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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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工事原価は、建設業における利益管理の基礎となる重要な指標です。 工事ごとに発生する材料費や労務費、外注費などを正しく把握できていないと、売り上げがあっても思うように利益が残らないという状況が起こりやすくなります。 本記事では、工事原価の定義から目的、計算方法、原価率の確認方法などを分かりやすく解説します。
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まず、工事原価の基本的な情報を解説します。
工事原価とは、建設工事を完成させるために発生する費用の総額を指します。建物や設備を施工する過程では、資材の購入費用などさまざまなコストが発生します。これらの工事に直接関係する費用が工事原価です。
建設会社では、工事ごとの利益を把握する際に、受注した工事の売上高から工事原価を差し引いて計算します。
また、工事原価は建設業特有の会計処理の中で用いられる会計科目でもあります。建設工事は完成までに長い期間を要することが多く、1つの現場で扱う金額も大きくなる傾向があります。このような特徴を踏まえ、建設業では一般企業とは異なる「建設業会計」の考え方に基づいて費用や収益を管理しており、その中心が工事原価です。
工事価格は取引先に提示する見積金額であり、工事を請け負う際の契約金額、つまり売り上げとなる金額です。工事価格は、単に工事原価だけで決まるわけではなく、企業運営に必要な経費や利益なども考慮して設定されます。
工事価格の要素は次のとおりです。
工事価格の中には工事原価が含まれており、それに会社の経費や利益を加えて最終的な金額が決まります。工事価格から工事原価を差し引いた金額は「粗利益」と呼ばれ、さらにそこから一般管理費などの経費を差し引いたものが最終的な「純利益」です。
こうした関係を理解しておくことで、工事の見積もりや収益管理の仕組みをより正しく把握できます。
工事原価を管理する目的は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
工事原価の管理は、各工事がどれだけ利益を生み出しているかを正確に把握するために重要です。
建設業では、工事ごとに売り上げと原価が発生するため、案件単位で収益性を確認しなければ、どの工事が利益に貢献しているのか判断できません。工事実行予算書で設定した目標に対して、最終的にどの程度の利益が確保できているかを把握することで、経営判断に生かせます。
また、原価の内訳を整理して管理することで、人件費や資材費、外注費などのコスト構造が明確になり、無駄な支出が発生しやすいポイントも見えてきます。これにより、継続的にコストの見直しを行い、より効率的な工事運営につなげることが可能です。
このように、工事原価の管理は採算性の可視化とコスト構造の最適化を実現し、安定した利益確保の基盤となります。
建設業では、受注後に作成する工事実行予算書を基準として、工事の進行に伴って発生する原価の実績を比較します。
予算と実績の差が大きくなっている場合は、資材費の増加や作業効率の低下など、何らかの原因がある可能性があります。
差異を早い段階で把握し、原因を分析して対応策を検討することで、工事全体の収益性を維持できます。このような差異管理は、工事原価管理の基本となる重要な目的です。
工事原価を継続的に管理することで、不要なコストの発生を防ぐことにもつながります。
建設工事では、人員の配置や資材の発注、外注業者の手配などさまざまな費用が発生しますが、管理が不十分だと過剰な支出が発生する可能性が高いです。
例えば、必要以上に人員を配置してしまったり、資材を過剰に発注してしまったりすると、原価が増え利益が圧迫されます。原価を定期的に確認しながら工事を進めることで、こうした無駄な支出を早期に発見し、コストを適切な水準に調整できます。
工事原価の管理は、施工計画を立てる上でも重要な役割を果たします。
建設工事では、工程や施工条件によって必要な作業員の人数や資材の量が大きく変わるため、事前の計画が不十分だと工程の遅れや追加費用が発生する可能性があります。
工事原価を基に人員や資材の必要量を整理すれば、適切なタイミングで職人や資材を手配できます。また、現場条件や施工方法などを踏まえた精度の高い実行予算を作成することで、工事全体をより効率的に進められます。
工事原価は、建設業会計で用いられる特有の概念であり、工事収入を得るために直接発生した費用を表します。ただし、会計処理では「工事原価」という勘定科目を直接使用するのではなく、「完成工事原価」と「未成工事支出金」を用いて処理されます。
