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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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材料をケチれば仕上がりが落ちて信用を失い、外注さんの単価を叩けば次から受けてもらえない。どこなら削ってよくて、どこを削ってはいけないのか。原価率を下げる7つの方法を材料費・外注費・労務費の費目別に整理し、着手する順番までまとめました。
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見積の金額は去年とそう変わらないのに、材料はじわじわ値上がりし、応援に来てもらう職人さんの日当も上がっている。忙しくしているはずなのに、決算を見ると利益が思ったより残っていない——そんな感覚を抱えている社長さんは、少なくないのではないでしょうか。
「原価率を下げろ」とはよく言われますが、材料をケチれば仕上がりが落ちて信用を失いますし、外注さんの単価を無理に叩けば、次から仕事を受けてもらえなくなるかもしれません。どこなら削ってよくて、どこを削ってはいけないのか。その線引きと、手を付ける順番が分かれば、話は変わってきます。
この記事では、原価率を下げる7つの方法を、材料費・外注費・労務費という費目別に整理し、削っていいものと悪いものの境界線、そして着手の順番までまとめました。
先に結論からお伝えします。原価率を下げる方法は、大きく7つあります。土台になる「見える化」を起点に、材料費・外注費・労務費のそれぞれで2つずつ、具体的な打ち手があります。
費目 | 方法 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
土台 | ①工事別に原価と粗利を見える化する | すべての打ち手の前提 |
材料費 | ②仕入れの「価格」を見直す | 相見積・支払条件・発注ロット |
材料費 | ③「量」のムダを削る | 拾いの精度とロス管理 |
外注費 | ④作業範囲と条件を書面で明確にする | 手戻り・追加費用の防止 |
外注費 | ⑤内製と外注の使い分けを決める | 稼働のミスマッチ解消 |
労務費 | ⑥手待ちをなくす | 段取りの前倒し |
労務費 | ⑦手戻り(やり直し)を減らす | 施工前の合意と記録 |

ここで、ひとつ整理しておきたいことがあります。原価率(原価÷売上)を下げるには、実は2つの方向があります。ひとつは見積の金額そのものを上げる「値決め」の話、もうひとつは、かかる原価そのものを減らす「原価」の話です。値決めについては別の機会に譲るとして、この記事は後者、つまり「原価そのものを減らす」ほうに絞って書いています。原価率や原価管理そのものの基礎知識は、建設業の原価管理とはで詳しく整理しているので、この記事では総論には触れず、「具体的に何をするか」の打ち手だけに絞ります。
そして、7つの方法に入る前に、大原則をひとつ。原価率は「工事ごとに見る」のでなければ、削りようがありません。会社全体の数字だけを眺めていても、どの現場の、どの費目が悪さをしているのかは見えてこないからです。まずは①の「見える化」から見ていきましょう。
会社全体の原価率が仮に良い数字だったとしても、それは「黒字の現場が、赤字の現場を覆い隠している」だけかもしれません。逆に悪い数字のときも、全体を見ているだけでは、どの現場のどの費目が原因なのか分からないままです。
そこでまず必要になるのが、工事ごとに原価と粗利を分けて把握することです。見る費目は、工事原価の基本区分に沿って、材料費・労務費・外注費・経費の4つで十分です。細かく分けすぎると続かないので、まずはこの4区分を、工事ごとの台帳に落とし込むところから始めます(台帳の作り方は工事台帳の記事もあわせてどうぞ)。
台帳といっても、難しいものではありません。工事名、受注金額、実行予算(見込みの原価)、実際にかかった原価、その差である粗利。この5項目を、工事ごとに1行で並べるだけで十分です。最初はExcelの表1枚で構いません。1年分たまってくると、「この工種は毎回粗利が薄い」「この元請の仕事は、いつも外注費がかさむ」といった、自社特有のクセが見えてきます。
見える化ができると、それだけで打ち手が生まれます。たとえば「この手の工事は、いつも外注費がかさんで赤字に近づく」と分かれば、次から見積の段階で外注費を厚めに見ておけますし、極端な場合は「この条件の工事は受けない」という判断もできるようになります。削る前に、まず測る。遠回りに見えて、これが一番の近道です。
