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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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職人は増えないのに、工事の金額は上がり続けている——建設業でいま起きていることを、就業者数・年齢構成・公共工事設計労務単価・建設投資額・許可業者数の推移で確認します。数字はすべて官公庁の公表資料から。銀行への説明や単価交渉の根拠にそのまま使える形にまとめました。
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建設業でいま起きているのは、「働く人は減ったまま、扱う金額と単価だけが上がっている」というズレです。 就業者数は2010年の504万人から2025年は478万人へ。いっぽう建設投資額は同じ期間に42兆円から75兆円台へ、公共工事設計労務単価は13,072円から25,834円へ上がりました。「人が採れない」「単価は上がっているらしいのにうちは変わらない」という現場の実感は、数字で見ても裏付けのある感覚です。
このページでは、その3つの動き——人手不足・労務単価・市場規模——を、官公庁が公表している数字だけで並べました。銀行への説明資料や、元請との単価交渉、息子さんへの事業承継の話し合いで「業界全体はこうなっています」と示したいときに、そのまま使える形にしてあります。グラフは出典を書いていただければ自由に転載していただけます。条件は最後にまとめました。
先に3つだけお断りしておきます。数字はすべて官公庁の公表資料から取り、民間の調査会社の数字は使っていません(転載時に出典の条件が絡まないようにするためです)。公表資料のグラフに数値のラベルが無い年は、点を打たずに空けてあります。推測で点を作ると、引用された先で誤った数字がひとり歩きするからです。そして年表記は元資料の表記に合わせています。建設業の統計は、年・年度・「単価の適用開始月」と数え方が資料ごとに違うためです。
まずこの1枚が、いまの建設業のいちばん大きな絵です。建設業で働く人の数と、業界全体が扱う工事金額を重ねています。

建設業就業者数は、1997年の685万人がピークでした。そこから減り続けて2010年に504万人。直近は2022年479万人、2024年477万人、2025年478万人と、480万人前後で横ばいの水準です(出典:国土交通省「参考資料集」〔令和8年4月3日〕。原データは総務省「労働力調査」 国土交通省 )。
いっぽう建設投資額(名目値)は逆の動きをしています。1992年度の約84兆円をピークにいったん2010年度の42兆円まで縮み、そこから回復しました。2021年度65兆1,659億円、2022年度67兆8,478億円、2023年度71兆4,700億円(見込み)、2024年度73兆2,100億円(見込み)、2025年度は75兆5,700億円の見通しです(出典:国土交通省「令和7年度建設投資見通し」 国土交通省 )。2010年度と比べると、およそ1.8倍の金額になっています。
つまり、担い手の数はほぼ変わらないまま、同じ人数で回す工事の金額だけが1.8倍になったということです。1人あたりが抱える工事量が増えれば、現場は当然きつくなります。「忙しいのに人が採れない」は、根性や採用の巧拙の話である前に、この2本の線の開きが生んでいる構造だと考えると腹に落ちやすいはずです。
なお2015年度分から建築補修(改装・改修)投資額が新たに計上されているため、それ以前と単純には接続できない点は元資料にも注記があります。長期で比較するときは、この断りも添えておくと安全です。業界の構造そのものを図で説明したいときは、建設業の下請構造を図解|お金の流れ・高齢化まで9枚に単体で使える図をまとめてあります。
人手不足を語るときは、頭数より年齢構成を見たほうが実態に近づきます。

建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は、2022年の35.9%から2025年は36.6%へ。同じ年の全産業は32.8%ですから、建設業のほうが高い水準です。反対に29歳以下の割合は2025年で11.9%。全産業の17.0%を下回っています(出典:国土交通省「参考資料集」〔令和8年4月3日〕。原データは総務省「労働力調査」 国土交通省 )。
ここで大事なのは、建設業の人手不足は「辞めた人が多い」より「入ってくる人が少ない」に寄っているという点です。3人に1人以上が55歳以上で、10人に1人強しか20代以下がいない。この構成のまま10年が過ぎれば、いまの55歳以上がそのまま引退年齢に入ります。若い人が入ってこないぶんだけ、頭数は自然に減っていく計算になります。業界全体の課題整理は建設業の課題とは?近年の状況・動向や解決法、2030年問題を解説にまとめてあります。
なおこの2つの比率は、元資料のグラフに毎年の数値ラベルが無いため、読み取れた2022年と2025年の2時点だけを載せています。中間年は推定していません。
3つめが単価です。公共工事設計労務単価は、国や自治体が公共工事の予定価格を積算するときに使う、職種ごとの1日あたり単価(8時間あたり・全国全職種の加重平均)です。

