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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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平場の㎡数に単価を掛けるだけの防水見積は、現場で立上りやドレン改修が膨らみ赤字になりがちです。改修防水の見積を6ブロックの内訳で組み、平場・立上り・役物を分けて拾う手順、ウレタン・シート・FRPで単価が決まる仕組み、架空のサンプル見積書まで、出す側の実務として解説します。
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「屋上の防水、そろそろやり替えたいから見積して」。管理会社や施主からそう言われて、現地を見て、平場の㎡数に単価を掛けて金額を出す。ところが、いざ現場に入ると、立上りの処理、ドレンの改修、下地のふくれ——見積に見込んでいなかった手間が次々に出てきて、終わってみれば赤字ギリギリ。おまけに相見積では「なんでこの金額なの?」と内訳を突っ込まれ、勘で出した一式の見積が、だんだん通らなくなってきた。
防水店や、防水も手がける塗装店・リフォーム会社の社長さんなら、心当たりのある流れではないでしょうか。防水工事の見積が難しいのは、金額の相場を知らないからではありません。「平場の㎡×単価」だけで組んでしまい、立上り・役物・下地処理といった、精度を左右する部分を拾いきれていないからです。この記事では、改修防水の見積を「拾い漏れず・揉めず・赤字にならない」型で組む手順を、面積の拾い方から工法別の単価の決まり方、改修特有の費目、そして架空のサンプル見積書まで、通しでお伝えします。(※単価や金額の例は、すべて説明のための架空の数字です。地域・数量・下地の状態で実際は大きく変わります)
先に結論からお伝えします。防水見積の精度は、平場(へいば)の面積ではなく、「立上り・役物・下地処理」をどれだけ丁寧に拾えるかで決まります。ここを一式でざっくり丸めると、現場で膨らんだぶんがそのまま自社の持ち出しになり、内訳を示せないので相見積でも弱くなります。逆に、内訳をきちんと見せる見積は、相見積で「この会社は分かっている」と信頼されやすく、追加請求でも揉めにくい。防水の見積は、金額を安くする勝負ではなく、根拠を見せる勝負なんですね。
もう一つ、大前提を共有させてください。検索で出てくる「防水工事の費用相場」「安くするコツ」といった記事は、ほとんどが工事を"頼む側"(施主)向けのものです。この記事は、見積を"出す側"の実務の話です。同じ防水でも、立っている場所がまるで違います。ここから先は、現場の社長さんの目線で読み進めてください。
拾い漏れをなくす一番の方法は、見積を毎回きまった「ブロック」に分けて組むことです。防水の改修見積は、次の6つのブロックで考えると、抜けが起きにくくなります。

ブロック | 主に入れるもの |
|---|---|
①下地処理 | 高圧洗浄、ケレン・清掃、 |
②防水本体(材工) | プライマー、防水材 |
③立上り・役物 | 立上り防水、ドレン改修、脱気筒、 |
④端末処理・シーリング | 端末の押え・シール、 |
⑤仮設・養生・運搬 | 昇降・搬入手間、養生、 |
⑥諸経費 | 現場管理費・一般管理費 |
この6ブロックを毎回のフォーマットにしておくと、「今回はドレンの改修が要るな」「立上りが高いから③が膨らむ」と、現場ごとの違いをブロック単位で見られます。一式でひとまとめにするより、どこにお金がかかっているかが自分でも把握でき、施主にも説明しやすくなります。まずはこの6ブロックを、見積書の骨格として頭に入れてください。
6ブロックの骨格ができたら、次は数量、つまり「拾い」です。防水見積の肝は、ここにあります。平場・立上り・役物を、それぞれ違うものさしで数えるのがコツです。数量を根拠を持って拾う考え方全般は、拾い出し(数量拾い)のやり方もあわせてどうぞ。

平場は面積(㎡)で拾います。ここで改修ならではの注意があります。新築と違って、改修は竣工図が残っていないことが少なくありません。図面があっても、増築や過去の改修で実際と食い違っていることもあります。だから、図面から拾った面積を、例外なく現地の実測と突き合わせます。
