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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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単価は元請が決め、忙しさの波も元請次第。直請けを増やしたいけれど営業経験もホームページもない、という電気工事店に向けて、費用のかからないものから順に7つの打ち手を紹介します。広告予算は前提にしません。
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腕は確かで、仕事も途切れない。けれど、その多くは工務店や電気工事会社経由の下請け仕事——そんな電気工事店の社長さんは多いのではないでしょうか。単価は元請が決め、忙しさの波も元請次第。元請の仕事が減った月は、一気に暇になります。「直で仕事を取れたら」とは思うものの、営業なんてやったことがないし、ホームページも名刺代わりの1枚だけ。チラシ、SNS、何から手を付ければいいのか分からないし、広告費だけ払って何も返ってこないのも怖いですよね。
この記事では、電気工事店が直請け(一般家庭や法人からの直接の依頼)を増やすための7つの打ち手を、お金のかからない順に紹介します。特別な営業経験や広告予算は前提にしません。
先に結論からお伝えします。集客のためにまず広告を打つ必要はありません。手元にある資産——過去の顧客、既存の取引先、Googleの無料枠——から始めるのが順番です。7つの打ち手を、費用の目安と効果が出るまでの時間でまとめると、次のようになります。
打ち手 | 費用の目安 | 効果が出るまで |
|---|---|---|
①過去客リストの掘り起こし | ゼロ | 早い(数週間〜) |
②Googleビジネスプロフィール | ゼロ | じわじわ(数か月) |
③紹介の仕組み化 | ゼロ〜低 | じわじわ |
④管理会社・法人ルートの開拓 | 低(時間が主なコスト) | 中期(数か月〜) |
⑤ホームページと施工事例 | 低〜中 | じわじわ(半年〜) |
⑥マッチングサイト・ポータル | 中(手数料型) | 早い(ただし依存注意) |
⑦地域で顔を売る | 低〜中 | 長期 |

金額の実数はここでは挙げていません。地域や業態によって変わりますし、何より「まずゼロ円でできることから」という順番自体が大事だからです。7つの中身に入る前に、もう1つだけ、先にやっておきたいことがあります。自社の受注ルートを、紙に書き出す作業です。
打ち手を紹介する前に、まず自社の今の受注構造を整理しておきましょう。電気工事店の受注ルートは、大きく2つに分かれます。

