資材・燃料の値上がりを前に、どこまで・いつ・何を相手に伝えるべきか迷う建設会社へ。契約前のおそれ情報通知、根拠資料の添え方、価格高騰後の協議申入れ、話し合いの記録までを、無料Wordテンプレートとともに実務順に解説します。
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資材や燃料の値上がりが見え始めたとき、「値上がりしそうです」と先方へいつ伝えるかは迷いますよね。見積を出す前に言えば関係がこじれそうで、黙って契約すると、後から材料費だけが膨らむかもしれない。そんなときは、口頭の相談だけで終わらせず、いつ、何を根拠に共有したかを残す準備が役に立ちます。
この記事では、建設業の価格転嫁で使う「おそれ情報通知書」「協議申入書」「協議記録」を一つにした編集可能なWordテンプレートを配布します。大事なのは、通知書が値上げを確定する請求書ではなく、契約前にリスクと根拠を伝えるための書面だということです。通知後の協議や変更の扱いは、元の契約書・相手方の指定様式・個別事情を確認して進めましょう。
国土交通省は、資材価格の高騰分の転嫁協議を円滑にするため、契約書における請負代金等の変更方法、おそれ情報の通知、価格高騰時の協議に関する仕組みを案内しています(出典:国土交通省「価格転嫁」)。このうち、おそれ情報は、工期や請負代金に大きな影響を及ぼす事象が起きるおそれを、請負契約の締結前に根拠情報とともに相手へ伝えるものです。
ここでいう例として、国土交通省は、主要な資機材の供給不足・遅延や価格高騰、特定工種での労務供給不足・価格高騰を挙げています。いずれも、自然的又は人為的な事象により生じ、当事者双方の責めに帰せないものという整理です。どの案件でも当てはまるわけではなく、工事内容・工期・取引関係によって判断が変わります(出典:国土交通省「よくあるご質問」)。
通知書だけで請負代金が変わるわけではありません。契約前に通知した事象が契約後に顕在化した場合は、契約書に定めた変更方法に沿って協議を申し入れる流れになります。協議記録も、値段や工期の変更を単独で確定する変更契約書ではありません。「通知」「協議の申入れ」「話し合った事実」「別途必要な変更書面」を分けておくと、後から役割を取り違えにくくなります。

このテンプレートは、相手に送る書面と社内・相手方双方で残す記録を、時系列で使い分けられるようにしています。マクロは含めていないので、社名や工事名を入れてWordで編集できます。
建設業の価格転嫁通知書・協議記録テンプレート(無料・登録不要)
契約前のおそれ情報通知書、事象顕在化後の協議申入書、打合せ後の協議記録をまとめたWordです。
請負代金・工期・施工内容の変更を確定する書類ではありません。
ファイル形式:Word(.docx)/マクロなし・登録不要
見積書の交付時など、契約を結ぶ前に使う書式です。工事名、見積番号、通知日、想定する事象、影響を受ける資材・工種、価格の基準日、根拠情報の情報源、添付資料、送付方法を記入します。宛名は「発注者」「注文者」「元請負人」など、実際の関係に合わせて差し替えてください。
契約前に伝えた事象が実際に起き、工期や請負代金への影響を確認したいときの書式です。関連する契約・通知の日時、顕在化した事実、確認したい影響、添付資料、希望する協議日を残せます。ここには「金額を変更することに合意した」と書かず、協議を申し入れた事実と確認材料を整理します。
打合せ後に、出席者、確認した資料、合意した点、未合意の点、次に誰が何をするかを記録する書式です。テンプレート冒頭に、変更契約書ではないことを明記しています。金額・工期・施工内容を変更するなら、元の契約で決めた方法や相手方の指定様式に沿って、必要な書面を別途確認してください。

おそれ情報の通知は、「材料が上がりそうです」と一文だけ書くより、相手が事実を確認できる形にすると後の協議が進めやすくなります。国土交通省の現行ガイドラインは、通常の事業活動で把握できる客観的な情報を根拠にし、通知する資機材の種類、価格の基準日、情報源を明示する考え方を示しています。一社の資材業者からの口頭説明だけでは、相手が真偽を確かめにくい情報として扱われます(出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン 第8版」)。
工事名、工事場所、見積番号、見積日、通知日をそろえます。見積書と一緒に送る場合も、あとで見積と通知を結び付けられる番号や日付を入れておくと探しやすくなります。
「資材価格の高騰」だけでなく、どの資材又はどの工種の労務に、どのような影響が出るおそれを共有するのかを具体的にします。ただし、起きていない値上がり額や工期延長を断定的に書く必要はありません。現時点で認識しているリスクとして記載します。
対象資材の種類、見積に用いた価格の基準日、統計・メーカー発表・取引先から受けた書面などの情報源を記入します。添付資料がある場合は、資料名と公表日又は受領日も残します。新しい調査を作ることより、日常業務で得た客観的な資料を、相手がたどれる形にすることが先です。