実測のときは、寸法だけでなく写真もセットで残しておくのがおすすめです。「どこを測って、どういう状態だったか」が写真で残っていれば、あとで数量の根拠を聞かれても説明できますし、追加が出たときの交渉材料にもなります。改修工事全般の考え方は建築における改修とはも参考になります。
見落とされがちなのが立上りです。屋上やベランダの周囲、パラペットの内側などに立ち上がっている防水面ですね。これを平場の㎡数に混ぜてしまうと、二つの問題が起きます。一つは、立上りは平場より手間がかかるのに、平場単価に薄まって単価がつぶれてしまうこと。もう一つは、数量の根拠を示せなくなることです。
立上りは、平場とは分けて「長さ(m)×高さ」で拾い、別単価で計上します。こうすれば、立上りにかかる手間を正しく金額に反映でき、施主にも「立上りは別に◯m あります」と根拠を示せます。立上りの高さが規定に満たないと納まりが変わることもあるので、拾いのときに高さも控えておくと安心です。
ドレン(排水口)、脱気筒、配管の貫通部、架台、笠木——こうした役物(やくもの)や貫通部は、面積でも長さでもなく「箇所数」で拾います。1箇所ごとに手間と材料がかかるからです。
そして、ここが追加トラブルの一番の火種になります。「ドレンは既存のままでいけると思っていたら、詰まっていて改修が必要だった」「配管の根元から水が回っていた」。役物は数が少ないぶん見落としやすく、なのに1箇所の手間は小さくない。だから、現地調査のときに役物を1箇所ずつ数えて写真に残し、見積に「ドレン改修 ◯箇所」「脱気筒 ◯箇所」と箇所数で明記しておく。これだけで、後出しの追加が激減します。
防水には代表的な工法がいくつかあり、それぞれ単価の「決まり方」がまったく違います。ここを理解しておくと、なぜその金額になるのかを自分の言葉で説明できるようになります。なお、以下は単価が"何で決まり、何で上下するか"の話です。具体的な金額(円/㎡)は地域・数量・下地条件で大きく振れるので、ここでは断定しません。

液状のウレタンを塗り重ねて、継ぎ目のない防水層をつくる工法です。単価は、工程数(プライマー→ウレタンを規定回数→トップコート)と、メーカーが定める規定塗布量で決まります。塗る回数と量が増えれば、材料も手間も増える、という素直な構造です。
改修でよく使われるのが「通気緩衝工法」です。下地に絶縁シート(通気緩衝シート)を敷き、脱気筒(だっきとう)を立てて、下地に含まれた水分や湿気を逃がしながら防水層をつくります。下地が湿っている改修屋上に向く一方、密着工法にくらべてシートと脱気筒の材料費が乗ります。「密着より通気緩衝のほうが高い」のには、こうした材料と手間の理由があるわけです。ウレタン防水の中身はウレタン防水とはで詳しく解説しています。
塩化ビニル樹脂や加硫ゴムでできた既製のシートを張っていく工法です。工場で品質が管理されたシートを使うため、広い平場をスピーディーに仕上げられるのが持ち味。単価を左右するのは、材料の歩留まり(シートの切り無駄)と、端部・役物まわりの処理の手間です。平場が広く単純なほど有利で、役物が多く入り組んだ現場ほど手間が増えます。
固定方法にも、下地に全面接着する「接着工法」と、専用のディスクやアンカーで留める「機械的固定工法」があり、後者は下地の水分の影響を受けにくいので改修で選ばれることがあります。どちらを採るかで、下地処理の範囲や手間の見方が変わってきます。
ガラス繊維のマットとポリエステル樹脂を積層して、硬く一体化した防水層をつくる工法です。単価は、樹脂とガラスマットを何層積むか(積層数)で決まります。強くて摩耗に強いので、人がよく歩くベランダ・バルコニーといった小面積に向きます。
FRPで意識したいのが、小さい現場ほど「最低請負金額」の考え方が要る、という点です。面積が小さくても、材料の準備・養生・段取り・移動といった固定的な手間は一定量かかります。㎡単価だけで小面積を出すと、その固定的な手間を回収できず赤字になりがちです。だから小規模なFRP改修は、「この規模なら最低いくらから」という下限を自社で持っておくのがおすすめです。FRP防水の特徴はFRP防水とはにまとめています。
工法に優劣はありません。下地の状態、面積、歩行の有無、予算、既存防水との相性——現場の条件で最適解は変わります。見積を出す側としては、「なぜこの現場にこの工法か」を説明できることのほうが、どれが一番かを語ることよりずっと大事です。
