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監修者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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電気工事店が検電器を会社で揃えるとき、低圧用と高低圧用をどう分けて何本買うか迷いますよね。低圧・高圧の区分と労働安全衛生規則の位置づけ、CAT区分など仕様の読み方、主要6機種の比較、本数・支給・経費・紛失時のルールまで社長目線で整理します。
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職人さんが増えて、検電器を買い足すことになった。ネットで探すと、4,000円台のペン型から2万円を超える棒状のものまで並び、「うちは低圧の内線がほとんどだけれど、たまにキュービクルの停電作業もある。どれを何本買えばいいのか」と手が止まってしまいますよね。職人さんの私物に任せてよいのか、消耗品で落としてよいのか、なくした・壊れたと言われたらどうするのか。事務の側も、ルールがないまま買い足しだけが続くのは落ち着かないものです。
この記事では、電気工事店が会社として検電器を揃えるときの考え方を、低圧・高圧の区分と法令上の位置づけから整理します。仕様の読み方(CAT区分・AC/DC・感度切替)、国内4メーカーの主要6機種の比較、本数の決め方・支給ルール・経費処理・紛失や故障時の扱いまで、社長と事務の目線でまとめます。価格や仕様は2026年9月時点の各社公式情報をもとにし、公式に価格表示がない機種は販売店の実勢を幅で示しています。
検電器は、電線や端子に電圧がかかっているかどうかを、音と光で知らせる道具です。いちばんの出番は、停電作業の前の「本当に切れているか」の確認。ブレーカーを落としたつもりでも、別系統からの回り込みや誤投入、近くの電路からの誘導で電圧が乗っていることがあります。これから触る電線そのものに電気が来ていないことを、手元で確かめるための道具です。もう一つは、活線か死線かの見分け、断線箇所の当たり、分電盤の相の確認といった日常の小さな仕事で、テスターを出すほどでもないときに胸ポケットからさっと使えます。
個人が自分用に1本選ぶのと、会社の道具として揃えるのとでは、見るところが違います。会社の道具は、複数の職人さんが毎日使い、落とし、電池が切れ、たまに濡らします。同じ操作で全員が扱えること、電池や部品を会社で在庫できること、壊れたらすぐ同じものを補充できることのほうが、細かな機能差より効いてきます。
なお、検電器は安全確認のための道具であり、正しく使うことが前提です。停電・検電・接地の手順は、各社の取扱説明書と自社の作業手順書に従ってください。
検電器を選ぶ最初の分かれ目は、どの電圧区分の電路を扱うかです。労働安全衛生規則では、電圧を次の三つに区分しています。
(出典:労働安全衛生規則 第36条第4号)
電気設備の技術基準を定める省令の第2条にも同じ区分があります(出典:電気設備に関する技術基準を定める省令 第2条)。町場の電気工事店が日常で触る100V・200Vの内線は低圧、キュービクル(高圧受電設備)や高圧引込線は6,600Vの高圧です。
この区分に合わせて、検電器の系統も分かれます。
法令上の位置づけも区分で変わります。電路を開路して工事をするとき、開路した電路が高圧または特別高圧だったものについては、「検電器具により停電を確認し、かつ…短絡接地器具を用いて確実に短絡接地すること」が事業者の義務として明文で定められています(出典:労働安全衛生規則 第339条第1項第3号)。低圧の電路については、この条文に検電器具の明文の定めはありません。ただし、感電防止のために低圧でも検電するのは実務上の当たり前で、「法令に書いていないからやらなくてよい」という話ではありません。
もう一つ、会社の運用に関わる条文があります。高圧・特高の停電確認に使う検電器具は、その日の使用を開始する前に検電性能を点検し、異常があれば直ちに補修または取り換えることが定められています(出典:労働安全衛生規則 第352条)。この「使用開始前の性能点検」を低圧用にも会社ルールとして広げると、支給ルールがすっきりします。

「最初から全員に高低圧用を持たせれば安心では」と考えたくなりますが、従業員50名以下の電気工事店に現実解としておすすめしたいのは、低圧の非接触ペン型を電気を触る全員に1本ずつ、高低圧用は高圧作業をする班に1本+予備、という二段構えです。理由は三つあります。
一つ目は、作業の大半が低圧だからです。内線・改修・器具交換の現場では、ペン型1本で日常の確認は足ります。1本4,000〜7,000円台なので、1人1本を会社で持たせても負担は小さく、私物に頼らずに済みます。