はじめに断っておきたいのですが、下請けは悪いものではありません。営業のコストをかけずに稼働が埋まるのは、下請けの大きな強みです。問題があるとすれば、それは「下請けであること」ではなく「1社に依存していること」です。その1社の方針が変わったり、仕事が減ったりしたときに、自社の売上がまるごと揺れてしまう状態がリスクなのです。
だから、目指すのは「下請けを切って直請けに乗り換える」ことではありません。下請けと直請けの比率を、自社の意思で動かせるようにすることです。まずは、直近の売上を元請ごとに書き出して、どこにどれだけ依存しているかを見えるようにするところから始めてください。
1つ目の打ち手は、これまでの工事履歴を営業資産として使うことです。過去の工事台帳や請求書には、すでに自社を知っている顧客の連絡先が眠っています。これほど営業しやすい相手はいません。
再訪のきっかけはいくつも作れます。分電盤やエアコンなど、設備の更新時期が近づいたタイミングでの案内、点検の声かけ、「その後、電気まわりで困りごとはないですか」という一言のハガキやLINE——過去に工事をした顧客への連絡であれば、負担なく始められます(メールで一斉に案内を送る場合は事前の同意が必要になるルールがありますが、過去に取引のあった顧客への案内はその対象外です。ハガキや電話は対象外ですが、詳しくは特定電子メール法の解説、総務省を確認してください)。
電気工事は「困ったときに、誰を呼べばいいか決まっていない」業種です。思い出してもらうだけで、直請けの依頼は増えていきます。
2つ目は、Googleビジネスプロフィールの活用です。「地域名+電気工事」で検索した人が最初に目にする、Googleマップの結果に自社を表示させる無料の仕組みです。
やることは3ステップです。まず登録、次に情報を充実させること(対応できる工事の種類、営業時間、過去の施工写真)、そして工事が終わったお客さまに口コミを依頼することです。
口コミの依頼には、注意点があります。Googleのガイドラインでは、口コミの投稿や変更、削除と引き換えに、金銭や割引価格でモノ・サービスを提供することを「虚偽のエンゲージメント」として固く禁じています(出典:クチコミを増やすためのヒント、Googleビジネスプロフィール ヘルプ)。「よろしければ、率直な感想を書いていただけますか」と、対価なしでお願いする分には問題ありません。謝礼と引き換えに口コミを集める方法は、プロフィールが制限を受けるリスクがあるだけでなく、2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制(景品表示法)に触れる可能性もあるため、避けてください(出典:ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方、消費者庁)。
3つ目は、紹介を「運」ではなく「仕組み」にすることです。工事が完了したタイミングで、「もしお知り合いで電気のことでお困りの方がいたら、いつでもお声がけください」と、ひとこと添える。名刺やマグネットを渡しておく。たったこれだけのことですが、伝えなければ、お客さまは紹介していいのかどうかも分かりません。
もう1つの紹介源は、異業種のつながりです。電気工事は、リフォーム、水道工事、不動産、工務店など、他業種の工事に絡む場面が多くあります。近隣のリフォーム店や工務店と、「お互いのお客さまで電気(あるいは水道)の話が出たら紹介し合う」関係を作っておけば、広告費をかけずに継続的な紹介ルートになります。
4つ目は、賃貸物件の管理会社や、店舗・施設といった法人ルートの開拓です。地味に見えますが、直請けを増やすうえでもっとも本命に近い打ち手だと考えています。
管理会社や施設の担当者は、「すぐに来てくれる、頼れる電気屋」を常に探しています。入居者からの急な連絡に対応しなければならない管理会社にとって、定期的なメンテナンス需要と緊急対応の両方に応えてくれる電気工事店は、価値の高い存在です。
アプローチの型はシンプルです。対応できる工事のメニューと連絡先を1枚にまとめた資料を作り、近隣の管理会社を訪ねて置いてきます。すでに付き合いのある不動産店やリフォーム店があれば、そこから管理会社を紹介してもらうのも近道です。ただし、管理会社は「即応できるか」「作業報告書をきちんと出せるか」「請求書に不備がないか」を見ています。ここで信頼を落とすと次はありません。この「求められる体制」については、あとの章で詳しく触れます。
5つ目は、ホームページと施工事例です。凝ったサイトである必要はありません。最低限、対応できる工事のメニュー、対応エリア、料金の目安、施工事例、そして資格・登録の表記があれば十分です。
電気工事業を営むには、電気工事業の業務の適正化に関する法律にもとづく登録・通知が必要で、営業所ごとに一定の資格を持つ電気工事士の配置が求められています(出典:電気工事業の業務の適正化に関する法律、経済産業省)。こうした資格・登録は、法律上の要件であると同時に、「きちんとした電気屋である」ことの証明にもなります。ホームページに明記しておいて損はありません。
施工事例は、「困りごと→やったこと→ビフォー/アフター写真」という型で貯めていくのがおすすめです。打ち手2で撮った施工写真がそのまま使えます。サイト制作を外注するかどうかは、まず自作してみて、手が回らなくなったら外注を検討する、くらいの判断で十分です。制作会社の営業トークに飲まれず、「メニュー・エリア・事例・資格」の4点が揃っているかどうかを基準にしてください。
6つ目は、電気工事の依頼者と事業者をつなぐマッチングサイトやポータルサービスです。こうしたサービスは、依頼者からの手数料や事業者からの掲載料で成り立っている仕組みで、実績や口コミがまだ少ない段階では、露出を得る入り口として使う価値があります。
ただし、向き不向きがあります。同じ依頼に複数の事業者が応募する形式が多く、価格の比較をされやすいため、価格競争になりがちです。また、集客をポータル経由に頼りきってしまうと、そのサービスの料金改定や方針変更に自社の売上が左右されることになります。個別のサービス名や手数料率は、サービスごとに公式な発表内容が異なり、変更されることもあるため、この記事では触れません。使うとしても、「まずは実績と口コミを貯める入り口」と割り切り、依存しすぎないことが大切です。
7つ目は、地域の中で「電気の人」として顔を覚えてもらうことです。社名、電話番号、「電気のことなら何でも」が一目で読める車両のマーキングや、現場の看板は、24時間働き続ける広告です。特別なデザイン費をかけなくても、文字が大きく、電話番号が読み取れるだけで十分に機能します。
地域の防犯灯の交換、公民館や集会所の電気設備、祭りの際の電源対応など、地域の行事や設備に関わる機会があれば、積極的に引き受けておくのもおすすめです。金銭的な見返りは小さくても、「何かあったらあそこの電気屋さん」という認知が、じわじわと直請けにつながっていきます。
ここまで7つの打ち手を紹介してきましたが、最後にもう1つ、大事な話をさせてください。直請けが増えると、これまで元請がやってくれていた仕事が、全部自社に降りてきます。問い合わせへの対応、見積書の作成、請求書の発行、保証やアフターサービスの窓口——こうした事務が、集客の成功と同時に一気に増えるのです。
体制が整わないまま直請けだけを増やしてしまうと、対応の遅れやミスがクレームに直結し、せっかく獲得した信用を失いかねません。最低限、見積と請求への対応を早くすること(対応が遅いと、それだけで他の業者に決まってしまいます)、万が一の事故に備えた損害賠償保険に入っていること、クレームが来たときの一次対応のルールを決めておくこと、この3つは、集客を本格化させる前に整えておきたいところです。
見積書や請求書の作成、対応履歴の記録といった事務作業は、直請けの件数が増えるほど負担になっていきます。この事務まわりを紙とExcelだけで回し続けるのがしんどくなってきたら、建設業向けの業務管理ツールで仕組み化することも、選択肢のひとつです。
7つの打ち手を、費用と効果が出るまでの時間で整理すると、次のようになります。

ただし、これは一般的な傾向であり、地域や業態によって当てはまり方は変わります。まず取り組みたいのは、過去客の掘り起こし、Googleビジネスプロフィール、紹介の仕組み化という「無料の3点セット」です。ここから始めて、少しずつ管理会社ルートやホームページに手を広げていけば、下請け中心の商流に、直請けという新しい柱を無理なく育てていけます。