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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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元請や役所から「工程表はネットワークで」と言われて困っていませんか。○と矢印の読み方からバーチャートとの違い、書き方5ステップ、工期を決めるクリティカルパスの計算まで、7作業の工事例と図解でやさしく解説します。
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元請や役所から「工程表はネットワークで出してほしい」と言われて、手が止まってしまった経験はありませんか? 普段バーチャート(横線式)の工程表しか使っていないと、○と矢印だらけの図はとっつきにくいですよね。
でも、ネットワーク工程表の仕組みは、一度わかってしまえば意外とシンプルです。この記事では、ネットワーク工程表とは何かというところから、バーチャートとの違い、書き方の5ステップ、そして要(かなめ)となる「クリティカルパス」の求め方までを、実際の数字を使った工事の例で解説します。2級土木施工管理技士など、施工管理技士試験の対策にもそのまま使える内容です。
ネットワーク工程表とは、工事に含まれる一つひとつの作業を矢印(→)で、作業と作業の区切りを丸印(○)で表し、作業同士のつながりを網の目(ネットワーク)状に図示した工程表です。矢印を使って描くことから「アローダイアグラム」「矢線図」「PERT図」などとも呼ばれます。
公的な定義もあります。JIS(日本産業規格)では、アローダイアグラム(矢線図)を「プロジェクトを達成するのに必要な作業の相互関係を結合点および矢線を用いて図示した手順計画図」と定義しています(出典:JIS Z 8121(オペレーションズリサーチ用語))。
難しく聞こえますが、要するに「どの作業が終わらないと、次のどの作業が始められないか」を目に見える形にした図だと考えてください。バーチャートが「いつ・何をやるか」を表す図だとすれば、ネットワーク工程表は「作業同士がどうつながっているか」まで表せる図です。この違いが効いてくるのが、後半で解説する「クリティカルパス」=工期を決めている一番長いルートの把握です。作業のつながりを描いているからこそ、どの作業の遅れが工期に直結するのかを数字で読み取れるわけです。
ちなみにネットワーク工程表のもとになったPERT・CPMという手法は1950年代後半にアメリカで生まれたと言われており、日本でも1967年にはJISで関連用語が定められています。半世紀以上使われ続けている、実績のある手法なんですね。
ネットワーク工程表の描き方には、作業を矢印で表す「アロー型」と、作業を箱(ノード)で表して矢印はつながりだけを示す「ノード型」の2方式があります。近年のプロジェクト管理ソフトではノード型が使われることも多いのですが、建設業の実務や施工管理技士試験で「ネットワーク工程表」と言えば、伝統的にアロー型を指すのが一般的です。この記事でもアロー型で解説していきます。
建設工事で使われる工程表には、大きく分けてバーチャート・ガントチャート・ネットワーク・曲線式(出来高曲線)の4種類があります。まずは全体像を比較してみましょう。

バーチャート工程表は、縦に作業名、横に日付を並べて、横棒の長さで各作業の期間を表す工程表です。見ただけで「いつ・何を・どのくらいの期間やるか」がわかり、作るのも読むのも簡単なので、建設現場でもっともよく使われていますよね。
ただし、バーチャートには構造上の弱点があります。横棒が並んでいるだけなので、作業同士のつながり、つまり「この作業が遅れたら、どの作業に響くのか」が図からは読み取れないのです。工種が順番に一列で進む工事なら問題になりませんが、複数の業者や工種が並行して動く工事では、どの遅れが致命傷になるのかが経験と勘に頼った判断になりがちです。ネットワーク工程表は、まさにこの弱点を埋めるための工程表です。
