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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「月末までに請求書ちょうだい」と言われるたびに、去年の分を探して日付だけ書き換えていませんか。一人親方の請求書に書く6項目から、常用(人工)と請負で変える明細の書き方、インボイス登録あり・なしそれぞれの記入例、締め日と支払日の確認まで、1枚を迷わず仕上げる手順をまとめました。
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一人親方の請求書は、①宛名 ②発行日と請求番号 ③現場名・工事名 ④明細(内容・数量・単位・単価・金額)⑤小計・消費税・合計 ⑥振込先——この6つが埋まっていれば、まず形になります。 インボイス(適格請求書)の登録をしているなら、ここに「登録番号」と「税率ごとに区分した消費税額」が加わります。
「月末までに請求書ちょうだい」。工務店の担当者からそう言われるたびに、去年の請求書を探し出して、日付だけ書き換えて出している——という一人親方の方は、けっこう多いのではないでしょうか。手書きでもスマホのメモでも、通ってしまえば仕事は回る。ただ、「インボイスの番号は?」と聞かれて手が止まった、追加分を書き忘れて取りっぱぐれた、いつ入金されるのか分からないまま来月になった。そういう小さな詰まりが、毎月じわじわ効いてきます。
この記事は、その1枚を最後まで迷わず書き上げるための記事です。人工単価をいくらに設定するかや、インボイスに登録すべきかどうかの判断は、それぞれ別の話なので人工代の計算方法——常用単価×人工+経費の考え方や一人親方のインボイス|免税のままか課税転換か、2026年10月で再判断に譲ります。ここでは、目の前の請求書1枚に集中します。
まず前提として、請求書に法律で決まった様式はありません。手書きでも、エクセルでも、アプリでもかまいません。ただ、これが抜けていると差し戻される、という項目はあります。

項目 | 書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
①宛名 | 取引先の正式名称+「御中」 | 略称・通称で出さない。 |
②発行日・請求番号 | 発行日と、自分で管理する通し番号 | 番号を振っておくと、 |
③件名・現場名 | 「6月分 常用作業ほか(6/1〜6/30)」など | 複数現場が混ざるなら明細側に現場名を入れる |
④明細 | 内容・数量・単位・単価・金額 | 「一式」で丸めると、 |
⑤小計・消費税・合計 | 税抜の小計、消費税、税込の合計 | 端数処理のルールを決めておく(後述) |
⑥振込先 | 銀行名・支店名・口座種別・ | 名義のカナ表記ミスで組戻しになることがある |
これに加えて、自分の氏名(屋号があれば屋号も)・住所・連絡先を入れます。インボイスの登録をしているなら、登録番号もここに並べます。記載項目そのものをもっと細かく知りたい方は一人親方の請求書の書き方!人工代など記載項目と注意点を詳しく解説もあわせてどうぞ。
もうひとつ、意外と効くのが振込手数料の扱いです。「振込手数料はご負担をお願いします」と1行入れておくか、事前に取り決めておくか。何も書かないでいると、毎月数百円が黙って引かれた金額で入金されて、そのたびに帳簿が合わなくなります。金額は小さくても、確認の手間がばかになりません。
一人親方の請求書がややこしくなる最大の理由は、仕事の受け方が2種類あるからです。日数で入る「常用(人工)」と、工事を丸ごと受ける「請負(手間請け・一式請け)」。この2つは、明細の書き方を変えたほうが、自分も相手も分かりやすくなります。
常用は、日数に応じて代金が決まる働き方です。ですから明細も、日付・現場名・人工数・日当(単価)で並べます。「6月分 常用 一式」ではなく、「6/2〜6/6 ◯◯様邸 5人工 × 24,000円」と書く。こうしておくと、元請の担当者が自分の出面表と突き合わせやすくなり、確認がすぐ終わります。
半日仕事は0.5人工、時間外は別行、というように単位のルールも決めておきましょう。人工の集計そのものに毎月時間がかかっているなら、出面表エクセルテンプレート【無料・登録不要】人工の集計から請求まで自動のような集計表を1枚はさむと、請求書づくりが写すだけの作業になります。人工代の明細の書き方は人工代の請求書の書き方【記入例つき】——インボイス対応の項目と単価の書き方でさらに詳しく解説しています。
請負は、工事の完成に対して代金が決まります。工期が月をまたぐときに「一式 450,000円」を月末にそのまま請求すると、まだ終わっていないぶんまで請求することになってしまいます。ここは出来高で割って書きます。
