この記事は約19分で読めます。
.png&w=3840&q=75)
監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
この投稿をシェアする
「外壁塗装 一式」の一行で出したら、明細を添えた他社に負けた——。塗装工事の見積書を、仮設・下地処理・塗装・付帯部・諸経費の5ブロックで組む手順を、塗り面積の拾い方、塗料の缶数計算、足場と下地処理の載せ方、架空のサンプル見積書まで、見積を出す側の実務としてお伝えします。
AI搭載
コンクルーAI
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーAIひとつで完結


塗装工事の見積書は、「塗り面積 → 塗料 → 足場・仮設 → 下地処理と付帯部 → 諸経費」の順に、かたまりごとに数量と単価を積み上げてつくります。 「外壁塗装一式 ◯◯円」で出すのをやめて、この5つのブロックに分けて並べる。それだけで、施主に説明できて、現場に入ってから赤字にならない見積書になります。
腕は確かで、紹介の仕事も途切れない。それでも見積になると手が止まる——という塗装店の社長さんは少なくありません。他社は明細をきれいに出してきたのに、うちは「外壁 一式」の一行。それで比べられて負けた、という話も、この業界ではよく聞きます。ただ、負けている理由は金額の安さではないことがほとんどです。金額の根拠を、相手に見える形で並べられていないだけなんですね。
もうひとつ、この記事の立ち位置を先にお伝えしておきます。「塗装 見積」で検索すると、出てくるのはほとんどが施主向けの記事——費用相場、見積書の見方、悪い業者の見分け方——です。この記事は、見積を"出す側"の実務の話です。ですので、㎡単価や塗料単価の「相場」は書きません。地域・下地の状態・仕様で大きく振れる数字を断定しても、社長さんの役には立たないからです。そのかわり、「その金額が何で決まるのか」を、面積の拾いからサンプル見積書まで通しでお伝えします。
拾い漏れをなくす一番の近道は、毎回きまった「かたまり」に分けて組むことです。塗装工事なら、次の5ブロックで考えると抜けが起きにくくなります。

ブロック | 主に入れるもの | 数量のものさし |
|---|---|---|
①仮設 | 足場(架け払い共)、 | 架面積(㎡)・式 |
②下地処理 | 高圧洗浄、ケレン、 | ㎡・m・式 |
③塗装(材+手間) | 下塗り/中塗り/上塗り、 | 塗り面積(㎡)×塗り回数 |
④付帯部・その他 | 軒天、破風・鼻隠し、雨樋、水切り、 | ㎡・m・箇所・式 |
⑤諸経費 | 現場管理費・一般管理費、法定福利費 | 式(率で計上することが多い) |
この5ブロックを自社のひな型にしておくと、現場ごとの違いがブロック単位で見えるようになります。「この現場は下地が痛んでいるから②が膨らむ」「付帯部が多いから④が効く」といった具合ですね。一式でひとまとめにしていると、この感覚が育ちません。逆に言えば、ブロックで組むだけで、自分の見積の"クセ"も見えてきます。
なお、②と④は、塗装工事でとくに拾い漏れが起きやすい場所です。ここは後半でチェックリストにしてお渡しします。
見積の精度は、結局のところ塗り面積で決まります。ここが2割ずれれば、塗料も手間も2割ずれるからです。まずは拾い方の順番を整理しましょう。数量拾い全般の考え方は拾い出し(数量拾い)のやり方もあわせてどうぞ。

塗り面積の基本は、立面図(建物を横から見た図)を使って、東西南北の各面を「幅×高さ」で出し、それを足していくやり方です。図面の縮尺どおりに拾えば、根拠のはっきりした数字になります。屋根も塗るなら、屋根は屋根で勾配を見込んだ面積を別に拾います。
このとき、面ごとの数字を残しておくのがおすすめです。「東面 42㎡、南面 38㎡……合計150㎡」と控えておけば、あとで施主や元請から「この150㎡はどこから出た数字ですか」と聞かれても、その場で答えられます。合計だけをメモして、内訳を捨ててしまう人が意外と多いのですが、根拠を聞かれたときに詰まるのは、たいていここです。
現場を見る前のざっくり見当として、延床面積に一定の係数を掛けて外壁面積を推計するやり方が、業者のあいだで広く使われています。電話で「だいたいいくら?」と聞かれたときには便利です。
