建設業の倒産は4年で1.9倍に増えました。件数・原因・業種別・地域別の最新データを東京商工リサーチと帝国データバンクの一次資料で確認し、自社が同じ道を辿らないために何の数字を見ておくべきかまで整理しています。
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同業だった会社が看板を下ろした、取引先の下請けと急に連絡が取れなくなった——そうした話を耳にする機会が増えたと感じている方もいるかもしれません。実際、建設業の倒産は近年増加が続いています。ただし、噂や体感だけで「うちも危ないかもしれない」と不安になったり、逆に「まだ大丈夫」と油断したりするのは、どちらも得策ではありません。大切なのは、業界全体で今何が起きているのかを、実際の数字で押さえておくことです。
この記事では、信用調査会社である東京商工リサーチと帝国データバンクが公表しているデータをもとに、建設業の倒産件数・原因・地域別の動向を整理します。数字を並べるだけでなく、その数字を自社の与信管理や資金繰り、受注の選び方にどう活かせるかまで、具体的にまとめました。四半期ごとに数字を更新していく前提のページなので、まずは2026年時点の状況として読んでみてください。
まず、直近で公表されているデータの要点を3つにまとめます。数字はすべて東京商工リサーチまたは帝国データバンクが発表した資料に基づき、それぞれ出典と時点を明記しています。
1つ目は、件数そのものの水準です。東京商工リサーチによると、2026年上半期(1〜6月)の建設業の倒産は1,026件で、前年同期を5.8%上回りました。上半期としては5年連続で前年を上回っており、2014年(1,035件)以来12年ぶりに1,000件を超えています(出典:東京商工リサーチ「2026年上半期1-6月の全国企業倒産5,346件」)。
2つ目は、建設業の中でも「どこが増えているか」です。2025年の年間データでは、大工・とび・電気工事・管工事などを請け負う「職別工事業」の倒産が814件となり、元請け中心の「総合工事業」の774件を上回りました。職別工事業が総合工事業を上回るのは、2000年以降で初めてのことです(出典:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」)。
3つ目は、原因の中身です。帝国データバンクの集計では、資材や原材料の価格高騰が主因とみられる「物価高倒産」が2026年上半期の建設業で151件発生し、全業種の中で最多でした(出典:帝国データバンク「物価高倒産の動向 2026年上半期」)。
まず全体の流れを、年単位で確認します。東京商工リサーチの集計(暦年・1〜12月ベース、負債1,000万円以上)によると、建設業の倒産件数は次のように推移しています。
年 | 建設業の倒産件数 | 前年比 |
|---|---|---|
2021年 | 1,065件 | ー(2000年以降で最少) |
2022年 | 1,194件 | 12.1%増 |
2023年 | 1,693件 | 41.7%増 |
2024年 | 1,924件 | 13.6%増 |
2025年 | 2,014件 | 4.6%増 |
(出典:東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」および「TSRデータインサイト」各年版)。年別の個別出典は記事末尾の出典一覧を参照してください。
2021年の1,065件は、2000年以降で最も少ない水準でした。そこから4年間で、件数はおよそ1.9倍に増えています。2023年には前年比41.7%増と、1991年以来32年ぶりに増加率が40%を超えました。2025年は増加率こそ4.6%まで落ち着いたものの、件数自体は2013年(2,421件)以来12年ぶりに2,000件を超える水準まで積み上がっています。
年度ベース(4月〜翌3月)で見ても傾向は同じです。2025年度(2025年4月〜2026年3月)の建設業倒産は2,047件で前年度比5.3%増、こちらも2013年度以来12年ぶりに2,000件台に乗りました(出典:東京商工リサーチ「2025年度・令和7年度の全国企業倒産1万505件」)。
2026年に入ってからの月次データでも、増加基調は続いています。3月は175件(前年同月比10.7%増)、6月は189件(同6.1%増)で、いずれも前年同月を上回りました(出典:東京商工リサーチ「2026年3月の全国企業倒産924件」)(出典:東京商工リサーチ「2026年6月の全国企業倒産1,021件」)。1〜6月の上半期合計は1,026件、前年同期比5.8%増です。

増加の背景としては、資材価格の高止まりと人手不足による人件費の上昇が主な要因として挙げられています。着工から完成までの期間が長い工事では、契約時点と資材調達時点の価格差がそのまま利益を圧迫しやすいことも指摘されています(出典:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」)。
件数の水準そのものだけでなく、「なぜここまで増えたのか」を次の章で見ていきます。
倒産の「原因」は、信用調査会社が独自の基準で分類しています。
東京商工リサーチの分類では、倒産は大きく「不況型」(受注不振・既往のしわ寄せ・過小資本など、業績悪化を背景とするもの)と、放漫経営や連鎖倒産などの「その他」に分かれます。建設業では、2023年の集計で「受注不振」が1,185件と全体の69.9%を占め、不況型倒産全体では約9割に達しました(出典:東京商工リサーチ「2023年の建設業倒産1,693件」)。「受注が思うように取れない」という理由が、建設業の倒産の中心にあるということです。
一方で、近年目立つのが物価高・人手不足を直接の引き金とする倒産です。帝国データバンクは、資材や原材料の価格高騰を主因とする倒産を「物価高倒産」として別に集計しています。2026年上半期の建設業における物価高倒産は151件で、前年同期の118件から27.9%増加し、全業種の中で最多でした。内訳は総合工事業が72件(うち木造建築工事業42件)、職別工事業が65件で、要因としては「原材料高」が全体の4割程度を占めています(出典:帝国データバンク「物価高倒産の動向 2026年上半期」)。
人手不足を主因とする倒産も増加傾向です。東京商工リサーチの集計では、2024年の建設業の「人手不足」関連倒産は180件で、前年の128件から4割以上増えました(出典:東京商工リサーチ「建設業の倒産 過去10年間で最多」)。受注そのものが取れないという従来型の倒産に加えて、「受注はあるのに人が足りずこなせない」「資材や外注費が上がった分を価格に転嫁できない」という、これまでとは性質の異なる倒産が増えている点は押さえておく必要があります。