書き方はシンプルです。「内部造作工事(請負金額450,000円)出来高80%」として、数量欄に0.8、単価欄に450,000、金額欄に360,000と入れる。こうすると、請負金額がいくらで、今回どこまで請求しているかが1行で伝わります。翌月は残りの20%を請求すれば、二重請求も請求漏れも起きません。請負で金額を組み立てる考え方は一人親方の見積の作り方|日当感覚から利益を乗せる請負見積へにまとめています。
追加工事があったときは、例外なく行を分けます。しかも「追加:カウンター造作(6/18ご指示分)」のように、いつ・誰の指示で発生したかを書き添える。口約束の追加は、請求の段になって「そんな話したかな」となりがちです。指示の日付が明細に書いてあるだけで、その揉め方はぐっと減ります。
金物やビス、材料を自分で立て替えたときは、工事代金の行に混ぜず、独立した行にします。「立替材料費(金物・ビス)実費」として金額を出し、レシートか納品書のコピーを添える。これも金額の大小の話ではなく、相手が経理処理をしやすくするための配慮です。混ぜてしまうと、相手側で費目を分けられず、確認の電話が来ます。
なお、立て替えた材料費を経費として落とせるかどうかは、契約の形(材料込みの請負か、材料は元請支給か)によって整理が変わります。何が経費になるかは一人親方が経費にできるもの・できないもの一覧!家事按分も徹底解説を参考にしてください。
適格請求書発行事業者として登録しているなら、請求書は「適格請求書(インボイス)」の形にします。国税庁は、適格請求書に必要な記載事項を次のように示しています(出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」)。
建設の請求書で新しく足すことになるのは、実質的には「登録番号」と「税率ごとの消費税額」の2つです。工事は軽減税率の対象にならないので、税率は10%だけ。8%と10%を分けて書く必要はありません。
登録番号は「T」に続く13桁の数字です。書く場所に決まりはありませんが、自分の氏名・屋号・住所と並べて、右下か右上にまとめておくのが読みやすいです。相手は経理処理のときにここを見にきます。番号は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで公開されているので、桁の写し間違いがないか、初回はそのつど照らし合わせておくと安心です。
意外と間違いが多いのがここです。国税庁は、適格請求書に記載する消費税額等に1円未満の端数が生じる場合、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要がある、としています。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを使うかは任意です。そして、明細の1行ごとに消費税を計算して端数処理し、それを合計して消費税額とすることは認められない、とも明記されています(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問57」)。
つまり、正しいのは「明細を全部足して小計を出す → その小計に10%を掛けて、1回だけ端数を処理する」という順番です。行ごとに消費税を出す作りのエクセルを使っている方は、ここだけ直しておいてください。
以下は、常用中心の月の請求書の記入例です。金額はすべて説明のための架空の数字です。
日付 | 現場名 | 内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
6/2〜6/6 | ◯◯様邸 新築 | 常用(大工手間) | 5 | 人工 | 24,000 | 120,000 |
6/9〜6/13 | ◯◯様邸 新築 | 常用(大工手間) | 5 | 人工 | 24,000 | 120,000 |
6/16〜6/20 | △△ビル 改修 | 常用(大工手間) | 4.5 | 人工 | 24,000 | 108,000 |
6/23 | △△ビル 改修 | 時間外作業(2時間) | 1 | 式 | 6,000 | 6,000 |
6/25 | △△ビル 改修 | 立替材料費(金物・ビス)実費 | 1 | 式 | 8,437 | 8,437 |
— | — | 小計(10%対象) | 362,437 | |||
— | — | 消費税(10%・1円未満切捨て) | 36,243 | |||
— | — | 合計(税込) | 398,680 |
数字を追っておきます。明細を上から足すと、120,000+120,000+108,000+6,000+8,437で小計は362,437円。これに10%を掛けると36,243.7円になるので、1円未満を切り捨てて消費税は36,243円。合計は398,680円です。切り捨てを選んだことは、請求書に「消費税(10%・1円未満切捨て)」と書いておけば伝わります。
インボイスに登録していない一人親方も、これまでどおり請求書を出せます。登録は義務ではないからです。ただ、書き方に少しコツがあります。