とはいえ、現場を掛け持ちしながら工事ごとに手作業で集計し続けるのは、正直かなりの負担です。見積や発注のときに入力した数字が、そのまま工事ごとの原価としてたまっていくような仕組み——たとえば建設業向けの業務管理ツール「コンクルーAI」のようなもの——に任せてしまうのも、ひとつの選択肢です。
材料費を下げる1つ目は、仕入れの価格そのものを見直すことです。ただし、これは「長年の付き合い先を切って、安いところに乗り換える」という話ではありません。相場を知って、対等な立場で交渉の土俵に乗る、という話です。
主要な資材については、年に1回でいいので、相見積を取って相場を確認する習慣を持ちましょう。長年同じ仕入れ先に発注していると、相場が動いていることに気づかないまま、割高な単価で発注し続けているケースは少なくありません。相見積の結果、今の仕入れ先の単価が妥当だと分かれば、それはそれで安心材料になります。
支払条件も見直しの対象です。支払サイトを短くする代わりに単価を下げてもらう、まとめて発注する代わりに数量割引を交渉する、といったやり方は、単価交渉よりも角が立ちにくく、関係を壊さずに原価を下げる手段になります。発注のロット(まとめ発注か、都度の分納か)も、現場の保管スペースや資金繰りと相談しながら、一番ムダの少ない形を選びます。
たとえば「発注をこの資材屋さん1本にまとめる代わりに、単価を見直してもらえないか」と相談を持ちかけるのは、決して失礼な話ではありません。仕入れ先にとっても、まとまった発注量が事前に読めることはメリットになるからです。相場を知ったうえでの相談であれば、関係を壊すどころか、むしろ信頼関係を深めるきっかけにもなります。
材料費を下げるもう1つの方法は、単価ではなく「量」に目を向けることです。原価率は、単価の交渉よりも、この「量のムダ」で静かに悪化していることが少なくありません。
代表的なのが、拾い(必要な材料の数量を見積もる作業)の精度です。拾い漏れがあれば追加発注で割高になりますし、逆に多めに見積もりすぎれば、使わなかった端材や残材が原価を押し上げます。持ち帰った残材をきちんと在庫として管理し、次の現場で使い回せれば、それだけで新規の発注を減らせます。
工事ごとに「発注した量」と「実際に使った量」の差、つまりロス率を見る習慣をつけると、どの工種でムダが出やすいかが見えてきます。たとえば材料費が原価全体の40%を占める工事で、ロスを減らして材料費を5%圧縮できれば、それだけで原価全体を2%押し下げる計算になります(架空の例です。実際の効果は自社の費目構成比によって変わります)。派手な削減ではありませんが、品質を落とさずに効く、数少ない打ち手のひとつです。
こうした数字は、几帳面な集計をしなくても構いません。大事なのは、感覚ではなく「発注量と使用量の差」という具体的な物差しで、工事ごとのムダを振り返る習慣を持つことです。
外注費が想定より膨らむとき、原因の多くは「単価が高い」ことではなく、「作業範囲があいまいなこと」にあります。残材の処分は誰が持つのか、養生はどちらの仕事か、手直しが出たときの費用はどう扱うか——こうした取り決めが曖昧なまま着工すると、後から「それはこちらの仕事のつもりでした」という食い違いが生まれ、結局は自社が追加費用をかぶることになります。
よくあるのが、内装工事後の産業廃棄物の処分費、足場や養生の設置・撤去、手直しが発生したときの再訪費用です。「その分の費用は先方が持つものだと思っていた」という認識のズレが、外注費を静かに押し上げます。
これを防ぐ方法はシンプルです。注文書・請書のやり取りの中で、作業範囲と単価を事前に固めておくこと。一方的に単価を下げてもらう交渉ではなく、「何をいくらでお願いするか」を最初にはっきりさせる、という話です。この一手間が、後々の手戻りや追加費用というかたちで出ていくはずだった外注費を、静かに防いでくれます。
外注費を下げるもう1つの方法は、内製と外注の振り分けを見直すことです。自社の職人さんの手が空いているのに外注に出していたり、逆に繁忙期に無理して内製にこだわって工期が延びたり——こうしたミスマッチは、多くの現場で起きています。
判断の軸は、稼働状況(自社の職人さんの手は空いているか)・得意分野(自社が得意な工種か)・工期(外注に出したほうが早いか)の3つです。厳密な損益分岐計算をする必要はありません。「今、うちの職人は何をしているか」を工事ごとに把握できていれば、この振り分けの精度は自然に上がっていきます。ここでも、方法1で触れた工事別の見える化が効いてきます。
