この記事は約9分で読めます。
.png&w=3840&q=75)
監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
この投稿をシェアする
建設業では、材料費や人件費の高騰が続いており、利益確保のために原価管理の重要性が高まっています。しかし、「工事原価をどのように管理すればいいのか分からない」などと悩む方も多いのではないでしょうか。 建設業の原価管理は、建設業特有の会計ルールや工事進行基準、複雑な費用配賦なども関係するため、Excel管理だけでは限界を感じるケースも少なくありません。適切な管理ができなければ、利益率低下や赤字工事、資金繰り悪化につながる可能性もあります。 本記事では、建設業における原価管理の基本から、工事原価の内訳、実行予算の考え方、工事原価管理の流れ、管理が難しいとされる背景まで詳しく解説します。
AI搭載
コンクルーAI
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーAIひとつで完結

まず、建設業の現管理について基本的な情報を紹介します。
建設業における原価管理とは、工事で発生するさまざまな費用を把握し、適切に管理することです。
建設工事では、多くのコストが発生します。支出を工事ごとに確認しながら、予算内で工事を進められるよう管理していくことが、原価管理の役割です。
また、建設業では工事に直接かかる費用だけでなく、販売活動や会社運営に必要な費用も含めて「総原価」として管理します。総原価は、工事原価と販売費・一般管理費で構成されており、完成工事高から総原価を差し引いたものが売上総利益(粗利益)です。
そのため、建設業の原価管理は単に支出を記録するだけではなく、工事ごとの利益を把握し、適切な経営判断につなげるためにも重要といえます。
また、建設業では建設業法に基づき、「完成工事高(工事によって得た売上高)」や「完成工事原価(完成した工事に実際にかかった費用)」を適切に計上する必要があるため、会計管理の面でも正確な原価管理が求められます。
建設業の原価管理では、「見積予算」と「実行予算」という2つの予算を区別して考えます。どちらも工事に関わる金額を管理するためのものですが、目的や使われ方には違いがあります。
見積予算は、施主へ提示する見積金額を作成する際の基準となる予算です。工事に必要となる原価を基に、会社の利益や諸経費などを加えて算出され、主に受注を目的として作成されます。
一方、実行予算は社内で使用する管理用の予算です。実際の工事をどの範囲の支出で進めるかを決めるものであり、現場の利益確保を目的として設定されます。そのため、実行予算は現場運営における支出の基準として扱われます。
建設業の原価管理では、実行予算を基準として工事を管理することが重要です。
建設工事では、資材価格の変動や追加対応、工期変更などによって、当初の想定より費用が増加することも少なくありません。そのため、工事中に発生している原価を継続的に確認しながら、実行予算とのズレを把握する必要があります。
もし実際の支出が実行予算を大きく上回れば、工事全体の利益率低下や赤字につながる可能性があります。反対に、原価を適切に管理できれば、利益を確保しやすくなり、次回以降の見積精度向上にも役立ちます。
建設業の工事原価の内訳は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
材料費は、工事で使用する建築資材や部材の購入にかかる費用を指します。
具体的には、木材・鉄骨・コンクリートといった主要な建材だけでなく、ネジや金具などの細かな部品類も含まれます。建設工事では資材費の割合が大きくなりやすいため、数量の過不足や無駄な発注が利益に大きく影響します。
そのため、原価管理では必要数量を正確に見積もることに加え、現場でのロス削減や価格変動の確認も重要です。
労務費とは、現場で作業を行う職人や作業員に関する費用のことです。
日当や給与だけでなく、会社負担分の社会保険料なども含まれます。建設業では人件費が工事原価の大部分を占めるケースも多いため、適切な管理が利益確保に直結します。
また、どの現場にどれだけ人員を投入したかを記録し、工事単位で費用を集計することも重要です。なお、現場で直接作業を行わない管理部門の人件費などは、労務費ではなく経費として処理されます。
外注費は、協力会社や下請業者へ工事を依頼した際に発生する費用です。
建設工事では専門性の高い作業を外部へ委託する場面が多く、外注費が大きな割合を占めることも珍しくありません。そのため、建設業では外注費を独立した費目として管理する特徴があります。
また、原価管理では単に支払金額を把握するだけでなく、施工品質や協力会社との体制管理も重要になります。外注費の増加は利益率低下につながるため、継続的な確認が必要です。
経費とは、材料費・労務費・外注費以外で工事に必要となる費用のことです。重機のレンタル費、現場事務所の光熱費、資材運搬費、安全管理費などが該当します。
建設業では、経費を「直接経費」と「間接経費」に分けて考えることがあります。直接経費は特定の工事に直接関連する費用であり、間接経費は複数の現場に共通して発生する費用です。特に間接経費では、「配賦」という考え方が重要であり、これは共通で発生した費用を一定の基準に従って各工事へ振り分ける管理方法です。
例えば、複数現場で共用している設備費や管理費を適切に割り当てなければ、工事ごとの正確な利益を把握できません。そのため、工事規模や工期、作業時間などを基に、実態に合わせて合理的に配分する必要があります。