完成工事原価とは建設業会計において工事が完成した際に計上される費用で、一般企業の会計でいう「売上原価」にあたります。
一般的な商品販売のビジネスでは、売上原価には商品の仕入れ金額のうち、当期の売り上げに対応する部分が計上されます。しかし、建設業は商品を仕入れて販売する業種ではないため、売上原価に該当する費用の内容が異なります。
建設業の場合、完成工事原価には、建物や設備の施工に直接関係する材料費や労務費、外注費などの費用が含まれます。つまり、工事によって収入を得るために直接必要となったコストを工事完成時にまとめて計上するものが完成工事原価です。
未成工事支出金とは、まだ完成していない工事に対して発生した費用を管理するための勘定科目です。製造業の会計における「仕掛品」や「半製品」と似た考え方で、工事の途中段階で発生したコストを表します。
建設工事は完成までに長い期間がかかることが多いため、工事が終わるまで費用を全て当期の原価として計上はできません。そのため、工事が完成するまでは、材料費や労務費などの支出を未成工事支出金として一時的に計上して管理します。
そして、工事が完成したタイミングで、それまで未成工事支出金として計上していた費用を完成工事原価へ振り替えて、当期の工事原価が確定します。
一般的に、工事原価は大別して次の2つに分類されます。
それぞれを解説します。
純工事費とは、工事を実際に施工するために直接必要となる費用のことです。建設工事の中心となるコストであり、工事そのものを支える直接的な費用といえます。
具体的には、建物の施工に使用する材料費、現場で作業を行う職人や作業員の人件費、専門業者に依頼する外注費、重機や建設機械の使用料などが含まれます。これらは全て工事の施工に直接関係する費用であり、工事が進むほど発生する典型的なコストです。
純工事費を適切に把握することで、工事にかかる実質的な施工コストを理解しやすくなり、見積の精度向上やコスト管理にも役立ちます。
現場管理費とは、工事を安全かつ効率的に進めるために必要な管理活動にかかる費用のことです。工事の施工そのものに直接関係するわけではありませんが、現場を適切に運営するために欠かせない費用です。
例えば、現場監督や管理者の人件費、安全管理に関する費用、現場事務所の運営費、通信費などが現場管理費に含まれます。これらは工事現場を円滑に運営するためのコストであり、施工の品質や安全性を維持する上でも重要な役割を果たします。
純工事費と現場管理費を分けて管理することで、施工に直接関係する費用と管理に関する費用を明確に区別でき、工事原価の構造をより正確に把握できます。
工事原価は、建設工事を進めるために発生するさまざまな費用から構成されています。建設業会計では、工事原価を把握しやすくするために、費用を大きく4つの要素に分類します。
それぞれを解説します。
材料費とは、工事の施工に使用される資材や素材の費用を指します。建物や設備をつくるために必要な木材や、セメント、鉄筋、ガラスなどが代表的な例です。こうした資材のうち、特定の工事で使用されるものは「直接材料費」として、その工事の原価に計上されます。
材料は在庫として管理されることも多いため、原価計算では購入額だけでなく、期首と期末の在庫状況を考慮し、実際に使用された金額を算出することが一般的です。
一方、接着剤や塗料、小型工具のように複数の工事で共通して使用されるものもあります。こうした費用は「間接材料費」として扱われ、直接一つの工事にひも付けるのではなく、複数の工事に配分して原価に反映させます。
労務費は、工事に携わる作業員や技術者に支払われる人件費を指します。賃金や給与の他、各種手当や福利厚生費なども労務費に含まれます。
工事現場で実際に施工を行う作業員や技術者、現場監督などの人件費は「直接労務費」として扱われます。これらの費用は、作業時間や作業日数などの実績に基づき、どの工事にどれだけ関わったのかを把握した上で原価に計上されます。
一方、総務や経理などの管理部門の給与は工事に直接関係しないため、工事原価には含まれません。こうした費用は販売費および一般管理費として処理されます。
外注費とは、工事の一部を外部の専門業者に依頼した際に発生する費用です。建設工事では、電気設備や配管工事、加工業務など、専門性の高い作業を外部業者に委託するケースが多く見られます。
一般的な原価計算では材料費・労務費・経費の3区分で整理することもありますが、建設業では外注費が占める割合が大きいことから、独立した項目として管理されることが一般的です。
工事に関連する作業を他の事業者に依頼し、その対価として支払った費用は外注費として計上され、工事原価の一部として管理されます。このように外注費を明確に区分することで、工事におけるコスト構造をより正確に把握できます。
経費とは、材料費・労務費・外注費のいずれにも当てはまらない費用です。建設工事では、施工そのもの以外にも多くの関連費用が発生するため、それらを経費として管理します。
