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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「改修」と聞くと、リフォームや修繕との違いが分かりにくく、どの範囲までを指すのか迷う方も多いのではないでしょうか。 改修は、住まいや建物の性能を保ちながら、より快適で安全な状態に整える改修は、長く暮らし続ける上で欠かせない取り組みです。 本記事では、改修の意味や目的、改良・修繕との違いなどを分かりやすく解説します。
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まず、改修の基本的な情報を紹介します。
改修とは、既存の建物や設備が持つ性能を回復させたり、より良い状態へ向上させたりするために行う改善行為のことを指します。
老朽化や利用環境の変化によって低下した機能を取り戻すだけでなく、求められる水準に合わせて品質を引き上げることも改修の範囲に含まれます。
見た目の変化を目的とする「模様替え」とは異なり、改修は建物の価値や安全性、使いやすさの向上といった、より根本的な目的を持つ点が特徴です。
改修を英語で表す際は、工事の目的や規模によって適切な単語が変わります。
最も広く使われるのは「renovation」で、建物を修理しながらより良い状態へ整える工事全般を指す表現です。住宅の改修、マンションの共用部の更新、店舗の内装工事など、用途を問わず幅広い場面で利用できます。
また、文脈によっては「repair」や「restoration」、「refurbishment」などの語が使われる場合もあります。
改修工事とは、既存の建物を継続して安全・快適に利用するために、状況に応じた修理や性能向上を計画的に組み合わせて行う工事のことです。
老朽化の進み具合や設備の寿命、今後の利用方針を踏まえて、必要な作業を最適な組み合わせで実施します。建物を新築し直すのではなく、今ある構造を生かしながら品質を引き上げる点が特徴です。
改修工事の中でも、より広い範囲を対象とし、建物全体の性能を底上げする目的で行われる工事を「大規模改修工事」といいます。経年による劣化だけでなく、設備機器の更新、耐震性の強化、省エネ性の改善といった、建物の寿命や安全性に深く関わる部分を総合的に見直します。
改修と似た言葉は次のとおりです。
それぞれの意味と改修との違いを分かりやすく解説します。
修繕は、建物の一部に生じた損傷や不具合を建築当初の水準へ戻すための復旧作業を指します。修繕が目指すのは「元の状態への回復」であり、間取りや仕様を変えることは想定されていません。
一方、改修は建物の劣化を補う作業に加えて、断熱性や耐震性の強化、老朽化した設備の新仕様への変更、バリアフリー化など、建物をより良い状態へ更新する取り組みが含まれます。
つまり、修繕は「壊れた部分を元に戻す作業」改修は「建物全体を現代の基準や目的に合わせて改善する工事」というように、目的と工事の範囲に明確な違いがあります。
補修は、建物の一部に生じた小規模な傷みや劣化に対して行う部分的な手当てを指します。
外壁の細かなひびや、内装のわずかな剥がれなど、すぐに深刻な問題にはならないものの、そのままにしておくと劣化が進む恐れがある箇所に対して行う作業です。例えば、クロスを一部貼り替える、防水材を部分追加するなど範囲が限定された処置が中心です。
一方、改修はこうした部分的な手当てにとどまらず、建物全体の機能や使い勝手を見直し、より良い状態へ整える工事を含みます。
つまり、補修は「軽微な劣化を整えて現状を維持する作業」、改修は「建物の性能や仕様を改善・更新する広範囲の工事」というように、目的と規模、工事範囲に明確な違いがあります。
改装は、室内空間の印象や使い勝手を整えるための工事のことをいいます。
壁紙や床材の張り替え、設備機器の交換、レイアウト変更など、主に見た目や仕上げを刷新する作業が中心です。
一方で改修は、内装の変更に加えて、建物そのものの性能や構造、設備の状態を見直し、必要に応じて改善・更新する工事を含みます。
