2025年6月からの熱中症対策の義務化で、現場にWBGT計(熱中症指数計)をどう選べばいいか迷いますよね。WBGTと気温の違いから、義務の正確な中身、JIS適合品の見分け方、携帯型や据置型などタイプ別の価格、現場での置き場所や記録の残し方まで、会社として備える視点で整理しました。
AI搭載
コンクルーAI
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーAIひとつで完結


真夏の現場で、朝はそうでもなかったのに昼前から急に一人がフラつき出す。声をかけると「大丈夫です」と言うけれど、様子がいつもと違う。こういう場面を一度でも経験した社長さんは、少なくないと思います。熱中症は、気づくのが遅れると一気に重くなります。そして2025年6月からは、暑い中での作業について、会社としての備えが法律で義務になりました。その備えの入口になるのが、現場の暑さを数字で教えてくれるWBGT計(熱中症指数計)です。
とはいえ、いざ「うちの現場にも置こう」と思うと、数千円のものから十万円を超えるものまであって、何を基準に選べばいいのか分かりにくいですよね。しかも社長の立場だと、一台の良し悪しだけでなく、何を根拠に選ぶか・何台どこに置くか・記録をどう残すか・義務化にちゃんと足りているかまで考えないといけません。
この記事では、WBGT計を「会社として現場に用意する道具」として、選び方から現場での使い方までまとめて整理します。義務化の中身は厚生労働省の一次情報で確認し、WBGTと気温の違いや、JIS適合品の見分け方、タイプ別の価格の目安、現場での運用まで、順番に見ていきます。読み終えるころには、自社の現場に置く一台が具体的にイメージできるはずです。
WBGTは「湿球黒球温度」の略で、暑さによる体への負担を表す指数です。単位は気温と同じ℃で出てきますが、中身は気温そのものとは違います。人の体は、暑いと汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を奪って体温を下げています。だから同じ気温でも、湿度が高くて汗が乾きにくい日ほど、体には危険なんですね。WBGTは、そうした体への負担を数字にするために、①湿度 ②日射や照り返しなどの輻射(ふくしゃ)熱 ③気温の3つを取り込んでいます。(出典:環境省 熱中症予防情報サイト)
この3つの重みが、気温との一番の違いです。屋外(日射がある場合)のWBGTは、湿球温度・黒球温度・乾球温度(気温)を、おおよそ湿度7・輻射熱2・気温1の割合で組み合わせて計算します。つまり、私たちが天気予報で見る「気温」は、WBGTの中では1割ほどの重みしかありません。逆に湿度が7割を占めているので、気温が同じ32℃でも、湿度が高い日や照り返しの強い場所では、WBGTはぐっと高く出るわけです。(出典:環境省 暑さ指数について学ぼう)
ここが現場で大事なところです。「今日は気温30℃だから、去年の猛暑よりマシだろう」と思っていても、湿度が高くて風がなく、アスファルトやコンクリートの照り返しがある現場では、WBGTは危険な水準まで上がっていることがあります。気温だけを頼りにすると、この「見えない危険」を見落としてしまう。だからこそ、湿度と照り返しまで含めて一発で教えてくれるWBGT計が要る、というわけです。
2025年(令和7年)6月1日、改正された労働安全衛生規則(第612条の2)が施行され、暑い中で作業をさせる事業者に、熱中症への備えが義務づけられました。これまで「努力してください」だった部分が、罰則付きの義務に格上げされた、と考えると分かりやすいです。(出典:厚生労働省リーフレット(職場における熱中症対策の強化について))
義務の対象になるのは、「WBGT28℃以上、または気温31℃以上」の環境で、「連続1時間以上、または1日4時間を超えて」行うことが見込まれる作業です。夏場に屋外でまとまった時間、体を動かす建設現場の多くは、これに当てはまると考えておいたほうが安全です。暑さの条件(WBGTか気温)と、時間の条件のどちらも満たす作業が対象、という読み方になります。
