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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「インボイスの控除がまた変わるらしい」「下請法が取適法になったと聞いた」——断片的な情報のまま現場が始まる社長へ。町場の建設会社と一人親方に実務で効く法改正・制度変更だけを施行日順に並べ、誰に関係して最低限何をすればいいかまで1ページにまとめました。
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町場の建設会社が2026年から2027年にかけて押さえておきたい法改正・制度変更は、大きく分けて「消費税(インボイス)」「取引ルール(取適法・建設業法)」「安全衛生」「保険料と単価の定例改定」の4つです。 それぞれ施行日が違い、関係する会社の条件も違います。全部を一度に理解する必要はありません。自社に関係するものだけを、施行日の順に拾っていけば足ります。
「インボイスの控除がまた変わるらしい」「下請法が名前ごと変わったと聞いた」「熱中症のやつ、うちもやらないとまずいのか」。断片的な情報だけが耳に入ってきて、結局どれが自分の会社に関係するのか分からないまま、また現場が始まる——。そういう社長さんは少なくないと思います。
この記事は、その状態を1ページで終わらせるためのカレンダーです。掲載しているのは、従業員50名以下くらいの町場の建設会社・一人親方に実務で効くものだけに絞っています。大企業向けの開示制度や、上場企業の話は入れていません。
なお、本記事は2026年7月時点で各官公庁が公表している情報をもとに整理しています。制度は今後も変わりますので、実際に社内の運用を変えるときは、そのつどリンク先の一次情報で最新の内容をご確認ください。個別の税務・法務の判断については、顧問税理士や所轄の窓口へご相談ください。
まず全体像です。この表だけブックマークしておいて、時期が来たら該当行を見る、という使い方を想定しています。
掲載の基準:町場の中小建設会社・一人親方の見積、請求、契約、現場、給与のいずれかに実務上の影響があるもの。施行日が一次情報で確認できたものだけを載せています(2026年7月時点)。
時期 | 何が変わる | 関係する会社 | 最低限やること |
|---|---|---|---|
2025年6月1日(施行済) | 職場の熱中症対策が事業者の義務に | 屋外作業のあるすべての会社 | 報告体制と対応手順を紙1枚にして周知する |
2025年12月12日(施行済) | 改正建設業法(第三次・担い手3法) | 元請・下請を問わずすべての建設業者 | 見積書に労務費を内訳明示する形へ移行する |
2026年1月1日(施行済) | 下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」に。 | 資材の製造委託・ | 建設工事の請負以外の外注取引を洗い出す |
2026年2月〜3月 | 公共工事設計労務単価が改定(毎年) | 公共工事を請ける会社、 | 新単価を見積の基礎に反映する |
2026年4月1日 | 雇用保険料率が引き下げ。 | 人を雇っている会社、 | 給与ソフトの料率更新/ |
2026年6月1日 | 金属盗対策法の買受業の届出制が開始 | 解体・撤去で金属くずを売却する会社 | 売却先の届出状況と本人確認手続を確認する |
2026年9月30日 | 消費税の「2割特例」が、 | インボイスを機に課税事業者になった一人親方・小規模事業者 | 翌期の計算方法を税理士と決めておく |
2026年10月1日 | 免税事業者からの仕入れの控除割合が80%→70%に。 | 免税の一人親方に外注している会社 | 会計ソフトの控除割合設定を更新する |
2026年10月(予定) | 社会保険の加入要件から賃金要件 | パート・アルバイトを雇っている会社 | 週20時間以上働く人の加入要否を再確認する |
2026年10月頃 | 地域別最低賃金の改定(毎年) | 人を雇っているすべての会社 | 自県の新しい額と発効日を確認する |
2027年1月1日 | 個人事業者等の業務上災害報告制度が始まる | 一人親方に仕事を出している会社 | 労災発生時の報告ルートを決めておく |
2027年4月1日 | 個人事業者等自身にも安全衛生の義務。 | 一人親方本人、混在作業場所を管理する会社 | 該当する教育の受講計画を立てる |
2027年10月1日 | 社会保険の企業規模要件が51人以上→36人以上に | 従業員36人以上の会社 | 該当年の前に対象者を試算する |
2027年分・2028年分 | 個人事業者向けに | 個人事業者のインボイス発行事業者 | 確定申告時に税理士へ適用可否を確認する |

ここから先は、この表の各行について「誰に関係するのか」「何が変わったのか」「最低限やることは何か」を、順に補足していきます。全部読む必要はありません。表を見て気になった行だけ拾ってください。
この記事でいちばん誤解が多いところなので、先に整理します。