改装は「空間の印象を変える工事」、改修は「建物の機能や水準を見直す工事」と理解すると区別しやすいでしょう。
改築は、建物の構造や間取り、規模そのものに変更を加える大掛かりな工事のことです。
老朽化部分の建て替えや部屋数の増減、壁の撤去など、建築基準法に関わるような根本的な変更を伴います。
一方、改修は建物の性能や使い勝手を見直す工事ではあるものの、構造そのものを大幅に変えることは目的としていません。断熱性の向上や設備の更新など、建物の機能を整える内容が中心です。
つまり、改築は「形そのものを変える工事」か、改修は「性能や状態を整える工事」という違いがあります。
改良は、現状の機能や性能を底上げするための比較的限定的な工事を指し、使い勝手の向上や部分的な性能強化といったピンポイントの改善が中心です。
例えば、断熱材を追加して室内環境を整えたり、設備の一部を性能の高いものへ交換したりと、建物全体を大きく変えずに質を高めることが目的です。
一方、改修はより広い範囲で建物の機能や設備を見直す工事で、老朽化した部分の更新から、建物全体を現在の基準や暮らし方に合わせて整える内容まで含まれます。
つまり、改良は「部分的な改善」、改修は「建物全体の性能や状態を総合的に整える工事」という違いがあります。
リフォームは、傷んだ部分を元の状態へ戻したり、室内の見た目や使い勝手を整えたりする比較的範囲の限られた工事を指します。
壁紙の貼り替えやキッチンや浴室の交換、内装の刷新など、日常生活で感じる不具合や古さを解消する作業が典型的です。
一方、改修は内装の手入れにとどまらず、建物の性能や設備、構造にまで踏み込み、現在の基準や暮らし方に合わせて建物全体の機能を見直す工事を含みます。
つまり、リフォームは「見た目や使い勝手を整える」、改修は「建物の性能を総合的に整える」という違いがあります。
リノベーションは、既存の建物を大幅に作り替え、新しい機能や価値を加えることを目的とした工事です。
空間の用途や暮らし方そのものを見直し、建物を再生”する発想が強い点が特徴です。例えば、間取りを一から組み直したり、設備を最新仕様に総入れ替えしたり、デザインを全面的に刷新したりと、建物が持つ印象や使い勝手を大きく変える工事が含まれます。
一方、改修は老朽化した部分の更新や性能の改善など、建物を今の基準に合わせて整えることが中心です。
つまり、リノベーションは「空間に新たな価値を生み出す工事」、改修は「建物の状態や機能を整える」という違いがあります。
改修工事を行うメリットは、次のとおりです。
それぞれを解説します。
改修工事を行う最大の意義の1つは、建物の安全性を高められる点にあります。
年月がたつと、構造部材の劣化や設備の不具合が徐々に蓄積し、普段は目に見えない部分でも耐久性が低下していることがあります。こうした状態を放置すると、思わぬ事故につながったり、災害発生時に被害が大きくなったりする危険性が高まります。
耐震性の向上や老朽化した設備の交換など、建物の安全性を総合的に底支えする対策が盛り込まれるため、日常の安心感が大きく高まります。特に地震や豪雨など自然災害が多い日本では、建物の安全性を維持・強化することは暮らしを守るための重要な取り組みといえます。
改修工事は、老朽化した部分を直すだけでなく、暮らしそのものをより快適に整える絶好のタイミングでもあります。
例えば断熱性の不足による暑さ・寒さを改善したり、風通しを良くして湿気対策を行ったりと、日常生活の不快感を解消する大きな効果が期待できます。また、生活動線の見直しや収納スペースの再配置など、家の使い方に合わせて空間を整えることで家事や生活動作がスムーズになり、日々のストレスが軽減されます。併せて、古くなった設備を省エネ性の高い機器へ交換することで、光熱費を抑えながら快適な住環境を維持できる点も大きなメリットです。
このように改修工事は、見た目を整えるだけではなく、生活の質そのものを底上げする効果があり、暮らしやすさを総合的に向上させてくれます。
建物を適切なタイミングで改修し続けることは、資産価値の維持に大きく貢献します。
