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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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500万円を超える工事を、建設業許可なしで請けてもいいのか――。許可がいらない「軽微な工事」の線引きから、無許可で請けたときの罰則、税込・材料支給・分割の落とし穴、受けたいときの正攻法(許可取得の要件と期間)まで、リフォーム業の社長のご相談に答える形で整理しました。
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【今回のケース】リフォーム業・従業員5名の会社
「うちは主に個人のお宅の小さなリフォームを手掛けている、従業員5名の会社です。先日、知人の紹介で戸建てのフルリフォームの引き合いをいただきました。総額は550万円ほど。ありがたい話なのですが、うちは建設業の許可を持っていません。以前『500万円を超える工事には許可がいる』と小耳に挟んだことがあり、このまま請けてよいものか迷っています。無許可のまま請けたら、何か罰則があるのでしょうか。せっかくのお話ですが、断るしかないのでしょうか。」
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の案件についての法的助言ではありません。実際の取り扱いは契約内容や状況によって変わります。判断に迷うときや相手方と争いになりそうなときは、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください。
紹介でいただいた、またとない大きな引き合い。断るのは本当に惜しいですよね。かといって、法律に触れるかもしれないとなると、素直には喜べない――。そのもやもやした気持ち、とてもよく分かります。先に結論からお伝えします。550万円(税込)のフルリフォームは、原則として、建設業の許可がないと請けることができません。ただ、これは「あなたの会社には無理」という後ろ向きな話ではなく、「そろそろ次の一歩を準備するときですよ」という前向きな合図でもあります。この記事では、許可がいらない「軽微な工事」の正確な線引きから、無許可で請けたときに何が起きるのか、そして受けたいときの正攻法までを、順番に整理していきます。
いちばん気になっているところに、先にお答えします。今回の550万円のフルリフォームは、建設業の許可を持っていない状態では、原則として請け負うことができません。「500万円を超えると許可がいる」というお話は、おおむね正しい理解です。
ただ、「請けられない=この話はあきらめるしかない」ではありません。取り得る道は、大きく3つあります。ひとつ目は、今回はいったん見送る。ふたつ目は、建設業の許可を持っている会社と組んで、役割を分けて進める。3つ目は、これを機に自社で許可を取り、堂々と受けられる会社になる。どれが正解かは会社の状況によりますが、少なくとも「無許可のままこっそり請ける」だけは避けたいところです。その理由も含めて、まずは"500万円の線"がどこに引かれているのかを、正確に見ていきましょう。
建設業では、工事を請け負うのに原則として建設業の許可が必要です。ただし法律は、「軽微な建設工事」だけを請け負う場合は、許可がなくてもよいと定めています(出典:e-Gov法令検索・建設業法)。多くの小規模な工事店さんが許可なしで営業できているのは、この「軽微な工事」にあたるからです。問題は、その線がどこに引かれているか。ここを正しく押さえることが、今回のご相談の出発点になります。
「軽微な建設工事」の中身は、建設業法施行令という政令で決められています。整理すると、こうなります(出典:e-Gov法令検索・建設業法施行令)。
ここで大事なのが、「建築一式工事」という言葉です。これは、家を新築するときのように、工事全体を総合的に企画・まとめあげる大規模な工事を指す専門用語で、リフォームや内装・設備といった個別の工事は、通常これにはあたりません。つまり今回のフルリフォームは、原則として「建築一式以外」=500万円の線で判断することになります。550万円は、この線をはっきり超えています。
