この記事は約9分で読めます。
.png&w=3840&q=75)
監修者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
この投稿をシェアする
掛け率とは何を基準にした割合なのか、建設見積で混同しやすい仕入掛け率・原価への倍率・マークアップ率・粗利率を計算式と架空例で整理します。原価から売価を逆算できる無料Excelと、実際の見積で使う手順も紹介します。
AI搭載
コンクルーAI
中小建設会社のためのAIオールインワン業務管理ツール
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーAIひとつで完結


掛け率とは、基準にした金額に対して、もう一方の金額が何割・何倍かを示す言葉です。ただし建設見積では、定価に対する仕入価格の割合と、工事原価から売価を作る倍率の両方を「掛け率」と呼ぶことがあります。まず分母と分子を確認しないと、同じ「7掛け」「3割」でも計算が逆になります。
この記事では、仕入掛け率・原価への倍率・マークアップ率(上乗せ率)・粗利率を分け、原価10万円の架空例で換算します。見積に使うときは、材料費だけでなく労務費・外注費・現場経費まで含む総原価を集めてから売価を試算するのが出発点です。
先に、原価から売価と粗利率を出せるエクセルを置いておきます。黄色のセルだけを入力すれば、原価への倍率からの順算と、目標粗利率からの逆算を同じファイルで確認できます。
掛け率・マークアップ計算ツール(無料・登録不要)
原価への倍率・粗利率の順算/逆算と、定価・基準価格に対する仕入率(7掛け)を分けて確認できる5シートのExcelです。
ファイル形式:Excel(.xlsx)/マクロなし・5シート
このファイルでできることは3つです。
【免責事項】 本フォーマットは、ユーザー様の自己責任においてご利用ください。内容の正確性について当社は保証するものではございません。 万一、本フォーマットの使用により損害やトラブルが発生した場合も、当社は一切の責任を負いかねます。
掛け率には、法令で一つに決められた共通の意味があるわけではありません。取引先から「何掛けですか」と言われたら、どの価格を基準に、何を求める率かまで確認します。この記事では、次の4つを呼び分けます。
言葉 | 計算式 | 原価・定価10万円の架空例 | 使う場面 |
|---|---|---|---|
仕入掛け率 | 仕入価格 ÷ 定価・基準価格 | 7万円 ÷ 10万円 = 70%(7掛け) | 材料などの仕入価格を確かめる |
原価への倍率 | 売価 ÷ 総原価 | 13万円 ÷ 10万円 = 1.30倍 | 総原価から売価を試算する |
マークアップ率(上乗せ率) | (売価 − 原価)÷ 原価 | 3万円 ÷ 10万円 = 30.0% | 原価に何%を上乗せしたかを見る |
粗利率 | (売価 − 原価)÷ 売価 | 3万円 ÷ 13万円 = 約23.1% | 売価のうち粗利が何%かを見る |
同じ原価10万円・売価13万円でも、原価への倍率は1.30倍、マークアップ率は30.0%、粗利率は約23.1%です。マークアップ率と粗利率は、利益3万円を割る相手が原価か売価かで変わります。

なお、中小企業庁が統計分析で用いる「マークアップ率」は、販売価格を名目限界費用で割った倍率です(出典:中小企業庁「2025年版 小規模企業白書 第6節 価格転嫁」)。本記事の見積例では、日常的な価格計算で使われる上乗せ率を「マークアップ率」、売価÷総原価を「原価への倍率」と表記します。政策統計のマークアップ率と、個別工事の総原価に対する倍率を同じ指標として比較しないでください。
また、粗利率は売上高に対する売上総利益(粗利益)の割合です(出典:日本政策金融公庫「国民生活事業|財務診断」)。ここでは個別工事の売価と総原価を使って、見積時点の予定粗利率を試算します。
原価への倍率、マークアップ率、粗利率は、次の式で相互に換算できます。率を入力するときは30%を0.30として計算します。
原価10万円に30%を上乗せするなら、原価への倍率は1.30倍、売価は13万円です。粗利率は 0.30 ÷(1+0.30) で約23.1%になります。30%を上乗せしても、粗利率30%にはなりません(すべて架空の例です)。
逆に、粗利率30%を目標にする場合のマークアップ率は 0.30 ÷(1−0.30) で約42.9%、原価への倍率は約1.4286倍です。原価70万円なら売価100万円、粗利30万円、粗利率30%になります。
倍率だけで計算する場合は、粗利率 = 1 −(1 ÷ 原価への倍率)、必要な原価への倍率 = 1 ÷(1 − 目標粗利率)です。目標粗利率が0%なら必要倍率は1.0000倍です。100%では分母が0になるため、有限の売価を求められません。本ツールは100%を「—」と表示します。
建設業の見積では、材料の定価・カタログ価格に対し、仕入率を掛けて材料費を置くことがあります。たとえば7掛けなら、次の計算です。
仕入価格 = 定価・基準価格 × 0.7
ここで出た仕入価格は、材料費の見込みを作るための数字です。工事の売価を決めるには、さらに自社労務、外注、運搬や処分などの経費を含めた原価を積み上げます。その合計に対して、はじめて「原価への倍率」を試します。
この順番にすると、次の2つを混同しません。
「材料は7掛けだから、工事には3割乗せればいい」とは直結しません。7掛けは材料費の見込みの一部、1.30倍は総原価から売価を決めるための倍率です。どちらも自社の取引条件・工種・工事の内容で変わるため、この記事やツールが特定の率を推奨するものではありません。
ダウンロードするエクセルは、5シート構成です。入力するのは黄色いセルだけで、マクロは使っていません。
「掛け率計算」シートでは、原価と倍率を入れて売価・粗利額・粗利率を出せます。別の欄では、目標粗利率と原価から必要倍率・必要売価を逆算します。右側にある「7掛け」の欄は、定価に仕入率を掛ける別計算として置いてあります。

