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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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工事は先月終わったのに入金は再来月。二次下請ほど入金が遅いのは会社が軽く見られているからではなく、商流の構造です。施主から二次下請までのお金の流れと、2026年に変わった支払いルール(建設業法と取適法の60日)を1枚の図で整理。自社の取引がどれに当てはまるかもわかります。
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二次下請で入った現場。工事は先月終わったのに、入金は再来月。元請と一次下請の間で何が起きていて、なぜ自分のところだけこんなに待たされるのか——構造として人に説明しようとすると、意外と言葉に詰まってしまう。そんな社長さんは多いはずです。
先にお伝えしておきたいのは、入金が遅いのは自社が軽く見られているからではない、ということです。建設業のお金は、施主から元請、一次下請、二次下請へと階層をたどって流れます。下にいくほど入金が遅くなりやすいのは、この「商流の構造」がそうさせているのであって、あなたの会社の信用の問題ではありません。
この記事は、その商流とお金の流れを1枚の図で見渡せるようにするためのものです。あわせて、2026年に変わった支払いのルール(建設業法と取適法)が自分の取引に関係あるのかも整理します。銀行への説明や元請との条件確認、社内共有にそのまま使えるよう、図は転載自由にしています。
まずは全体像です。建設業には、工事全体の総合的な管理監督を担う元請のもとに、施工管理や労務の提供などを担う一次下請、二次下請、さらにその下の階層の下請企業がつながる「重層下請構造」があります(出典:国土交通省)。
図の左側を見てください。工事(役務)は、施主→元請→一次→二次へと上から下へ流れます。一方で右側、お金は逆向きです。出来高の確認と請求は下から上へ、支払いは上から下へと戻ってきます。そして、この「請求して、確認されて、締めて、払われる」という一連の流れが、各階層で直列につながっているのがポイントです。

階層が一段増えるたびに、契約・出来高確認・請求・締めのサイクルがもう一組はさまります。上流でお金が動いてから、それが二次下請の口座に届くまでには、いくつもの「締めと支払い」を経由することになる。これが、下にいくほど入金が遅くなりやすい仕組みの正体です。誰かが意地悪をしているわけではなく、階層の数だけ時間差が積み重なる、という構造の話なのです。
重層下請構造は、それ自体が悪いものというわけではありません。国土交通省の資料も、工事内容の高度化による専門化・分業化や、多様な工法・機器への対応のため「ある程度は必然的・合理的な側面がある」と整理しています。同時に、役割や責任の所在が不明確になりやすい、下位の下請にしわ寄せが及びやすい、といった弊害も指摘されています(出典:国土交通省)。
実際の重層の度合いは現場によってさまざまです。2016年度(平成28年度)に国土交通省が108の現場を調べた調査では、施工体系図の上で「三次まで」で収まる現場が全体の約86%を占め、最も重層化していた工事で五次まで存在したという結果が出ています(出典:国土交通省)。特定年度のサンプル調査ではありますが、「二〜三次あたりまでが多く、それより深い現場もある」という傾向の目安になります。業界団体である日本建設業連合会も、可能な分野では原則二次以内(設備工事は三次以内)を目指すという自主目標を掲げてきました。これは法律で決まった上限ではなく、あくまで団体の目標です。
誰がどの位置にいて、どんな役割を担っているのかは、施工体制台帳や再下請負通知書といった書類に整理されます。自社が商流のどこに立っているかを客観的に確認したいときは、施工体制台帳の解説記事や再下請負通知書の解説記事もあわせてご覧ください。
もう一つの要因が、締め日と支払サイトの積み重なりです。「月末締めの翌月末払い」といった支払条件は、それぞれの契約で決まります。仮に各階層が同じような条件だったとしても、上の階層でお金が動いてから下の階層が受け取るまでには、締めと支払いのサイクルが階層の数だけ後ろにずれていきます。
なお、支払サイトの平均日数を階層別に示すような公的な統計は、本記事の調査時点では確認できませんでした。そのため具体的な日数は断定しませんが、「下位の階層ほど条件が厳しくなりやすい」傾向自体は、別の切り口の調査からもうかがえます。国土交通省の調査では、賃金引き上げの実施割合や社会保険の加入率、法定福利費を全額受け取れた工事の割合が、いずれも下位の下請ほど低下する傾向が示されています(出典:国土交通省)。これは支払サイトそのものの統計ではありませんが、階層の下にいくほど取引条件が締まりやすいという構造を裏づけるものといえます。