インボイス制度では、インボイス(適格請求書)を出せない相手——免税事業者や、登録していない事業者——から仕入れをしても、原則として仕入税額控除ができないことになっています。ただし、制度開始からしばらくは激変緩和として、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。
この経過措置の割合が、令和8年度(2026年度)の税制改正で見直されました。以前は「2026年10月から3年間は50%」という予定でしたが、適用期限が2年延長されたうえで、割合が段階的に下がる形に変わっています。国税庁が示している現在の内容は次のとおりです(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113)。
期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
2026年10月1日〜2028年9月30日 | 仕入税額相当額の70% |
2028年10月1日〜2030年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
2030年10月1日〜2031年9月30日 | 仕入税額相当額の30% |
2031年10月1日以降 | 控除不可 |
つまり、2026年10月1日からは「50%」ではなく「70%」です。国税庁のリーフレットでも「8割控除は7・5・3割控除に」という見出しで案内されています(出典:国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」)。少し前に書かれた解説記事や、去年配られた資料には「2026年10月から50%」と書かれているものがまだ残っています。社内の資料を更新するときは、この点に注意してください。

影響を受けるのは、免税事業者に外注費を払っている側です。控除できる割合が80%から70%へ10ポイント下がるので、そのぶん納める消費税が増える計算になります。やることは多くありません。会計ソフトを使っているなら、経過措置の控除割合の設定が10月1日以降の取引で切り替わるかを確認してください。手書き・エクセルで処理している場合は、10月をまたぐ請求の扱いを税理士に確認しておくと安全です。
もうひとつ、今回の改正では控除限度額も変わりました。一の免税事業者等からの経過措置の対象となる課税仕入れの合計額が、その年(事業年度)で税込1億円を超える場合、その超えた部分にはこの経過措置が使えません。改正前の10億円から引き下げられ、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるとされています(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113)。
そして、ここが大事なところです。控除割合が下がったことを理由に、免税の一人親方への支払いを一方的に減額しないでください。登録の有無を理由にした一方的な取引価格の引き下げや取引停止のちらつかせは、独占禁止法や取適法の問題になり得るとされています。価格を見直す場面でも、双方が納得して決め直すという手順を踏む。迷ったら公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に確認できます(出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」)。
免税事業者本人の納税額が増えるわけではありません。変わるのは、あくまで発注側が控除できる割合です。ただ、発注側の負担が増える節目には「登録どうする?」という打診が来やすくなるのも事実です。登録するかどうかの判断材料は一人親方が支払う税金とは?所得別のシミュレーションで詳しく解説!にまとめています。
インボイスを機に免税事業者から課税事業者になった人が使えていた「2割特例」(納付税額を売上にかかる消費税額の2割にできる特例)は、令和8年(2026年)9月30日までの日の属する課税期間で終了するとされています。個人事業者は暦年が課税期間なので、2026年分(2027年に申告する分)が最後です。
そのうえで、個人事業者に限って「3割特例」が新設されました。個人事業者であるインボイス発行事業者の令和9年分(2027年分)・令和10年分(2028年分)の消費税申告について、納付税額を課税標準額に対する消費税額の3割にできるという内容で、適用には確定申告書にその旨を付記する必要があるとされています。法人には適用がありません(出典:国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」)。
一人親方の実務としては、「2割が3割になり、2028年分で終わる」というスケジュール感を押さえておけば十分です。自分がどの特例を使えるか、簡易課税に切り替えたほうがいいかは、そのつど税理士に確認してください。確定申告の進め方は一人親方の確定申告の方法と必要書類を徹底解説!不要な場合もある?にまとめています。
