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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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決算時に初めて赤字工事へ気づく状態を防ぐには、工事別損益を月ごとに確かめる仕組みが必要です。建設会社が売上・請求進捗、材料費、外注費、自社労務、現場経費、未着請求・未払見込みを揃え、少人数でも月次原価管理を続ける手順を具体的に解説します。
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見積を出したときは利益が残るはずだったのに、決算書を見たら思ったほど残っていない。しかも、どの工事で崩れたのか分からない——。材料屋さんや協力会社からの請求は月をまたぎ、職人さんの出面は現場ごとに散らばります。社長の感覚では「悪くない工事」でも、数字が揃った頃には手を打てないことがありますよね。
建設業の月次原価管理は、毎日すべてを細かく入力する話ではありません。月に一度、進行中の工事を並べ、「今までにいくらかかったか」「完工までにあといくらかかるか」を確認するための仮締めです。この記事では、従業員20人以下ほどの会社でも続けやすい工事別損益の締め方を、集める数字と担当者の動きまで具体的に解説します。
月次原価管理の目的は、決算書を早く作ることではありません。工事が終わる前に採算の崩れを見つけ、材料の買い方、外注の出し方、人工のかけ方、追加工事の確認といった次の手を打つことです。
そのため、工事ごとに次の3列を並べます。
ここで大切なのは、「実績がまだ予算内だから大丈夫」と判断しないことです。工事が半分しか進んでいないのに、実行予算の大半を使っていれば、残りの工程で予算を超えるおそれがあります。反対に、一時的に材料を先行購入しているだけなら、実績が先に膨らんでいても直ちに赤字とはいえません。工程と残工事を一緒に見ることで、数字の意味が分かります。
なお、この記事で扱うのは社内の経営判断に使う速報値です。会計上の月次決算、税務申告、売上や未成工事支出金などの確定処理とは別に考えてください。

最初に作るのは、細かな原価表ではなく工事一覧です。受注した工事を同じ一覧に集め、少なくとも次の項目を持たせます。
工事名は、人によって略し方が変わります。「○○様邸」「○○改修」「駅前の現場」が同じ工事を指していると、請求書や日報を集計するときに別工事として扱われかねません。工事番号を1件に1つ付け、見積、注文、日報、領収書、請求書のすべてに同じ番号を使うのが土台です。工事情報の持ち方は、工事台帳の記事も参考になります。
小さな修理や緊急対応まで1件ずつ管理すると続かない会社もあります。その場合は、たとえば「請負金額10万円以上は個別管理」「10万円未満のサービス工事は月まとめ」のように社内基準を決めます。金額基準は会社ごとで構いません。ただし、忙しい月だけ対象を減らすなど、月ごとに基準を変えると比較できなくなります。
完工した工事も、請求書や外注先の最終精算が揃うまでは一覧から外しません。「現場は終わった」と「原価の確認が終わった」は別です。完工後の請求が多い工事ほど、1〜2か月は確認対象に残しておきましょう。
建設業の工事原価は、完成工事原価報告書では材料費・労務費・外注費・経費の4区分で整理されます(出典:国土交通省「建設業法施行規則別記様式の勘定科目の分類」)。月次の社内管理では、この4区分に売上・請求の進捗と未着請求・未払見込みを加えた6項目を確認すると、請求書の到着を待たずに工事の姿をつかみやすくなります。
最初に、契約金額、承認された追加・変更、今月請求額、累計請求額、未請求額を確認します。口頭で頼まれただけの追加工事は、受注金額に混ぜず「金額確認中」として分けておきます。売上に入る前提で原価だけ使い続けると、未承認の追加工事が赤字の原因になりやすいためです。
ここで見る請求進捗は、「顧客へどこまで請求できているか」という経営管理上の情報です。会計上、いつ売上として計上するかを決める欄ではありません。売上計上の時期や方法は、契約内容や会計方針を踏まえて顧問税理士・会計士へ確認してください。
材料費は、仕入先の請求書だけでなく、納品書、領収書、法人カードの利用明細も見ます。請求書が翌月に届く仕入先でも、納品書があれば「どの工事に何が入ったか」を先に確認できます。