もうひとつ、間違えやすいのが金額の数え方です。ここでつまずくと、「500万円未満のつもりが、実は超えていた」ということになりかねません。ポイントは3つあります。
ひとつ目は、消費税を含めた税込の総額で見ること。国土交通省は、この請負代金を消費税込みで判断するとしています(出典:国土交通省・建設業許可事務ガイドライン)。たとえば税抜490万円の工事でも、消費税10%を足すと539万円。これはもう500万円を超えていますから、許可が必要な工事になります。
ふたつ目は、注文者が材料を支給する場合、その材料費も足して判断すること。施主が「材料はこちらで用意する」というケースでも、その材料の市場価格(や運送賃)を請負代金に加えた額で500万円を判断します(出典:e-Gov法令検索・建設業法施行令)。手間賃だけを見て「うちの取り分は300万円だから大丈夫」と考えるのは危ない、ということです。
3つ目は、次の章でくわしく触れますが、契約を分けても合算して判断されること。この3つを踏まえると、今回の550万円(税込)のフルリフォームは、どう数えても軽微な工事の枠には収まりません。
あわせて気をつけたいのが、契約後の追加・変更で金額がふくらむケースです。当初は税込480万円で始めた工事でも、施主の要望で手直しが重なって最終的に520万円になれば、その時点で軽微な工事の枠を超えてしまいます。「気づいたら500万円を越えていた」とならないよう、金額が線に近い工事ほど、早めに許可の要否を意識しておくと安心です。

「少しくらい超えても、黙っていればわからないのでは」と、頭をよぎるかもしれません。ですが、ここは踏みとどまってほしいところです。無許可で許可が必要な工事を請けることには、思っている以上に重い代償がついてきます。
建設業法は、許可を受けないで許可が必要な建設業を営んだ場合、その違反行為をした人を3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処すると定めています(出典:e-Gov法令検索・建設業法)。さらに、会社(法人)として違反した場合は、両罰規定といって、行為者本人だけでなく法人にも最大1億円以下の罰金が科されうる仕組みになっています。「知らなかった」では済まされない、かなり厳しいルールです。
怖いのは、実は罰則そのものよりも、その後に続く影響のほうかもしれません。無許可営業などで有罪となると、その後の一定期間(原則5年間)は建設業の許可を受けられなくなります(出典:e-Gov法令検索・建設業法)。つまり、目先の一件のために、将来きちんと許可を取って伸びていく道まで、自分でふさいでしまうことになりかねないのです。
そもそも「黙っていればわからない」は、思うほど通用しません。許可が必要な工事かどうかは、元請が下請に発注する際に許可の有無を確認するのが通例ですし、同業者や近隣からの情報、行政庁の立入検査などをきっかけに、無許可営業が明るみに出ることは珍しくありません。いちど問題になれば、上で見た罰則に加えて、次のような影響が重くのしかかってきます。
影響は自社だけにとどまりません。あなたに仕事を出した元請会社も、無許可の業者に許可が必要な工事をさせたとなれば、建設業法上の指導や監督処分の対象になりえます。「あそこは無許可だった」という話は、狭い業界ではあっという間に広がります。目先の550万円と引き換えに失うものが、あまりに大きいのです。
ここまで読んで、「では、契約を2つに分けて、それぞれ500万円未満にすればいいのでは」と考える方もいます。お気持ちは分かりますが、残念ながらこの"抜け道"はふさがれています。
建設業法施行令は、同じ工事を2つ以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の代金を合計した額で判断する、と定めています(出典:e-Gov法令検索・建設業法施行令)。たとえば550万円のフルリフォームを「本体工事300万円」と「内装工事250万円」の2本に分けて契約しても、合わせて550万円ですから、やはり許可が必要な工事として扱われます。
