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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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応援や常用で職人を出したとき、人工代をいくらで請求するか迷いますよね。人工の数え方から、常用単価×人工数に法定福利費と現場経費を上乗せする実務の計算方法、単価相場の考え方までを整理し、請求額と粗利が自動計算できるExcelシートを無料配布します。
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「今月、あの現場に延べ何人工出したっけ」「常用の単価、いくらで請求すればいいんだろう」——応援や常用で職人を出している会社なら、月末のたびにこの計算と向き合っていますよね。
人工代の計算そのものは、常用単価×人工数という単純な掛け算です。ただ、実務ではここに法定福利費(社会保険料の会社負担分)と現場経費をどう乗せるかという大事な論点が加わります。ここを曖昧にしたまま「単価×人工」だけで請求していると、保険料や経費がまるごと自社の持ち出しになり、「忙しいのに手元に残らない」状態になりがちです。
この記事では、人工の数え方の基本から、経費まで含めた人工代の計算方法、常用単価の相場の考え方までを順番に整理します。後半では、職種・常用単価・人工数(経費率は初期値入り)を入れるだけで請求額と粗利が自動で出るExcel計算シートを無料配布します(登録不要・マクロなし)。
「人工」は「にんく」と読み、作業員1人が1日(8時間)働いたときの作業量・労務量を表す単位です。「この工事は延べ20人工かかる」「明日は3人工入れてほしい」のように、人手の量を数えるモノサシとして長年使われてきた、建設業の慣行です。
「1日=8時間」を基準にする考え方は、公的な単価にも共通しています。国土交通省が毎年発表する公共工事設計労務単価も、「所定労働時間内8時間当たり」の単価として設定されています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
数え方の基本は次のとおりです。
複数人・複数日のときは「人数×日数」で数えます。たとえば3人の職人が5日入れば3×5=15人工。2人が半日(4時間)だけ入れば、2×4÷8=1人工です。
そして、この人工を単位として支払い・請求する労務の対価が「人工代」です。工事一式いくらの請負ではなく、「1人工あたり◯円×働いた人工数」で精算する契約・働き方を「常用(じょうよう)」と呼び、このときの1人工あたりの単価が「常用単価」です。
人工代の土台になる労務費は、次の掛け算で出します。
労務費 = 常用単価 × 人工数(人数×日数)
たとえば常用単価24,000円の職人2人を10日間出すなら、24,000円×20人工=480,000円。ここまでは迷いませんよね。
ただし、この480,000円は労務費(働く本人の賃金に相当する部分)だけの金額です。会社として職人を出すには、この外側に社会保険料の会社負担分や、現場に人を出すための諸々の経費がかかっています。
とくに見落とされがちなのが、健康保険や厚生年金など社会保険料の事業主負担分(法定福利費)です。これは賃金とは別に会社が支払うお金なので、請求に乗せなければそのまま自社の負担になります。
この点は国土交通省もはっきり書いています。「公共工事設計労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません。よって、下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」と明記されています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。つまり、労務の単価に経費を上乗せして請求するのは「取りすぎ」ではなく、制度が想定している正しい形です。
そこで実務では、人工代(請求額)を次の形で組み立てます。

請求額(税抜)= 労務費(常用単価×人工数)+ 法定福利費 + 現場経費
法定福利費の出し方には、国土交通省が示している標準的な計算式があります。「法定福利費=労務費総額×法定保険料率」です。内訳明示の対象になるのは、原則として健康保険(介護保険を含む)・厚生年金保険(子ども・子育て拠出金を含む)・雇用保険のうち、現場労働者分の事業主負担分です。なお現場の労災保険は元請が一括で加入する仕組みのため、下請が明示する法定福利費には含めないこととされています(出典:国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書について」)。
事業主負担分の料率は、令和8年度時点でおおよそ次のとおりです。
法定福利費の内訳 | 事業主負担の料率 | 備考 |
|---|---|---|
厚生年金保険 | 9.15% | 全体18.3%を労使折半。平成29年9月を最後に引き上げは終了し固定 |
健康保険 | 約4.6〜5.3% | 都道府県で異なる(令和8年度は9.21〜10.55%を労使折半)。協会けんぽ東京支部は9.85%の折半で4.925% |
介護保険 | 0.81% | 40〜64歳の従業員のみ。1.62%を労使折半 |
雇用保険 | 1.05% | 建設の事業の事業主負担分(10.5/1,000) |
子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 事業主のみ負担 |
合計すると、おおむね賃金の15.5〜16.3%程度(健康保険は東京支部の料率で計算した場合)が事業主負担の法定福利費の目安になります。この合計値は公的資料の記載ではなく、各料率の一次ソースをもとにした当方の試算で、従業員の年齢構成や都道府県によって変わる点はご注意ください。なお、令和8年4月分からは健康保険とあわせて「子ども・子育て支援金」(料率0.23%・労使折半)の徴収も始まっていますが、率がごく小さいため上の目安には含めていません(出典:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」/全国健康保険協会「令和8年3月分からの保険料額表(東京支部)」/厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」)。