この立替の負担は、会計の上では「工事は進んでいるのにまだ請求・入金になっていない支出」として現れます。この考え方については、未成工事支出金の解説記事もあわせてどうぞ。
「下にいくほど遅くなる」のが構造だとしても、青天井で待たされてよいわけではありません。支払いには法律のルールがあります。ここで大切なのは、建設業では「どの取引か」で当てはまる法律が変わる、という点です。図で位置関係を確かめながら読んでください。

まず押さえておきたいのは、建設工事の請負そのものは、2026年1月から始まった取適法(旧下請法)の対象ではない、ということです。取適法の説明資料には、建設業を営む事業者が請け負う建設工事は取適法の対象とならない、と明記されています。理由は、建設工事の下請負については建設業法の中に取適法と似た規定が置かれており、請負契約の適正化などが別途図られているためです(出典:国土交通省・公正取引委員会)。
その建設業法は、下請代金の支払いについて主に2つのルールを定めています。1つは、元請負人は注文者から出来形部分や完成部分の支払いを受けたとき、その支払いを受けた日から1か月以内で、かつできる限り短い期間内に下請代金を支払わなければならない、というものです(建設業法24条の3)。もう1つは、特定建設業者が注文者となる下請契約では、下請負人から工事目的物の引渡しの申出があった日から起算して50日以内に支払期日を定めなければならない、というものです(建設業法24条の6)。この2つのうち早く来るほうが期日になります(出典:国土交通省)。
ニュースで話題になった「支払いは60日以内」「手形はもう使えない」というのは、この取適法の話です。発注した物品などを受け取った日から起算して60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定めること、手形払いを実質的に禁止すること、などが柱で、2026年1月1日以降に発注する対象取引から適用されます(出典:公正取引委員会・中小企業庁)。
ここで混同しないでほしいのは、この「受領から60日」は建設工事の請負に直接当てはまる日数ではない、という点です。建設工事の請負は先ほどの建設業法(1か月以内/50日以内)が担います。ただし、建設会社の取引がすべて取適法と無縁というわけでもありません。建設工事そのものではない委託——たとえば資材・部材の製造委託、機械の修理委託、設計図面やCAD・BIMデータの作成委託、資材の運送委託などは、会社の規模の基準を満たせば取適法の対象になり得ます(出典:国土交通省・公正取引委員会)。「工事を請け負う」なら建設業法、「モノづくりや運送・図面作成などを委託する」なら取適法の世界に入り得る、というのがおおまかな分かれ道です。制度のより詳しい当てはめは、姉妹記事の「支払サイト60日・手形廃止」で扱っています。
ここまでを踏まえて、自社の入金の条件を「何で決まっているのか」で3つに切り分けてみてください。ごちゃ混ぜのまま元請と話すと、かみ合わなくなりがちです。
自社の契約条件を確認するときは、締め日・支払日・支払方法・出来高査定のタイミングの4点を、口約束ではなく契約書の記載で押さえておくのがおすすめです。契約書の見方そのものに不安があれば、工事請負契約書の解説記事も参考になります。一人親方として請求する立場の方は、一人親方の請求書の書き方もあわせてどうぞ。
元請との支払条件について困ったときの相談先もあります。元請・下請間の建設工事の請負契約をめぐるトラブルには、国土交通省の要請で設置された「建設業取引適正化センター」(運営:公益財団法人建設業適正取引推進機構)が相談窓口として対応しています(出典:国土交通省)。また、下請取引全般の相談窓口だった「下請かけこみ寺」は、2026年1月から「取引かけこみ寺」に名称が変わりました(相談対応の中身はこれまでと同じです)。連絡先は各運営元の最新の案内をご確認ください。
本記事の2枚の図は、出典として「コンクルーBase」の名称と本記事へのリンクを明記いただければ、社内資料・ブログ・SNSなどへの転載・引用は自由です。銀行への資金繰りの説明、元請との条件のすり合わせ、社内での共有など、そのままお使いください。トリミングや必要な範囲での改変、商用利用も問題ありません。画像への直リンクではなく、本記事のURLをあわせて示していただけると助かります。
最後に一点だけ。図はあくまで構造を理解するためのものです。法律の適用(とくに取適法が自社の取引に当てはまるか)や具体的な日数は、取引の種類や会社の規模で変わります。個別の判断が必要なときは、上でご案内した相談窓口や、契約書の内容にそって確認してください。仕組みが分かれば、「なぜ待たされるのか」を人に説明でき、元請との会話も一歩進めやすくなるはずです。