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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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塗装業では、売り上げはあるのに利益が残らないケースも少なくありません。特に近年は、塗料価格や人件費の上昇によって、以前より原価管理の重要性が高まっています。 しかし、「何を管理すれば良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。 本記事では、塗装業における原価管理の基本から、管理すべき原価の種類、原価管理の流れ、原価率を改善するポイントまで分かりやすく解説します。
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まず、原価管理の基本的な情報を紹介します。
原価管理とは、工事や業務にかかる費用を把握し、利益を適切に確保するために管理することです。
単に売り上げを確認するだけではなく、「どこに・どのくらいコストが発生しているのか」を整理しながら、収益状況を見える化します。
原価管理は、利益を安定して確保するために行う管理手法であり、塗装業を含む建設業だけではなく、製造業などさまざまな業界で活用されています。
原価率とは、売り上げに対して原価がどの程度発生しているかを示す数値です。工事にかかったコストの割合を把握することで、利益がどのくらい残るのかを確認しやすくなります。
原価率は、一般的に以下の計算式で求められます。
原価率=(原価 ÷ 売上高) × 100
例えば、外壁塗装工事の売り上げが100万円で、材料費や人件費などの原価が65万円かかった場合、原価率は65%です。
一般的に、外壁塗装工事の原価率は60〜70%程度が目安とされており、原価率が高くなるほど利益は少なくなります。
利益管理とは、会社全体の利益目標を達成するために、売り上げや費用を計画的に管理することです。「どのくらい売り上げが必要なのか」「どの程度の費用なら利益を確保できるのか」を把握しながら、経営状況を管理していく役割があります。
一方、原価管理は、工事ごとに発生するコストを管理することを目的としています。例えば、塗料代や外注費、現場経費などを把握し、「どの現場で原価が増えているのか」を分析します。
つまり、利益管理が会社全体の利益を管理する考え方であるのに対し、原価管理は利益を圧迫するコストを管理するための手法という違いがあります。
塗装業で原価管理が重要な理由は、次のとおりです。
近年の建設業界では、建設資材価格や労務費の上昇が続いています。国土交通省が公表している資料でも、資材価格や労務費の変動によって建設コスト全体が上昇傾向にあることが示されています。
こうした影響は塗装業にも及んでおり、塗料価格の値上がりや職人不足による施工単価上昇などによって、以前と同じ感覚で見積もりを行うと利益を確保しにくい状況です。
特に塗装業は、材料費と人件費の割合が高い業種です。そのため、原価を正確に把握できていないと、売り上げは確保できていても利益が減少する可能性があります。
安定して利益を残すためには、現場ごとの原価を継続的に確認し、適切な価格設定やコスト管理を行うことが重要です。
塗装業では、同じ外壁塗装工事でも、建物の劣化状況や施工範囲、使用塗料、足場条件などによって必要なコストが大きく変わります。そのため、単純に売り上げだけを見ても、どの工事で利益が出ているのか判断しにくいです。
また、追加補修や工期延長、材料ロスなどが発生すると当初想定していたより原価が増え、利益率が低下するケースも少なくありません。
原価管理を行うことで、以下を把握しやすくなります。
その結果、赤字案件の早期発見や利益率改善につなげられます。
塗装業では、見積時の原価計算が不十分なまま受注すると、工事完了後に想定より利益が少なくなるケースがあります。特に塗料使用量や施工日数の想定が甘い場合、追加コストが発生しやすくなります。
原価管理を行うことで、過去の工事で実際に発生した材料費や人件費などを蓄積できるため、「どの工事で、どの程度の費用がかかりやすいのか」を把握できます。
その結果、経験や感覚だけに頼らず、実績データをもとに見積もりの作成が可能です。建設業全般でも、実績原価を活用して見積もり精度を改善することは重要とされており、塗装業でも適正価格で受注するために原価管理が重要です。
