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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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工務店の倒産が近年増えています。この記事では、倒産が急増する背景と原因、実際の事例、倒産リスクの高い工務店の特徴を整理したうえで、資金繰りの対策や保証制度など、いまからできる備えをわかりやすく解説します。
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工務店の倒産が増えている理由は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
工務店の倒産が増加している理由の1つが、住宅市場の縮小です。
日本では少子高齢化や人口減少が進んでおり、新築住宅の需要は長期的に減少傾向にあります。さらに近年は中古住宅の流通活性化やリノベーション需要の拡大も進んでおり、新築住宅市場を取り巻く環境は厳しさを増しています。
実際に、国土交通省の建築着工統計によると、2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸となり、前年比6.5%減少しました。持家・貸家・分譲住宅の全てが減少し、全体では3年連続の減少となっています。また、この水準は1963年以来の低い水準になったとされています。
住宅を建てる人が減れば、工務店が受注できる案件も減少します。特に注文住宅を主力とする地域密着型の工務店は影響を受けやすく、受注不足による経営悪化が倒産につながるケースは少なくありません。
また、住宅市場の縮小によって工務店同士の競争も激しくなっています。受注を確保するために利益率を下げて契約するケースもあり、収益性の低下が経営を圧迫する要因となっています。
工務店経営を苦しめている大きな要因が、建設コストの上昇です。
2021年に発生したウッドショックでは木材価格が大幅に上昇しました。その後も物流費やエネルギー価格の上昇、世界的なインフレの影響などにより、建築資材全体の価格が高止まりしています。
実際に、帝国データバンクでも2025年の建設業倒産増加の背景には、人件費の急騰や建材価格の上昇など積み重なるコストアップ要因に対して、請負単価への価格転嫁が追いついていないことが挙げられています。
売上があっても利益が確保できなければ経営は安定しません。こうした利益率の低下が工務店の倒産リスクを高めています。
工務店業界では人材不足も深刻な課題です。若手人材の確保が難しい状況が続いており、職人の高齢化も進んでいます。
今後は団塊世代の引退によって職人不足がさらに深刻化することが予想されており、人材不足による施工能力の低下や受注制限が発生する可能性があります。
また、中小工務店では後継者不足も大きな問題です。たとえ経営が安定していても、後継者が見つからなければ事業を継続できず廃業を選択するケースがあります。人材不足と後継者不足は、工務店の倒産や廃業を増加させる要因となっています。
次に、工務店倒産の事例を紹介します。
富士ハウスは静岡県浜松市に本社を置いていた住宅メーカーです。木造軸組パネル工法を採用し、全国展開を進めていましたが、2009年1月29日に自己破産を申請しました。
帝国データバンクによると、負債総額は約433億円にのぼり、当時の住宅業界における大型倒産として大きな注目を集めました。
倒産の背景には、全国展開に伴う積極的な設備投資や事業拡大があります。工場設備や営業拠点の整備に多額の資金が必要となりますが、その後のリーマンショックによる住宅需要の低迷が経営を圧迫したとされています。
また、倒産時には約1,600棟の契約物件が存在し、そのうち約500棟が建築途中だったと報じられました。多くの施主が契約金や中間金を支払った状態で工事が中断され、返金問題や工事引継ぎ問題が発生したことで社会問題となりました。
富士ハウスの事例は、住宅需要が堅調に見える局面であっても、過度な設備投資や急速な事業拡大が資金繰りを悪化させる可能性があることを示しています。
アーバンエステートは埼玉県川口市に本社を置き、注文住宅事業を中心に展開していましたが、2009年3月24日に民事再生法の適用を申請しましたが、その後自己破産へ移行したとされています。