二つ目は、高圧作業が「班」や「資格者」の単位で発生するからです。キュービクルの停電作業や高圧引込の仕事は、会社の中でも担当が決まっていることが多いですよね。2万円前後の高低圧用は、その班に1本と予備1本があれば回ります。
三つ目は、機種を揃えると運用がまとまるからです。同じ機種なら、使用前点検の手順も感度切替の癖も電池の種類も一つで済み、教える手間が減ります。
太陽光や蓄電池、EV充電器の工事を請けている会社は、この二段構えにAC/DC両用の接触式を該当する班に足してください。
系統が決まったら、機種を選ぶ番です。カタログの項目は多いのですが、会社の道具として見るべきポイントは限られています。
低圧用の対応電圧は「AC20〜1,000V」「AC40〜600V」「AC80〜600V」のように書かれます。下限が低いほど弱い電圧や被覆の上からでも拾いやすい一方、近くの活線や金属の誘導にも反応しやすくなるので、感度切替や感度調整で現場に合わせます。上限は低圧用なら600Vか1,000V。1,000Vまで対応していても区分は低圧用なので、高圧の停電確認には使いません。
高低圧用は「AC80〜7,000V」が標準的なレンジで、共立KEW 5702と長谷川HSF-7は低圧では断続、高圧では連続の音光で区別します。
非接触式は被覆電線の上から静電誘導で電圧を拾い、接触式は検知部を露出した充電部に当てて使います。長谷川のHTE-700Dのように「裸線専用」と明記された機種は、被覆の上からは検電できません。感度切替(Hi/Lo、HIGH/LOW)は、裸線と被覆線で感度を変える機能で、三和KD3はLOWが裸充電部用、HIGHが被覆電線用。共立KEW 5711はHiでAC20V、LoでAC90Vから反応します。
カタログの「CAT IV 600V」は、国際規格IEC 61010-1の測定カテゴリです。数字が大きいほど、雷などの過渡的な高電圧が乗りやすい場所を想定した安全設計です。日置電機の取扱説明書では、CAT IIはコンセントに接続する機器の一次側、CAT IIIは分電盤からコンセントまでの電路や固定設備の一次側、CAT IVは建物への引込電路から電力量計・分電盤までの電路、と説明されています(出典:日置電機 検電器3480/3481 取扱説明書)。
引込や分電盤まわりを触る電気工事店なら、CAT IV 600Vの表記がある機種を選ぶと安心です。表記のない機種が使えないという意味ではなく、公式に記載がないものは「記載なし」と比較表に書いています。なお、検電器の規格は、IEC 61010-1のCAT区分と、検電器そのものの国際規格IEC 61243シリーズの二つで覚えておけば十分です。
直流は、交流のように静電容量を通って電流が流れないため、非接触のペン型では反応しません。長谷川のカタログでは、直流検電は検知部を露出部に接触させ、接地端子を大地につないで閉回路を作ることで可能になる、と説明されています(出典:長谷川電機工業 低圧用検電器カタログ)。直流回路を扱うなら、AC/DC両用を別枠で用意します。
電池は、LR44のボタン電池(HIOKI 3481、三和KD3、共立KEW 5702)と、単4乾電池(共立KEW 5711、長谷川HTE-700D・HSF-7)に分かれます。会社で在庫を持つ観点で、機種を揃えて電池の種類を一つか二つに絞るのが実務的です。
使用前点検を助ける機能として、内部回路と電池を確認できるTESTスイッチ(KEW 5702)やテストボタン(HSF-7)、電池残量をLEDで示す機能(HIOKI 3481)があります。ただし日置電機の取説には、電池表示のLEDは動作を保証するものではない、と書かれています。テスト機能があっても、既知の活線で鳴らす手順は省かないでください。
屋外や雨天の作業があるなら、防水の表記を見ます。長谷川HTE-700Dは防水構造(IPX4相当)、共立KEW 5702はIPX1(防滴I形)、長谷川HSF-7は「防滴」。HIOKI 3481は取説に「防じん・防水構造となっていません」「屋内用」とあり、共立KEW 5711と三和KD3は記載なしです。耐落下の表記はどの機種にもないので、落としたら使用前点検で確かめる運用が前提です。
国内の電気工事店でよく使われている検電器のメーカーは、日置電機(HIOKI)、共立電気計器(KYORITSU)、長谷川電機工業、三和電気計器(SANWA)の4社です。代表的な6機種を比較表にまとめました。価格は2026年9月時点で、「公式」は各社サイトの税込表示、「標準価格」はメーカーカタログの表示(税表記なし)、「実勢」は販売店表示の幅です。
