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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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建設業では、工事ごとに多くの原価や工程を管理する必要があるため、「予算通りに利益が出ているのか分からない」と悩むケースも少なくありません。特に近年は、資材価格の高騰や人件費上昇などによって、従来より利益管理が難しくなっています。 現場ごとに管理方法が異なっていたり、情報共有がうまく進まなかったりすると、予算と実績のズレを早期に把握できません。その結果、工期遅延や利益悪化につながるケースもあります。そこで重要になるのが予実管理です。 本記事では、建設業における予実管理の基本から、原価管理との違い、予実管理が重要な理由、具体的な手順、よくある課題、成功させるポイントまで詳しく解説します。
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まず、予実管理について基本的な情報を紹介します。
予実管理とは、あらかじめ設定した予算や計画に対して、実際に発生した費用や進捗(しんちょく)状況を確認し、差異を管理する手法のことです。
企業活動では、計画通りに業務が進んでいるかを把握することが重要です。そのため、予実管理では「どれだけ予算を使ったのか」「計画と実績にどの程度ズレがあるのか」を継続的に確認しながら、状況を分析していきます。
また、単に数字を集計するだけではなく、差異が発生した原因を把握し、その後の改善や判断に活用する点も特徴です。計画と実績を比較しながら管理することで、コストや進捗状況を可視化できます。
建設業では、工事ごとに予算・原価・工程などを管理する必要があるため、予実管理は利益管理や経営管理を行う上で重要な考え方の1つです。
原価管理とは、工事や業務を進める中で発生する費用を把握・管理し、適切な利益を確保するための管理手法です。
そもそも「原価」とは、企業活動の中で商品やサービスを提供するために消費された価値を指します。例えば建設業では、材料費・労務費・外注費・経費などが原価に含まれます。一方で、災害や事故などによる一時的・異常な支出は、通常の原価には含まれません。
原価管理は「実際にどれだけ費用が発生したのか」を管理する考え方であるのに対し、予実管理は「事前に立てた予算と実際の数値に差異が出ていないか」を比較・分析する点が特徴です。
建設業では、原価管理によって工事原価を把握しながら、予実管理によって予算との差異や利益状況を確認する形で、両方を組み合わせて管理を行うケースが一般的です。
建設業で予実管理が重要な理由は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業では、材料費・労務費・外注費・機材費など、さまざまな費用が発生します。さらに、資材価格の高騰や追加工事、設計変更などによって、当初の想定よりコストが増加するケースも少なくありません。
特に建設工事は、工期が長期化しやすく、工事完了まで最終的な利益が見えにくい特徴があります。そのため、工事終了後に「実際は利益がほとんど残っていなかった」と判明するケースもあります。
予実管理を行うことで、予算と実際の支出状況を継続的に比較できるため、コスト超過の兆候を早期に把握できます。例えば、材料費が想定より増加している場合や、外注費が予定より膨らんでいる場合でも、早い段階で状況を把握できれば、工程調整や発注内容の見直しなどの対策を行えます。
このように、予実管理は赤字工事を未然に防ぎ、利益を守るために重要な役割を担っています。
建設業では、工期の遅延がコスト増加や利益悪化につながります。
工事が長引くと、追加の人件費や機材費が発生しやすくなるだけでなく、次の工事スケジュールにも影響を与える可能性があるためです。また、納期遅延によって発注者からの信頼低下につながるケースもあります。建設工事では、人員配置・資材搬入・重機手配など、多くの工程が連動しています。そのため、一部の工程が遅れるだけでも、全体スケジュールへ影響が広がります。
予実管理によって工程の進捗状況や予算消化状況を継続的に確認することで、計画との差異を早期に把握できます。例えば、作業の遅れが発生している場合でも、早めに把握できれば、人員の再配置や工程調整などの対応が可能です。
結果として、工期遅延による追加コストや利益悪化を防げます。
建設工事では、コスト削減や工期短縮を優先しすぎると、施工品質の低下につながるリスクがあります。
例えば、工期に余裕がなくなることで施工手順が乱れたり、確認作業や検査工程が不十分になるケースです。また、過度なコスト削減によって、必要な資材や施工品質に影響が出る可能性もあります。
建設業では、品質不良が発生すると、手戻り工事や補修対応が必要になり、結果的に追加コストや工期延長につながることも少なくありません。