事業者に求められるのは、大きく「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」の3点です。中身をかみくだくと、次のようになります。
そしてこれを怠って作業をさせた場合、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金の対象になり得ます。安全書類の一部として、体制や手順を書面で残し、現場に掲示しておく形にしておくと確実です。書類の整え方は安全書類(グリーンファイル)の基本もあわせて参考にしてください。
ここは少しだけ丁寧にお伝えします。今回の義務の中身は、あくまで「体制」「手順」「周知」であって、「WBGT計で測ること」そのものが罰則付きの義務、というわけではありません。ただし厚労省は、対象になるかどうかを判断し、暑さに応じて作業を管理するために、WBGTを実際の現場で測ること(測れない場合は熱中症予防情報サイトなどで基準値を把握すること)を求めています。(出典:厚生労働省リーフレット)
つまり、「今日この現場は対象なのか」「今、作業を止めるべき暑さなのか」を判断する土台がWBGTの数字であり、その数字を現場で得る道具がWBGT計だ、という位置づけです。義務に確実に応えていくうえで、実質的に欠かせない一台になります。
背景も知っておくと、備える意味が腹落ちします。職場の熱中症による死亡災害は、近年2年連続で年30人ほどの水準で、熱中症は死亡に至る割合が他の労働災害の約5〜6倍。しかも亡くなった方の約7割が屋外作業でした。そして死亡事例のほとんどが、「初期症状の放置・対応の遅れ」によるものです。暑さを早く数字でつかみ、異変を早く見つけて早く対処する。義務化は、この当たり前を仕組みにしてください、というメッセージなんですね。(出典:厚生労働省リーフレット)
ネット通販で「WBGT」と検索すると、数千円のものから業務用の高価なものまで、たくさん出てきます。値段の差は、大きく分けて「測り方の正しさ」と「機能」から来ています。まず測り方の正しさを見分ける目印が、JIS規格です。
電子式のWBGT指数計には、JIS B 7922という日本産業規格があります(2017年に制定、2023年に改正)。この規格に適合した製品は、温度や湿度を測るセンサーの精度が一定以上あることが担保されています。精度によってクラスが分かれていて、WBGT値の許容差がクラス1で±1℃、クラス1.5で±1.5℃、クラス2で±2℃と定められています。数字が小さいほど、より正確という意味です。(出典:日本規格協会 JIS B 7922:2023)
市販の携帯型では、タニタの「熱中アラーム TT-562」がクラス2に適合するなど、手ごろな価格帯でも規格適合をうたう製品が増えています。(出典:タニタ公式サイト)義務化への対応として現場の暑さを判断するなら、表示された数字を信頼できることが大切なので、JIS B 7922適合品を選ぶのが基本の目安になります。
もう一つ見てほしいのが、黒球(こっきゅう)が付いているかどうかです。黒球は、日射や地面・壁からの照り返し(輻射熱)を受け止めて測るための、黒い球状のセンサーです。屋外のWBGTでは、この輻射熱が2割の重みを占めていました。ところが安価な「WBGT付き温湿度計」の中には、黒球を持たず、気温と湿度から簡易的に数値を出しているだけのものがあります。こうしたタイプは、室内の目安にはなっても、照り返しの強い屋外では実際より低い数字が出てしまうことがあります。真夏のアスファルトの上で作業する現場では、黒球付き(黒球式)を選ぶのが安心です。安価品がすべてダメというわけではありませんが、「JIS適合か」「黒球があるか」の2点は、値段だけで飛びつく前に確認したいポイントです。
測り方の土台が分かったら、次はタイプ選びです。現場で使うWBGT計は、大きく4つのタイプに分けられます。それぞれ向く場面が違うので、自社の現場を思い浮かべながら読んでみてください。価格は2026年7月時点の各社公式・実勢を目安にしています。