ただ、これは公的に決まった計算方法ではありません。建物の形(総二階か、凹凸が多いか)、開口部の多さ、階高によって、実際の面積は上にも下にも振れます。ですので、概算係数で出した面積は「電話口の目安」までにとどめて、契約に使う数量にはしない——これは決めておいたほうがいい線引きです。概算のまま契約して、現場で面積が合わずに自腹、というのがいちばん痛いパターンですから。
ちなみに公共工事の世界では、数量の拾い方に「公共建築数量積算基準」という共通のものさしがあり、どこまでを面積に数え、どこを控除するかが決められています(出典:国土交通省「公共建築数量積算基準」)。町場の一般住宅で同じ厳密さを求められることは多くありませんが、「共通のルールがあるから揉めない」という発想自体は、民間の小工事でも使えます。
拾いで毎回もめるのが、窓やドアといった開口部の扱いです。全部引くのか、小さいものは引かずに拾うのか。実務では会社ごとに考え方が違います。
正解を探すより、自社のルールを決めて、それを見積書に書いてしまうほうが早いです。たとえば「開口部は1か所あたり◯㎡以上のものを控除しています」と1行添える。数字そのものより、ルールが明示されていることが効きます。控除の考え方が書いてあれば、施主が他社の見積と比べたときにも「この会社は基準を持って数えている」と伝わりますし、あとから「窓の分は引いてないの?」と言われても、その場で説明できます。
なお、小さい開口部を控除しない拾い方には理由もあります。窓まわりは養生の手間もローラーの取り回しも増えるので、面積を引いてしまうと手間が金額に乗らなくなるからです。もし控除しない方針にするなら、その理由もひとこと添えておくと、より納得されやすくなります。
築年数の経った住宅では、図面が残っていないことも珍しくありません。その場合は現地で実測します。メジャーとレーザー距離計で各面の幅と高さを測り、その場で面ごとにメモを取る。ここでもうひと手間かけて、測った箇所の写真を残しておいてください。
写真があると、あとで数量の根拠を説明できるだけでなく、下地の状態(チョーキング、ひび割れ、シーリングの切れ、鉄部のサビ)の記録にもなります。この写真が、後述する「下地処理をなぜ計上するのか」の説明材料になり、追加が出たときの交渉材料にもなります。実測と写真はセット、と覚えてしまうと楽です。
塗り面積が出たら、次は材料です。塗料代を㎡単価の中にどんぶりで含めてしまうと、グレードを変えたときに原価がいくら動くのかが分からなくなります。ここは缶数で押さえておきましょう。
塗料メーカーは、製品ごとに「標準塗付量(kg/㎡・回)」「希釈率」「荷姿(缶の容量)」をカタログや仕様書で公開しています。たとえば日本ペイントの外壁用塗料「パーフェクトトップSi」であれば、2026年7月時点で、標準塗付量は0.11〜0.17kg/㎡/回、希釈率3〜5%、荷姿は15kgと4kg、と公表されています(出典:日本ペイント「パーフェクトトップSi 製品情報」)。使う製品ごとに数字は違いますので、そのつど採用する製品の仕様書を見てください。
必要量の計算式はシンプルです。
必要な塗料(kg)= 塗り面積(㎡)× 標準塗付量(kg/㎡・回)× 塗り回数
ここに、ロスと開缶残りの見込みを足します。以下は架空の例です。
3.08缶という数字が出たときに、3缶では45kgで足りない、という判断がその場でできる。これが缶数で押さえておく価値です。㎡単価だけで持っていると、この足りない0.2缶が現場で発覚して、材料を買い足しに走ることになります。
ロス率を何%で見るかは、下地の吸い込み具合、外壁の形状、吹き付けかローラーかで変わります。自社の過去の現場を数回ふり返って、「うちは1割」と決めてしまうのが実務的です。
塗装の見積で、施主の安心にいちばん効くのが「下塗り・中塗り・上塗りを分けて書く」ことです。
というのも、施主がいちばん心配しているのは「本当に3回塗ってくれるのか」だからです。外壁塗装は完成後に塗膜の回数を確認できません。だから明細が「外壁塗装 150㎡ 一式」だと、不安が残ったままになる。ここを、
と3行に割って、使用する塗料のメーカー名・製品名まで書く。それだけで「この会社は工程を隠していない」と伝わります。しかも自社にとっても、工程ごとの手間が金額に乗るので、値引きを求められたときにどこを削る/削らないの話がしやすくなります。塗料そのものの選び方は塗料の種類とは?成分別の特徴や用途、塗装する素材別の選び方を解説もあわせてどうぞ。
「シリコンとフッ素、どちらにしますか」という提案をするなら、見積の側も原価差を反映させてください。塗料のグレードが上がれば、材料費が上がるだけでなく、塗りやすさ・乾燥時間・希釈の管理も変わります。上位グレードを㎡単価に少し足しただけで出すと、材料費の増分を自社で飲むことになります。