1997年度は19,121円でピーク。そこから下がり続け、2012年度の13,072円が底でした。2013年度に15,175円へ跳ね上がっているのは、この年に算出手法が大きく変わり、法定福利費相当額の反映などが始まったためです。以降は2015年16,678円、2017年18,078円、2020年20,214円、2022年21,084円、2023年22,227円、2024年23,600円、2025年24,852円と上がり、2026年3月から適用される最新の単価は25,834円。初めて25,000円を超え、14年連続の引き上げとなりました(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」〔令和8年2月17日公表〕 国土交通省 )。底だった2012年度と比べるとおよそ2倍で、同じ資料には単純平均ベースで平成24年比+94.1%と示されています。
ただし注意が2つあります。ひとつは、2013年に算出手法が変わっているので、それ以前と以後を単純に「◯%上がった」とは比べられないこと。グラフでも、この年に段差があるように見えます。
もうひとつは、この単価は「職人さんに支払われる賃金に相当する額」であって、会社が負担する経費を含んでいないことです。国土交通省は同じ公表資料で、公共工事設計労務単価には事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていないこと、したがって下請代金に必要経費分を計上しない、または下請代金から値引くことは不当行為であることを明記しています。ここでいう必要経費とは法定福利費の事業主負担分・労務管理費・安全管理費などで、公共工事の積算上は共通仮設費や現場管理費として別に計上されています。「単価が25,834円だから、下請代金も1人25,834円でいい」という計算は成り立ちません。
職種別・地域ブロック別の金額は公共工事設計労務単価の早見表【2026年度】にまとめてあります。あわせて、標準労務費の考え方は標準労務費で見積もりはどう変わる?施行半年の現在地と小規模建設会社の実務対応で扱っています。
「周りで廃業が増えた気がする」という感覚は、業界全体の数字で見ると少し意外な結果になります。

建設業許可業者数は、1999年度末の600,980業者がピーク。そこから2005年度末542,264、2010年度末498,806、2015年度末467,635と減り続けます。ところがそこで底を打ち、2020年度末473,952、2023年度末479,383、2024年度末483,700、2025年度末483,823と、直近は3年連続で増えています(出典:国土交通省「令和7年度末の建設業許可業者数調査の結果」〔令和8年5月15日公表〕 国土交通省 )。ピーク時と比べれば約2割減ですが、ここ10年は減っていないどころか、わずかに増えているというのが公表数字の姿です。
この記事には倒産件数のグラフがありません。建設業だけを取り出した倒産件数を継続的に公表している官公庁の統計が、今回調べた範囲では見当たらなかったためです。よく引用される倒産件数は民間の信用調査会社が集計したもので、官公庁のページに載っているものも、その集計を取りまとめたものです。数字自体を否定しているわけではなく、このページは「出典を書けば自由に転載していただける」ことを前提にしているので、転載条件が絡む数字は最初から入れない方針にしました。倒産件数が必要な場合は、調査会社の元資料を直接あたり、出典と利用条件を確認したうえで引用してください。
代わりに、上の許可業者数を見ていただくのが実務的です。廃業と新規参入を差し引きした結果として、会社の総数がどう動いているかが見える数字だからです。「業界全体で会社が消えている」という前提で判断する前に、一度この線を確認しておくと話が変わることがあります。
単価が上がっているなら、働く人の手取りや働き方はどうなったのか。建設業と全産業(調査産業計)を並べると見やすくなります。