塗装業で管理すべき原価の種類は、次のとおりです。
塗装業の中でも、特に大きな割合を占めやすい原価が職人の人件費です。外壁塗装では、施工日数や投入する職人の人数によってコストが変動するため、人工数の管理が利益に大きく影響します。
例えば、工期が予定より延びた場合、その分だけ人件費も増加します。また、外注職人への依存度が高い会社では、人工単価の上昇によって原価率が高くなりやすい傾向があります。
さらに、作業の段取り不足や工程管理の遅れによって待機時間が増えると、実際の作業効率が低下し、人件費の無駄につながることもあります。そのため、見積時に想定した人工数と実際にかかった人工数を比較し、「どの工程で人件費が増えたのか」を分析することが重要です。
塗料やシーリング材、養生材、ローラー、刷毛などの材料費も、塗装業で管理すべき重要な原価です。使用する塗料のグレードや施工面積によって必要な費用は変わるため、現場ごとの管理が欠かせません。
また、必要量の計算が不十分な場合、追加発注によるコスト増加や余剰在庫による無駄が発生する可能性があります。特に塗料は、缶単位で仕入れるケースも多く、余った材料が増えると利益を圧迫してしまいます。
さらに、養生材や副資材などの細かな費用も積み重なると大きなコストになるため、「どの現場でどの程度材料を使用したのか」を記録し、材料ロスを減らしていくことが重要です。
外壁塗装では、安全に作業を行うために足場設置が必要になるケースが多く、足場工事費も大きな原価項目の1つです。特に足場を外部業者へ依頼している場合は、一定の費用が固定的に発生しやすく、原価率にも影響します。
また、天候不良や工期延長などによって施工期間が長引くと、足場の設置期間も延び、追加費用が発生する場合があります。
そのため、見積もり段階で足場費用を正確に反映することに加え、工程管理を適切に行い、不要な延長を防ぐことが重要です。自社で足場を保有している場合でも、運搬費や保守費用などが発生するため、関連コストを含めて管理する必要があります。
塗装業では、現場に直接関係する費用だけでなく、会社運営に必要な経費も管理する必要があります。例えば、広告費、営業担当者の人件費、事務所家賃、車両費、システム利用料などが該当します。
これらは工事ごとに直接発生する費用ではありませんが、会社全体の利益には大きく影響します。特に近年は、ウェブ広告やポータルサイト掲載費など集客関連コストが増えている会社も少なくありません。
また、工事単体では利益が出ていても、営業費や会社経費を含めると、最終的な利益が十分に残らないケースもあります。そのため、現場原価だけを見るのではなく、会社全体の固定費や販管費も含めた管理が重要です。
塗装業の原価管理の流れは、次のとおりです。
塗装業の原価管理では、工事開始前に「どの程度の原価で施工を行うか」という実行予算を設定することが重要です。
実行予算とは、見積もり内容をもとに、材料費・人件費・足場費・外注費などを整理した現場ごとの原価計画を指します。単に見積金額を確認するだけでなく、「どの費用にどのくらい使う予定なのか」を事前に明確化する役割があります。
実行予算を作成せずに工事を進めると、実際に発生した原価が適正だったのか判断しにくくなります。例えば、人件費や材料費が想定以上に増えていても、比較基準がないため、利益悪化の原因を把握できません。
そのため、工事開始前に原価目標を設定し、現場ごとの予算を整理しておくことが重要です。
工事が始まった後は、工程管理表や原価管理シートを使いながら、工事が予定どおり進んでいるかを確認します。
塗装業では、天候や追加補修などによって工程変更が発生するケースも少なくありません。そのため、施工中に人工数や材料使用量、工期などを継続的に確認し、想定との差が出ていないかを把握することが重要です。
工事完了後にまとめて原価を確認するだけでは、途中で発生した問題に対応しづらくなります。施工中から進捗と原価を並行して管理することで、不要なコスト増加や利益率低下を防げます。
工事完了後は、実際に発生した原価を集計し、当初設定した実行予算との差を確認します。
例えば、人件費が増えた理由や材料ロスの有無、工期延長が発生した原因などを分析することで、次回以降の見積もりや工程管理の改善につなげられます。
塗装業では、建物の状態や施工条件によって必要な作業内容が変わるため、毎回同じ原価になるとは限りません。そのため、どこで想定との差が発生したのかを振り返り、実績データとして蓄積していくことが重要です。
こうした分析を継続することで、見積もり精度向上や利益率改善につながります。