2026年1月1日、いわゆる下請法が改正されて名前が変わりました。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は中小受託取引適正化法、通称は「取適法(とりてきほう)」です。用語も変わり、「下請代金」は「製造委託等代金」、「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」になりました(出典:公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」)。
ここが建設業でいちばん誤解されるところです。建設業者が建設工事を他の建設業者に下請けに出す取引は、取適法(旧・下請法)の対象外とされています。建設業法に同趣旨の規定があり、そちらで規律されているためです(出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」)。
つまり、「取適法が変わったから、うちの下請けへの支払い方が変わる」とは限りません。工事の下請取引については、これまでどおり建設業法が基準です。契約書の整え方は工事請負契約書とは?役割や記載項目、印紙、雛形、注意点を徹底解説を参照してください。
では建設会社には無関係かというと、そうでもありません。工事の請負以外の外注、たとえば資材や部材の製造を外に頼んでいる場合の製造委託、図面やCADデータの作成を頼む情報成果物作成委託などは、資本金・従業員数の要件を満たせば取適法の対象になり得ます。今回の改正では、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が「特定運送委託」として対象取引に追加されました。
町場の会社が押さえておくとよい改正点は、主に次の4つです(出典:公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ!」)。
委託事業者には4つの義務(発注内容を書面等で明示する、取引記録を作成し2年間保存する、受領日から60日以内に支払期日を定める、遅延利息を支払う)と、11の禁止事項(受領拒否、支払遅延、減額、返品、買いたたきなど)が課されています。
取適法は、規制される側の法律であると同時に、中小受託事業者が守られるための法律でもあります。自社が資材の製造や運送を受託する立場で一方的な減額や支払い遅延に困っているなら、公正取引委員会・中小企業庁が相談先です。建設工事の請負については、各地の建設業法令遵守推進本部や「駆け込みホットライン」があります。報復措置は取適法でも建設業法でも禁止されている行為です。
2024年(令和6年)6月に公布された「第三次・担い手3法」による建設業法・入契法の改正が、2025年(令和7年)12月12日に全面施行されました(出典:国土交通省「『労務費に関する基準』の運用方針」)。
いちばん大きいのは、労務費まわりのルールです。中央建設業審議会が「労務費に関する基準」を作成・勧告することとされ(建設業法第34条)、この基準が示す「通常必要と認められる労務費(=適正な労務費)」を著しく下回る見積り・契約締結が禁止されました(同法第20条)。違反した建設業者には指導・監督(同法第28条)が、違反した発注者には勧告・公表(同法第20条)が行われることとされています。基準そのものは、2025年12月2日に開かれた中央建設業審議会で作成され、その実施が勧告されました。
このルールは、公共工事か民間工事かを問わず、発注者と元請の間、元請と下請の間、下請どうしの間の、すべての段階の請負契約に及ぶとされています。会社の規模や下請の次数も問いません。つまり、町場の専門工事会社にも普通に関係する話です。
見積の出し方が変わります。受注者は見積り時に、労務費等を内訳明示したうえで、適正な水準で見積り、価格交渉をすることが求められます。見積書を受け取った注文者の側も、その内容を考慮・尊重するよう努めることが必要とされています。
「一式いくら」で出していた見積を、材料費・労務費・法定福利費などに分けた形へ移していく——大枠はこの一手です。国土交通省は「労務費に関する基準」ポータルサイトで、基準値や標準的な見積書のツールを公開しています。詳しい実務対応は標準労務費で見積もりはどう変わる?施行半年の現在地と小規模建設会社の実務対応にまとめていますので、そちらもあわせてどうぞ。
なお、公共工事については、入契法第12条・第13条の規定により、2025年12月12日以降に入札手続を開始する工事から、工事費内訳書に材料費・労務費・法定福利費などの内訳を記載することが必要になっています。公共工事を取る会社は、入札書類の様式を確認しておいてください。
2025年(令和7年)6月1日から、改正労働安全衛生規則が施行され、職場の熱中症対策が事業者の義務になっています(出典:厚生労働省「職場における熱中症対策」)。
対象となる作業の目安として、暑さ指数(WBGT)28以上または気温31以上の作業場で、継続して1時間以上、あるいは1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれる作業、という基準が示されているとされています。夏場の屋外作業はほぼ該当すると考えたほうが現実的です。
求められているのは、大きく次の2つです。