新築の防水積算に慣れていても、改修だと利益が溶ける。その原因の多くは、改修にしかない費目の載せ忘れです。ここを1章にまとめて、チェックリスト代わりにしてください。
改修でまず判断が要るのが、既存の防水層を撤去してやり直すのか、その上に新しい防水をかぶせる(カバーする)のか、です。撤去すれば手間と処分費が大きくかかりますが、下地の状態を確認できます。かぶせは撤去費・処分費を抑えられますが、既存層の状態や重ね張りの相性を見極める必要があります。
どちらを選ぶかは、既存防水の劣化度合い、含水の有無、下地の健全性などで変わります。判断の一般的な考え方は、国土交通省が示す公共建築の改修工事標準仕様書などが参考になります。大事なのは、見積に「撤去のうえ新設」なのか「既存の上にかぶせ」なのかを明記し、撤去する場合はその手間と処分費を漏れなく別に計上することです。ここを曖昧にすると、現場で「やっぱり剥がさないと危ない」となったとき、費用の話が後出しになって揉めます。
下地に水分が回っていたり、既存防水がふくれていたりする場合は、その処理が要ります。含水した屋上では、さきほどの通気緩衝工法+脱気筒で湿気を逃がす対応が定番です。下地のひび割れは補修が必要で、放置すれば新しい防水層の寿命にも響きます(ひび割れの見方はクラックとはを参考に)。ドレンが劣化・詰まりを起こしていれば、改修用ドレンへの交換を見込みます。これらは「あれば追加」ではなく、現地調査の段階で有無を確認して、最初から見積に載せるかどうかを判断する費目です。端末やまわりのシーリングの打替えについては、コーキングとはもあわせてどうぞ。
撤去する場合、剥がした既存防水材の処分費と搬出の手間を忘れずに計上します。撤去材は産業廃棄物として適正に処理する必要があり、品目や数量で費用が変わります。
そしてもう一つ、法令上とても大事なのが、アスベスト(石綿)の事前調査です。一定の年代の建物や、古い防水層・下地には、石綿を含む建材が使われている可能性があります。建築物の解体・改修工事では、着工前に石綿含有の有無を調べる事前調査が、厚生労働省の石綿障害予防規則や環境省の大気汚染防止法にもとづいて義務づけられており、一定の規模以上では調査結果の報告も必要とされています。対象となる工事の規模・調査や報告の要件・有資格者による調査の要否は制度で細かく定められているので、改修防水を請ける前に、その現場が対象かどうかの確認を欠かさないでください(義務の対象・時期・要件は最新の公式情報でご確認を)。見積の段階では、「アスベスト含有が判明した場合は別途協議」の一文を入れておくと、後述する除外事項の書き方とあわせて自社を守れます。
ここまでの内訳・拾い・費目を、実際の見積書の形にするとどうなるか。屋上のウレタン通気緩衝改修を想定した、架空のサンプル見積書を丸ごとお見せします。金額・数量はすべて説明のための架空の数字で、実際の単価とは無関係です。

区分 | 名称 | 数量 | 単位 | 単価(架空) | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
①下地処理 | 高圧洗浄 | 120 | ㎡ | 250 | 30,000 |
①下地処理 | ケレン・清掃・不陸調整 | 1 | 式 | 60,000 | 60,000 |
①下地処理 | ひび割れ補修 | 15 | m | 1,200 | 18,000 |
①下地処理 | 下地調整(カチオン等) | 1 | 式 | 35,000 | 35,000 |
②防水本体 | 通気緩衝ウレタン(平場・材工) | 120 | ㎡ | 6,800 | 816,000 |
③立上り・役物 | 立上りウレタン(密着・材工) | 48 | m | 3,000 | 144,000 |
③立上り・役物 | 脱気筒 設置 | 2 | 箇所 | 8,000 | 16,000 |
③立上り・役物 | 改修用ドレン 交換 | 2 | 箇所 | 15,000 | 30,000 |
④端末・シール | 既存シール打替え | 60 | m | 900 | 54,000 |
④端末・シール | 端末押え・端部処理 | 1 | 式 | 25,000 | 25,000 |
