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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「木造30坪でいくら?」と一式見積で答えてきた解体業者・工務店向けに、相見積で選ばれ追加請求で揉めない見積書の作り方を解説します。内訳を7ブロックで組む考え方、処分費やマニフェストの載せ方、アスベスト・建設リサイクル法など法定費用の扱い、架空のサンプル見積書までまとめました。
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「あそこの木造、30坪くらいだけど、解体いくらでできる?」——長く解体や工務店をやっていると、電話一本でこう聞かれ、頭の中の坪単価に坪数をかけて「だいたい◯◯万円ですね」と即答してきた、という方は多いですよね。長年、それで通ってきたのだと思います。
ところが最近は、同じ相見積でも「内訳を出してほしい」と言われることが増えました。施主も元請も、"一式いくら"だけでは判断しなくなってきています。おまけにアスベストの事前調査や産業廃棄物の扱いは年々厳しくなり、地中から思わぬ障害物が出て追加をお願いしたら揉めた——そんな苦い経験をお持ちの方もいるはずです。
この記事は、解体の見積を「出す側」のための、揉めにくく・赤字になりにくい見積書の組み立て方の話です。ネットで「解体費用 相場」と調べると出てくるのは、施主向けに"安くするコツ"を説く記事ばかり。ここではそれとは逆に、根拠のある内訳をどう組み、法定費用をどこに載せ、追加トラブルをどう防ぐかを、順を追って整理します。坪単価の"相場金額"そのものは示しません(地域・時期・現場でまるで違うからです)。代わりに、自社の数字を当てはめられる「型」をお渡しします。
先に結論からお伝えします。解体の見積書は、坪単価をかけただけの"一式いくら"より、内訳を見せる形にしたほうが、まわりまわって自社の得になります。理由は大きく3つです。
1つめは、相見積で選ばれやすくなること。 「解体一式 120万円」とだけ書かれた見積と、仮設・本体・処分費・付帯・整地・法定費用・諸経費まで分かれた見積が並んだら、施主はどちらを信用するでしょうか。金額が多少高くても、何にいくらかかるのかが見える会社のほうが、話が早く、値切りの応酬にもなりにくいものです。内訳は、価格競争から「根拠の勝負」へ土俵を移してくれます。
2つめは、追加請求で揉めにくくなること。 "一式"で出していると、地中障害物やアスベストが出てきたときに「その金額に入っていると思っていた」と言われがちです。最初から「これは含む/これは含まない」を費目で切り分けておけば、追加が発生したときの説明が段違いにラクになります。
3つめは、赤字案件が減ること。 内訳を組むという作業は、そのまま自社の原価を見直す作業でもあります。処分費や重機回送費を"なんとなく"で丸めていると、いつの間にか原価が単価を食っている、ということが起こります。項目を分けて積むだけで、「この現場、処分費が想定より重いぞ」と着手前に気づけるようになります。
「解体費用の相場」を解説する記事は世の中にあふれていますが、あれは基本的に"払う側"に向けたものです。出す側の実務は、それとは別物。ここからは、見積を出す側の目線だけで進めます。なお、見積書づくりそのものの基本形は、内装工事の見積書の書き方やリフォーム会社の見積書の書き方でも整理しています。解体には解体固有の事情があるので、この記事はそこに絞り込みます。
内訳をどう分けるか。細かく分けすぎると作るのも読むのも大変ですし、粗すぎると"一式"に逆戻りします。おすすめは、まず大きく7つのブロックに分けてしまうこと。この骨組みさえ頭に入れておけば、どんな現場でも抜け漏れなく積めるようになります。

ブロック | ここに入れる費目の例 | 見落としやすいもの |
|---|---|---|
①仮設工事 | 養生シート・防音/防塵パネル、 | 近隣が近い現場の防音強化、通行人への養生 |
②建物解体本体 | 重機解体、手壊し | 手壊し範囲が広い現場の人工(にんく) |
③廃棄物処分費 | 収集運搬費、中間処理・ | 混合廃棄物の割高な処分単価 |
