日給月給を「日給を月払いする制度」と「月額から欠勤分を引く制度」のどちらで運用していますか。呼び方だけでは伝わらない違いを整理し、小規模建設会社が欠勤控除、残業代、最低賃金、雨天休業を説明できる計算例と確認手順をまとめます。
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日給月給とは何かを説明しようとして、「うちは日当を月末にまとめて払う形です」と答える会社もあれば、「月額は決まっていて、休んだ分だけ引きます」と答える会社もあります。同じ言葉なのに、計算はまったく違いますよね。
小規模な建設会社では、現場の職人、事務員、短時間勤務者で賃金の決め方が違うことも珍しくありません。雨で現場が止まった日、本人都合で休んだ日、年次有給休暇を取った日を同じ「休み」にすると、給与計算の誤りや説明不足につながります。
先に結論をいうと、「日給月給」という名称だけで運用を決めず、月額か日額か、何を欠勤控除するか、残業代を何から計算するかを書面でそろえることが大切です。この記事では、20名以下の建設会社が実務で使えるように、制度の違い、計算例、毎月の確認手順まで整理します。
この記事では日給月給を、基本給を月額で決め、欠勤・遅刻・早退に対応する不就労分を月額から控除する方式として扱います。厚生労働省の賃金制度資料も、一般に月給は欠勤の場合に賃金が支払われるか否かにより日給月給と完全月給に区分され、欠勤によって賃金が差し引かれるものが日給月給、欠勤の有無にかかわらず全額を支払うものが完全月給だと説明しています(出典:厚生労働省「賃金制度」)。
ただし、「日給月給」は法令で計算式まで決められた名称ではありません。労働基準法にも、その施行規則にも、「日給月給」という言葉は出てきません。法律が定めているのは、常時10人以上の労働者を使う事業場が「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期」などを就業規則に定めて届け出る、という枠組みです(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第89条)。呼び方ではなく、会社が書いた式が実務を動かします。
公的資料でも、言葉の使い方は一つではありません。国土交通省が建設業の賃金支払形態をまとめた資料では、グラフの区分名が「主に日給月払制(日給×出勤日)」となっている一方、同じページの説明文は、その区分の割合を指して「日給月給制を採用している」と書いています(出典:国土交通省「日給・月給制に係る現状」)。読み合わせると、日給×出勤日で計算する形を「日給月給制」と呼んでいることになります。
実務で「日給月給」と呼ばれている中身は、大きく2通りです。日額を先に決めて出勤日数を掛ける形と、月額を先に決めて欠勤・遅刻・早退の分を差し引く形です。後者についても、厚生労働省の賃金制度資料は「欠勤によって差し引く額の定め方は、企業によって異なります」としたうえで、欠勤1日について月額の30分の1や25分の1を差し引くやり方が多いと紹介するにとどめています(出典:厚生労働省「賃金制度」)。同じ「日給月給」でも、控除の基準まで会社ごとに違うということです。
だからこそ、自社の給与を判断するときは、名称ではなく次の式を見ます。なお、この記事の制度情報は2026年9月2日に確認しています。

実務上の違いを、賃金を決める単位と休んだときの扱いで並べると次のようになります。
呼び方の例 | 賃金の算定イメージ | 会社休日が多い月 | 本人都合の欠勤 |
|---|---|---|---|
完全月給制 | 決めた月額を支払う | 通常は月額が変わらない | 欠勤があっても月額を控除しない設計 |
日給月給制(本記事の定義) | 月額-規定に沿った不就労分 | 欠勤がなければ通常は月額が変わらない | 規定した計算式で控除する |
日給制(月払いを含む) | 日額×勤務日数 | 勤務できる日数により変わる | 勤務しない日は日額が発生しないのが基本 |
時給制 | 時間額×勤務時間 | 勤務時間により変わる | 勤務しない時間の賃金は発生しないのが基本 |
「月給日給制」という言葉も使われますが、日給月給とほぼ同じ意味で使う例もあれば、基本給と手当の控除範囲を分ける意味で使う例もあります。名称だけを見て「この手当も日割りできる」と判断するのは避けましょう。自社で呼称を定義したうえで、基本給、現場手当、資格手当など、どの賃金項目をどの式で扱うかを明記します。
また、給料を月に1回支払うことと、月給制であることは別です。日額1万3,200円を19日分まとめて月末に支払うなら、算定の土台は日額です。支払頻度だけを理由に「日給月給」と説明すると、求人票、労働条件通知書、給与明細の内容がずれやすくなります。
「現場に出なかった日」でも、理由は同じではありません。本人が私用で休んだ日、年次有給休暇を取得した日、会社が休業を指示した日を別の勤怠コードにします。
会社側の事情に当たる休業では、労働基準法第26条に基づく休業手当が必要になることがあります。厚生労働省は、使用者の責任で休業させた場合に平均賃金の6割以上を支払うと案内しています。資材が集まらない、機械が故障したといった例も会社都合として示されています(出典:厚生労働省「賃金関係」)。
