「人が足りない」という感覚を、採用や応援手配の判断にどう生かすか。国土交通省の建設労働需給調査から、2026年7月の全国8職種計の不足率と直近24か月の推移を整理します。不足率の意味、原数値と季節調整値の見方、自社の採用状況と混同しないための注意点までわかりやすく解説します。
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建設現場で「最近、人を集めにくい」と感じたとき、感覚だけで採用費や応援の手配を決めるのは難しいものです。国土交通省の建設労働需給調査は、建設技能労働者の需給を毎月追うための公的な指標です。ただし、ここでいう不足率は自社の採用難易度そのものではありません。まずは全国の方向感をつかみ、自社の職種・地域・受注状況と重ねて使うのが大切です。
2026年7月調査では、全国8職種計の過不足率は原数値で1.2%の不足でした。前月の1.0%不足から不足幅は0.2ポイント広がり、前年同月の1.6%不足と比べると0.4ポイント縮小しています(出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和8年7月調査)」)。
今回の数字を、まず原数値で並べると次のとおりです。
比較する時点 | 全国8職種計の過不足率(原数値) |
|---|---|
2025年7月 | 1.6%不足 |
2026年6月 | 1.0%不足 |
2026年7月 | 1.2%不足 |

24か月の原数値を見ると、プラス、つまり不足側の月が大半です。そのため、直近24か月は概ね不足基調と整理できます。
ただし、24か月すべてが不足側だったわけではありません。2026年3月の原数値はマイナス0.1%で、国交省の表記では0.1%の過剰です。月次の数字は、工事の進み方や季節要因も含むため、一つの月だけを切り取って先の需給を決めつけないことが大切です。
グラフのもう一本は季節調整値です。2026年7月は0.9%不足で、6月も0.9%不足でした。原数値では6月から7月に不足幅が広がっていますが、季節要因をならした数値は横ばいです。前月比を見るときは原数値と季節調整値の両方を置き、前年同月との比較も加えると、月ごとの振れを読み違えにくくなります。
図の元データは、建設労働需給・全国8職種計の直近24か月CSVとしてダウンロードできるようにします。社内会議で使う場合は、更新日と調査月も一緒に記録しておくと、古い数値を最新値として扱う事故を防げます。
建設労働需給調査は、建設技能労働者の需給状況を職種別・地域別に毎月把握する調査です。対象は、建設業法上の許可を受け、調査対象職種を直接雇用する資本金300万円以上の法人企業のうち約3,000社です。8職種は、型わく工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築)、電工、配管工を指します(出典:国土交通省「建設労働需給調査の概要」)。
不足率は、単純に「必要人数に対して何人足りないか」を数えた比率ではありません。公式の算式は、次の考え方です。
(確保したかったが確保できなかった労働者数 − 確保したが過剰となった労働者数)÷(確保している労働者数 + 確保したかったが確保できなかった労働者数)×100
つまり、手持現場で不足だった側と過剰だった側の差を、必要だった人数を分母にして表します。プラスなら不足側、マイナスなら過剰側、0付近なら両者が概ね釣り合っている状態です。

このため、全国8職種計が1.2%不足だからといって、「自社も1.2%採用しにくい」「求人の応募が1.2%減る」という意味にはなりません。調査対象は直接雇用する法人企業で、地域や職種も平均されています。自社の採用を考えるなら、応募数、紹介会社からの反応、離職の兆し、協力会社の空き状況といった自社の数字を主に置き、この調査は外部環境を確認する材料として使うのが安全です。
長期的な就業者数や年齢構成まで含めて見たい場合は、建設業の課題とは?近年の状況・動向や解決法、2030年問題を解説もあわせて確認してください。月次の需給と、長期の担い手構造は、同じ「人手不足」でも見ている時間軸が違います。
原数値には、その月の工事量や季節的な動きが含まれます。たとえば2026年7月の原数値は1.2%不足で、前月は1.0%不足、前年同月は1.6%不足でした。前月より不足側へ動いた一方、前年同月よりは不足幅が小さい、と二方向から読めます。
「先月より上がったから急に採用が難しくなった」とは限りません。前年同月と比べて、毎年同じ時期の動きの中でどう変わったかを先に見ると、短期の波に引っ張られにくくなります。
季節調整値は、同じ時期に繰り返されやすい季節要因をならして、足元の変化を読むための補助線です。2026年7月は0.9%不足で前月と同じでした。原数値だけを見るよりも、「季節要因をならすと横ばい」という見方を加えられます。
ただし、季節調整値だけで現場の手配を決める必要もありません。月次の数字はあくまで全国の状況です。原数値、前年同月、季節調整値が同じ方向を向いているかを確認するために使うと、判断の偏りを抑えられます。
全国8職種計は便利な入り口ですが、地域や職種の差を消した平均でもあります。2026年7月調査でも、鉄筋工(建築)は過剰、その他の職種は不足、東北は過剰、その他の地域は不足と国交省が公表しています(出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和8年7月調査)」)。
自社が電気工事中心なら電工、配管工事中心なら配管工の表を、地域をまたぐ会社なら各地域の表を開いてください。全国平均との差があることを前提に読むだけでも、「ニュースで不足と聞いたから」と一律に採用費や応援単価を変える判断を避けやすくなります。
このダッシュボードが役立つのは、数字を眺めるときより、次の打ち手を決めるときです。
判断すること | 外部環境として見る数字 | 自社で並べる数字 |
|---|---|---|
採用 | 不足率、職種別・地域別の傾向 | 応募数、採用単価、内定辞退、離職 |
応援・協力会社の手配 | 前年同月との比較、季節調整値 | 2〜3か月先の工程、協力会社の空き、人員計画 |
受注・着工の判断 | 全国の方向感 | 受注残、現場ごとの必要人数、利益が残る単価 |
たとえば不足側が続く局面では、「急な欠員が出ても応援を頼めるだろう」と考えるより、早めに協力会社へ工程を共有するほうが現実的かもしれません。一方、全国値が不足でも、自社の職種・地域で応募が戻っているなら、募集条件や育成のやり方を見直す機会になります。外の数字は結論ではなく、社内で確認すべき問いを作るための材料です。
単価を検討するときは、需給調査と公共工事設計労務単価を混同しないことも重要です。設計労務単価は公共工事の積算に使う別の指標なので、公共工事設計労務単価の早見表【2026年度】で対象職種・地域・含まれる費用を確認してください。見積で労務費をどう整理するかは、標準労務費で見積もりはどう変わる?施行半年の現在地と小規模建設会社の実務対応が参考になります。
2026年7月の建設労働需給調査では、全国8職種計の原数値は1.2%不足でした。24か月では概ね不足基調ですが、2026年3月には原数値で0.1%の過剰もありました。月次の需給を「ずっと足りない」と単純化せず、前年同月、季節調整値、地域・職種別の順に確かめるのが基本です。
そして何より、不足率を自社の採用難易度と同一視しないことです。調査から全国の方向感をつかんだうえで、応募数、離職、受注残、協力会社の空きといった自社の数字に戻る。その往復ができると、採用・手配・工程の判断が感覚だけに寄りにくくなります。
月次で確認するなら、前回のCSVを残し、更新した月・原数値・前年同月・季節調整値を会議資料に1行で追記する方法が手軽です。数字が動いた理由をその場で断定するのではなく、「どの職種・地域の確認が必要か」「社内のどの数字と比べるか」を決める入口として使ってください。