建設業の月間現金給与総額は、2021年416,094円から2025年462,100円へ。全産業は同じ期間に319,528円から355,919円です(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果速報」〔事業所規模5人以上・就業形態計〕 厚生労働省 )。現金給与総額は、毎月きまって支給する給与に賞与などの特別給与を足したものです。金額の水準は建設業のほうが高いのですが、2021年から2025年の伸び率で見ると建設業が約11.1%、全産業が約11.4%とほぼ横並び。「建設業だけが賃上げで先行している」とは、この数字からは言えません。
労働時間はどうか。建設業の月間総実労働時間は2021年165.4時間から2025年159.7時間へ、月間出勤日数は20.3日から18.7日へ減りました。全産業は同じ期間に136.1時間→135.0時間、17.7日→17.4日です。差は2021年の月29.3時間から2025年は月24.7時間へ縮みましたが、それでもひと月あたり約25時間、日数で1.3日多く働いている計算になります。週休2日の定着が進んだぶん差は縮んだ、けれどまだ開きは残っている——というのが現在地です。
グラフを眺めて終わりでは意味がありません。実際に使う場面を3つ挙げます。
いきなり「うちも上げてほしい」と言うと、値上げのお願いになります。順番を変えて、まず公共工事設計労務単価が14年連続で上がり、2026年3月適用分で25,834円になったという事実を置く。そのうえで、自社の見積の労務費がその水準に対してどうなっているかを示す。主語を「うち」から「業界」に置き換えるだけで、交渉の性格が「お願い」から「相場の確認」に変わります。さらに、単価には事業主が負担する必要経費が含まれていないという国土交通省の説明も押さえておくと、「単価どおりの金額で」と言われたときに、法定福利費や安全管理の経費が別に必要な理由を公表資料の記載を根拠に説明できます。
29歳以下が11.9%しかいない市場で20代の職人だけを狙って求人を出すのは、いちばん競争の激しいところに正面から入っていくということです。年齢構成のグラフを採用会議に持ち込み、「この層は業界全体で奪い合いになる」という前提を共有したうえで、経験者採用・他業種からの転職・定着策にいくら配分するかを決める。求人媒体に出す前にこの1枚で土台をそろえておくと、無駄打ちが減ります。
業界全体が縮小している前提と、会社数は横ばいで金額が伸びている前提とでは、与信の打ち手が変わります。許可業者数が3年連続で増え、投資額も伸びているということは、新しく参入した会社や、急に受注が増えた会社と取引する機会が増えているということでもあります。付き合いの浅い相手との取引が増える局面では、手形や掛けの条件、着手金の設定といった基本の管理が効いてきます。入金と支払いのタイミングのずれは建設業の資金繰りを1枚で図解|入金より支払いが先に来る理由で図にしてあります。
将来の予測は公表資料でも断定されていないため、この記事でも言い切りません。ただ、2025年時点で55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%という年齢構成は事実として確認できます。この構成が急に変わる要因が見当たらなければ、当面は入職より引退が上回りやすい状態が続く、という読み方になります。
自動的には上がりません。この単価は国や自治体が公共工事の予定価格を積算するときに使うもので、民間工事の請負金額を決めるものではないためです。実際、建設業の月間現金給与総額の伸び率は2021年から2025年で約11.1%と、全産業の約11.4%とほぼ同じでした。加えて、この単価には事業主が負担すべき必要経費が含まれていません。国土交通省は、下請代金に必要経費分を計上しない、または下請代金から値引くことは不当行為だと明記しています(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」〔令和8年2月17日公表〕 国土交通省 )。
建設投資額(名目値)で見ると、2025年度は75兆5,700億円の見通しです。2010年度の42兆円を底に回復してきましたが、1992年度の約84兆円のピークには届いていません。年度によって「実績」「見込み」「見通し」と扱いが違うので、資料に引用するときはその区別も一緒に書いておくと親切です。
建設業だけの倒産件数を継続的に公表している官公庁の統計は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。一般に引用されている件数は民間の信用調査会社が集計したもので、官公庁のページに掲載されているものも、その集計を取りまとめたものです。引用する場合は調査会社の元資料にあたり、出典表記の条件を確認したうえでお使いください。
はい。出典として「コンクルーBase」とこのページへのリンクをそえていただければ、社内資料でも営業提案でもブログでも、商用非商用を問わずお使いいただけます。事前の連絡や許諾申請は不要です。
このページのグラフは、下の公表資料をもとにコンクルーBaseが作図したものです。
図の内容 | 出典 | 公表時点 |
|---|---|---|
建設業就業者数、年齢構成 | 国土交通省「参考資料集」。 | 令和8年4月3日 |
建設投資額(名目値) | 国土交通省「令和7年度建設投資見通し」 | 令和7年8月29日 |
建設業許可業者数 | 国土交通省「令和7年度末の建設業許可業者数調査の結果」 | 令和8年5月15日 |
公共工事設計労務単価 | 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」 | 令和8年2月17日 |
月間現金給与総額、 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和7年分結果速報」 | 令和8年2月 |
転載の条件はひとつだけです。図の近く、またはスライドの端に「出典:コンクルーBase」と、このページへのリンクをそえてください。それだけで、ブログ・自社サイト・社内会議や研修の資料・営業提案資料・SNS・セミナー資料など、商用非商用を問わずお使いいただけます。事前の連絡も許諾申請も不要です。トリミングやサイズ変更、必要な1枚だけを抜き出して使うこともご自由に。ただし、グラフの数値や出典クレジットを書き換えての利用はご遠慮ください。数字が変わったものが「コンクルーBase出典」として広まると、引用してくださった方に迷惑がかかるためです。
なお、元になった官公庁の資料そのものを引用される場合は、それぞれの資料の利用ルールに従ってください。中央省庁の公表資料は、出典を明記すれば二次利用できる扱いが一般的とされていますが、資料ごとに個別の記載がある場合はそちらが優先されます。
このページも、各統計の新しい公表があったタイミングで更新していきます。引用いただく際は、上の表にある「公表時点」も一緒に書いていただけると、読み手が最新版を確認しやすくなります。