提案のしかたとしては、金額差だけでなく「持ち」の話とセットにするのがおすすめです。ただしここでも、耐用年数を「◯年もちます」と言い切らないほうが安全です。メーカーが公表している期待耐用年数や試験結果はあくまで一定条件のもとの数字で、実際の持ちは立地・日当たり・下地の状態で変わるからです。「メーカーの資料ではこう示されています」と出典を添えて渡すのが、いちばん誠実で、あとで揉めません。
足場を外注しているなら、足場屋さんへの支払いがそのまま自社の原価です。ここは値引きの余地がありません。にもかかわらず、「足場代はサービスします」という値引きが業界で使われがちなのは、金額のインパクトが大きくて分かりやすいからでしょう。
ただ、これをやると粗利を直撃します。仮に足場が20万円で、それを丸ごと引けば、その20万円は他のどこからも回収できません。値引きに応じる必要がある場面はもちろんありますが、そのときは「足場代をサービス」という削り方ではなく、値引き額として別行に立てるほうが健全です。書き方は出精値引きとは?見積書での書き方からメリット・注意点まで徹底解説を参考にしてください。値引きが利益にどう効くかを構造で押さえたい方は塗装業の原価管理|塗料・足場・人件費で適正粗利を設計するもどうぞ。
もうひとつ、足場の数量について。架面積(足場の面積)の出し方は、足場屋さんごとに流儀が違うことがあります。ですので、見積をもらうときに「何㎡で、どういう拾い方か」を明細でもらっておいてください。自社の見積書にも「仮設足場(架け払い共) ◯◯㎡」と数量を書いて出す。ここを「一式」で流してしまうと、施主から質問されたときに答えられませんし、次の現場で自社の相場感も育ちません。
塗装で赤字になる現場は、塗料代を間違えたわけではないことがほとんどです。原因の多くは、下地処理と付帯部の載せ忘れにあります。チェックリストとしてお使いください。
費目 | 拾い方の目安 | 見落としが起きやすい点 |
|---|---|---|
高圧洗浄 | 塗り面積(㎡) | 水道の使用可否、近隣への飛散養生 |
ケレン・素地調整 | ㎡・m | 鉄部(雨戸・手すり・階段)の下地づくり |
養生 | 式 | 窓・床・植栽・車・エアコン室外機 |
ひび割れ補修 | m | Uカット・シール充填の有無で手間が大きく変わる |
シーリング打替え | m | サッシまわり・目地。 |
下地調整(フィラー等) | ㎡ | 既存の劣化が激しいと工程が1つ増える |
軒天 | ㎡ | 素材によって使う塗料が変わる(透湿性の要否) |
破風・鼻隠し | m | 木部か窯業系かで下地処理が違う |
雨樋・竪樋 | m | 長さで拾う。塗るか交換かの判断も |
水切り・庇・シャッターボックス | 箇所・式 | 小さいのに数が多く、まとめて忘れやすい |
廃材処分・清掃 | 式 | 撤去したシーリング材、養生材、洗浄後の泥 |
とくに鉄部のケレンは、手間の割に見積に乗りにくい費目です。サビを落とさずに塗れば早く仕上がりますが、数年で浮いてきて、結局こちらの評判が落ちます。ケレンの必要性と種類はケレンとは?必要な理由や種類、実施される素材、作業工程を徹底解説で解説しています。
付帯部については、「今回は塗らない」と決めた部分こそ、見積書に書いておいてください。雨戸やシャッターを塗らないなら「雨戸・シャッター塗装は別途」と明記する。書かずに省くと、施主は「全部きれいになる」と思い込みます。塗らないものを書くのは、手抜きの告白ではなく、範囲の確認です。
現場を回すためのお金——現場管理費と一般管理費——は、工事の直接費とは別に諸経費として計上します。何を諸経費に入れ、何を直接費に入れるかは会社ごとの整理でかまいませんが、毎回同じルールで組むことが大事です。中身の考え方は現場管理費とは?平均何パーセント?一般管理費との違いも詳しく解説にまとめています。
もうひとつ、下請として元請へ見積を出す場合に押さえておきたいのが法定福利費です。国土交通省は、下請企業が元請企業に出す見積書のなかで法定福利費を内訳として明示する「標準見積書」の活用を求めており、その基本的な算出方法を次のように示しています(出典:国土交通省「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」)。
法定福利費 = 労務費総額 × 法定保険料率