見積を送るメールに添付する、電子契約・調達システムの所定欄へ入れるなど、相手方が指定する経路を確認します。国土交通省は、見積書の交付時などに書面又はメール等の電磁的方法で通知し、双方が保存することが望ましいと案内しています(出典:国土交通省「よくあるご質問」)。公共工事や元請の調達では専用様式・提出時期が決められていることがあるため、その指定があればそちらを優先します。
通知書の控えだけでなく、送信メール、添付ファイル名、送付日、相手の受領返信、システム送信履歴を同じ工事フォルダにまとめます。相手に押印や受領署名を求めるかは、取引先の運用や契約に沿って決めます。テンプレートは受領欄を用意していますが、どの方法が適切かを一律に決めるものではありません。
契約前に通知した事象が契約後に顕在化したとき、国土交通省の案内では、受注者は請負代金等の変更について協議を申し出られるとされています。民間工事では注文者に誠実な対応の努力義務が示され、公共工事の発注者には協議に応じる義務が案内されています(出典:国土交通省「価格転嫁」)。ただし、個別にどの範囲を協議できるか、どの書面で合意するかは、契約内容や事実関係によります。
協議を始めるときは、協議申入書に「契約前に通知した日」「いま顕在化した事実」「確認したい影響」「根拠資料」を分けて書きます。最初から確定金額だけを示すより、見積時の単価、現在の仕入見積、統計又は公表資料など、双方が確認できる材料を整理しておく方が、論点がずれにくくなります。
打合せ後は、協議記録に決まったことと、まだ決まっていないことを分けます。例えば「追加資料を受注者が○日までに提出」「発注者が契約の変更方法を確認」「次回協議日」のように、次の作業を具体的にします。価格・工期・施工範囲の変更に双方が合意した場合も、その協議記録だけで済ませず、元の契約で定めた方法に沿う書面を別途確認しましょう。
建設業法令遵守ガイドラインは、元請・下請間の価格交渉について、協議内容を記録し双方が確認して残すことが認識のずれやトラブルの予防に役立つという考え方を示しています(出典:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン 第12版」)。これは協議結果を保証するものではありませんが、いつ・何を根拠に・どこまで話したかを振り返れる状態にはできます。
通知文や協議記録を作る前に、元の注文書・注文請書・請負契約書で、価格・工期・施工内容を変える場合の定めを確認します。書面の名称や相手方の承認手順が決まっている場合は、それに合わせます。取引書面の役割と整え方は、建設業の注文書・注文請書・工事請負契約書テンプレート無料も参考にしてください。
おそれ情報通知書はリスクと根拠の共有、協議申入書は話し合いの入口、協議記録は打合せのメモです。金額・工期・契約内容の変更を確定する書類ではありません。「この通知により請負代金を変更します」「この記録をもって変更契約とします」といった文言を入れる前に、契約と専門家の確認が必要です。
添付した統計・発表資料・仕入見積・送付メールが、工事番号又は見積番号で追える状態かを確認します。通知文の数字だけが独り歩きすると、後の説明が難しくなります。見積の有効期限や価格変動条項を含めた全体の備えは、資材高騰で見積をどう守る?見積有効期限・スライド条項・価格転嫁で整理しています。
建設業の価格転嫁通知書・協議記録テンプレート(無料・登録不要)
契約前のおそれ情報通知書、事象顕在化後の協議申入書、打合せ後の協議記録をまとめたWordです。
請負代金・工期・施工内容の変更を確定する書類ではありません。
ファイル形式:Word(.docx)/マクロなし・登録不要
おそれ情報は契約前の情報共有を想定したものです。すでに契約後に値上がり等が生じている場合、通知書をさかのぼって使うことで契約前通知と同じ扱いになるとは限りません。まず契約書の変更方法、相手方の指定様式、現在ある根拠資料を確認し、必要に応じて協議申入書と協議記録を使い分けてください。
通知書は、請負代金の増額や相手方の承諾を約束するものではありません。通知した事象が顕在化した後に、契約で決めた変更方法に沿って協議するための土台の一つです。実際の請求額、工期、合意書面は、契約・取引関係・根拠資料によって変わります。
テンプレートは宛名を差し替えて編集できますが、発注者・受注者間と元請・下請間では、参照する国土交通省ガイドラインや相手方の運用が異なります。公共工事では発注者の様式・約款を確認してください。迷う場合は、送付前に契約担当者や専門家へ相談するのが安全です。
価格転嫁の話は、値上がりしてから初めて切り出すほど難しくなりがちです。次の見積を出すときに、どの資材・労務に影響がありそうか、根拠資料をどこに保存するか、誰にどの経路で通知するかを決めておくと、いざというときに慌てにくくなります。
まずはテンプレートの空欄に、自社の工事名・見積番号・保存フォルダ名を入れてみてください。実際に送る前には、元の契約と相手方の指定様式を見直し、個別の判断が必要な部分は専門家にも確認しましょう。