もう一つの上乗せが現場経費です。現場までの移動・車両費、道具や消耗品、小運搬、段取りや現場管理の手間など、人を現場に出すこと自体にかかっている費用がこれにあたります。こちらは法定福利費と違って公的な率があるわけではないので、自社の実費を振り返って「労務費の◯%」と自分で決めるのが実務的です。経費の中身を整理したいときは「現場管理費とは?平均何パーセント?一般管理費との違いも詳しく解説」も参考にしてください。
法定福利費率を16%、現場経費率を10%と置いた場合の計算例です(単価・率とも架空の設定です)。
消費税は、法定福利費の分も含めた請負代金全体が課税対象とされています(出典:国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書について」)。税率10%なら、604,800円×1.1=665,280円が税込の請求額です。「単価×人工」の480,000円だけで請求していた場合と比べると、その差は12万円以上。これが毎月・毎現場で積み重なると考えると、経費の上乗せを曖昧にできない理由が見えてきますよね。
「うちの常用単価、安すぎないだろうか」と気になったとき、ネット上には「1人工◯円が相場」といった数字も見つかります。ただ、その多くは各社の独自の推計で、公的な裏付けのある数字ではありません。
公的に確認できる単価の水準は、国土交通省が毎年発表する「公共工事設計労務単価」です。公共工事の予定価格の積算に使う職種別の日額単価で、実際に支払われた賃金の調査(令和7年10月調査では約1万件の工事・約8.6万人分の賃金台帳)をもとに、47都道府県・51職種別に設定されています。
令和8年3月適用の単価は、全国全職種の平均で25,834円/日(加重平均値)。初めて25,000円を超え、伸び率は単純平均で前年度比プラス4.5%、平成25年度の改定から14年連続の引き上げです。平成24年度の13,072円と比べると、およそ2倍の水準まで上がってきています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
主な職種の全国平均は次のとおりです。
職種 | 全国平均(円/日) |
|---|---|
普通作業員 | 23,605 |
軽作業員 | 18,605 |
とび工 | 30,780 |
鉄筋工 | 31,267 |
型わく工 | 31,671 |
大工 | 30,331 |
左官 | 30,508 |
交通誘導警備員A | 18,911 |
※金額は所定労働時間内8時間当たりの全国加重平均値(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)
注意したいのは、同じ職種でも都道府県によって単価が大きく違うことです。たとえば普通作業員は東京都27,000円に対し、北海道21,500円、鳥取県18,200円。全国平均だけを見て単価を決めると地域の実感とズレるので、上の出典リンクから自分の都道府県の単価表を確認してみてください。
この単価を常用単価の参考にするときは、中身に注意が必要です。設計労務単価に含まれているのは、基本給相当額・基準内手当・賞与など働く本人の賃金に相当する部分だけ。時間外・休日・深夜の割増賃金や、法定福利費の事業主負担分・研修訓練費などの現場管理費、一般管理費といった会社側の経費は含まれていません(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。この単価を物差しに常用単価を考えるなら、先ほどの式のとおり法定福利費と現場経費を別途上乗せする、が正しい使い方です。
また、設計労務単価はあくまで公共工事の積算用の単価であって、民間工事の常用単価を直接決めるものではありません。それでも「実際に支払われた賃金の調査に基づく、職種別・都道府県別の公的な水準」として、自社の単価が世間とどれくらい離れているかを確かめる材料には十分なりますよね。
「そうは言っても、経費まで乗せた単価なんて元請が渋るのでは」と感じる方も多いはずです。ここで知っておきたいのが、2025年12月の制度の動きです。
改正建設業法に基づき、中央建設業審議会は令和7年12月2日に「労務費に関する基準」を作成・勧告しました。この基準では、公共工事設計労務単価が、公共・民間を問わず、下請取引を含むすべての建設工事の請負契約で確保されるべき「適正な労務費」の計算の基礎となる水準として位置づけられています(出典:国土交通省「労務費に関する基準」)。
つまり、「労務費を削って安く受ける」という商習慣そのものを見直す方向に、国の仕組みが動いています。設計労務単価を物差しにした人工代の計算は、これからの単価交渉の土台になっていくと考えられます。基準の内容と見積もりへの影響は「標準労務費で見積もりはどう変わる?施行半年の現在地と小規模建設会社の実務対応」で詳しく解説しています。
ここまでの計算は電卓でもできますが、職種違い・単価違いの常用が月末に何本も重なると、正直しんどいですよね。そこでコンクルーBaseで、人工代の計算に特化したExcelシートを作り、無料で配布します。仕様は次のとおりです。
シートは4枚構成です。

使い方は3ステップです。
マクロは使っていないので「コンテンツの有効化」を求められることもありません。メールアドレスの登録も不要です。自社の実務用として自由に使ってください(テンプレートそのものの再配布・販売はご遠慮ください)。
計算した人工代を請求書に落とすときは、内訳がわかる書き方にしておくと、元請との認識ズレを防げます。「◯月分 常用 普通作業員 20人工×24,000円」のように職種・人工数・単価を明記し、法定福利費や経費は行を分けて書くのが基本です。請求書の書き方の実務は「一人親方の請求書の書き方!人工代など記載項目と注意点を詳しく解説」で詳しく解説しています。
あわせて、次の3点も押さえておきましょう。
なお、毎月の出面(人工の記録)を拾い集めて計算し、請求書に書き写して……という一連の作業自体がしんどくなってきたら、出面から請求までをひとまとめに管理できる建設業向けのクラウド(筆者たちが開発している「コンクルーAI」もその一つです)を検討する段階かもしれません。まずは今回のExcelシートで、経費まで乗せた人工代を数字で押さえるところから始めてみてください。
最後に、この記事の要点を整理します。
人工代は、会社の一番の商品である「人の働き」の値段です。経費まで含めて計算し、根拠を持って請求できるように、無料のExcel計算シートをぜひ活用してみてください。