内訳明示の対象となるのは、原則として健康保険料(介護保険料を含む)、厚生年金保険料(児童手当拠出金を含む)、雇用保険料のうち、現場労働者にかかる事業主(会社)負担分とされています。同じ資料では、一人親方など健康保険・厚生年金保険の適用除外となる作業員の分については、内訳明示する法定福利費から除く必要がある、とも示されています。自社の体制がどう当てはまるかは、加入状況によって変わりますので、実際に見積へ載せるときは上記の資料と、加入している保険の料率を確認してください。
なお、法定福利費を内訳明示するときは、そのぶんを経費の中から抜いて別立てにします。経費に含めたまま別欄でも計上すると、二重に乗ってしまうからです。
ここまでの内容を、実際の見積書の形にするとどうなるか。木造2階建て住宅の外壁塗装を想定した、架空のサンプルをまるごとお見せします。数量・単価はすべて説明のための架空の数字で、実際の相場とは関係ありません。地域・下地の状態・仕様で大きく変わります。

ブロック | 名称 | 数量 | 単位 | 単価(架空) | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
①仮設 | 仮設足場(架け払い共) | 220 | ㎡ | 900 | 198,000 |
①仮設 | 飛散防止ネット | 220 | ㎡ | 200 | 44,000 |
②下地処理 | 高圧洗浄 | 150 | ㎡ | 250 | 37,500 |
②下地処理 | 養生(開口部・床・植栽) | 1 | 式 | 25,000 | 25,000 |
②下地処理 | ケレン・清掃 | 150 | ㎡ | 150 | 22,500 |
②下地処理 | ひび割れ補修(Uカット・シール充填) | 20 | m | 1,200 | 24,000 |
②下地処理 | シーリング打替え(サッシまわり) | 90 | m | 1,000 | 90,000 |
③塗装 | 外壁 下塗り(シーラー) | 150 | ㎡ | 800 | 120,000 |
③塗装 | 外壁 中塗り(◯◯社 ◯◯Si) | 150 | ㎡ | 1,100 | 165,000 |
③塗装 | 外壁 上塗り(◯◯社 ◯◯Si) | 150 | ㎡ | 1,100 | 165,000 |
④付帯部 | 軒天 塗装 | 30 | ㎡ | 1,300 | 39,000 |
④付帯部 | 破風・鼻隠し 塗装 | 42 | m | 900 | 37,800 |
④付帯部 | 雨樋・竪樋 塗装 | 55 | m | 800 | 44,000 |
④付帯部 | 水切り・庇 塗装 | 1 | 式 | 18,000 | 18,000 |
④その他 | 廃材処分・現場清掃 | 1 | 式 | 20,000 | 20,000 |
— | 小計 | 1,049,800 | |||
⑤諸経費 | 現場管理費・一般管理費(小計の10%) | 1 | 式 | 104,980 | 104,980 |
— | 税抜合計 | 1,154,780 | |||
— | 消費税(10%) | 115,478 | |||
— | 税込合計 | 1,270,258 |
数字を追っておきます。①〜④の明細をすべて足すと小計は1,049,800円。諸経費をその10%とすると104,980円で、足して税抜合計が1,154,780円。消費税10%は115,478円ですから、税込合計は1,270,258円になります。
この形の何がいいかというと、金額の内訳が「どこにいくらかかっているか」で読めることです。足場と仮設で242,000円、下地処理で199,000円、塗装本体で450,000円、付帯部で138,800円。施主から「もう少し安くならないか」と言われたときも、「足場は外注の実費なので動かせません。付帯部の一部を今回見送るなら、この行を落とせます」と、削る場所を具体的に相談できます。一式の見積では、この会話ができません。
見積書全体の体裁(表紙・宛名・有効期限・支払条件の並べ方)は見積書の書き方|建設業の記入例を1枚図解(インボイス対応)を、そのまま使えるひな型が欲しい方は建設業の見積書テンプレート【無料・登録不要】原価・粗利まで見えるエクセルをどうぞ。
塗装は、足場を組んで近くで見てはじめて分かることが多い工種です。だからこそ、見積書に工事条件と除外事項の欄をつくって、先に言っておく。これが揉めない一番の方法です。書き方の例を挙げます(いずれも文言の一例です。自社の実情にあわせて調整してください)。