工事番号が分からない領収書や、複数現場分が一緒になった請求は、推測で均等割りしません。「未配賦」という置き場に残し、確認担当と期限を付けます。誤った工事に入れると、良い工事を悪く見せ、悪い工事を良く見せてしまいます。工事原価の内訳と考え方を社内で揃えておくと、担当者による分類のばらつきも減らせます。
外注費は、協力会社から届いた請求額だけでは遅れます。注文額、追加発注額、請求済み額、まだ請求されていない見込み額を並べてください。
たとえば、当初80万円で依頼した仕事に20万円の追加を口頭で頼み、請求書がまだ80万円分しか届いていない場合、実績欄だけを見れば80万円です。しかし、着地見込みは追加分を含む100万円です。追加発注を実行予算と分けて記録すれば、「なぜ増えたか」も後から追えます。
自社の職人さんが、どの工事に何日・何時間入ったかを集計します。日報や出面表には工事番号を付け、少なくとも月末に現場別の人工が分かる状態にします。
社内管理用の労務単価は、全員共通の日当換算、給与と法定福利費などを含む社内単価、職種別単価など、会社に合う方法を選べます。大切なのは、工事や月によって都合よく単価を変えないことです。
以下は考え方を示す架空例です。社内単価を1人工2万5,000円と決め、ある工事に今月12人工入ったなら、月次管理上の自社労務は30万円です。2万5,000円×12人工=30万円となります。この単価は税務上の仕訳を示すものではなく、工事間を同じ物差しで比べるための社内基準です。
駐車場代、運搬費、残材処分費、機械や工具のレンタル料、交通費、現場の水道光熱費などを拾います。材料費や外注費に比べて1件あたりは小さく見えても、工期が延びると積み上がります。
複数現場に共通する車両費や機械費を各工事へ分ける場合は、「稼働日数」「人工」「直接原価」など配賦基準を1つ決めます。ただし、細かな共通費まで無理に割り振ると締め作業が重くなります。まずは特定の現場へ直接ひも付く経費を優先し、本社家賃などの一般管理費とは分けて見ても構いません。
月次締めで最も抜けやすいのが、仕事は終わっているのに請求書がまだ届いていない原価です。現場責任者に「今月までに終わった外注作業」「納品済みの材料」「追加で頼んだ作業」を聞き、金額が分かるものは見込み額、分からないものは「金額確認待ち」として別欄に残します。
見込み額は、利益をよく見せたり悪く見せたりするために調整する数字ではありません。注文書、見積、納品書、現場責任者の確認など、根拠も一緒に残します。翌月に請求書が届いたら見込み額を実額へ置き換え、差が大きければ理由を確認します。
なお、この「未払見込み」は経営判断用の速報です。会計・税務上、未払費用や未成工事支出金などをどう計上するかは別の判断になります。詳しい概念は未成工事支出金の記事も参照し、実際の処理は顧問税理士等へ確認してください。

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このExcelは、工事別損益を月に一度確認するための社内管理用ひな型です。入力例や計算結果は参考であり、個別企業の会計・税務・法務上の判断を保証するものではありません。正式な決算、税務申告、売上・原価の計上、科目区分などは、顧問税理士・会計士等の専門家へご確認ください。利用前にバックアップを取り、自社の契約・工種・運用に合わせて内容を確認してください。
6項目を集めたら、工事ごと、さらに材料・外注・自社労務・現場経費ごとに「実行予算」「今月までの実績」「残り見込み」を並べます。見る順番は次のとおりです。
まず、実績が予算に対してどこまで進んだかを費目別に見ます。材料費だけが先に増えたのか、外注費が追加になったのか、自社労務の人工が膨らんだのかで、確認すべき相手と打ち手が変わります。
予算総額との比較だけでは不十分です。材料費が予算より30万円少なく、労務費が30万円多ければ、合計では差が出ません。それでも段取りや施工方法に問題があった可能性は残ります。費目別に差を見ることで、次の見積や工程へ返せる情報になります。
次に、残工事で必要になる材料、外注、人工、経費を現場責任者と見積もります。精密な積算をやり直す必要はありません。「残っている工程」「発注済みだが未請求のもの」「追加で必要な人工」を順に置くだけでも、実績だけを見るより早く異変に気づけます。
以下はすべて架空の例です。実行予算900万円の工事で、今月までの実績が600万円、残工事の見込みが380万円なら、着地見込みは980万円です。600万円+380万円=980万円なので、実行予算を80万円超える見込みだと分かります。実績600万円だけを見て「まだ300万円残っている」と考えるのではなく、残りに380万円必要だと先に見抜くのが月次原価管理です。