負債総額は約54億8,000万円にのぼり、当時の住宅業界における大型倒産の1つです。
同社は積極的な広告宣伝活動を行い、テレビCMやメディア露出によって知名度を高めていました。一方で、経営面では資金繰りの悪化が進行しており、下請け業者や協力会社への支払い遅延が発生していたとされています。
倒産時には約500棟の未着工・未完成物件を抱えており、多くの施主や協力会社に影響を与えました。その後、被害者による集団訴訟が起こるなど、大きな社会問題へと発展したとされています。
アーバンエステートの事例から学べることは、受注拡大や知名度向上だけでは安定した経営は実現できないという点です。売上を伸ばしていても、資金繰りや支払い管理が適切に行われていなければ経営は継続できません。
工務店の倒産リスクと経営対策は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
工務店経営では、受注件数だけでなく、工事ごとの利益を確実に確保することが重要です。
予実差異(予算と実績の差)が大きい状態や資材価格・人件費の上昇を十分に考慮しない見積もり、経験や勘に頼ったどんぶり勘定は、利益率の低下や赤字工事を招きます。
建設工事は工期が長く、工事途中でも原価が変動するため、実行予算と実際の原価を継続的に比較し、完工時の利益を予測しながら管理することが重要です。
そこで、会計業務でfreeeやマネーフォワードのようなクラウド会計ソフトを導入したり、原価・利益管理では建設業向けSaaSの活用が有効です。特に建設業向けSaaSでは、工事ごとの利益をリアルタイムで把握できるため、迅速な経営判断が可能となり、利益率の改善や倒産リスクの低減につながります。
工務店経営では、利益だけでなくキャッシュフローの管理も重要です。
工務店では、資材費や外注費、人件費などの支払いが先行するため、受注が順調でも一時的に手元資金が不足し、資金繰りが悪化するケースは少なくありません。特に複数の現場が同時に進行している場合は、運転資金が大きく膨らみ、帳簿上は利益が出ていても支払いができず、黒字倒産に陥る可能性があります。
こうしたリスクを防ぐには、月次だけでなく、週次・日次でも資金繰りを確認し、入出金の状況を細かく管理することが重要です。資金繰り表を活用しながら数カ月先までの資金の流れを把握することで、資金不足の兆候を早期に発見できます。
また、社内で十分に管理できない場合は、税理士など外部の専門家へ依頼することも有効です。自社だけで対応することにこだわらず、資金繰りの管理体制を整えることが、倒産リスクの低減につながります。
工務店が安定した経営を続けるためには、人材・組織管理の強化も欠かせません。
近年は、働きやすい職場だけでなく、知識やスキルを身に付けて成長できる環境であることを重視する若者が増えています。そのため、企業ホームページやオウンドメディア、SNSを活用し、施工実績だけでなく、教育制度や社員の働く様子など、自社の魅力を継続的に発信することが重要です。
また、採用CX(候補者体験)の向上も有効です。採用CXとは、求職者が企業を知ってから応募、面接、内定、入社するまでに得る体験を指します。採用ページの充実や丁寧な面接対応に加え、LINEを活用した応募受付や面接日程の調整、問い合わせ対応などを行うことで、応募者とのコミュニケーションが円滑になり、応募率や内定承諾率の向上につながります。
さらに、採用した人材を定着させるには、教育制度や資格取得支援に加え、福利厚生の充実も重要です。例えば、資格取得費用の補助や住宅手当、家族手当、退職金制度、健康診断の充実などは、従業員の満足度や定着率の向上につながります。人材が定着すれば、技術やノウハウの継承が進み、長期的な経営基盤の強化や倒産リスクの低減にもつながります。
人手不足が続くなか、限られた人数で生産性を高めるためには、業務効率化への取り組みも重要です。
現場管理や工程管理、図面・写真の共有などを紙やExcelで行っている場合は、情報共有に時間がかかり、入力漏れや確認漏れが発生しやすいです。近年は、建設業向けのクラウドツールを活用し、現場・事務所・協力会社がリアルタイムで情報を共有する工務店も増えています。
また、生成AI(人工知能)を活用することも有効です。例えば、見積書や提案書のたたき台の作成、メールやお知らせ文の作成、議事録の要約、マニュアル作成といった業務を効率化できます。