なお、バーチャートとよく混同される「ガントチャート」は、建設業界では慣行的に「横軸が日付ではなく進捗率(達成度)になっている工程表」を指すと区別されています。ガントチャートについて詳しくはガントチャート工程表とは?特徴と作り方、バーチャートとの違いは?で解説しています。また曲線式(出来高曲線)は、縦軸に工事全体の出来高(%)、横軸に日数を取り、工事全体の進み具合を予定と実績の曲線で管理する図です。工程表の種類全般については建設業の作業工程表とは?役割や種類、作り方、行程表との違いを解説の記事もあわせて参考にしてください。
ネットワーク工程表のメリットを整理すると、次のとおりです。
一方でデメリットもあります。
ここは正直にお伝えします。すべての工事でネットワーク工程表を書く必要はありません。使い分けの目安は次のとおりです。
国の直轄工事の基準でも「受注者は、工事内容に応じて適切な工程管理(ネットワーク、バーチャート方式など)を行うものとする」とされており(出典:国土交通省「土木工事施工管理基準及び規格値(案)」)、ネットワークとバーチャートは工程管理の二本柱として並記されています。どちらが優れているという話ではなく、工事の性質で使い分けるものなんですね。
ネットワーク工程表がとっつきにくい理由の半分は、専門用語のせいです。とはいえ、実際に押さえるべき用語は多くありません。次の6つがわかれば読み書きできます。
用語 | 図でのあらわし方 | 意味(かみくだくと) |
|---|---|---|
イベント(結合点) | ○印+番号 | 作業と作業の区切り目。「ここまで終わった」という節目 |
アクティビティ(作業) | 矢印(→)+作業名 | 実際の作業そのもの。矢印の向きが工事の進む順番 |
ダミー | 点線の矢印 | 日数ゼロの仮想の作業。実線の矢印だけでは表せない順序関係を示す補助線 |
クリティカルパス | 太線・色付きで強調 | スタートからゴールまで一番日数がかかるルート。工期はこの長さで決まる |
フロート(余裕時間) | 計算で求める | その作業が「あと何日遅れても工期に響かないか」を表す日数 |
最早開始時刻・最遅開始時刻 | 結合点のそばの数字 | その作業を一番早く始められる日/工期に間に合う範囲で一番遅く始められる日 |
これらの用語はJISでも定義されています。たとえばクリティカルパスは「すべての経路のうち、その長さが最も長い経路。工期はこの長さにより定まり、この経路上の作業は重点管理の対象となる」、余裕時間(フロート)は「工期に影響することなく、作業を遅らせうる時間」と定められています(出典:JIS Z 8121(オペレーションズリサーチ用語))。本文ではこのあと、クリティカルパスは「一番時間がかかるルート」、フロートは「あと何日遅れても大丈夫かの日数」という言い換えで進めます。
ここからは、小さな内装改修工事(7作業)を例に、実際にネットワーク工程表を書いてみましょう。手順は5ステップです。
まず、工事に含まれる作業をリストアップします。細かくしすぎると図が複雑になるので、最初は「業者や職種の切り替わり」くらいの粒度で十分です。今回の例では、準備・養生/解体/電気配線/設備配管/天井下地/壁・床下地/内装仕上げの7作業とします。
次に、各作業について「この作業の前に終わっていなければならない作業(先行作業)」と「かかる日数」を整理します。ネットワーク工程表づくりの実質的な中身はこの表づくりで、ここが決まれば図は機械的に描けます。
記号 | 作業 | 日数 | 先行作業 |
|---|---|---|---|
A | 準備・養生 | 2日 | なし |
B | 解体 | 3日 | A |
C | 電気配線 | 2日 | B |
D | 設備配管 | 3日 | B |
E | 天井下地 | 3日 | C |
F | 壁・床下地 | 4日 | D |
G | 内装仕上げ | 4日 | EとFの両方 |
ポイントは、解体(B)のあとに電気配線(C)と設備配管(D)が並行して走ることと、内装仕上げ(G)は天井下地(E)と壁・床下地(F)の両方が終わらないと始められないことです。この「並行」と「合流」を表現できるのがネットワーク工程表の持ち味です。
整理した表をもとに、左から右へ図を描いていきます。基本ルールは次の4つです。
矢印の上に作業名、下に日数を書き込めば完成です。今回の例を図にすると、次のようになります。

準備・養生(A)と解体(B)が一列に進んだあと、③で電気配線(C)と設備配管(D)の2ルートに分かれ、それぞれ天井下地(E)・壁・床下地(F)へ続いて、⑥で合流してから内装仕上げ(G)に入る。工事の流れがそのまま図になっているのがわかりますよね。