④付帯工事 | ブロック塀・門扉・カーポート撤去、 | 敷地の隅にある構造物、地下埋設物 |
⑤整地 | 解体後のならし、砕石敷き、簡易な転圧 | 「更地渡し」の仕上がりレベルの認識ずれ |
⑥法定関連費用 | アスベスト事前調査・分析、 | 調査費・届出の手間を"サービス"にしてしまう |
⑦諸経費 | 現場管理費、一般管理費、 | 小規模現場ほど圧縮されがちな管理費 |
7つと聞くと多く感じるかもしれませんが、慣れれば表の上から順に埋めていくだけです。大事なのは、「処分費(③)」と「法定関連費用(⑥)」を、解体本体(②)の坪単価に溶かし込まないこと。この2つは金額のブレが大きく、しかも載せ忘れると一発で赤字や違反につながります。だからこそ、独立したブロックとして常に表に出しておきます。次の章から、特にこの2つを掘り下げていきます。
「木造は坪いくら」という感覚は、長年やっていれば誰でも持っているものです。ただ、その数字を見積書にそのまま貼り付けると、現場条件のブレを吸収しきれずに赤字を招きます。ここでは坪単価を"金額"ではなく、「何で構成され、何で上下するのか」という要素で分解してみます。金額は現場ごとに違うので、自社の実績値を当てはめて使ってください。

同じ延床面積でも、木造・S造(鉄骨造)・RC造(鉄筋コンクリート造)では、坪単価がまるで違います。理由をひとことで言うと、壊す手間と、出てくるゴミの重さ・種類が違うからです。
木造は比較的ばらしやすく、出るのは木くずが中心。S造は鉄骨の切断・搬出に手間がかかる一方、鉄はスクラップとして有価物になることもあります。RC造はもっとも手間がかかり、コンクリートを砕く重機と時間が必要で、コンクリートがら(がれき類)が大量に出ます。この「がらの量」が処分費を大きく押し上げるため、構造が変わると本体の手間だけでなく処分費(③のブロック)まで連動して動く、というのがポイントです。
だから、坪単価を"ひとつの数字"で持つのではなく、「本体解体の手間」と「処分費」を分けて持つのが実務的です。本体は構造別の人工と重機で、処分費は品目別の数量で積む。この分け方をしておくと、構造が混在する現場(木造+ブロック塀+物置がスレートなど)でも、足し算で見積が組めるようになります。
構造が同じでも、現場の"立地条件"で手間は大きく変わります。見積前の現地調査でここを見落とすと、そのまま赤字になります。主な加算要素は次のとおりです。
これらは坪単価の中に隠すのではなく、「狭小地割増」「小運搬費」「手壊し増」といった形で、加算要素として見える化しておくと、施主にも説明しやすくなります。
解体費用のなかで、金額も読みづらく、載せ忘れも起きやすいのが処分費です。ここを制すると、見積の精度は一気に上がります。
解体で出る廃棄物は、ひとくくりに"ゴミ"ではありません。木くず、コンクリートがら(がれき類)、金属くず、廃プラスチック、石膏ボード、そしてそれらが混ざった混合廃棄物——と、品目によって処分単価がまったく違います。
ここで知っておきたいのが、分別すればするほど処分費は下がりやすいという関係です。混合廃棄物は分別の手間を処分場側が負うぶん、処分単価が高くなりがち。逆に、現場できれいに分別して品目ごとに出せば、有価物として売れるもの(鉄など)も出てきます。つまり、処分費を「混合◯t 一式」で丸めると、原価の管理も、施主への説明も、どちらも曖昧になってしまうのです。
見積書では、処分費を品目ごとに「数量(t または m³)× 単価」で積むのがおすすめです。こうしておくと、①自社の原価が正確につかめる、②施主に「分別すればこれだけ違う」と説明できる、③実績が貯まるほど次回の見積が速く正確になる、という3つの効果があります。単価は地域と時期で動くので、自社が実際に払っている最新の処分単価を使ってください。
解体で出た廃棄物の処理を業者に委託するときは、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付が求められています。これは廃棄物処理法にもとづく仕組みで、廃棄物が「どこから出て、誰が運び、どこで処理されたか」を書面(または電子)で追跡するためのものです(出典:環境省 env.go.jp )。紙のほか、電子マニフェスト(JWNET)という仕組みもあります(出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター jwnet.or.jp )。