外観や設備の状態が良好であれば、建物全体の印象が向上し、将来的に売却や賃貸を行う際にも市場で高く評価されやすくなります。反対に、劣化を放置してしまうと修繕範囲が広がり、建物の価値が早期に下がってしまう可能性があります。
定期的な改修によって状態を良好に保つことは、価値を落とさないどころか、必要に応じて設備のグレードアップや性能向上を行うことで、建物の評価を高める要因にもなります。
改修工事の具体例は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
外壁や屋根は、建物の中でも特に劣化しやすい部分であり、雨風や紫外線、気温変化などの影響を常に受けています。これらの部位が傷んだまま放置されると、雨漏りの発生や構造部分の腐食など建物全体の老朽化を進めてしまう要因となります。そのため、定期的な点検と改修工事は建物を健全に保つための重要なメンテナンスといえます。
外壁や屋根の改修によって得られるメリットは多岐にわたります。防水性能が高まることで雨漏りのリスクを減らし、内部への浸水や腐朽を防げます。
劣化で色あせた外観を塗装し直すことで見た目が美しくよみがえり、建物全体の価値維持にもつながります。
耐震改修は、建物が地震の揺れに耐えられるよう構造上の弱点を見直し、必要な補強を行う工事です。
日本では地震活動が活発なため、特に築年数が経過した建物では、建築当時の基準と現在の耐震基準に差があることが多く、そのままでは十分な強度が確保できていない場合があります。
この改修では、耐力壁の追加や金物の補強、基礎の補強工事など、多角的なアプローチで揺れへの抵抗力を高めていきます。建物内部の状態を調査した上で弱点を把握し、構造バランスを整えるように施工されるため、建物の総合的な安全性が大幅に向上します。
長く安心して暮らすための将来への備えとして、多くの建物で検討されている改修の1つです。
断熱改修は、外気の暑さや寒さが室内へ伝わりにくくなるよう、建物の温熱環境を整える工事です。
住宅の快適性を左右する重要な要素であり、断熱材の追加や入れ替え、窓サッシの高性能化など、さまざまな方法で室内の温度変化を抑える仕組みを強化していきます。
例えば、外壁や天井、床下に断熱材を補充することで、外気の影響が大幅に緩和されます。また、単板ガラスの窓を複層ガラスや樹脂サッシに変更すれば、熱の出入りが少なくなり、夏の蒸し暑さ・冬の底冷えを抑えられます。
結果として、冷暖房に頼りすぎずに快適な室温が保てるようになり、エネルギー消費の削減=光熱費の抑制にも直結します。
給湯器やエアコン、換気設備、給排水管などの設備類は、建物の中でも特に使用頻度が高く、劣化が進みやすい部分です。これらが古くなると、性能の低下や不具合だけでなく、突然の故障や漏水といった重大なトラブルにつながることもあります。
設備や配管の改修では、こうしたリスクを未然に防ぐため、老朽化した機器や配管を新しいものに交換し、建物の機能性と安全性を高めます。
近年は省エネ性能の高い設備が増えており、給湯器の高効率化や節水型トイレやエアコンの最新モデルへの交換によって、日々の光熱費を抑えられるメリットも大きくなっています。また、給排水管を新しくすることで、漏水事故の予防や水質の改善にもつながり、長期的な安心感が得られます。
内装や間取りの改修は、暮らしの質を大きく左右する住空間そのものを整える工事です。
壁紙や床材の張り替えといった仕上げの刷新はもちろん、使いにくい動線の改善、収納の拡充、部屋の仕切り変更など、生活スタイルに合わせて空間を再構築できます。家族構成の変化や在宅ワークの増加に応じて、和室を洋室に変更したり、個室を増やすために間仕切りを設置したりするなど、ニーズに合った柔軟な工事が可能です。
内装や間取りの改修は、日常生活に最も直接的な変化をもたらすため、満足度の高い改修の1つといえます。
床材の交換や玄関アプローチの整備、フェンスやカーポートの設置といった、建物周辺部や足元に関わる改修工事も、建物の使い勝手と安全性を支える重要な作業です。