こうしたデジタルツールを活用することで、事務作業の負担を減らし、現場対応や顧客対応など、本来注力すべき業務へ時間を割けるようになります。結果として、生産性や収益性の向上、倒産リスクを低減できます。
工務店経営では、売上を1つの事業に依存しないことも重要です。
投資の世界には、「1つのカゴに全ての卵を盛るな」という有名な格言があります。これは、資産を1つに集中させず、リスクを分散するという考え方です。この考え方は工務店経営にも当てはまります。
新築住宅市場の縮小が続くなか、新築住宅だけを収益源としていると、市場環境の変化によって業績が大きく左右されます。そのため、自社の強みや既存顧客との関係を生かしながら、複数の収益源を持つことが重要です。
例えば、多くの工務店では、これまで培った施工技術を生かして、リフォームやリノベーション事業へ参入しています。水回り設備の改修や外壁塗装、省エネリフォームなどは継続的な需要が期待できる他、既存顧客との接点を増やし、リピート受注にもつながります。
また、不動産仲介事業へ参入し、土地探しから建築までを一貫して提案したり、中古住宅を購入・改修して販売する買取再販事業へ展開したりする工務店も増えています。この他、高齢者向け住宅や再生可能エネルギー関連など、自社の強みを生かした新規事業へ取り組む企業もあります。
ただし、事業を広げればよいというわけではありません。新規事業には専門知識や人材、資金が必要となるため、自社の強みや既存顧客との相乗効果を踏まえながら展開することが重要です。
工務店経営では、利益が出ていても資金繰りの悪化によって経営が不安定になることがあります。
そのため、資金繰りに不安が生じた場合は、早めに資金調達の方法を検討することが重要です。工務店が活用できる資金調達方法は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
銀行融資は、工務店が利用する代表的な資金調達方法です。運転資金や設備資金など事業の成長や資金繰りの改善を目的として幅広く活用されています。
特に、創業間もない工務店や民間金融機関からの融資が難しい場合は、日本政策金融公庫の活用が有効です。日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主を支援する政策金融機関であり、新規開業時や事業拡大時の資金調達先として利用されています。
また、地域密着で事業を展開する工務店では、信用金庫や地方銀行との日頃からの関係づくりも重要です。資金が必要になってから相談するのではなく、定期的に業績や今後の事業計画を共有し、信頼関係を築いておくことが大切です。
資金調達は、資金繰りが悪化してからでは選択肢が限られます。将来の資金需要を見据え、早い段階から金融機関と連携しておきましょう。
ファクタリングは、売掛金や請求書などの債権を売却して資金化する方法です。
融資とは異なり借入金ではないため、負債を増やさずに資金を調達できる特徴があります。また、金融機関の融資と比較して短期間で資金化できるケースもあります。
ただし、利用時には手数料が発生します。調達コストが高くなる場合もあるため、契約内容を十分に確認した上で利用することが重要です。
資金繰りに課題を抱えている場合は、公的な支援制度を活用できる可能性もあります。
例えば、日本政策金融公庫による融資制度や信用保証協会の保証付き融資などがあります。また、設備投資やDX推進、人材育成などを目的とした補助金・助成金を活用できる場合もあります。
資金調達の選択肢を広く持つことで、経営環境の変化にも柔軟に対応できます。
工務店が活用できる保証制度は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
住宅完成保証制度は、工事途中で施工会社が倒産した場合に備えるための制度です。
住宅建築では、施主から契約金や着工金、中間金などを受け取った後に工事を進めることが一般的です。しかし、万が一工務店が工事を継続できなくなった場合、施主は追加費用の負担や工事中断といった大きなリスクを抱えることになります。
住宅完成保証制度に加入している場合は、一定の条件の下で工事の引継ぎ支援や追加費用の補償などを受けられる可能性があります。