ここで実務上のポイントが2つあります。
ひとつは、「誰が排出事業者になるか」。建設工事で出た廃棄物は、原則として工事を請け負った元請業者が排出事業者となり、マニフェストの交付義務を負うとされています。下請けに任せきりにできる話ではない、という点は押さえておきたいところです(正確な適用範囲は要確認)。
もうひとつは、このマニフェスト事務の費用を、見積書のどこに載せるか。マニフェストの交付・保存や、廃棄物の管理にかかる手間は、独立した費目として立てるより、処分費(③)または諸経費(⑦)のなかに含めるのが一般的です。「マニフェスト費用」という行を単独で立てると施主に伝わりにくいので、処分費の一部として品目別の単価に織り込むか、諸経費のなかの「廃棄物管理・事務費」としてまとめておくと、見積書がすっきりします。いずれにせよ、"タダでやる手間"にしてしまわないことが、赤字を防ぐ第一歩です。
解体の見積は、金額だけの話ではありません。着手前に法律で決まった手続きがいくつかあり、これを見積段階で織り込んでおかないと、「調査費をもらい忘れて自腹」「無届で工事して指摘される」といった事態になりかねません。ここは"金額"以上に大事なブロックです。以下は制度の要点ですが、対象規模・時期・手続きは改正されることがあるため、実際の案件ではそのつど最新の一次情報で確認してください。
一定規模以上の解体工事は、「建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)」の対象となり、着工前に都道府県知事などへの届出が必要とされています。建築物の解体では床面積の合計が80㎡以上が対象規模の目安とされ、届出は原則として発注者(施主)が、工事着手の一定日数前までに行うこととされています(出典:国土交通省 国土交通省 )。
実務では、この届出の書類を元請業者が代わりに用意・代行することが多いものです。だからこそ、その図書作成の手間を法定関連費用(⑥)に載せておくこと、そして見積の段階で施主に「この工事は届出の対象なので、着工前にこの手続きが要ります」と一言添えておくことが大切です。ここを説明しておくと、施主からの信頼も得やすくなります。(対象規模・届出者・期限の正確な基準は要確認)
もうひとつ、近年とくに厳しくなっているのがアスベスト(石綿)まわりです。建物の解体・改修の前には、石綿が含まれているかどうかの事前調査を行うことが求められ、一定規模以上の工事では、その調査結果を国のシステムに報告することが義務づけられています。報告義務は2022年(令和4年)4月から始まり、さらに2023年(令和5年)10月からは、一定の資格を持つ者による調査が求められるようになったとされています(出典:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト ishiwata-portal.mhlw.go.jp 、環境省 env.go.jp )。
見積の観点で大事なのは、この事前調査・分析・報告にかかる費用を、例外なく法定関連費用(⑥)として計上することです。「調査くらいサービスで」とやってしまうと、分析費用や有資格者の手間がまるごと自腹になります。石綿が実際に見つかった場合の除去・処分は、当初見積とは別枠の大きな費用になるので、後述する「除外事項」で扱いを決めておきます。(義務化の対象範囲・時期・調査者の資格要件は要確認)
見落としがちな小さな手続きも、段取りに関わります。解体前には、電気・ガス・水道・電話などのライフラインの停止や切り離しを各事業者に手配する必要があります(水道は散水のため最後まで残すこともあります)。また、前面道路にダンプや重機を止めて作業する場合は、道路使用許可が必要になることもあります。これらは金額としては大きくないことが多いですが、「誰が手配するか」を見積・契約段階で決めておかないと、着工直前にバタつく原因になります。
ここまでの内訳を、実際の見積書の形に落とすとどうなるか。木造2階建て・延床30坪の解体を想定した架空のサンプルで見てみましょう。金額はすべて説明のために置いた架空の数字で、相場を示すものではありません。自社の実勢単価に置き換えて使ってください。