型番 | メーカー | 系統 | 対応電圧 | 検知方式 | 安全区分・防水 | 電池 | 価格(2026年9月時点) | 向く現場 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3481 | 日置電機 | 低圧・非接触ペン型 | AC40〜600V(感度調整40〜80V) | 非接触・AC | CAT IV 600V/防水記載なし・屋内用 | LR44×3 | 実勢5,000円台(税込)。 | 内線・改修の日常確認。暗所が多い |
KEW 5711 | 共立電気計器 | 低圧・非接触ペン型 | AC20〜1,000V(Hi)/ | 非接触・AC | CAT IV 600V・CAT III 1000V/防水記載なし | 単4×2 | ¥4,400(税込・公式) | 全員配備の標準機 |
KD3 | 三和電気計器 | 低圧・非接触ペン型 | AC80〜600V | 非接触・AC(LOW=裸線/HIGH=被覆) | CAT・防水とも記載なし | LR44×2 | ¥4,378(税込・公式直販) | 予算を抑えて台数を揃えたい |
HTE-700D/700DL | 長谷川電機工業 | 低圧・AC/DC両用(接触式・裸線専用) | AC50〜600V/DC12〜750V | 接触・AC/DC(直流は接地して閉回路を作る) | CAT IV 600V表記/防水構造IPX4相当 | 単4×1 | 標準価格¥6,500/ | 太陽光・蓄電池・EV充電の直流回路 |
KEW 5702 | 共立電気計器 | 高低圧用(棒状) | AC80〜7,000V | 検知部を当てる・AC | CAT IV 600V/IPX1(防滴I形) | LR44×2 | ¥24,200(税込・公式) | キュービクル・高圧引込の停電確認 |
HSF-7 | 長谷川電機工業 | 高低圧用(棒状) | AC80〜7,000V | 検知部を当てる・AC | CAT記載なし/防滴 | 単4×2 | 標準価格¥20,300(カタログ)。 | 高圧班のスタンダード |
仕様・公式価格の出典(出典:日置電機 3480, 3481)(出典:共立電気計器 KEW 5711)(出典:共立電気計器 KEW 5702)(出典:三和電気計器 KD3)(出典:長谷川電機工業 HTE-700D/700DL カタログ)(出典:長谷川電機工業 HSF-7 カタログ)
実勢価格の出典、いずれも2026年9月15日時点の表示(出典:モノタロウ 3480, 3481)(出典:モノタロウ HTE-700D)(出典:モノタロウ HSF-7)

HIOKI 3481は、計測器メーカーの定番ペン型で、感度をAC40〜80Vの範囲で調整できます。CAT IV 600Vに適合し、検知部に金属の露出がない設計。先端の白色LEDがライトと電池残量表示を兼ね、暗い分電盤まわりで重宝します。公式に価格表示はなく、販売店では5,000円台。取説に「屋内用」とあるので、屋外が多い会社は別の機種と組み合わせてください。
共立 KEW 5711は、AC20〜1,000Vと下限が低く、HiとLoの2段切替で被覆線と裸線を使い分けられます。CAT IV 600V・CAT III 1000Vの表記が公式にあり、税込4,400円と価格も明確。単4乾電池で在庫を回しやすく、全員配備の標準機に据えやすい一本です。
三和 KD3は、テスターで知られる三和の低圧ペン型で、LOW(裸充電部)とHIGH(被覆電線)の切替式。約20gと軽く、税込4,378円で公式直販から買えます。CAT区分や防水の表記は公式に記載がないので、その点を踏まえて選んでください。
長谷川 HTE-700D/700DLは、検電器専業メーカーのAC/DC両用機で、直流回路を扱う班のための一本です。裸線専用で被覆の上からは検電できず、直流は接地端子を大地につないで閉回路を作ります。防水構造(IPX4相当)、単4電池1本で、ライト付きの700DLも選べます。標準価格は700Dが6,500円、700DLが7,400円、販売店では6,000円台(税込)です。
共立 KEW 5702は、AC80〜7,000Vの高低圧用で、低圧は断続、高圧は連続の音光で判別します。CAT IV 600V、IPX1の防滴構造、TESTスイッチで内部回路と電池をチェックでき、検知部の導電ゴムは交換可能。携帯ケースが付属します。公式ページには、労働安全衛生規則第352条に従い既知の電源で性能を確かめるよう警告があります。税込24,200円で、高圧班の主力になります。
長谷川 HSF-7は、同じくAC80〜7,000Vの高低圧用で、高圧6kV用のスタンダードモデルという位置づけ。低圧は断続、高圧は連続の音光で判別でき、しっかりしたホールド感が特徴です。単4乾電池2本、約150g、防滴、テストボタン付きで、収納ケースとストラップが付属。標準価格は20,300円、販売店では1万円台後半(税込)で、CAT区分の表記はありません。