具体的には、設計に関する費用や水道光熱費、通信費、交通費、建設機械の減価償却費、機械設備の維持管理費などが該当します。これらの費用の中には、特定の工事に直接結びつけることが難しいものも少なくありません。
そのため、経費の一部は間接費として処理され、複数の工事に配分して計上される場合があります。適切な基準で配分を行うことが、正確な原価管理を行う上で重要です。
工事原価率とは、工事の売り上げに対してどれだけの原価がかかっているかを示す指標です。原価率を把握することで、工事の採算状況や利益率を確認できます。
一般的には、工事原価を適切に集計した上で売上高と比較することで算出します。手順は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
最初に、対象期間に発生した費用を内容ごとに整理します。建設業では一般的に、材料費・労務費・外注費・経費といった区分で原価をまとめます。
さらに、これらの費用は「工事直接費」と「工事間接費」に分けて管理します。前述のとおり、工事直接費とは、特定の工事の施工に直接関係する費用のことです。一方、複数の工事に共通して発生する費用は工事間接費として扱われます。
このように費用の性質を整理することで、原価計算の基礎となるデータを準備できます。
次に、特定の工事に直接関係する費用を、それぞれの工事へ振り分けます。このように直接費を工事ごとに割り当てることを「賦課(ふか)」といいます。
例えば、マンション建設のA工事と店舗建設のB工事がある場合、それぞれの工事で使用した材料費や作業員の人件費、外注費などを個別に集計します。そして、その費用を工事台帳に記録することで、工事ごとの直接費を明確にします。
この段階で、各工事にどれだけの直接的なコストがかかっているかを把握できます。
最後に、特定の工事に直接対応しない費用を各工事へ配分します。こうした費用の割り当てを「配賦(はいふ)」といいます。
例えば、複数の工事で共通して発生した間接費がある場合、工事規模や直接費の割合などを基準にして各工事へ振り分けます。
工事原価と売上高が整理できたら、次の計算式を用いて工事原価率を求めます。
計算式は、次のとおりです。
工事原価 ÷ 売上高 × 100 = 工事原価率(%)
例えば、売上高が4,500万円、工事原価が3,150万円の場合は、次のように計算できます。
3,150万円 ÷ 4,500万円 × 100 = 70%
この場合、売り上げのうち約70%が工事原価として使用されていることになります。
また、年間の実績データを使って会社全体の工事原価率の算出もできます。例えば、年間売り上げが10億円で原価が8億円だった場合、原価率は80%です。
工事原価の計算が難しいといわれる理由は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業の会計では、通常の企業会計とは異なる独自の勘定科目が使用されます。
例えば、前述したとおり、工事の途中で発生した費用は、すぐに原価として処理されるのではなく「未成工事支出金」として一時的に管理され、工事が完了した時点で「完成工事原価」として計上されます。
このように、工事の進行状況に応じて費用の扱いが変わるため、経理担当者は建設業特有の会計処理を理解しておく必要があります。一般的な勘定科目に加えて特殊な科目も扱うことになるため、処理の手順が複雑になりやすく、管理の難易度も高いといえます。
建設工事では、材料費や人件費だけでなく、外注費や仮設費、現場管理費などさまざまな費用が発生します。これらの費用は工事ごとに内容や金額が異なるため、正確に整理して原価に反映する必要があります。
特に外注費は、下請け会社や一人親方など複数の事業者への支払いが含まれることが多く、管理が煩雑になりがちです。また、複数の工事に共通して発生する費用については、適切な基準で各工事へ配分する必要があります。このように費用の分類や配分が必要になることも原価計算を難しくする要因です。
建設工事は完成までに長い期間がかかることが多いため、売り上げや原価をどのタイミングで計上するかが重要です。
工事の進行状況に応じて収益を認識するケースもあり、その場合は工事の進捗(しんちょく)を正確に把握する必要があります。
進捗の判断を誤ると、売り上げや利益の計算が実態と合わなくなる可能性があります。また、進捗に応じた原価の配分や未成工事支出金の管理なども必要になるため、会計処理が複雑になりやすいです。
建設業では、外部の業者や一人親方に作業を依頼することが多く、その費用は外注費として処理されることが一般的です。しかし、作業内容や契約形態によっては労務費として扱うべき場合もあり、判断に迷うケースがあります。
例えば、自社で材料を用意し作業だけを依頼する場合や一時的に人員を補うために外部の作業員を手配する場合などは、どちらの費用として処理するべきかが分かりにくいです。
このような区分の判断が難しい点も工事原価管理を複雑にする要因です。