これらを怠った場合、労働安全衛生法に基づく罰則の対象になり得るとされています。ただし、必要なのは高価な設備ではありません。連絡体制と対応手順を紙1枚にまとめて詰所に貼り、朝礼で一言伝える。実務としてはこれが出発点です。具体的な作り方は、別記事「建設現場の熱中症対策義務化|5人の現場が最低限やること」で手順とチェックリストを用意しています(公開後、こちらからリンクします)。
見落とされがちですが、町場の会社にとってはこれが2026年以降の本命かもしれません。
2025年(令和7年)5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が公布され、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を、労働安全衛生法による保護の対象および義務の主体として位置づける改正が段階的に施行されています(出典:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」)。一人親方と一緒に現場を回している会社が多い建設業では、影響が広く出ます。
施行のスケジュールは次のとおりです。
施行日 | 内容 | 誰の義務か |
|---|---|---|
2025年5月14日(施行済) | 注文時の施工方法や工期などへの配慮規定が、 | 注文者 |
2026年4月1日 | 混在作業場所での元方事業者等の措置義務 | 元方事業者・特定元方事業者 |
2027年1月1日 | 個人事業者等に発生した休業4日以上の死傷災害について、 | 報告制度 |
2027年4月1日 | 個人事業者等自身に、 | 個人事業者等本人 |
2027年4月1日 | 「一の場所」で混在作業が行われる場合、 | 作業場所管理事業者 |
2026年4月1日の最低限やることは、たとえば朝礼やKY活動、作業間の連絡調整の対象に、雇用している職人だけでなく現場に入る一人親方も含めることです。これまで「うちの社員じゃないから」と外していた部分を、含める運用に切り替える。書類を増やすというより、いつもやっていることの対象範囲を広げる話です。
2027年4月1日については、一人親方本人にも安全衛生教育の受講などが義務付けられます。協力会社の親方たちに、早めに「こういう話がある」と伝えておくと、直前で慌てずに済みます。
あわせて、同じ2026年4月1日から、高年齢者の労働災害防止に必要な措置の実施が事業者の努力義務になります。2026年2月10日に「高年齢者の労働災害防止のための指針(エイジフレンドリー指針)」が公示されており、安全衛生管理体制の確立、身体機能の低下を補う設備の導入、健康・体力状況の把握といった取組が示されています。建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は36.7%(令和6年)とされており、他人事ではない業種です(出典:国土交通省「改正建設業法『令和7年12月施行分』説明会」資料。総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が作成)。
法改正ではありませんが、毎年決まった時期に数字が動くものがあります。これを取りこぼすと、見積や給与計算がずれます。
国土交通省が毎年公表し、3月から適用される単価です。2026年は2月17日に公表され、3月から適用されています。全国全職種の加重平均値は25,834円、全国全職種単純平均で前年度比4.5%の引き上げとなり、平成25年度の改定以降14年連続の上昇です(出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」)。
やること:新単価を見積の基礎に反映すること。労務費に関する基準の基準値も公共工事設計労務単価を計算の基礎としているため、単価改定はそのまま見積水準に効いてきます。「去年と同じ単価で出す」を続けると、著しく低い労務費の見積りに近づいていきます。
雇用保険料率は毎年度改定されます。2026年(令和8年)度は引き下げで、建設の事業は労働者負担6/1,000、事業主負担10.5/1,000、合計16.5/1,000です(令和7年度は6.5/11/17.5でした)。一般の事業は労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000、合計13.5/1,000です(出典:厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率のご案内」)。
労災保険率については、令和8年度は令和7年度から変更がないとされています(出典:厚生労働省「令和8年度の労災保険率について」)。健康保険料率(協会けんぽ)は都道府県ごとに毎年度見直され、通常3月分(4月納付分)から改定されます。
やること:4月の給与計算前に、給与ソフトの料率を更新すること。それだけです。
地域別最低賃金は毎年見直され、10月ごろに発効します。令和7年度は全国加重平均で1,121円(前年度1,055円)となり、47都道府県で63円〜82円の引き上げがありました。発効日は都道府県ごとに異なります(出典:厚生労働省「地域別最低賃金の改定」)。