建設業と一口に言っても、内訳を見るとどの業種で倒産が増えているかに違いがあります。
東京商工リサーチの集計では、2025年の建設業倒産2,014件のうち、内訳は次のとおりです。
業種 | 2025年の倒産件数 | 建設業全体に占める割合 |
|---|---|---|
職別工事業(大工・ | 814件 | 40.5% |
総合工事業(ゼネコン・ | 774件 | 約38%(目安) |
設備工事業 | 420件超 | 約21%(目安) |
(出典:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」)
職別工事業が総合工事業を上回るのは2000年以降で初めてです。背景には、資材高や職人不足で「施工力」そのものが希少資源になっており、元請け側が下請けに頼らず自社で施工力を持つ「内製化」の動きが出てきていることが指摘されています。従業員規模で見ると、2025年の建設業倒産のうち1〜4人の会社が1,522件(構成比74.3%)、10人未満の会社が全体の91.4%を占めており、倒産の大半は小規模な会社で起きています(出典:帝国データバンク「物価高倒産の動向 2026年上半期」)。
地域別では、帝国データバンクの集計(2025年)のうち、確認できた地域は次のとおりです。
地域 | 2025年の倒産件数 | 前年比 |
|---|---|---|
中部 | 291件 | 17.8%増 |
中国 | 120件 | 18.8%増 |
九州 | 163件 | 3.6%減 |
北陸 | 71件 | 2.7%減 |
北海道 | 50件 | 19.4%減 |
上記は原資料で増減が明記されていた地域のみで、全国すべての地域を網羅したものではありません。それでも、中部・中国で増加が目立つ一方、北海道・九州・北陸では前年より減少しており、地域差が小さくないことがわかります。全国の数字だけでなく、自社が事業を展開している地域の動きも合わせて確認しておくとよいでしょう。

ここまでの数字を「業界全体で倒産が増えている」で終わらせず、自社の経営判断にどう活かすかを整理します。ポイントは、取引先を見る目、自社の利益を見る目、受注を選ぶ目の3つです。建設業が抱える構造的な課題そのものについては、建設業の課題や2030年問題を整理した記事もあわせて参考にしてください。
新規の取引先や、取引が長い相手でも支払い条件を緩めるときは、相手の状況を確認する材料としてこのデータを使えます。今回のデータでは、職別工事業(下請け中心の業種)や、従業員10人未満の小規模な会社で倒産が集中していることがわかりました。自社の主要な仕入先・外注先がこの層に当てはまる場合は、手形や掛けの支払いサイトを見直す、与信限度額を設定するといった対応を検討する材料になります。特に取引額が大きくなる新規の下請けとは、契約前に決算書や工事の実績を確認しておく、取引開始当初は現金・短いサイトでの支払いから始めるといった段階的な対応も現実的です。
物価高倒産で建設業が全業種中最多だったという事実は、資材や外注費の値上がり分を価格に転嫁できていない会社が多いことの裏返しでもあります。見積の段階で最新の資材単価を反映できているか、工期が長い工事で契約後の値上がり分を請求できる仕組みを用意しているか、工事ごとの粗利率を定期的に確認しているか——このあたりを点検しておくと、同じ壁にぶつかるリスクを減らせます。見積の適正化という観点では、標準労務費で見積もりがどう変わるかを解説した記事も参考になります。
倒産が増えている局面では、自社が受け取る側の売掛金・受取手形の回収も遅れやすくなります。取引先の入金サイトが延びていないか、滞留している売掛金がないかを定期的にチェックする習慣を持っておきましょう。また、特定の元請け・下請けへの依存度(下請比率)が高いと、相手が倒産したときの影響が大きくなります。売上の大部分を1〜2社に頼っている場合は、時間はかかっても取引先を分散させる方向で動いておくと、いざというときの打撃を小さくできます。
受注不振が倒産理由の中心にある一方で、人手不足のなかで無理に安値受注を続けることも資金繰りを悪化させる要因になります。「受注が取れているか」だけでなく「その受注が適正な利益を残せているか」を見る視点を持つことが、これからますます重要になります。工事ごとの原価と粗利を可視化し、赤字が見えている案件は金額や条件を見直す、あるいは断る判断ができる状態にしておくことが、遠回りに見えて一番の倒産対策になります。
この記事で使用した数値の出典は以下のとおりです。いずれも各社が公表している資料をもとに、出典を明記したうえで数値を引用・要約しています。グラフはコンクルーBaseが数値から独自に作成したオリジナル図解で、東京商工リサーチ・帝国データバンクの発表資料そのものを転載したものではありません。
集計対象は、東京商工リサーチ・帝国データバンクとも「負債額1,000万円以上の法的整理」です(私的整理や休廃業・解散は含みません)。両社は調査方法が異なるため、同じ期間でも件数が一致しないことがあります。この記事では、件数の推移など基本となる系列は東京商工リサーチのデータに統一し、東京商工リサーチが公表していない原因別・地域別の内訳は帝国データバンクのデータを使い、その都度どちらの数値かを明記しました。
データ基準日:2026年8月9日時点で公表されている最新データ(東京商工リサーチは2026年1〜6月分、2026年7月8日発表分まで)。
次回更新予定:東京商工リサーチの2026年7月分は2026年8月10日に発表予定です。本記事は四半期をめどに、最新の発表内容を反映して更新します。
更新履歴:2026年8月版(初版)——2026年上半期(1〜6月)までのデータで作成。