また、保証制度を提供する機関は登録事業者に対して審査を行うため、加入していること自体が一定の信用力を示す材料になります。近年は住宅購入者が保証制度の有無を重視するケースも増えており、他社との差別化や顧客の安心感向上につながる点もメリットです。
JIO完成サポートは、住宅瑕疵担保責任保険で広く知られる日本住宅保証検査機構が提供している完成保証制度です。
登録事業者が工事途中で倒産や事業継続困難な状況に陥った場合、他の施工会社による工事の引継ぎを支援し、住宅の完成をサポートします。
また、JIOは完成保証だけでなく住宅検査や瑕疵保険も提供しているため、品質管理と保証を併せて活用できる点が特徴です。施主にとって安心材料となるだけでなく、工務店にとっても信頼性向上につながります。
近年は住宅会社の経営状況に対する施主の関心も高まっているため、完成保証制度への加入は受注時の差別化要素の1つとなるでしょう。
住宅業界には、これまで紹介した住宅完成保証制度やJIO完成サポート以外にも、民間保証会社や住宅関連団体が提供する保証制度があります。
これらの制度は、工事途中で施工会社が事業継続できなくなった場合に備えるもので、工事の引継ぎ支援や費用補償などを行う点は共通しています。ただし、補償範囲や補償上限額、利用条件は制度ごとに異なります。
また、保証制度によっては完成保証だけでなく、アフターサービス支援や工期遅延への対応など、独自のサポートを用意しているケースもあります。
保証制度への加入は施主の安心感につながる一方で、保証料や加入条件も考慮しなければなりません。そのため、制度を比較検討する際は補償内容だけでなく、運営団体の実績や信頼性、自社の事業規模との適合性も確認することが大切です。
住宅瑕疵担保責任保険は、新築住宅の品質を確保するための保険制度です。
新築住宅を供給する事業者には、住宅品質確保法に基づき、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています。
万が一、引渡し後に対象部分の欠陥が見つかった場合は、工務店が補修費用を負担しなければなりません。住宅瑕疵担保責任保険へ加入していれば、補修費用などについて一定の補償を受けられます。
また、多くの保険法人では施工中に現場検査を実施しており、品質管理の向上にも役立ちます。住宅瑕疵担保責任保険は施主を保護する制度であると同時に、工務店が将来的な補修リスクへ備えるための制度でもあるのです。
最後に、工務店倒産に関するよくある質問とその回答を紹介します。
廃業と倒産は同じ意味ではありません。
廃業とは、経営者の意思によって事業を終了することです。後継者不在や経営者の高齢化、事業方針の変更などを理由に、事業を継続できる状態であっても会社をたたむケースが含まれます。
一方、倒産とは、資金不足などによって事業の継続が困難になった状態を指します。売上があっても支払いができなくなった場合や、債務を返済できなくなった場合などが該当します。
工務店業界では後継者不足が深刻化しているため、経営状況に問題がなくても廃業を選択するケースは少なくありません。そのため、「会社がなくなった=倒産」とは限らず、廃業という選択が取られることもあります。
資金が不足してからではなく、資金繰りに余裕がある段階で検討することが理想です。
建設業では、工事代金の入金よりも先に資材費や人件費、外注費などの支払いが発生します。そのため、受注が増えている場合でも、一時的に資金不足へ陥ることがあります。
また、資金繰りが悪化してから融資を申し込むと、金融機関の審査が厳しくなる可能性があります。急いで資金調達を行うことで、条件面が不利になるケースも少なくありません。
工務店経営では、資金繰り表などを活用しながら数カ月先の入出金を予測し、必要に応じて早めに金融機関や専門家へ相談することが重要です。
近年は後継者不足を背景に、工務店や住宅会社のM&Aが増えています。親族や社内に後継者がいない場合でも、第三者へ事業を引き継ぐことで会社を存続できる可能性があります。
M&Aを活用すれば、従業員の雇用や顧客との取引、これまで培ってきた技術やブランドを維持しながら事業承継を進められる点がメリットです。また、経営者にとっては廃業に伴う清算手続きや取引先への影響を抑えられる可能性もあります。
一方で、買い手探しや企業価値の算定、条件交渉には時間を要するため、経営状況が悪化してからでは選択肢が限られる場合があります。そのため、後継者問題に悩んでいる工務店は、早い段階からM&Aや事業承継を検討することが重要です。