なお、共立にもAC/DC両用のKEW 5712(税込12,100円)があります(出典:共立電気計器 検電器 製品一覧)。海外メーカーの検電器は、国内の正規価格や保証の一次情報が取りにくいため、この記事の比較からは外しています。
ここからが社長と事務の検討事項です。会社として複数人に持たせるとなると、考えることが一気に増えますよね。
考え方は単純で、「電気を触る人の数×1本+予備1〜2本」が低圧ペン型、「高圧作業をする班の数×1本+予備1本」が高低圧用です。車両が分かれている会社は、車両ごとに予備を1本積んでおくと、忘れ物や電池切れで作業が止まりにくくなります。
架空の例で計算します。職人6人、高圧作業の班が1つの電気工事店なら、低圧ペン型は6本+予備2本=8本、高低圧用は1本+予備1本=2本です。低圧ペン型を共立KEW 5711(税込4,400円)で揃えると4,400円×8本=35,200円、高低圧用を共立KEW 5702(税込24,200円)で揃えると24,200円×2本=48,400円、合計83,600円(2026年9月時点の公式税込価格)。全員分を一度に揃えても10万円に届かず、私物頼みをやめる費用としては現実的な水準ではないでしょうか。
会社支給・貸与を基本にすることをおすすめします。機種を揃えて操作・電池・使用前点検を統一できること、私物だと対応電圧やCAT区分が会社の基準を満たすか分からないこと、退職時の回収が明確になることが理由です。
貸与するときは、本体に名前か管理番号のシールを貼り、貸与台帳に「番号・機種・貸与日・貸与先」を残します。一人親方や応援の職人さんの私物は、「会社の基準(対応電圧・CAT区分・使用前点検)を満たすか確認する」と決めておくと、現場で揉めません。
配るときにA4一枚の使い方ルールを添えておくと、一人ひとりに教える手間が減ります。取扱説明書の範囲で、次の項目を押さえます。
高圧用は労働安全衛生規則第352条の「使用開始前の検電性能点検」が明文なので、点検した事実を日報に一行か写真で残す運用まで決めておくと、あとから説明できます。
この記事の6機種は、いずれも1本あたり数千円から2万円台で、取得価額10万円未満です。取得価額が10万円未満の減価償却資産は、事業の用に供した年度に全額を損金にできます(出典:国税庁 タックスアンサー No.5403)。判定は「通常1単位として取引される単位ごと」なので、8本まとめて買っても1本ずつで見ます。科目は消耗品費、工具器具備品、安全衛生費など会社の慣行で統一し、顧問税理士に確認してください。
絶縁抵抗計のような10万円を超える測定器を一緒に買うなら、青色申告の中小企業者等が取得価額40万円未満の資産を年間合計300万円まで取得した年度に全額損金にできる特例があり、令和11年(2029年)3月31日までの取得が対象です(出典:租税特別措置法 第67条の5)。条件は税理士に確認してください。
道具代を工事の原価に乗せるか会社の経費として持つかは、電気工事業の原価管理|材料費高騰でも粗利を守る5つの数字で整理しています。見積の諸経費に安全用具代をどう含めるかは、電気工事の見積書の作り方|材料・労務・諸経費の積み上げ方【無料エクセルテンプレ】が参考になります。
原則は「報告したら、その場で代替を支給する。罰しない」です。言い出しにくい空気があると、検電せずに作業する職人さんが出てきます。それがいちばん危険で、予備を切らさないのはこのためです。
故障の判定基準も決めておきます。使用前点検で既知の電源に反応しない、電池を替えても直らない、筐体にひびがある、検知部のゴムが摩耗している。どれかに当てはまれば使用をやめて交換、と書いておけば現場の判断がぶれません。
車上荒らしなどで工具ごと盗まれたときの対応は、工具の盗難、保険は出る?現場で盗まれたときの対応と責任を整理にまとめています。貸与台帳があれば、被害の申告もすぐにできます。
各社の取説や公式ページに、何年で買い替えるという明示はありません。年数を決めつけるより、「使用前点検で異常が出たら交換」「予備を切らさない」「買い足すときは同じ機種にする」の三つを守るほうが実務的です。日置電機の3480/3481は取説に保証期間3年間の記載があります。校正証明書付きの品が必要な元請案件がある会社は、購入前に販売店へ取扱いを確認しましょう。
ここまでの内容を一つの型にまとめます。
どのメーカーも国内で長く使われている実績があり、上の組み合わせに優劣はありません。大切なのは、機種を揃えて全員が同じ手順で使えるようにすること、そして検電器がないまま作業に入る職人さんを出さないことです。価格や仕様は変わるので、発注前に各社の公式ページで最新の表示を確かめてください。