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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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エアコンの専用回路、コンセント増設、分電盤交換。1件は小さいのに件数が多く、同じ現場名や数量を見積・写真・報告書・請求書へ何度も書き写していませんか。この記事では、アプリ選びの前に決めたい『事務の潰し方』を、今夜からできる順に段取りとして紹介します。
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エアコンの専用回路を1件、コンセントの増設を2件、それから分電盤の交換と漏電の調査。1日にいくつもの現場を回って、体を動かして、へとへとで事務所や自宅に戻る。それからやっと、見積書づくりと写真の整理と報告書が始まる——電気工事の仕事をしていると、こんな毎日になっていないでしょうか。
電気工事は、1件あたりは決して大きくない工事がほとんどです。そのかわり件数が多い。そして1件ごとに、見積→施工→写真→報告書→請求書と、書類の仕事がセットでついてまわります。よく見ると、同じ現場の名前、同じ数量、同じ金額を、あちこちの書類に何度も書き写しているんですよね。事務専任の人はいないか、いても奥さんが片手間で、という会社も多いはずです。「体より先に、事務のほうがパンクしそうだ」——そんな感覚、心当たりはありませんか。
この記事は、新しいアプリを勧める話ではありません。アプリを入れるかどうかは、いちばん最後でいい。先に決めるべきは「事務の流れ」です。どの事務を、どの順番で軽くしていくか。今夜からでも手をつけられる順に、電気工事という仕事の性質に沿って段取りにしました。
まず結論からお伝えします。電気工事の事務がしんどいのは、1件が重いからではなく、件数が多いからです。1件の書類仕事を数分削れたとして、1件だけなら大した違いには感じません。でも月に何十件もこなす仕事では、その数分が件数のぶんだけ積み上がって、月で見れば無視できない時間になります。だから狙うべきは「1件あたりの事務を、少しずつ、確実に軽くする」こと。派手な一発逆転ではなく、毎回の手数を減らす方向です。
潰していく順番は、次の3つです。
潰す順番 | 何をするか | 効いてくること |
|---|---|---|
① 見積の型化 | よくやる工事のひな形と、 | 見積をゼロから作らなくなる。 |
② 写真の段取り | 撮る項目と撮るタイミングを、先に決めておく | 撮り直せない部分を撮り逃さない。 |
③ 一筆書き | 見積で入れた情報を、 | 同じ現場名・数量・金額を、 |

ここで一つ、先に言い切っておきます。多くの人がやりがちなのが、「まず良さそうなアプリを探す」ことです。でも順番が逆です。自社の事務の流れがぐちゃぐちゃなままアプリを入れても、ぐちゃぐちゃな作業がそのままアプリの中に移るだけで、かえって使いこなせません。先に流れを決める。道具はそのあとで選ぶ。これが遠回りに見えて、いちばんの近道です。
段取りを組む前に、10分だけ手を止めて、工事1件の流れを書き出してみてください。だいたいこうなるはずです。
問い合わせ → 現地調査 → 見積 → 受注 → 施工 → 写真 → 完了報告書 → 請求 → 入金の確認。

この流れの各段階で、「自分は今、何を書いているか/何を入力しているか」を横に書き添えてみます。すると、あることに気づきます。お客さんの名前と現場の住所、工事の内容、数量、金額——これらの同じ情報が、見積書にも、発注書にも、完了報告書にも、請求書にも、そして台帳にも、繰り返し登場しているんですよね。
一度セルフチェックしてみてください。1件の工事で、「現場の名前」を何回書いていますか。「金額」を何回転記していますか。おそらく、思っているより多いはずです。この「同じ情報を何度も書き写している回数」こそが、削れる事務の正体です。逆に言えば、一度きちんと入れた情報を使い回せる形にするだけで、事務はぐっと軽くなります。これから紹介する3つの段取りは、すべてこの「書き写しを減らす」ためのものです。