予実管理を行うことで、工程・コスト・進捗状況を把握しながら工事を進められるため、無理のある工事進行を防げます。その結果、品質を維持しながら安定した施工を行えるため、長期的な信頼確保につながります。
近年の建設業界では、資材価格やエネルギー価格の高騰、人件費の上昇、人手不足などによって、利益確保が難しくなっています。
特に、ウッドショックや円安などの影響によって、建材価格が短期間で変動するケースも増えています。また、2024年問題による時間外労働規制の影響により、従来のような長時間労働に依存した工事管理も難しい状況です。このような状況では、経験や勘だけに頼った管理では、利益状況を正確に把握できません。
予実管理を行うことで、工事ごとの利益状況やコスト変動を継続的に確認できるため、利益を圧迫している要因を把握できます。例えば、特定の工程で原価が増加している場合や想定より労務費がかかっている場合でも早い段階で原因を分析し、対策を講じやすくなります。
そのため、安定した利益を確保する上でも、予実管理は重要な取り組みです。
建設業では、工事ごとに利益率や原価構成が異なるため、各現場の状況を正確に把握することが重要です。
しかし、予算と実績を比較せずに管理していると、「どの工事で利益が出ているのか」「どの工程でコストが増えているのか」を把握しにくくなります。
予実管理によって工事ごとの状況を数値で可視化できれば、利益率の改善やコスト削減など、具体的な経営判断を行えます。また、過去の工事データを蓄積することで、次回以降の見積作成や実行予算作成にも活用できます。
例えば、「どの工事で原価が増えやすいのか」を分析することで、今後の受注判断や工事計画の改善につなげやすくなります。
このように、予実管理は現場管理だけでなく、会社全体の経営判断を支える重要な役割も担っています。
予実管理の手順は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
予実管理では、まず工事ごとの実行予算を設定します。
実行予算とは、工事を進める上で必要となる費用を事前に整理した予算のことです。建設業では、材料費・労務費・外注費・経費など、多くの原価が発生するため、工事開始前の段階でできるだけ具体的に予算を設定する必要があります。
また、建設工事は天候や資材価格などの影響を受けやすいため、一定のリスクを考慮しながら予算を組むことも重要です。
工事開始後は、実際に発生した費用や進捗状況を継続的に記録します。
建設業では、日報・請求書・納品書など、さまざまな情報を基に実績を管理します。これらを記録することで、現在どの程度コストが発生しているのかを把握しやすくなります。
また、記録漏れや入力ミスがあると、その後の分析精度にも影響するため、正確にデータを集計することが重要です。
実行予算と実際の支出状況を比較し、計画との差異を確認します。
建設工事では、工事の進捗に応じて原価が変動するため、定期的に予算と実績を照らし合わせながら管理する必要があります。
予算との差異を把握することで、コスト増加や工程の遅れなど、問題の兆候を早期に確認しやすくなります。
予算と実績にズレが発生した場合は、その原因を分析します。
建設業では、追加工事・工程変更・天候不良など、さまざまな要因によって原価や工期が変動します。そのため、「なぜ差異が発生したのか」を整理し、問題点を把握することが重要です。
差異の原因を分析することで、今後の対応や改善策を検討できます。
差異分析の結果を基に、必要な改善策を実施します。
建設工事では、問題が発生した状態を放置すると、追加コストや利益悪化につながる可能性があります。そのため、工事途中の段階で状況を見直し、早めに対応することが重要です。
工程調整や人員配置の見直しなど、状況に応じて適切な対応を行うことで、損失拡大を防げます。
建設業の予実管理でよくある課題は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
建設業では、現場ごとに管理方法や記録タイミングが異なることが多く、実績データにズレが生じやすい傾向があります。
例えば、原価計上のタイミングが統一されていなかったり、記録漏れや入力ミスが発生すると、現在のコスト状況を正確に把握できません。また、データ精度が低い状態では、予算と実績を比較しても正確な分析を行いにくくなり、誤った判断につながる可能性があります。
そのため、現場ごとにバラつきが出ないよう、データを継続的かつ正確に集計できる体制を整えることが重要です。
建設業では、営業・現場・経理・調達など、複数の部門が工事に関わります。そのため、部門ごとに情報管理が分かれやすく、必要な情報をすぐに共有できないケースがあります。
例えば、現場の進捗情報と原価情報が別々に管理されている場合、工事全体の状況を把握するまでに時間がかかります。また、情報共有が遅れることで、予算超過や工程遅延への対応が後手に回るケースもあります。
