,000円 |
粗利率 | 22.5% | 13.75% |
見積もりでは18万円(22.5%)残る予定だった現場が、完工してみると11万円(13.75%)。7万円も目減りしています。ここで大事なのは、「7万円減った」で終わらせないことです。手間と材料を分けて記録してあれば、差の中身まで分かります。

差の7万円は、手間で5万円、材料で2万円。こう分かれば、次の一手が具体的になります。この得意先の柄物は人工を厚めに見る、材料のロスを数量に見込む、応援を入れる前に段取りを見直す——。ただ「今回は残らなかった」と流すのと、「手間で5万・材料で2万オーバーした」と分かって次に活かすのとでは、1年後の残り方がまるで変わってきます。
そして内装は、1件が数日〜数週間で終わる短工期の現場が、同時に何本も走ります。だからこそ、月次の合計だけを見ていると、どの現場が良くてどの現場が悪かったのかが完全に混ざってしまう。現場ごとに締めることに、内装ならではの意味があります。受注前に原価の目標を組む実行予算の考え方とセットにすると、「見積もり→実行予算→実際」の一本の線で採算を追えるようになります。
ここまで読んで、「理屈は分かった。でも、現場ごとに手間と材料を分けて記録するなんて、続くのか?」と思われたかもしれません。正直なところ、そこがいちばんの山場です。仕組みは、続かなければ意味がありません。
だから、最初は欲張らないことをおすすめします。項目は4つだけで十分です。現場ごとに「売上・手間(人工)・材料・外注」の4列を並べた台帳を、使い慣れたExcelで回すところから始めてください。凝った原価管理システムを入れる前に、まずこの4列が現場ごとに埋まる習慣をつくる。それだけで、これまで見えなかった「どの現場でいくら残ったか」が見えるようになります。建設業では工事ごとに台帳をつくるのが基本になるので、工事台帳の位置づけもあわせて押さえておくと安心です。
ただ、内装ならではの壁もあります。1件が短く、現場の本数が多い。手間請けと材工が入り混じる。この状態でExcelに手で転記し続けるのは、現場に出ている社長さんほど、正直しんどい作業です。実際、原価管理が続かない会社のほとんどは、やる気の問題ではなく「転記と集計が追いつかない」ところで挫折します。
そこで、見積もりや日報に一度入れた数字が、そのまま現場ごとの原価表に自動でたまっていくような仕組み——たとえば建設業向けの業務管理ツール「コンクルーAI」のようなもの——に任せてしまえば、転記という作業そのものをやめられて、本数の多い忙しい月でも現場別の採算が手元に残ります。台帳づくりが目的化して疲れてしまう前に、続く形を選ぶことも、立派な原価管理です。
最後に、要点を3つに絞ります。
内装の「忙しいのに残らない」は、根性や単価の問題である前に、"見えていない"だけのことが多いものです。この3つを回すだけで、来月からの数字は確実に見やすくなります。まずは直近で完工した1現場を、手間と材料の2列で振り返ってみてください。