たとえば「今週は自社の職人が2人手すきなのに、いつもの外注さんに頼んでしまった」という状態が続いているなら、それは仕組みではなく習慣で発注先を決めてしまっているサインです。週の初めに、自社の職人の空き状況と抱えている現場を並べて見る、それだけでミスマッチはかなり減らせます。
労務費を下げるといっても、これは賃下げやサービス残業の話ではありません。職人さんの時間が「原価を生まないまま」失われる場面を減らす、生産性の話です。
その典型が「手待ち」です。材料がまだ届いていない、図面がまだ確定していない、先行する工程が遅れている——こうした理由で、現場に来た職人さんが手を止めて待つ時間は、丸ごと原価として積み上がります。1日8時間のうち1時間が手待ちで消えれば、その日の労務費の8分の1が、工事を1ミリも進めないまま出ていく計算です。
対策は地味ですが効果的です。前日のうちに、材料の到着・図面の確定・搬入経路・先行工程の進み具合を確認する。このひと手間を習慣にするだけで、手待ちの発生はかなり減らせます。
もう1つは、手戻り——一度やった作業をやり直すことです。手戻りが厄介なのは、労務費と材料費を同時に食いつぶす点にあります。やり直しの作業時間はもちろん、使い直しになった材料費も二重にかかるため、原価率への影響は、他のどのムダよりも大きくなりがちです。
手戻りを減らす基本は、施工前の仕様のすり合わせです。仕様を口頭だけで済ませず、着手前に写真を撮っておく、変更の指示があったら書面やメールで残しておく——この積み重ねが、「言った・言わない」から生まれる無償のやり直しを防ぎます。
たとえば「配線の位置は、現地で職人と施主が立ち話で決めた」というような進め方は、後から「聞いていた場所と違う」というやり直しの火種になりやすいものです。図面や指示書に一言書き添えるだけでも、記録として十分に機能します。
7つの方法を並べましたが、全部を同時にやる必要はありません。着手の順番には、考え方があります。
まず①の見える化が土台です。これがないと、残りの6つのどれから手を付けるべきかも判断できません。次に、自社の費目構成比を見て、材料費・外注費・労務費のうち、金額が一番大きいところから手を付けます。工種によって、材料費が重い会社もあれば、外注費が重い会社もあるはずです。そして最後に、お金のかからない順番、つまり書面の整備や習慣づけのような「明日から始められること」から着手するのが現実的です。
たとえば材料費の比率が高い工務店なら方法2・3から、外注に頼る比率が高い工事店なら方法4・5から、というように、自社の費目構成比が、優先順位を決める最初の手がかりになります。
一般的な傾向として、効果の出やすさと着手のしやすさを2軸で並べると、次のような配置になります。

ただし、これはあくまで一般的な傾向です。自社の費目構成比、工種、抱えている工事の性質によって、どこから手を付けるべきかは変わってきます。まずは①で自社の数字を見えるようにして、そこから逆算するのが一番確実です。
最後に、7つの方法とは逆に、削ってはいけない原価についても触れておきます。原価率を下げようとするあまり、ここに手を付けてしまうと、目先の数字は良くなっても、あとで大きな代償を払うことになります。
まず、安全に関わる経費です。保護具、仮設の安全対策、安全教育にかかる費用を削るのは、労働災害のリスクに直結します。削減対象からは外しておくべき費目です。
次に、材料のグレードです。契約で決めた仕様より安いグレードの材料に、無断で変更するようなことをしてはいけません。契約不適合の問題になりますし、一度失った信用は簡単には戻りません。
そして、協力会社への一方的な単価引き下げです。この記事で紹介した外注費の削減は、あくまで「作業範囲を明確にして、ムダな追加費用を防ぐ」という総額の話であり、「単価を一方的に叩く」話ではありません。取引上の地位を利用して、通常必要な原価を下回るような請負代金を押し付けることは、建設業法でも禁止されています(出典:建設業法第19条の3・e-Gov法令検索)。また、2026年1月からは、下請代金の支払遅延や不当な減額を防ぐための改正法(通称「取適法」)も施行されています(出典:中小受託取引適正化法について・公正取引委員会)。協力会社との関係は、原価率と同じくらい、会社の存続を左右する資産です。
原価率を下げる7つの方法を振り返ります。
共通しているのは、どれも単価を「叩く」話ではなく、ムダを「見つけて削る」話だということです。材料をケチる必要も、協力会社を泣かせる必要もありません。まずは、今動いている現場を1つ選んで、原価と粗利を工事ごとに見えるようにするところから、始めてみてください。