いちばん最初に手をつけるべきは、見積です。理由は単純で、見積は工事の「いちばん上流」だからです。ここで入れた情報が、あとの報告書や請求書まで流れていく。上流をきれいにしておくほど、下流がラクになります。
電気工事の強みは、実は「同じような工事を繰り返している」ことです。エアコンの専用回路、コンセントの増設、分電盤の交換、照明のLED化、換気扇の取り替え——自社でよく受ける工事を思い浮かべると、上位のいくつかで件数の大半を占めているのではないでしょうか。
だったら、その頻出パターンごとに「ひな形見積」を作っておきます。使う材料、標準的な数量、作業の人工(にんく)を、あらかじめセットにしておくのです。次に同じ工事の引き合いが来たら、ひな形を呼び出して、現場に合わせて数量や条件を直すだけ。毎回まっさらな状態から項目を打ち込む必要がなくなります。まずは自社の頻出工事を3〜5種類、ひな形にするところから始めるのがおすすめです。
ひな形とセットで用意したいのが、単価のマスタです。電線、ケーブル、器具、ボックス類、そして人工。よく使うものの単価を1か所にまとめておき、見積はそこを参照して作ります。
ここで注意したいのが、「過去の見積をコピーして使い回す」やり方の落とし穴です。手軽なので、ついやってしまいます。でもこの方法だと、数か月前・数年前の古い単価をそのまま引きずってしまいがちです。電線や器具の仕入れ値は動きます。気づかないうちに、今の仕入れ値より安い単価で見積もっていた、ということが起きます。単価は1か所のマスタで管理して、そこを更新すれば全部の見積に反映される。この形にしておくと、単価の取りこぼしが起きにくくなります。
材料価格が動きやすい時期は、見積書に有効期限を入れておくのも有効です。原価や粗利をどう管理するかは、それだけで一つの大きなテーマになるのでここでは深入りしません。見積を仕組み化するソフトのタイプ別の違いを知りたい方は、見積ソフトのタイプ別の選び方を参考にしてみてください。
2つ目は写真です。ここは電気工事ならではの事情があるので、少し丁寧にいきます。
電気工事の写真がやっかいなのは、「あとから撮り直せない」ものが多いからです。壁の中を通した配線、天井裏の隠蔽配管、地中に埋めたケーブル。ボードを張ってしまえば、土をかぶせてしまえば、もう二度と見えません。撮り忘れたからといって、壁を壊して撮り直すわけにはいきませんよね。
だからこそ、写真は「撮る段取り」を先に決めておくことが決定的に効きます。工程の節目ごとに、撮る項目をリスト化しておくのです。たとえば、施工前(着手前の状態)、施工中(隠蔽・埋設される前の配線・配管、ボックスの固定状況など)、完了後(仕上がり、盤内、銘板)。そして測定記録。絶縁抵抗や接地抵抗などの測定結果は、施主や元請から記録の提出を求められることも多く、測定した値やメーターの表示も写真で残しておくと後々あわてずに済みます。この「撮る項目リスト」を、工事の種類ごとに一枚作っておくだけで、撮り逃しは大きく減ります。
もう一つ、写真の事務がしんどくなる最大の原因は、「撮るとき」と「整理するとき」が離れていることです。日中に何現場分もの写真をまとめて撮り、夜に事務所で「これはどの現場のどの工程だったか……」と記憶をたどりながら振り分ける。これがいちばん時間を食います。
打ち手はシンプルで、撮った“その場”で、その工事に紐づけてしまうことです。現場でスマホから該当の工事フォルダに振り分ける、黒板やメモを一緒に写し込んで後から判別できるようにする、といった運用にすると、夜のまとめて仕分け作業そのものがなくなります。電子小黒板や写真整理アプリといった道具は、まさにこの「撮った時点で現場に紐づける」を助けてくれる存在です。どんなアプリがあるか、選ぶときに見るべき点は、工事写真アプリの選び方で具体的にまとめています。まずは道具の前に、「いつ・何を・どこに紐づけるか」という運用を決めるのが先です。