登録していないなら、登録番号は書きません。欄そのものを作らないか、作るなら空欄のままにします。ここでひとつだけ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。他社の登録番号や、それらしい番号を書いてはいけません。適格請求書ではないものを適格請求書と誤認させる書類の交付は、消費税法で禁じられています。「元請に番号を出せと言われて困った」という場面では、番号を作るのではなく、登録していない旨を伝えてください。
免税事業者が請求書に消費税相当額を上乗せしてよいかどうかは、多くの方が悩むところです。ここは断定を避けますが、国の考え方は公表されています。財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省が連名で出しているQ&Aでは、免税事業者との取引について、仕入側の都合だけで著しく低い価格を設定することや、課税転換にあたって明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用や下請法上の買いたたきとして問題となるおそれがある、とされています。一方で、双方が納得のうえで価格を設定するのであれば、結果として価格が下がっても問題にはならない、とも示されています(出典:公正取引委員会ほか「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」)。
要するに、金額をどう決めるかは当事者の話し合いであって、一方的に決めるものではない、という整理です。ですから請求書の書き方としては、「上乗せする/しない」を先に取引先と決めて、決まったとおりに書く。これがいちばん揉めません。困ったときは、税務は税務署や税理士へ、取引条件については公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口へ、というふうに相談先を分けて当たってみてください。
もうひとつ、免税事業者の請求書には知っておくと喜ばれるポイントがあります。あなたがインボイスを出せなくても、元請は一定割合を控除できる経過措置を使えます。ただし、その適用を受けるには、区分記載請求書等と同様の記載事項がある請求書等の保存が要件になる、と国税庁は示しています。具体的には次の5つです(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問113」)。
ポイントは4つめです。「税率ごとに合計した税込価額」——つまり「10%対象 ◯◯円(税込)」という書き方をしておく。これがあるだけで、元請の経理は経過措置の処理をそのまま進められます。以下は請負仕事の記入例です。金額はすべて架空の数字です。
日付 | 内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
6/30 | 内部造作工事(請負金額450,000円)出来高80% | 0.8 | 式 | 450,000 | 360,000 |
6/18 | 追加:カウンター造作(6/18ご指示分) | 1 | 式 | 38,000 | 38,000 |
6/22 | 立替材料費(集成材・金物)実費 | 1 | 式 | 12,600 | 12,600 |
— | 小計 | 410,600 | |||
— | 消費税相当額(10%) | 41,060 | |||
— | 合計(10%対象・税込) | 451,660 |
検算します。請負450,000円の80%は360,000円。これに追加の38,000円と立替材料費12,600円を足して、小計は410,600円。消費税相当額の10%は41,060円で、合計は451,660円です。もし取引先との取り決めで消費税相当額を上乗せしないことになっているなら、消費税相当額の行を置かず、「合計(10%対象・税込)410,600円」と書きます。どちらの場合も、税込の合計額が税率ごとに書かれていれば、上の記載事項を満たせます。
免税のままでいる一人親方にとって、いま知っておきたいのがこの話です。インボイス制度では、登録していない事業者からの仕入れについても、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が置かれています。その割合が、2026年(令和8年)10月1日から下がります。
国税庁が示しているスケジュールは次のとおりです(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問113」)。
期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
令和5年10月1日〜令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
令和8年10月1日〜令和10年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
令和10年10月1日〜令和12年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