条文には「正当な理由にもとづいて分割したときは、この限りでない」というただし書きもあります。ただ、これは工期や施工上の都合でどうしても分ける必要がある、といった真っ当な事情がある場合の話です。単に500万円の壁を避けるための分割は、この「正当な理由」にはあたりません。手間をかけて分割の理屈をひねり出すくらいなら、分けずに一本できちんと契約し、そのうえで許可の問題を正面から解決するほうが、結局は近道です。何を盛り込んだ契約書にすべきかは、工事請負契約書に入れておきたい項目を解説した記事もあわせて参考にしてみてください。
ここからは前向きな話です。550万円クラスの仕事を、堂々と受けられるようにするにはどうすればよいか。現実的な道は2つあります。
今回の一件だけを無理なく成立させたいなら、建設業の許可を持っている会社と組むのがひとつの手です。許可を持つ会社が元請となって契約を受け、あなたの会社はその下で、自社が対応できる範囲を分担する。こうすれば、あなた自身は無許可のまま違法状態に陥ることなく、仕事に関わることができます。規模の大きな現場では、元請が下請各社の許可や施工体制を施工体制台帳という書類で管理する仕組みもあり、こうした連携は建設業では珍しいことではありません。ただし、これはあくまで「今回をしのぐ」対応です。同じような引き合いをこの先も受けたいなら、次の選択肢が本命になります。
いちばんの王道は、自社で建設業の許可(一般建設業許可)を取ってしまうことです。従業員5名の会社だからといって、取れないわけではありません。主な要件は、次のようなものです(出典:国土交通省・建設業の許可の要件)。
ここで安心してほしいのが、財産的な基礎の「500万円」です。これは今この瞬間に現金500万円を握りしめている必要はなく、金融機関の残高証明などで「500万円以上を用意できる」と示せれば足ります。要件と聞くと身構えてしまいますが、長く堅実に工事店を営んでこられた会社なら、実は満たしているものが多いのです。
期間の目安も知っておきましょう。書類がそろってから許可が下りるまで、都道府県知事の許可でおおむね1〜2か月(自治体により30〜45日程度)が一般的です。ただし、経営経験や実務経験を証明する書類の準備に時間がかかることが多く、思い立ってから取得までは、余裕をみて数か月と考えておくとよいでしょう。申請の手続きそのものは自分で進めることもできますし、書類づくりに不安があれば、建設業許可を専門にする行政書士に代行を頼むこともできます。段取りのイメージを、次の図にまとめました。

最後に、少し視点を変えてみます。あなたに仕事を出す「発注する側」から見ると、無許可の業者はどう映るのでしょうか。ここを知っておくと、許可を取る意味がもっとはっきりします。
発注者や元請にとって、500万円を超える工事を無許可の業者に任せることは、自分たちも違法状態に片足を突っ込むことを意味します。加えて、許可という後ろ盾がない分、万一トラブルが起きたときの安心感も乏しい。逆にいえば、建設業の許可は「経営・技術・誠実さ・財産のひととおりの基準を満たした会社です」という、国が与えたお墨付きです。発注側からすれば、これほど分かりやすい信頼の証はそうありません。
実際、公共工事や規模の大きな民間工事では、建設業の許可を持っていることが取引の前提になっている場面が少なくありません。入札に参加するにも許可が要りますし、大手の元請が下請を選ぶときにも、許可の有無は最初のふるいになります。無許可のままだと、こうした土俵にそもそも上がれない、ということが起こり得ます。
だからこそ、許可を持っていることは、そのまま営業の武器になります。無許可のままでいると、金額の大きい仕事や、信頼が問われる仕事から、少しずつ外れていってしまう。反対に、許可を取った会社は、これまで泣く泣く断ってきた550万円クラスの引き合いを、正面から「はい、やらせてください」と受けられるようになります。元請からも指名されやすくなり、仕事の幅そのものが広がっていきます。
今回いただいた550万円のお話は、たしかに「いまのままでは請けられない、危ない橋」です。けれども見方を変えれば、「そろそろ次のステージに上がるときですよ」という、うれしい合図でもあります。慌てて無許可で飛びつくのではなく、この機会に足場を固める。そうすれば、同じような引き合いを、この先は堂々と受け続けられる会社になれます。まずは自社の経営経験・技術者の資格・資金の3つを棚卸しするところから、始めてみてください。
この「建設業のトラブル相談」では、こうした「これって聞いてもいいのかな」と迷うような、経営のちょっとした困りごとを、これからも一つずつ取り上げていきます。