塗装業では、現場単位だけでなく、月単位での原価率の確認も重要です。
完工した現場ごとの売り上げ・原価・原価率を集計することで、どの工事種類の利益率が高いのか、原価率が悪化している工事はないかなどを分析できます。また、元請け工事と下請け工事で収益性に違いがあるかを確認する際にも役立ちます。
さらに、外壁塗装・屋根塗装・アパート塗装など、工事種類ごとに目安となる原価率を設定し、原価管理の参考指標としている会社もあります。
現場単位だけでなく、月全体の数値を確認することで、会社全体の利益状況や原価傾向も把握可能です。
原価管理は、大型案件だけでなく、小規模工事や補修工事なども含めて行うことが重要です。
塗装業では、小規模な補修工事や手直し工事などは、原価管理が十分に行われないケースもあります。しかし、小さな工事でも積み重なると会社全体の利益へ影響するため、可能な限り原価を記録しておくことが大切です。
特にクレーム対応工事などは、売り上げが発生しない場合でも、人件費や材料費などのコストは発生します。そのため、どの程度の費用が発生しているのかを把握し、再発防止や今後の改善につなげることが重要です。
工事規模に関係なく、継続的に原価を管理しましょう。
塗装業では、材料費・人件費・足場費などの割合が大きいため、少しの原価増加でも利益率へ影響しやすい特徴があります。
また、原価率改善は単純なコスト削減だけではなく、工程管理や見積もり精度、職人教育なども関係します。塗装業で原価率を改善するポイントは、次のとおりです。
塗装業では、作業効率の低下が原価率悪化につながります。例えば、段取り不足によって待機時間が増えたり、職人ごとの作業スピードに差があったりすると、人件費が想定以上に膨らみます。
また、工期が長引くと職人の人件費だけでなく足場費用や現場経費なども増加し、特に天候による工程変更が発生しやすい塗装業では、スケジュール管理が利益率へ大きく影響します。
そのため、作業手順や役割分担を整理し、現場ごとの工程管理の徹底が重要です。事前準備や材料手配を適切に行い、限られた工期内で効率よく施工を進めることで、不要な原価増加を防げます。
原価率を改善するには、経営者だけでなく、現場側も原価意識を持つことが重要です。
塗装業では、材料ロスや工期延長、手直し作業などが積み重なることで、利益率が大きく低下する場合があります。しかし、現場側が原価状況を把握していなければ、「どの作業が利益を圧迫しているのか」を認識できません。
そのため、実行予算や工期目標を共有しながら、「予定人工内で完工する」「材料ロスを減らす」といった意識を現場全体で持つことが重要です。
原価管理を一部の担当者だけに任せるのではなく、営業・現場・経営者が情報共有しながら進めることで、原価率改善につなげられます。
塗装業では品質を重視するあまり、想定以上に時間や材料を使ってしまうケースがあります。
もちろん、施工品質を維持することは重要ですが、必要以上の作業や過剰施工が続くと、原価率悪化につながる可能性があります。特に、現場ごとに施工基準が統一されていない場合、職人ごとの判断で施工時間や材料使用量に差が出ます。そのため、施工基準や作業ルールを整理し、「どの品質水準を目指すのか」を会社として統一することが重要です。
また、品質管理が不十分な場合は、クレームや手直し工事によって追加原価が発生するケースもあります。そのため、品質と利益率のどちらか一方だけを重視するのではなく、両立できる施工体制を整えることが重要です。
原価率改善では、職人教育やチーム体制づくりも重要です。
例えば、施工技術や段取り力が不足していると工期延長や材料ロス、手直しの発生につながります。また、チームワークが悪い現場では、作業効率低下や情報共有不足によるミスも起こりやすくなります。
一方で、原価率だけを優先して過度な負担をかけると、職人の離職やモチベーション低下につながる可能性もあります。
そのため、施工技術向上だけでなく、役割分担の明確化や働きやすい環境づくりも含めて、長期的な組織改善を行うことが重要です。
塗装業では、原価管理を現場任せにすると、原価率悪化へ気づくのが遅れるケースがあります。
特に小規模な塗装会社では、経営者自身が現場状況や原価推移を継続的に確認し、どの工事で利益が出ているのかを把握することが重要です。
また、原価率改善は、一時的にコストを削減するだけでは安定しません。実行予算の見直しや工程改善、見積もり精度向上、職人教育などを継続しながら、長期的に利益体質を整えていくことが重要です。