3つ目は、いちばん最後の書類仕事。完了報告書と請求書です。ここでのテーマは「一筆書き」——見積で一度書いた情報を、書き写さずにそのまま下流へ流すことです。
完了報告書を毎回ゼロから作文していると、意外に時間がかかります。宛先、工事名、工事の概要、写真、測定値、完了日。載せる項目はだいたい毎回同じなのに、レイアウトから考え直しているからです。
そこで、報告書のテンプレートを作り、「どこに何を書くか」の定位置を固定してしまいます。宛先はここ、工事概要はここ、写真はこの枠、測定値はこの表、というふうに。定位置が決まっていれば、あとは埋めるだけ。書く順番に迷う時間がなくなります。完了報告書に何を載せるべきか、保管の考え方も含めては工事完了報告書の書き方が参考になります。日々の作業日報も、同じく定位置を決めて埋めるだけの形にしておくと、記録の負担がぐっと軽くなります。
請求書づくりでいちばんもったいないのが、見積の内容を請求書へ手で打ち直す作業です。ほとんど同じ内容なのに、様式が違うせいで一から入力し直す。ここで金額や数量を写し間違えると、値引き交渉や再発行の手間まで生まれてしまいます。
まだ専用のツールを入れていなくても、今日からできる工夫があります。それは、見積書と請求書の「書式」と「項目名」をそろえておくことです。品名の並び順、単位の書き方、内訳の区切り方を見積と請求で統一しておくと、転記そのものがほぼ「見て写す」だけの単純作業になり、写し間違いが激減します。様式がバラバラだから転記が難しくなる、という面は意外と大きいのです。
ここまで、道具の話をほとんどせずに来ました。それには理由があります。段取り(流れ)が決まっていない状態でアプリだけ入れても、たいていうまくいかないからです。
よくある失敗が2つあります。1つは、多機能なツールを入れたものの機能を持て余し、結局いつもの一部しか使わないパターン。もう1つは、社長は使いたいのに職人さんが入力してくれず、紙とアプリの二重運用になって、かえって手間が増えるパターンです。どちらも、「自社の事務の流れ」より先に道具を決めてしまったことが原因です。
そのうえで、道具を選ぶときの見方だけ、中立に整理しておきます。電気工事向けの効率化ツールは、大きく2タイプに分かれます。「写真だけ」「見積だけ」のように一つの事務に特化した単機能タイプと、見積から写真、報告書、請求までを一本の流れでつなぐ一気通貫タイプです。単機能タイプは導入が手軽で、まず一つの悩みを解決したいときに向いています。一気通貫タイプは、この記事でいう「一筆書き」——一度入れた情報を下流まで流す——を丸ごと仕組みにできるのが強みです。こうした一気通貫タイプの一例がコンクルーAIで、見積で入れた品名・数量・金額をそのまま請求書に引き継げるほか、現場写真を選ぶだけで完了報告書を作れるようになっています。
どちらが正解ということはなく、自社の事務のどこがいちばん詰まっているかで選び方は変わります。業種を問わない効率化の全体像は建設業の業務管理を効率化する方法で、具体的なアプリの候補は現場管理アプリの比較で、導入にかかる費用の相場は施工管理システムの費用相場で、それぞれ詳しく比べています。大事なのは、これらを見る前に、自社の「潰したい事務」を3つの段取りではっきりさせておくことです。それが決まっていれば、どのタイプのどの機能が自分に必要か、ぶれずに選べます。
電気工事の事務は、1件が重いのではなく、件数で溜まっていきます。だから効くのは、1件あたりの手数を地道に減らすこと。潰す順番は、次の3つでした。
そして、アプリを選ぶのはこのあと。流れが決まっていれば、道具選びで迷わなくなります。
最後に、今夜の「最初の一歩」を一つだけ。自社でいちばん件数の多い工事を思い浮かべて、その「ひな形見積」を1本だけ作ってみてください。材料と数量と人工をセットにした型が1つできれば、次に同じ引き合いが来たときから、もう事務は軽くなり始めます。一度に全部やろうとしなくて大丈夫です。1件あたり数分の削減が、件数のぶんだけ積み上がっていきます。