②防水本体 | トップコート仕上げ | 120 | ㎡ | 1,200 | 144,000 |
— | 小計 | 1,372,000 | |||
⑥諸経費 | 現場管理費・一般管理費(小計の10%) | 1 | 式 | 137,200 | 137,200 |
— | 税抜合計 | 1,509,200 | |||
— | 消費税(10%) | 150,920 | |||
— | 税込合計 | 1,660,120 |
数字を検算しておきます。①〜④の各明細を足すと小計は 1,372,000円。諸経費はその10%で 137,200円、足して税抜合計 1,509,200円。消費税10%は 150,920円で、税込合計は 1,660,120円になります。ポイントは、平場(816,000円)だけでなく、立上り・脱気筒・ドレン・シール・下地処理が、それぞれ数量の根拠を持って並んでいることです。この形なら、「立上りが◯m あるからこの金額です」と説明でき、相見積でも追加交渉でも強くなります。仮設・搬出などが別途要る現場では⑤のブロックも忘れずに。端数を丸めて出精値引きを入れる場合の書き方は出精値引きとはを参考にしてください。見積書全体の体裁はリフォーム会社の見積書の書き方や内装工事の見積書の書き方も型として役立ちます。
見積や契約で施主が気にするのが保証です。ここで気をつけたいのは、保証には「メーカーの材料保証」と「施工した自社の保証」があり、両者は別物だということです。保証の年数や範囲は、採用する工法・仕様、施工者の登録制度、メーカーの条件によって変わります。だから「防水は10年保証が普通です」といった一般化した約束は避け、「どの保証が、どの条件で、何年か」を、採用する仕様にそって具体的に示すのが誠実です。安易な年数の口約束は、あとで自社の首を絞めます。
改修は、開けてみないと分からない部分がどうしても残ります。だからこそ、見積には前提条件と除外事項を添えておきます。たとえば、「本見積は現地調査時点で確認できた範囲を対象とします」「下地内部の隠れた劣化が判明した場合は別途協議とします」「石綿含有が判明した場合の調査・除去費用は別途実費精算とします」といった一文です(いずれも文言の一例です。自社の実情にあわせて調整してください)。こうした一文は、施主を突き放すためのものではありません。「想定外が出たら、勝手に進めず一度ご相談します」という約束を先にしておくことで、かえって信頼され、追加のときも話がスムーズになります。
最後に、同じ金額帯でも「この会社にお願いしたい」と思ってもらうための、3つの工夫をお伝えします。どれも、見積の精度を上げる作業の延長でできることです。
一つ目は、工法の選定理由を1行そえること。「下地の含水が見られたため、脱気筒を用いる通気緩衝工法を選定しました」——この一行があるだけで、金額が「言い値」ではなく「理由のある提案」に見えます。なぜ通気緩衝なのか、なぜ撤去せずかぶせなのか。理由を短く書くだけで、施主の納得感がまるで変わります。
二つ目は、現地調査の写真を付けた劣化報告を添えること。ふくれ、クラック、ドレンの詰まり、既存シールの切れ——現状の写真を数枚つけて「今、屋上がこういう状態です」と示すと、見積の数量にも説得力が出ます。施主は屋上に上がらないことがほとんどなので、写真は「なぜこの工事が必要か」を伝える一番の武器になります。
三つ目は、単発で終わらせず、維持の提案をセットで載せること。防水は、打ちっぱなしではなく、数年ごとのトップコートの更新やシーリングの打替えで長持ちします。「今回の防水工事」だけでなく、「◯年後にトップコートを更新すると、防水層をより長く保てます」といった維持の道筋を一緒に示すと、その場の一件で終わらず、長いお付き合いの入り口になります。目先の受注だけでなく、次につながる見積です。
防水見積は、平場の㎡数を安く見せる勝負ではありません。立上り・役物・下地処理・改修特有の費目まで拾って、内訳で見せる。それが、赤字にならず、相見積で選ばれ、追加でも揉めない見積の型です。
まずは次の一件から、平場・立上り・役物を分けて拾い、6ブロックで内訳を組んでみてください。見積書の型をそのまま流用したい方は、建設業の見積書テンプレート(無料)も用意しています。勘の一式見積から、根拠のある内訳見積へ。その一歩が、現場に入ってからの「想定外」を、着実に減らしていきます。