令和8年度(2026年度)は、2026年7月28日に中央最低賃金審議会が目安を答申し、全国加重平均1,176円(55円・4.9%の引き上げ)となりました。都道府県ごとの実際の額は8月中に順次決定され、例年どおり10月上旬〜中旬に発効する見込みです。自県の確定額は厚生労働省の発表で確認してください。
やること:自県の新しい額と発効日を確認し、月給の人も時間額に換算して下回っていないかを見ること。手当の一部は最低賃金の算入対象外なので、単純に月給÷所定労働時間では判定できない点に注意してください。
2026年10月には、短時間労働者の社会保険加入要件のうち賃金要件(所定内賃金が月額8.8万円以上)の撤廃が予定されています。そのうえで、企業規模要件が2027年10月から段階的に撤廃されていきます。厚生労働省が示しているスケジュールは次のとおりです(出典:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」)。
時期 | 対象となる勤め先の従業員数 |
|---|---|
2027年9月まで | 51人以上 |
2027年10月〜 | 36人以上 |
2029年10月〜 | 21人以上 |
2032年10月〜 | 11人以上 |
2035年10月〜 | 10人以下も対象(規模要件の撤廃) |
事務のパートさんや、週20時間ほど出てもらっている人がいる会社は、自社が該当年になったときの負担を早めに試算しておくと、あとで慌てません。
ここでは、施行日が確定しているものと、まだ確定していないものを分けて書きます。
制度の細かい動きは毎月のように出ます。まとめて追いたい方は【2026年1月号】小規模建設会社関連ニュース・最新情報をお届け!の月次まとめもご覧ください。
2026年10月1日からは70%とされています。以前は「2026年10月から3年間50%」という予定でしたが、令和8年度の税制改正で適用期限が2年延長され、70%→50%→30%と段階的に下がる形に見直されました(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113)。少し前の解説記事には旧内容が残っていることがあるので、社内資料は最新の一次情報で更新してください。
建設工事の請負を下請けに出す取引は、取適法(旧・下請法)の対象外とされています。建設業法に同趣旨の規定があるためです(出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」)。ただし、資材の製造委託や、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託などは対象になり得ます。工事以外の外注取引がある会社は、一度洗い出しておくことをおすすめします。
混在作業場所での元方事業者等の措置義務(指導や作業間の連絡調整など)の対象が、労働者だけでなく個人事業者等を含む作業従事者に拡大されるとされています(出典:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」)。実務としては、朝礼・KY・作業間調整の対象に、現場に入る一人親方も含める運用へ切り替えるところから始めるのが現実的です。
2025年12月12日に全面施行された改正建設業法により、労務費等を内訳明示した見積書を活用した見積りの実施に努めることが必要とされています。あわせて、通常必要と認められる労務費を著しく下回る見積り・契約締結が禁止されました(出典:国土交通省 労務費に関する基準ポータルサイト)。「一式いくら」から、材料費・労務費・法定福利費などに分けた形へ移していく方向です。
税金(インボイス・消費税)は顧問税理士か所轄の税務署、取引ルール(取適法)は公正取引委員会・中小企業庁、建設業法は各地方整備局の建設業法令遵守推進本部や都道府県の建設業許可担当課、安全衛生は労働基準監督署、社会保険・雇用保険は年金事務所とハローワークが窓口です。この記事は全体像をつかむためのものなので、個別の判断は例外なく専門家・所轄機関にご相談ください。
最後に、このページの使い方を書いておきます。
1. ブックマークして、四半期に一度だけ開く。 全部を覚える必要はありません。「4月になったら保険料率」「10月になったら最低賃金とインボイス」というくらいの粒度で、時期が来たら該当行を見る。それで足ります。
2. 表の行を、自社のカレンダーに転記する。 関係のある行だけを、社内の予定表やタスク管理に移してしまうのがいちばん確実です。帳簿や書類の保存義務とあわせて管理しておくと漏れにくくなります(参考:工事台帳は建設業法で作成義務あり?保存期間や項目、目的を徹底解説)。
3. 数字はそのつど一次情報で確認する。 割合・単価・料率は、この記事の公開後にも変わり得ます。とくに消費税と社会保険は、判断を誤ると実害が出ます。リンク先の官公庁ページを開いてから動いてください。
更新方針:このページは毎年1月と7月に内容を見直し、施行済みの項目の整理と、新たに施行日が確定した項目の追加を行います。制度改正の情報は、確定したものだけを載せ、審議中のものは「検討中」と明記する方針です。
更新履歴
制度は毎年変わりますが、町場の会社が本当に手を動かすべきポイントは、その年に数えるほどしかありません。この1ページで、その数えるほどを取りこぼさないようにしていただければと思います。