原価管理が重要視されている背景は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
近年の建設業界では、建築資材の価格上昇が大きな経営課題となっています。
木材価格が急激に高騰したウッドショック以降も、エネルギー価格の上昇や為替変動などの影響によって、多くの建設資材で価格変動が続いています。以前よりも資材価格を予測しにくい状況になっているため、工事ごとのコスト管理が重要です。
建設工事では、材料費が原価全体に占める割合が大きく、資材価格の変化が利益へ直接影響しやすい特徴があります。そのため、工事中も継続的に原価状況を確認しながら管理する必要があります。
建設業では、技能者不足による人件費上昇も課題となっています。
少子高齢化の影響によって現場で働く人材の確保が難しくなっており、各企業では待遇改善や労働環境の見直しが進められています。また、社会保険関連の負担増加もあり、以前より労務コストが高くなっています。
労務費は工事原価の中でも大きな割合を占めるため、人件費の増加を適切に管理できなければ、利益確保が難しくなる可能性があります。そのため、工事ごとの人件費や作業状況を細かく把握することが重要です。
適切に工事原価を管理するメリットは、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
工事原価を適切に管理することで、各工程でどの程度の費用が発生しているかを把握できます。
例えば、必要以上の材料発注や過剰な人員配置など、利益を圧迫しているコストに気づけるため、改善につなげられます。また、工事中の原価状況を継続的に確認することで、予算超過や利益率低下にも早い段階で対応可能です。
その結果、赤字工事のリスク軽減や利益確保につながります。
工事原価管理によって必要な人員数や作業量を把握しやすくなるため、施工計画を立てやすくなります。
建設業では、工期や工程によって必要な人員や協力会社の数が変わるため、事前準備が不十分だと人手不足や過剰配置が発生する可能性があります。
原価データを基に労務費や施工内容を確認することで、適切なタイミングで人員や資材を手配できるため、現場運営の安定化につながる点もメリットです。
工事原価を正確に把握できれば、着工前の段階で利益を予測できます。
また、工事ごとの利益率や採算ラインを継続的に確認できるため、どの程度の売上や受注条件で利益が出るのかを判断しやすくなります。原価管理が不十分な場合、利益が出ていない工事を継続してしまう可能性がありますが、原価状況を数値で確認できれば、受注判断や価格設定にも活用可能です。
さらに、利益率低下や赤字リスクを早期に把握できるため、工事継続や見直しの判断基準としても役立ちます。
建設業では、材料費や外注費などの支払いが先行するケースも多いため、資金管理が重要です。
工事原価を適切に管理できれば、今後発生する支出や入出金予定を把握しやすくなり、資金不足リスクの軽減につながります。
また、工事ごとの利益状況を分析することで、自社施工と外注の使い分けや、どの工事へ人員・予算を優先的に投入するべきかなど、経営判断にも活用可能です。
建設業における工事原価管理の流れは、次のとおりです。
それぞれのフローを解説します。
まずは、見積内容や施工計画を基に、工事ごとの実行予算を作成します。
ここでは、材料費・労務費・外注費・経費などを費目ごとに整理し、工事を進める上での原価の基準を決めます。
実行予算は、工事中に発生する実際原価と比較するための基準になるため、施工条件や工程、人員計画を踏まえて作成することが重要です。
工事が始まったら、実際に発生した費用を工事ごとに記録します。
建設業では、複数の工事が同時に進むことも多いため、材料費や外注費などをどの工事に紐づけるのかを明確にする必要があります。記録が曖昧になると、工事ごとの利益や赤字の原因を正しく把握できません。
また、直接その工事に紐づく費用だけでなく、複数工事に共通する経費がある場合は、合理的な基準で各工事へ配分することも重要です。
次に、実行予算と実際に発生した原価を比較します。
比較することで、材料費が予定より増えていないか、労務費が想定を超えていないか、外注費が予算内に収まっているかを確認できます。
工事原価は、資材価格の変動や追加工事、工程変更などによって途中で増減することがあります。そのため、完工後だけでなく、月次や工程ごとに確認することで、予算超過に早く気づきやすくなります。
予算と実際原価に差が出た場合は、どの費目で、なぜ差異が発生したのかを分析します。
例えば、材料の使用量が想定より多かったのか、作業時間が増えたのか、外注費が当初予定より高くなったのかによって、取るべき対策は変わります。
原価差異を確認する際は、単に予算を超えたと見るだけでなく、発生時期や工程、費目ごとに原因を分けて確認することが重要です。これにより、現場ごとの課題や改善点を具体的に把握できます。
最後に、原価差異の分析結果を次回以降の工事に生かします。
例えば、材料の見積数量を見直す、作業工程を調整する、外注先との契約条件を再検討するなど、原因に応じて改善策を検討します。
建設業では、過去の工事データを蓄積することで、次回の実行予算や見積の精度を高めやすくなります。原価管理は一度行って終わりではなく、記録・比較・分析・改善を繰り返すことで、利益確保や赤字工事の防止につながります。