手のひらサイズで、首から下げたり腰道具に付けたりして持ち歩けるタイプです。作業場所そのものに近づけて、その場のWBGTを測れるのが強みですね。黒球式で警報も付いた製品でも、比較的手ごろに始められます。たとえば佐藤計量器の黒球型携帯熱中症計「SK-181GT」は税込7,700円(出典:佐藤計量器製作所 公式オンラインショップ)、前述のタニタ TT-562も実勢で6,000〜8,000円台と、おおむね数千円〜1万円前後が目安です。まず1台、現場に置いてみるならここからが入りやすいでしょう。
詰所の入口や休憩所、作業場の一角に固定して、大きな画面でWBGTと危険度を常時表示するタイプです。誰もが通りがかりに数字を確認できるので、現場全体で暑さを共有しやすいのが利点です。価格は表示の大きさや警報の有無で幅がありますが、おおむね1万円台〜数万円を見ておくとよいでしょう。人が入れ替わり立ち替わりする現場や、朝礼の場に一台あると効いてきます。
厳密には携帯型・据置型と重なりますが、設定した値を超えると音や光で知らせてくれる警報機能は、現場では特に重視したい要素です。人は作業に集中していると、暑さの数字までは見に行きません。基準を超えたら勝手に鳴ってくれれば、「そろそろ休憩と水分を」というきっかけを逃さずに済みます。前述のSK-181GTやTT-562のように、携帯型でも警報付きの製品が多いので、選ぶときは「警報が付いているか」「基準値を自分で設定できるか」を確認しましょう。
測った値をメモリに保存したり、パソコンにCSVで取り出したり、通信でクラウドに送って離れた事務所から見たり、といった上位機能を持つタイプです。たとえば京都電子工業の熱中症指標計「WBGT-302/302plus」は、携帯型では高精度のクラス1.5・IP65の防塵防水で、3万点のデータを保存でき、通信でデータを残せる仕様です。(出典:京都電子工業 公式サイト)価格は機能に応じて上がり、数万円〜十数万円が目安です。義務化で求められる記録・管理をしっかり残したい現場や、複数の持ち場をまとめて見たい現場で候補になります。
タイプ | 向いている使い方 | 価格の目安 |
|---|---|---|
携帯型(黒球式・警報付き) | 持ち歩いて、作業場所ごとに測る。まず1台から | 数千円〜1万円前後 |
据置・常設型 | 詰所や作業場に固定し、大画面で全員が見る | 1万円台〜数万円 |
警報付き(機能) | 基準超えを音で知らせ、見落としを防ぐ | 携帯・据置に付帯 |
データ記録・通信型 | 記録を残す、遠隔でまとめて監視する | 数万円〜十数万円 |
(価格・仕様の出典:佐藤計量器製作所/タニタ公式サイト/京都電子工業。いずれも2026年7月時点。据置型・警報付きの価格帯は各社製品からの目安)

道具は、置いて終わりではなく、使い方が決まってはじめて効いてきます。ここでは、買ったあとの運用のコツを整理します。
WBGTは、同じ現場でも場所によって変わります。日なたと日陰、風の通り道と行き止まり、地面がアスファルトか土か。照り返しの有無で数字が変わるので、実際に人が作業している場所そのもので測るのが基本です。事務所の中や日陰で測って「大丈夫」と判断すると、炎天下の持ち場の危険を見落とします。高さは、体が受ける暑さに近い1mくらいを目安に、直射日光が当たる実態のまま測りましょう。
その日の作業を始める前に一度測って、対象になる暑さかどうか、どんな注意で臨むかを共有します。あとは気温が上がる昼前から午後にかけて、こまめに確認するのが理想です。警報付きなら、基準を超えたときに音で教えてくれるので、この「こまめに」を機械に任せられます。
警報を鳴らす基準値は、後の表で紹介する作業の重さ別のWBGT基準値を目安に設定します。目安が分かりにくければ、まずは環境省の区分にならって、WBGT28℃(厳重警戒)で一段、31℃(危険)でもう一段、といった鳴らし方から始めるのも手です。現場の作業がきついほど、低いWBGTでも危険になる点だけ、頭に入れておいてください。
義務化では、体制や手順を「あらかじめ定めて周知する」ことが求められています。あわせて、その日のWBGT値・時間帯・とった対応(休憩や声かけ)をセットで記録に残しておくと、いざというときに「きちんと管理していた」証拠になりますし、翌年以降の判断材料にもなります。測った値やその日の対応、連絡体制は、紙のノートやホワイトボードだけだと、いつの間にか書かれなくなりがちですよね。安全書類と一緒に、現場の記録や周知をまとめて残せる現場管理アプリ(コンクルーAIなどもそうです)を使うと、記録が続きやすくなります。スマホやタブレットから入力できると、現場でその場で残せて便利です。端末選びは建設現場のタブレットの選び方も参考にしてください。