見積のときは、材料費・労務費・外注費・現場経費を合計して予定原価を作ります。工事後は実績を同じ区分で入れ、予定の粗利とどれくらい差が出たかを確かめます。ここはお客様に出す帳票ではなく、社内で値決めを振り返るためのシートです。
この4区分は、建設業の完成工事原価報告書で用いられる科目の整理とも重なります。もっとも、このツールは社内で予定と実績を比べるための試算用であり、法定様式の提出用ではありません(出典:国土交通省「建設業法施行規則別記様式第十五号及び第十六号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類」)。
工事原価に何を入れるかから整理したい方は、工事原価の内訳と計算方法を解説した記事もあわせてご覧ください。この記事の役割は原価の定義を繰り返すことではなく、決めた原価から売価へつなぐ計算を迷わなくすることです。
「設定」には自社で試す標準倍率と警告の目安を置けます。サンプルの数値は業界平均でも推奨値でもありません。過去の見積と実績を見ながら、自社の基準へ書き換えてください。
「早見表」には1.00〜2.00倍までの上乗せ率と粗利率を入れています。見積の場で電卓をたたく前に、倍率と粗利率のずれを確認するための表です。

よく使う倍率だけを抜き出すと、次のとおりです。表の粗利率はすべて 1−(1÷倍率) で計算しています。
原価への倍率 | 原価への上乗せ率 | 対応する粗利率 |
|---|---|---|
1.00倍 | 0.0% | 0.0% |
1.10倍 | 10.0% | 9.1% |
1.20倍 | 20.0% | 16.7% |
1.30倍 | 30.0% | 23.1% |
1.40倍 | 40.0% | 28.6% |
1.50倍 | 50.0% | 33.3% |
2.00倍 | 100.0% | 50.0% |

この表は「どの倍率が正解か」を示すものではありません。会社を維持するために必要な利益や、工種ごとの原価の中身は会社によって違うからです。現場の直接費以外にも何を回収する必要があるかを考える際は、現場管理費と一般管理費の違いを整理した記事も参考にしてください。
計算した売価は、工事項目・数量・単価・条件が分かる見積書へ落とし込みます。書式と内訳の作り方は、建設業の見積書の書き方と記入例で確認できます。倍率だけを一括で掛けて終わらせず、見積時の予定原価と工事後の実績原価を比べ、次の見積へ戻すことが大切です。
一律の正解はありません。工種、原価の集め方、現場以外に回収したい費用、受注したい工事の内容で変わります。ツールの目的は、特定の倍率を勧めることではなく、選んだ倍率が粗利率では何%になるかを見えるようにすることです。
同じではありません。原価に3割乗せるのは1.30倍で、対応する粗利率は約23.1%です。粗利率を30%にしたい場合、必要倍率は約1.4286倍です。
このツールでは別の意味として扱います。7掛けは定価・基準価格に0.7を掛けて仕入価格を求めるための率です。原価への倍率は、材料費を含む総原価から売価を決めるための率です。
入っていません。Excelの関数だけで作成しており、マクロの有効化は必要ありません。配布ファイルは自社の業務目的の範囲で使えますが、ファイル自体の再配布・販売はお控えください。
配布形式はExcel(.xlsx)です。表計算ソフトへ取り込んで使う場合は、表示・入力規則・印刷が同じになるかを確認してください。見積の判断に使う前には、数式結果を自社の数字で検算しましょう。
掛け率の計算でいちばん大事なのは、数字の名前ではなく、何を基準に掛けたり割ったりしているかです。
この3つを分けるだけで、「3割乗せたのに、3割残らない」という混乱はなくなります。まずは次の見積で、材料の仕入率と工事全体の倍率を別の欄に置き、工事後には実績原価と答え合わせをしてみてください。
掛け率・マークアップ計算ツール(無料・登録不要)
原価への倍率・粗利率の順算/逆算と、定価・基準価格に対する仕入率(7掛け)を分けて確認できる5シートのExcelです。
ファイル形式:Excel(.xlsx)/マクロなし・5シート