こうした一文は、施主を突き放すためのものではありません。「想定外が出たら、勝手に進めずに一度ご相談します」という約束を先にしておく、という意味です。この約束があるほうが、かえって信頼されますし、追加が出たときの話もスムーズになります。
最後に、知っておくと立場が強くなる法律の話をひとつ。建設工事の見積については、建設業法にルールが置かれています(以下は2026年7月時点の条文にもとづく整理です)。
ひとつめは、見積書の中身についてです。建設業法第20条第1項では、建設業者は請負契約を締結するにあたり、工事の種別ごとの材料費・労務費・適正な施工の確保に不可欠な経費(国土交通省令で定めるもの)その他必要な経費の内訳と、工事の工程ごとの作業とその準備に必要な日数を記載した見積書を作成するよう努めなければならない、とされています。また同条第4項では、注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでに、その見積書を交付しなければならない、とされています(出典:e-Gov法令検索「建設業法」)。ここまで読んできた「ブロックに分けて内訳を出す」というやり方は、じつは法律が求めている方向とぴったり重なっているわけです。
ふたつめは、見積にかける時間です。同条第3項を受けて、建設業法施行令第5条の9が見積期間を次のように定めています(出典:e-Gov法令検索「建設業法施行令」)。
工事1件の予定価格 | 見積期間 |
|---|---|
500万円に満たない工事 | 1日以上 |
500万円以上5,000万円に満たない工事 | 10日以上 |
5,000万円以上の工事 | 15日以上 |
やむを得ない事情があるときは、500万円以上の2区分については5日以内に限り短縮できる、ともされています。元請から「明日までに見積出して」と言われたときに、この規定を知っているかどうかで、交渉の余地がまるで違ってきます。もちろん現実には関係性もありますから、条文を振りかざす場面ばかりではないでしょう。ただ、「本来は期間を設けることになっているんですよ」と一言添えられるだけで、無理な短納期が続く関係は少しずつ変えられます。個別の契約がどの区分に当たるかや解釈の細かい部分は、最新の一次情報と、必要に応じて許可行政庁の窓口や行政書士に確認してください。
書いてはいけない決まりはありません。ただ、「外壁塗装 一式」のように工事全体をまとめてしまうと、施主に説明できず、自社でも原価と突き合わせられなくなります。おすすめは、養生・廃材処分のように数量で表しにくい費目にだけ「式」を使い、面積や長さで拾えるものは数量で書く、という使い分けです。
電話口や初回の概算としては使えます。ただ、延床面積に係数を掛ける方法は公的に決まった計算方法ではなく、建物の形や開口部の多さで実際とずれます。契約に使う数量は、立面図からの拾いか現地実測で出してください。概算で出した金額をそのまま契約に持ち込むと、面積が足りずに自社の持ち出しになります。
「塗り面積 × 標準塗付量(kg/㎡・回)× 塗り回数」で必要量を出し、ロスと開缶残りを1割前後見込んで、缶の容量で割ります。標準塗付量と荷姿はメーカーのカタログ・仕様書に公開されているので、採用する製品のものをそのつど確認してください。㎡単価だけで持っていると、現場で材料が足りなくなったときに気づけません。
法律で決まった書き方があるわけではありませんが、載せることをおすすめします。足場を外注していれば、その支払いはそのまま自社の原価です。「足場代サービス」で丸ごと引くと、その金額はどこからも回収できません。値引きに応じるときも、足場を消すのではなく、値引き額として別行で立てるほうが、あとの数字が読めます。
国税庁が定めている登録番号の記載事項は、請求書等(インボイス)についてのものです。見積書に書く義務があるわけではありません。ただ、取引先が経理処理の準備をしやすくなりますし、法人・元請相手なら書いておいて損はありません。請求書側で何を書くかは、国税庁の「適格請求書等の記載事項」を確認してください(出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」)。
塗装工事の見積書づくりを、もう一度おさらいします。
腕のいい塗装屋さんが相見積で負けるのは、たいてい金額ではなく説明力です。そして説明力は、話し方ではなく、見積書の形でつくれます。まずは次の一件から、「外壁 一式」の一行を、5ブロックの内訳に割ってみてください。書く手間は増えますが、その手間は、施主の納得と、現場に入ってからの安心に変わって返ってきます。