なお今回の例では使いませんでしたが、「2つの作業が同じ○から出て同じ○に入る」形になったときは、片方をいったん別の○に着けて、日数ゼロの点線矢印(ダミー)でつなぐのがルールです。ダミーはJISでも「本来の矢線だけでは正確に表現できない作業の相互関係を矢線図に示すために補助的に用いる仮想的な作業」と定義されている、正式な部品です(出典:JIS Z 8121(オペレーションズリサーチ用語))。
図ができたら、最後にクリティカルパス=一番時間がかかるルートを確認します。ここがネットワーク工程表の主役なので、章を改めてじっくり解説します。
クリティカルパスの求め方は、実は足し算だけでできます。手順は3ステップです。
先ほどの内装改修工事の例で、実際にやってみましょう。スタート①からゴール⑦までのルートは2本あります。
長いのはルート2の16日です。つまりクリティカルパスはA→B→D→F→G(準備・養生→解体→設備配管→壁・床下地→内装仕上げ)で、この工事の工期は16日と決まります。

ここで大事なのは、2つのルートの「差」です。ルート1(電気配線→天井下地の側)は14日で、クリティカルパスより2日短くなっています。これはつまり、電気配線と天井下地は、合わせて2日までなら遅れても工期に影響しない(=フロートが2日ある)ということです。逆に、クリティカルパス上の5作業には余裕が1日もありません。ここが1日遅れれば、工期がそのまま1日延びます。
「どの作業なら職人の都合に合わせて1日ずらせるか」「どの作業だけは何としても予定どおり進めるべきか」。この判断が経験と勘ではなく数字でできるようになるのが、ネットワーク工程表の一番の値打ちです。
クリティカルパスは、試験のための机上の知識ではありません。中央建設業審議会が令和2年7月に決定した「工期に関する基準」には、各工種の工程の遅れが全体の工期の遅れにつながらないよう、受発注者が常に工程管理のクリティカルパスを認識し、クリティカルパス上の作業の進捗を促進するよう適切に進捗管理を行う必要がある、と明記されています(出典:国土交通省「工期に関する基準」(中央建設業審議会決定))。
同基準では、追加工事や設計変更の協議にあたって、クリティカルパス等を考慮して申出の期限をあらかじめ受発注者間で決めておくことも有効とされています。工期がタイトなとき、発注者や元請に「この作業が遅れると工期全体がこれだけ延びます」と図と数字で説明できるかどうかで、工期交渉のしやすさは大きく変わってきますよね。
2級土木施工管理技士などの第一次検定では、ネットワーク式工程表の計算問題が定番です。直近の令和8年度2級土木(第一次検定・前期)でも、ネットワーク式工程表の図を示して「クリティカルパス上の作業」「作業Hの最早開始時刻」「工程全体の工期」を答えさせる問題が出題されました(出典:全国建設研修センター「令和8年度2級土木施工管理技術検定 第一次検定(前期)試験問題」)。
問われているのは、この記事でやった「ルートを書き出して足し算し、一番長いものを選ぶ」という作業そのものです。受験を予定している方は、上の例を紙に書き写して自分の手で計算し直してみるのが、一番の練習になります。
「ネットワーク工程表 エクセル」と検索する方は多いのですが、先に正直なところをお伝えすると、エクセルにネットワーク工程表の専用機能はありません。作る場合は、図形機能を使った手作業での作図になります。
ただし、図形での作図は修正に弱いのが難点です。作業の順番が1つ変わるだけで矢印の引き直しになり、思った以上に手間がかかります。セルの塗りつぶしで管理できるバーチャートと違って、エクセルとの相性はあまりよくないのが実情です。
そこで、町場の工事での現実的な落としどころとしては、次のような運用をおすすめします。
大事なのは、きれいな図を清書することではなく、「どのルートが工期を決めているのか」を把握しておくことです。図はラフでも、クリティカルパスの考え方さえ工程管理に持ち込めば、遅れへの手の打ち方は確実に変わります。
最後に、この記事の要点をまとめます。
工程管理そのものの考え方や進め方については、工程管理とは?建設業で重要な理由や管理方法、進捗管理との違いは?の記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。