このように、情報が分散した状態では、予実管理に必要な状況把握が難しくなりやすいため、部門を横断して情報を共有しやすい管理体制が求められます。
予実管理は継続的に運用することが重要ですが、建設業では現場業務が優先されやすく、十分に定着しないケースがあります。
例えば、入力や集計作業だけで終わってしまい、予算と実績の分析や改善活動まで進まないことがあります。また、「なぜ予実管理を行うのか」が現場に共有されていない場合、管理業務そのものが負担になってしまいます。
その結果、予実管理が形だけの運用になり、本来の目的である利益管理や改善活動につながらなくなるケースもあります。
そのため、単なる入力業務として扱うのではなく、利益確保や経営改善につながる取り組みとして、組織全体で継続的に運用していくことが重要です。
予実管理を成功させるポイントは、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業の予実管理では、問題が発生した際に現場で素早く対応できる体制を整えることが重要です。
例えば、原価増加や工程遅延の兆候が見えていても、確認や承認に時間がかかると、対応が遅れやすくなります。特に建設工事は、日々状況が変化するため、判断の遅れが追加コストや利益悪化につながるケースもあります。
そのため、現場担当者が状況を把握しやすい仕組みを整え、必要に応じて早めに工程調整やコスト調整を行える状態にすることが重要です。
また、現場任せにするのではなく、管理部門も含めて継続的に状況確認を行うことで問題への対応力を高められます。
建設業では、工事完了後に利益を確認するだけでは、赤字工事を防げません。
そのため、工事途中の段階から予算消化状況や利益状況を確認し、最終的な着地を予測しながら管理することが重要です。例えば、現在の進捗状況に対して原価が増えすぎている場合は、今後さらに利益が悪化する可能性があります。早い段階で状況を把握できれば、工程調整や原価見直しなどの対応を行えます。
このように、完成後ではなく工事途中から利益状況を確認することで、損失拡大を防ぎやすくなります。
予実管理の精度を高めるためには、過去の工事データを蓄積し、次回以降の工事へ活用することも重要です。
建設業では、工事内容や施工条件によって原価構成が変わるため、過去の実績を参考にすることで、より現実的な予算を立てられます。例えば、特定工法で原価が増えやすい傾向や工程遅延が起きやすい条件などを把握できれば、事前に対策を検討できます。
また、利益が出やすかった工事の進め方や管理方法を分析することで、会社全体の利益管理精度向上にもつなげられます。
予実管理を管理システムで行うメリットは、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業では、工事ごとに予算・原価・工程・発注・請求など、多くの情報を管理する必要があります。
しかし、Excelや紙資料を中心に管理している場合、情報が複数のファイルや担当者に分散しやすく、必要な情報を探すまでに時間がかかるケースがあります。
管理システムを活用すれば、工事に関する情報を一元管理しやすくなり、関係者が同じ情報を確認できます。
また、工事ごとの原価状況や進捗状況もまとめて確認しやすくなるため、状況把握や管理業務の効率化にもつながります。
建設業では、工事の進捗や原価状況が日々変化するため、できるだけ早く現場状況を把握することが重要です。
しかし、紙の日報や事務所での後入力を中心に運用している場合、情報共有までに時間がかかりやすく、問題発見が遅れるケースがあります。管理システムを導入し、スマートフォンやタブレットから現場情報を入力できる環境を整えれば、現場状況をリアルタイムに近い形で確認できます。
例えば、工程遅延や原価増加の兆候を早い段階で把握できれば、工事途中でも対応が可能です。その結果、利益悪化や工期遅延のリスクを抑えられます。
予実管理では、原価や進捗データを継続的に集計・確認する必要があります。
しかし、手作業で管理している場合、入力作業や集計作業の負担が大きくなりやすく、管理担当者の業務負荷が増えます。また、工事件数が増えるほど、転記ミスや計算ミスも発生しやすい点もデメリットです。
管理システムを活用すれば、データ入力や集計を効率化しやすくなり、手作業による負担を減らせます。さらに、入力ルールを統一しやすくなるため、データ精度の安定化にもつながります。
建設業では、単に予算と実績を確認するだけでなく、最終的にどれくらい利益が残るのかを把握することも重要です。
しかし、Excel中心の管理では、工事ごとの原価推移や利益状況を分析するまでに時間がかかるケースがあります。管理システムを活用すれば、予算と実績の差異を可視化できるため利益状況や原価推移も分析しやすいです。
また、過去の工事データを蓄積することで、今後の予算作成や利益予測にも活用しやすくなります。近年では、AI(人工知能)を活用して原価変動や利益状況を分析する取り組みも進んでおり、今後はさらに予実管理の高度化が進むと考えられています。