床の沈みやきしみは構造の劣化につながることがあるため、早期に補強や張り替えを実施することで長期的なトラブルを防げます。
外構の改修では、手すりの追加や段差の解消など、バリアフリーの観点から住まいを整える工事が選ばれることも多く、家族全員が安全に過ごせる環境づくりに寄与します。また、アプローチを整えることで外観の印象が良くなり、防犯性の向上にもつながります。
改修工事が必要になるタイミングは、次のとおりです。
外壁や屋根は外気の影響を最も受けるため、劣化が早く現れます。
ひび割れや塗装の剥がれ、色あせ、コケやカビの繁殖、屋根材の欠けなどが見られる場合、内部に雨水が侵入する前に改修が必要です。
放置すると雨漏りや構造材の腐食につながり、後の工事費用が大きく膨らむリスクもあります。
キッチンや浴室、トイレなどの水回りは、経年劣化が最も早く進む場所です。
水漏れや排水の詰まり、給湯器の不調、赤サビが混じる水などの症状が出てきた場合、設備更新や配管の改修タイミングといえるでしょう。
早期に対応することで、漏水事故やカビ・腐朽の発生を防ぎ、大規模な修繕を回避できます。
「夏は暑い・冬は寒い」「結露が増えた」「湿気がこもる」などは、断熱や気密性能の低下を示すサインです。
これらを放置すると光熱費の増加だけでなく、カビ発生や建材の劣化にもつながります。
断熱材の入れ替えや窓の高性能化は、住環境の快適性を根本から改善する効果が期待できます。
建物には、築年数に応じておおよその改修タイミングが存在します。
築10〜15年ほど経過すると、外壁や屋根の塗装が劣化し始め、給湯器などの設備も寿命を迎える時期になるため、外装の手入れや設備更新を検討する時期です。
さらに築20〜30年がたつと、目に見えにくい給排水管の劣化が進んだり、耐震性能が現行基準に満たなくなったりする可能性が高まり、配管交換や耐震補強、断熱性能の見直しといった、より本格的な改修が必要です。
そして築30年を過ぎる頃には、建物全体で老朽化が広範囲に進むケースが多く、部分的な補修では対応しきれない状態になることもあるため、建物全体を見直す大規模改修を検討する時期に入ります。外観に大きな異常が見えない場合でも、内部では劣化が進行していることが珍しくないため、専門家による定期的な点検を受けて、適切な改修タイミングを見極めましょう。
最後に、改修に関するよくある質問とその回答を紹介します。
改修工事の費用は、さまざまな条件が組み合わさって算出されます。
例えば、建物の劣化状況や使う材料の品質、採用する工法、作業に必要な日数や職人の人数など、複数の要素が金額に影響します。外見上は問題が小さく見えても、下地が傷んでいたり配管が腐食していたりすると、追加の施工が必要になり、見積もりが大きく変わる場合もあります。
そのため、1つの見積もりだけで判断するのはリスクが高く、必ず複数の業者に依頼して比較すること(相見積もり)が大切です。
多くの改修工事は、居住したまま進められます。
外壁塗装や内装の一部更新などは、生活スペースを確保しながら順番に施工できるため、普段どおりの生活を続けられるケースが多いです。ただし、浴室やキッチン、トイレといった水回りを扱う工事では、一定期間その設備が使えなくなることがあり、日常生活に不便が生じる場合があります。
工事内容によって生活への影響度は大きく変わるため、あらかじめ施工会社から工事工程や期間の説明を受け、生活に支障が出るタイミングを把握しておくと安心です。
マンションには、戸建てとは異なるルールや制約があります。
専有部分であっても、工事内容によっては管理組合の承認が必要になることがあり、特に配管やサッシ、玄関ドアなど共用部分に関わる工事は、勝手に手を加えられません。
また、マンションには遮音性能の基準や工事可能な時間帯など細かい規定があり、床材の等級や給排水の扱いについても独自のルールが設けられていることが多いです。
これらの決まりを守らずに工事を進めてしまうと、近隣トラブルややり直しの発生につながる可能性があるため、着手前に管理規約を確認し、管理会社や管理組合との事前相談を行う必要があります。