雨天中止が一律に会社都合になるわけでも、一律に無給になるわけでもありません。天候、代替作業の有無、会社の指示、契約内容などで判断が変わるため、個別案件は労働基準監督署や社会保険労務士へ確認します。
職種ごとに制度が違うこと自体より、出勤簿の「1日」と給与計算の「1日」がつながっていないことが問題です。半日、早退、現場間の移動、社内作業、研修をどう記録するかを先に決めます。
賃金台帳には、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給や手当、控除額などを労働者ごとに記載します(出典:厚生労働省「雇用・労働主要様式ダウンロードコーナー」)。日報の「人工」だけを給与計算へ流用すると、法定の労働時間や休暇区分が抜けることがあります。現場の日報と賃金台帳は目的を分け、社員番号と日付で照合できるようにしておきましょう。
出勤日と人工を集計する土台がない場合は、出面表エクセルテンプレートも参考になります。ただし、出面表だけで残業、休暇、休業まで確定せず、勤怠記録と突き合わせて使ってください。
同じ「1日いくら」でも、従業員へ支払う賃金と、事業者へ支払う請負代金・常用代は別です。日額という名前だけで、雇用か請負かは決まりません。指揮命令、仕事を断る自由、代替性、報酬の性格、道具や経費の負担など、実態を見て判断します。
人を雇う場面での分岐は、一人親方が人を雇うときの実務解説で整理しています。給与計算に入れる前に、そもそも従業員として管理する相手かを確認してください。
日給月給の欠勤控除に、すべての会社へ共通する一つの除数があるわけではありません。厚生労働省のモデル就業規則は、月給者の不就労時間を控除する規程例として、次の式を示しています(出典:厚生労働省「モデル就業規則」)。
1時間当たりの控除額=基本給÷1か月平均所定労働時間数
これは規程を作るときの一つのモデルです。当月の所定労働日数、年間平均の所定労働日数、暦日数など、別の基準を定める会社もあります。どの方法を採る場合も、給与計算を始めてから都合のよい除数を選ぶのではなく、就業規則や賃金規程に書き、労働条件通知書と矛盾しないようにします。
ここではモデル就業規則の時間単価方式を使い、次の条件で計算します。
項目 | 例 |
|---|---|
基本給 | 月264,000円 |
年間所定労働日数 | 240日 |
1日の所定労働時間 | 8時間 |
1か月平均所定労働時間 | 240日×8時間÷12か月=160時間 |
本人都合の欠勤 | 1日(8時間) |
遅刻 | 30分 |
まず、1時間当たりの控除額は「264,000円÷160時間=1,650円」です。不就労は8.5時間なので、控除額は「1,650円×8.5時間=14,025円」。控除後の基本給は「264,000円-14,025円=249,975円」となります。
この例は、基本給だけを控除対象にし、時間単位で計算し、端数が出ない条件です。実際には、次を自社の規程で決めます。
厚生労働省の賃金制度資料は、欠勤1日分として差し引く額が、欠勤日数に相当する賃金を上回る場合、上回った部分が制裁としての減給に当たり、労働基準法第91条の制限に触れる可能性があると注意しています(出典:厚生労働省「賃金制度」)。不就労分の控除と、規律違反への制裁を同じ欄で処理しないことが大切です。
「今月は1日休んだから、その分と残業を相殺する」という処理は避けます。欠勤控除は働かなかった所定時間の計算、割増賃金は実際に働いた時間外・休日・深夜時間の計算です。
厚生労働省は、法定時間外労働を25%以上、法定休日労働を35%以上、深夜労働を25%以上の割増と案内しています。1か月60時間を超える法定時間外労働は50%以上で、中小企業にも2023年4月から適用されています(出典:厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」)。
先ほどの例で、割増賃金の基礎に入る賃金が基本給だけ、1か月平均所定労働時間が160時間、10時間すべてが月60時間以内の法定時間外労働、深夜・法定休日労働なしと仮定すると、計算は「1,650円×1.25×10時間=20,625円」です。
実際の計算では、資格手当や現場手当などが割増賃金の基礎に入る場合があります。手当の名称だけで除外せず、厚生労働省が示す除外賃金と支給実態を確認してください。残業規制と勤怠の考え方は、建設業の2024年問題の実態と対策もあわせて確認できます。
月給や日給で決めていても、最低賃金は時間額へ換算して確認します。大阪労働局は、日給制は「日給÷1週間における1日の平均所定労働時間数」、月給制は「月給÷1年間における1か月平均所定労働時間数」で比較する方法を示しています(出典:大阪労働局「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」)。
先ほどの例では、最低賃金との比較に入る月給が264,000円、1か月平均所定労働時間が160時間なら、換算額は1,650円です。この金額を、事業場の都道府県に適用される地域別最低賃金と、対象業種の特定最低賃金のうち高い方と比べます。