工事原価管理が難しいとされる背景は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業では、一般的な業種とは異なる「建設業会計」に基づいて経理処理を行います。
例えば、一般会計で使用される売掛金や仕掛品とは別に、「完成工事未収入金」や「未成工事支出金」など、建設業独自の勘定科目を用いて管理します。また、建設業では国土交通省が定める勘定科目分類に沿って財務諸表を作成する必要があり、一般業種よりも細かい区分で管理しなければなりません。
そのため、建設業特有の会計知識や仕訳処理が求められ、工事原価管理が複雑になりやすい特徴があります。
建設業では、工事期間が長期化するケースも多く、一般的な業種とは異なる収益計上を行うことがあります。
例えば、工事の進捗(しんちょく)状況に応じて売上や原価を計上する「工事進行基準」が採用されるケースがあります。これは、工事完成時ではなく、進捗割合に応じて収益や費用を分割して計上する方法です。そのため、工事の進捗率を適切に算定しながら、売上や原価を継続的に管理しなければなりません。
また、完成前に発生した費用を「未成工事支出金」として管理し、工事完了時に「完成工事原価」へ振り替える必要があるなど、独特な会計処理も発生します。
建設業では、工事費の内訳や費用区分が複雑になりやすい特徴があります。
一般的な原価計算では、「材料費」「労務費」「経費」の3要素で管理するケースが多いですが、建設業では「外注費」を加えた4要素で原価管理を行います。また、外注費と労務費の判断が難しいケースもあります。例えば、単純な作業応援として人員を受け入れた場合は、実態として労務費に近い扱いになることがあります。
さらに、建設工事では共通仮設費や現場管理費など、複数工事へ配分が必要な共通費も発生します。どの費用を原価へ含めるのか、どの工事へ配賦するのかを判断しなければならないため、原価計算が複雑になり難しいといわれる要因の1つです。
工事原価管理では、各現場から集まる原価情報を経理部門で集約・管理する必要があります。
しかし、現場ごとに使用している管理表や入力フォーマットが異なる場合、確認作業や入力作業に多くの時間がかかります。また、工事ごとの配賦処理や建設業会計に合わせた仕訳処理も必要になるため、経理担当者の業務負担は大きくなりやすいです。
特にExcel中心の管理では、二重入力や入力ミスなどのヒューマンエラーも発生しやすく、管理精度の低下につながる可能性があります。
次に、建設業で原価管理を行う方法を解説します。
建設業では、Excelを利用して工事原価を管理している企業が多くあります。
Excelは導入コストを抑えやすく、自社の運用方法に合わせて自由に管理表を作成できる点が特徴です。材料費・労務費・外注費・経費などを工事ごとに入力し、利益率や原価差異を集計できます。また、既存のパソコン環境で利用できるため、小規模事業者でも導入しやすい点もメリットです。
一方で、工事件数が増えると入力や集計作業が煩雑になりやすく、入力ミスや確認漏れなどのヒューマンエラーが発生しやすくなります。
さらに、現場ごとに異なるフォーマットで管理している場合、情報共有やデータ集約に時間がかかるケースもあります。
近年では、工事原価管理システムを導入し、原価管理を効率化する企業も増えています。
原価管理システムでは、実行予算・実際原価・工程・労務費などを一元管理できるため、リアルタイムで原価状況を把握しやすくなります。また、入力データの自動集計や帳票作成に対応しているシステムも多く、Excel管理と比較して経理業務や集計作業の負担軽減につながります。
さらに、複数現場の原価状況をまとめて確認しやすいため、利益率低下や予算超過にも早い段階で気づけます。
工事原価管理システムの選び方は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
工事原価管理システムを選ぶ際は、まず「何を改善したいのか」を明確にすることが重要です。
例えば、原価集計を効率化したいのか、現場と事務所の情報共有を改善したいのか、利益管理を強化したいのかによって、必要な機能は変わります。また、工事管理・請求管理・会計管理までまとめて効率化したい場合は、一元管理機能を備えたシステムやERP型システムを検討する方法もあります。
導入目的と機能が合っていない場合、十分に活用できず、かえって運用負担が増える可能性もあるため注意が必要です。
工事原価管理システムには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。
クラウド型はインターネット経由で利用するため、自社サーバーを用意する必要がなく、初期費用を抑えやすい点が特徴です。現場や外出先からアクセスしやすく、複数拠点で情報共有しやすいメリットもあります。
一方、オンプレミス型は自社サーバーへシステムを構築するため、カスタマイズ性や運用自由度が高い点が特徴です。ただし、導入費用や保守管理の負担は大きくなりやすい傾向があります。
それぞれ特徴が異なるため、自社の運用体制や予算、セキュリティ方針に合わせて選定することが重要です。
工事原価管理システムは、導入後に継続して運用できるかどうかも重要です。
操作が複雑だったり、現場担当者が使いこなせなかったりすると、入力漏れや管理ミスが発生しやすくなります。そのため、導入時の初期設定支援だけでなく、操作説明や問い合わせ対応など、運用サポートが充実しているか確認することが重要です。
また、現場担当者・経理担当者の双方が使いやすい画面設計になっているかも、システム定着に大きく影響します。