令和12年10月1日〜令和13年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
ここで注意していただきたいのが、「2026年10月から80%が50%になる」と書いてある記事がインターネット上にまだ残っていることです。それは令和8年度の税制改正より前のスケジュールで、現在は上の表のとおり70%になっています(2026年7月時点)。古い数字のまま元請と話をすると、話が噛み合いません。
大事なのは、この経過措置で負担が増えるのは、あなたの税金ではなく元請側の控除だという点です。とはいえ、元請の負担が増えれば単価の相談が来ることもあります。制度の中身と、そのときの構え方は一人親方のインボイス経過措置|2026年10月から控除80%→70%に【外注側の早見表】にまとめています。請求書の側でやることは、さきほどの5項目を満たしておくこと、それだけです。
請求書は、出して終わりではありません。いつ入金されるのかまで分かって、はじめて1枚の仕事が完了します。

建設工事の下請代金の支払いについては、建設業法にルールがあります。以下は2026年7月時点の条文にもとづく整理です(出典:e-Gov法令検索「建設業法」)。
ここで大事なのは、条文を振りかざすことではありません。「支払いには目安になるものさしがある」と知っていれば、支払いが遅れているときに「どうなっていますか」と聞く根拠になる、ということです。ご自身の契約がどの規定に当たるかは、契約の形(請負か常用か)や相手の許可の種類によって変わります。判断に迷うときは、契約書を持って建設業許可の窓口や行政書士に相談してみてください。
支払いの話は、請求書を出したあとにするより、仕事を受ける前に済ませておくほうがずっと楽です。確認するのは3つだけです。
「支払いは翌月末ですか」と一言聞くだけで、その現場の資金繰りが読めます。初めての取引先なら、注文書か発注書に書いてもらう。書面が難しければ、メールやチャットで「支払いは翌月末でお間違いないでしょうか」と送って、返事を残しておく。それだけで十分な記録になります。
請求書を出したら、「いつ・いくら・どこに出したか」を1枚の表で管理してください。エクセルでも手帳でもかまいません。列は、請求日/請求先/現場名/請求額/入金予定日/入金チェック、の6つで足ります。
この表があると、月末に「入金予定日を過ぎているのに入っていない」件がひと目で分かります。逆にこの表がないと、忙しい月ほど気づけません。実際、請求漏れも入金漏れも、金額が小さい追加分や立替分で起きがちです。そして年が明けて確定申告の時期になったとき、この1枚がそのまま売上の集計表になります。準備の全体像は一人親方の確定申告の方法と必要書類を徹底解説!不要な場合もある?をどうぞ。
法律上の要件ではないとされています。国税庁が示す適格請求書の記載事項にも、押印は含まれていません。ただ、取引先の社内ルールで「押印のない請求書は受け付けない」と決めている会社もあります。取引先に一度確認して、求められるなら押しておく、というくらいの整理でよいでしょう。
出せます。登録は義務ではありません。登録していない場合は登録番号を書かず、記事本文で紹介した5つの記載事項(作成者名・取引年月日・取引内容・税率ごとに合計した税込価額・交付を受ける相手の名称)を満たしておけば、元請は経過措置を使って一定割合を控除できます。登録するかどうかの判断は、ご自身の取引先や売上の状況によって変わるので、税理士や税務署にも相談してみてください。
所得税の青色申告では、帳簿は7年、請求書や見積書などの書類は5年の保存が求められるとされています。ただし消費税の課税事業者になると、仕入税額控除や交付した適格請求書の写しの保存について、別に期間が定められています。ご自身がどれに当たるかは、国税庁の記帳・帳簿等の保存に関するページや、顧問の税理士に確認してください(出典:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」)。
書式に決まりはないので、手書きでも問題ありません。ただ、毎月同じ形で出すこと、金額の計算を間違えないこと、控えを残すことの3つは押さえてください。エクセルで自分用のひな型を1枚作っておくと、翌月からは日付と明細を差し替えるだけになり、計算間違いも減ります。
常用なら出面表(作業日報)の写し、請負なら出来高が分かる資料、立替があればレシートや納品書の写し。この3つを添えると、確認のやり取りが1往復減ります。相手の経理担当者がその場で確認できる状態にしておくことが、結局は自分の入金を早めます。
一人親方の請求書について、要点をおさらいします。
請求書は、腕の見せどころではありません。だからこそ、型を1枚作ってしまうのがいちばんです。今月の1枚を、この形で書いてみてください。来月からは、日付と明細を差し替えるだけ。毎月20分かけていた作業が10分になって、そのぶん「いつ入金されるか」を気にする余裕が生まれます。