最低賃金との比較では、賞与、時間外・休日・深夜の割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など、算入しない賃金があります(出典:厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」)。総支給額だけを所定時間で割らないようにしましょう。最低賃金は都道府県や発効日で変わるため、この記事には固定額を置かず、給与改定時と毎年の最低賃金改定時に公式額を確認する運用にします。
口頭で「日給月給です」と伝えるだけでは、計算方法まで合意できません。少なくとも次の7項目をそろえます。
労働者を雇い入れるときは、賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期などを明示する必要があります(出典:宮城労働局「採用時の労働条件の明示」)。常時10人以上の労働者を使う事業場は、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署へ届け出ます。10人にはパートなども含め、会社全体ではなく事業場単位で確認します(出典:広島労働局「就業規則 ポイント1・2」)。
10人未満の事業場でも、採用時の労働条件明示が不要になるわけではありません。賃金規程を別に作る場合は、労働条件通知書、就業規則、賃金規程、給与ソフトの設定を同じ式にします。
なお、厚生労働省の主要様式ページは、一般労働者用の労働条件通知書について、2026年9月30日まで使用できる様式と、2026年10月1日以降に使う様式を掲載しています。公開・採用の時点で最新様式を確認してください(出典:厚生労働省「雇用・労働主要様式ダウンロードコーナー」)。
日給月給のミスは、式より前の勤怠区分で起きやすいものです。給与担当者が毎月同じ順番で確認できるようにします。
その月の所定労働日、所定休日、法定休日を確定し、月給・日給・時給の対象者一覧と照合します。変形労働時間制を使う会社は、対象期間の勤務予定と届出・協定も確認します。
本人欠勤、遅刻・早退、年休、会社休業、振替休日、代休、研修、社内作業を分けます。「雨」「現場なし」というメモだけでは給与を確定しません。誰の指示で、何の区分になったかを残します。
基本給を出し、不就労分の控除を規程の式で計算し、その後に時間外・休日・深夜の賃金を区分して加えます。手当ごとに、欠勤控除、割増賃金、最低賃金での扱いが同じとは限りません。
最低賃金の換算額が適用額を下回っていないかを確認します。会社の指示で休ませた日は、本人欠勤として処理する前に休業手当の要否を確認します。
賃金台帳と給与明細には、基本給、各手当、割増賃金、欠勤控除などを分けて表示します。修正が必要になったときに、社員番号、対象日、勤怠区分、承認者、計算式まで戻れる状態にしておくと、担当者が替わっても説明できます。
日給月給を採用するかどうかは、給与計算の手間だけでは決められません。小規模建設会社では、次の観点を並べて検討します。
働き方と給与の見え方は、人材定着にも関係します。職人が辞める会社の共通点も参考にしつつ、基本給だけでなく、休日、残業、評価、説明の分かりやすさをまとめて見直すとよいでしょう。
既存社員の制度を変える場合、名称を「月給」へ書き換えるだけでは足りません。実際の支給額や欠勤控除が不利益に変わる可能性もあるため、労働契約と就業規則の変更手続きを確認し、労働局の相談窓口や社会保険労務士へ相談してください。
支払日が月1回というだけでは判断できません。厚生労働省の賃金制度資料は、賃金計算の基礎となる期間の長さに応じて、時間給・日給・週給・月給に区分すると説明しています。日額を先に決めて勤務日数を掛けるなら、算定の土台は日給です(出典:厚生労働省「賃金制度」)。求人票や社内文書で日給月給と呼ぶ場合も、計算式を併記してください。
年次有給休暇は、賃金の支払いを受けながら所定労働日に休む制度です。本人欠勤と同じ無給コードにしません。年休取得日の賃金は、就業規則等で定めた方法に従って扱います(出典:厚生労働省「年次有給休暇をとる条件は?」)。
天候だけで一律に決められません。会社が休業を指示したのか、不可抗力に当たるのか、別作業を指示できたのかなど、具体的な事情で休業手当の要否が変わります。本人欠勤として機械的に控除せず、個別に確認します。
欠勤控除と割増賃金は別に計算します。法定時間外・休日・深夜の労働があれば、それぞれの実績と算定基礎に沿って割増賃金を計算します。
「正社員」という雇用上の呼び方だけで、賃金形態は決まりません。ただし、最低賃金、割増賃金、賃金支払の原則、労働条件の明示などは守る必要があります。求人票、労働条件通知書、就業規則、実際の給与計算を一致させてください。
日給月給とは何かについて、公的資料でも「月額から欠勤分を控除する方式」と「日給×出勤日」という異なる使い方があります。だからこそ、会社の説明を一語で終わらせてはいけません。
月額・日額・時間額のどれを基準にするか、欠勤・年休・会社休業をどう分けるか、控除額と残業代をどう計算するかを、労働条件通知書と就業規則へ具体的に書きます。まずは社員1人分について、労働条件通知書、就業規則・賃金規程、当月の勤怠、給与明細を横に並べ、この記事の7項目が同じ内容になっているか確認してみてください。
個別の欠勤控除、休業手当、制度変更で迷う場合は、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士へ相談しましょう。