最後に、測ったWBGTをどう作業管理に結びつけるか、目安の表を見ておきましょう。厚労省は、作業の重さ(身体作業強度)ごとに、超えたら対策が必要になるWBGT基準値を示しています。ポイントは、きつい作業ほど、低いWBGTでも危険域に入ることです。
作業の重さ(区分) | 現場の作業例 | 暑さに慣れた人 | 慣れていない人 |
|---|---|---|---|
安静(区分0) | 休憩、座って待機 | 33℃ | 32℃ |
軽い作業(区分1) | 軽い手作業、記録付けなど | 30℃ | 29℃ |
中くらいの作業(区分2・中程度代謝率) | くぎ打ち、盛土、歩き回る作業 | 28℃ | 26℃ |
重い作業(区分3・高代謝率) | シャベル・ハンマー作業、 | 26℃ | 23℃ |
とても重い作業(区分4) | 激しく掘る、全力に近い連続作業 | 25℃ | 20℃ |
(出典:厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(令和8年3月18日 基発0318第1号)表1-1)
この表のもとだった旧「職場における熱中症予防基本対策要綱」は2026年3月18日に廃止され、上のガイドラインに置き換わりました。基準値そのものは変わっていませんが、実測したWBGT値に作業服に応じた「着衣補正値」を足してから基準値と比べる点が明確化されています。通気性の低い服や不浸透性の防護服を着る作業では、実測値より厳しく見る必要がある、ということです。
建設現場でよくある、シャベルで掘る・材料を運ぶ・ハンマーを振るう、といった作業は「重い作業(区分3・高代謝率)」にあたります。この場合、暑さに慣れた人でもWBGT26℃を超えたら要注意、というのが目安です。気温ではなくWBGTで26℃なので、体感の「まだいける」よりかなり早い段階で黄色信号がともることになります。しかも、暑さに慣れていない人——シーズン初めの時期や、長い休み明け、入って間もない人などは、基準がさらに数℃低くなります(区分3なら23℃)。慣れていない人がいる現場では、低いほうの数字で見ておくと安全です。
基準を超えそうなときは、日除けや送風でWBGT自体を下げる、作業の重さを一段軽くする、涼しい場所に移す、といった手が挙げられています。それでも下がらないなら、作業時間を短くして休憩と水分・塩分をこまめに、という予防対策に進みます。あわせて、環境省の日常生活の指針では、WBGT31℃以上で「危険」、28〜31℃で「厳重警戒」、25〜28℃で「警戒」、25℃未満で「注意」と4段階に区分しています。アラームの段階を決めるときの、分かりやすい物差しになります。(出典:環境省 熱中症予防情報サイト)
ここまで読んで、それでも迷ってしまう社長のために、はっきりした出発点をお伝えします。
まずは、黒球式でJIS B 7922に適合した警報付きの携帯型を1台、作業場のそばに置いて、毎朝その日の値を測ることから。数千円から始められて、基準を超えれば音で全員に知らせてくれます。あわせて、報告の連絡先と、体を冷やして搬送するまでの手順を紙にして現場に掲示し、朝礼で周知する。ここまでで、義務化で求められる「体制」「手順」「周知」の骨組みは形になります。
そのうえで、人が多く出入りする現場には据置の大画面タイプを足し、記録をきちんと残したい現場や複数の持ち場を抱える現場では、データ記録・通信型に広げていく。最初から完璧をそろえるより、携帯型の警報付きで小さく始めて、現場に合わせて育てていくほうが、無理なく続きます。
大事なのは、道具をそろえること自体ではなく、暑さを早く数字でつかみ、異変を早く見つけて、早く対処する——この流れを現場で回すことです。WBGT計は、その入口になる一台です。今年の夏を前に、まずは一台、現場の手が届くところに置いてみてください。そこから、会社としての熱中症の備えが少しずつ形になっていくはずです。