【架空サンプル】木造2階建て(延床30坪)解体工事 御見積書
No. | 費目 | 摘要 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 仮設工事 | 養生・防音パネル・仮囲い | 1 | 式 | 120,000 | 120,000 |
2 | 建物解体本体 | 木造・重機+手壊し | 30 | 坪 | 18,000 | 540,000 |
3-1 | 処分費(木くず) | 収集運搬・処分 | 8 | t | 12,000 | 96,000 |
3-2 | 処分費(混合廃棄物) | 収集運搬・処分 | 3 | t | 25,000 | 75,000 |
3-3 | 処分費(コンクリートがら) | 基礎・土間分 | 10 | t | 5,000 | 50,000 |
4 | 付帯工事 | ブロック塀撤去15m・立木伐採 | 1 | 式 | 90,000 | 90,000 |
5 | 整地 | 解体後のならし・砕石敷き | 1 | 式 | 80,000 | 80,000 |
6 | 法定関連費用 | 石綿事前調査・分析、 | 1 | 式 | 60,000 | 60,000 |
— | 純工事費 小計 | 1,111,000 | ||||
7 | 諸経費 | 現場管理費・一般管理費・保険 | 1 | 式 | 139,000 | 139,000 |
— | 小計 | 1,250,000 | ||||
— | 出精値引き | −50,000 | ||||
— | 値引き後小計 | 1,200,000 | ||||
— | 消費税(10%) | 120,000 | ||||
— | 御見積金額(税込) | 1,320,000 |
数字はすべて架空ですが、処分費を品目別に3行に分けている点、法定関連費用を独立させている点、そして最後の出精値引きまで見えている点に注目してください。ここまで見えていれば、施主は「何にいくらかかるのか」を納得したうえで判断できます。
そして見積書には、金額表と同じくらい大事な「前提」を欠かさず添えます。
この「前提」を書いておくかどうかで、後のトラブルの起きやすさが大きく変わります。次の章で、その核心である「除外事項」を扱います。
解体で揉める原因の多くは、「言った・言わない」「入っている・入っていない」です。これを防ぐ最強の道具が、見積書の除外事項(含まないもの)の欄です。含むものを丁寧に書くのと同じくらい、含まないものを先に宣言しておくことが、自社と施主の双方を守ります。
とくに次の3つは、着手後に出てくると金額が大きく動くので、最初から扱いを決めておきます。以下は書き方の一例で、実際の文言は自社の契約内容や案件に合わせて調整してください。
ポイントは、「別途協議のうえ実費」とすること。「地中障害物は無条件で別料金にできる」と一方的に決めつける書き方は、契約内容によっては通らないことがあります。あくまで"見つかったら、いったん止めて相談する"という段取りを、見積・契約の両方に書いておくのが安全です。見積と契約の関係については、工事請負契約書の書き方もあわせて確認しておくと安心です。
そして、実際に着工後に地中障害物などが出てきたときの動き方も、あらかじめ決めておきましょう。①いったん作業を止める → ②写真を撮る(出てきた状態がわかるように) → ③施主に連絡し、追加費用と工程を説明して合意をとる → ④合意の記録を残してから再開する。この順番を崩さないことが、追加請求を"揉め事"にせず"当たり前の手続き"に変えるコツです。口頭でGoをもらって進めてしまうと、後から「そんな金額は聞いていない」となりがちなので、短いメールやLINE一本でも、合意の記録を残しておくと安心です。
解体の見積書は、坪単価をかけた"一式いくら"から、内訳を見せる形へ。たったこれだけの変化で、相見積で選ばれやすくなり、追加請求で揉めにくくなり、赤字案件も減っていきます。
改めて、押さえておきたい要点を整理します。
最初は7ブロックを埋めるだけでも手間に感じるかもしれません。でも、一度自社の単価と処分単価を型に落としてしまえば、2件目からは驚くほど速く、しかも正確に見積が組めるようになります。「坪いくら」の勘を、"根拠のある型"に変えていきましょう。