差が出たら、理由を長文で書く必要はありません。「数量増」「材料単価の変更」「追加発注」「段取り変更」「手戻り」「計上遅れ」「確認中」など、事実を1行で残します。
原因が分からないのに「現場の使いすぎ」と断定すると、次の確認が歪みます。分からないものは「確認中」とし、誰がいつ確認するかまで書いてください。翌月に確認結果が出たら、理由と着地見込みを更新します。

月次原価管理が続かない最大の理由は、表の作り方より「いつ、誰が、何を出すか」が決まっていないことです。おすすめは、締め日から逆算して小さな役割分担を固定することです。
たとえば毎月末締め・翌月7日確認なら、次の流れにします。
判定の意味も固定します。緑は「現時点で予算内の着地見込み」、黄は「予算超過のおそれ、または数字に未確認あり」、赤は「予算超過見込みで翌月の対応を決める」です。会社独自の利益率を使っても構いませんが、業界平均をそのまま合格ラインにせず、自社の実行予算と過去実績を基準にします。
数字が揃わない工事を、無理に緑へ確定させないことも大切です。「外注見積の回答待ち・担当○○・10日まで」のように、不明の内容、担当、期限を残します。翌月も同じ不明が残るなら、表ではなく情報の集め方に問題があります。注文時に工事番号を入れる、現場で追加を頼んだ日に共有する、といった前工程を直しましょう。
30分の会議で全工事を細かく説明すると時間が足りません。最初に赤、次に黄だけを見て、緑は大きな変化の有無だけを確認します。5分で終わらない工事は別途担当者を決め、月次会議そのものは短く保つ方が続きます。
赤や黄が付いた工事は、責任追及より先に「まだ変えられるもの」を確認します。月次で早く見つける意味は、翌月の行動を変えられることにあります。
施主からの追加要望、図面変更、現場条件の違いが原因なら、変更内容、金額、承認状況を整理します。未承認の金額を売上に入れたつもりにせず、見積提出、合意、請求の次の動作と担当を決めます。契約や精算について争いがある場合は、当事者だけで判断せず専門家へ相談してください。
これから出す材料や外注の注文、残り工程の人数と日数を見直します。品質や安全に必要な費用を削るのではなく、二重発注、余分な運搬、待ち時間、段取りの重複などを減らせないかを確認します。協力会社へ合意なく負担を押し付けることは、改善ではありません。
工事が利益見込みでも、材料や外注の支払いが先で、請求が後なら資金は減ります。出来高や契約上の請求時期を確認し、請求漏れがないか、入金予定と支払予定に無理がないかを見ます。工事別損益と資金繰りは同じではないため、別々に確認してください。
手戻りが多かった、搬入回数が増えた、処分費を見落としたなど、今回の差異理由を次の見積の数量・単価・注意事項へ1つ返します。全部を一度に直そうとすると続きません。月次で見つけた差を、次の見積テンプレートへ少しずつ反映すれば、工事を重ねるほど実行予算の精度が上がります。
最初から高機能な仕組みを入れなくても、工事一覧と6項目、予算・実績・残り見込みの3列があれば始められます。まずは進行中の工事を3件ほど選び、配布Excelで1回締めてみてください。足りない項目を増やすより、使わない項目を減らし、翌月も同じ日に開ける形を作ることが先です。
一方、見積、実行予算、発注、原価、請求が別ファイルになり、同じ金額を何度も転記していると、月次締めは遅くなります。工事番号が帳票ごとに違う、最新版が分からない、入力担当しか数字を追えない状態になったら、Excelの作り込みではなく情報のつながりを見直す時期です。
見積・実行予算・原価・請求を同じ工事情報で連動させたい場合は、建設業向け業務管理クラウド「コンクルーAI」のような仕組みも選択肢になります。
道具を変える前に確認したいのは、月次締めの担当、締め日、工事番号、確認する6項目が決まっているかです。運用が曖昧なままシステムへ移しても、未着請求や残り見込みを誰が確認するかは決まりません。Excelで型を作り、件数と転記が増えた段階で仕組みを変える方が、自社に必要な機能も見極めやすくなります。
建設業の月次原価管理は、会計・税務上の確定処理を毎月やり直すことではありません。進行中の工事を一覧にし、売上・請求進捗、材料費、外注費、自社労務、現場経費、未着請求・未払見込みの6項目を集める。そこから実行予算、今月までの実績、残り見込みを並べ、差の理由と翌月の対応を残す。これが基本です。
完璧な数字が翌々月に出るより、確認待ちを明記した速報が翌月7日に出る方が、工事中の判断には役立ちます。まずは今動いている工事を3件だけ一覧にし、今月の締め日を決めてみてください。月に一度の仮締めが、「終わってから赤字に気づく」を減らし、次の見積と工事の利益を守ります。