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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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夜に事務所で現場写真を印刷し、FAXで届いた請求書を手打ちする。その時間を減らす第一歩を、全部やめずに「写真・日報・請求書」の3つだけに絞ってお伝えします。1業務×1現場×1か月から無理なく始められます。
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夜、事務所に一人残って、現場で撮った写真をコンビニのプリンターで印刷し、台紙にのり付けする。FAXで届いた資材屋さんの請求書を、老眼鏡をかけながら会計ソフトに手打ちする。職人さんが書いてくれた日報を、クセのある字と格闘しながら読み解く——。「この時間、いったい何なんだろう」とは思っても、忙しさに紛れて、気づけば同じ作業をまた明日も繰り返している。そんな社長さんは、少なくないはずです。
「ペーパーレス」「DX」という言葉は、なんだか大げさに聞こえます。うちみたいな小さい会社には関係のない話だ、と感じている方も多いでしょう。それに、職人さんの中には年配の方も多く、「今さら新しいやり方を覚えてもらうのは大変そうだ」という不安もありますよね。FAXには「確実に届く」「相手が電話しなくても内容を確認できる」という良さもあり、これまで頼りにしてきたのには理由があります。だからこそ、いきなり全部をやめる必要はありません。
この記事では、毎日発生していて、しかも紙の行き来がいちばん多い「写真」「日報」「請求書」の3つだけに絞って、置き換え方を具体的にお伝えします。今日から、あるいは今週から、無理なく始められる最初の一歩です。
こうした書類まわりの手間は、感覚の問題ではありません。地域の建設会社を対象にした調査でも、技術者の長時間労働の理由として「現場作業後の書類作成・整理に時間を要した」が上位に挙がっています(出典:建設業技術者センター「地域建設業の時間外労働の現状と削減の取り組み」)。この調査は2024年6月に、全国中小建設業協会(会員約2,400社)と4県の建設業協会(会員約1,800社)を対象に実施されたものです。夜の事務作業が減らないのは、あなたの会社だけの話ではないということです。
先に結論からお伝えします。紙とFAXをやめる最初の一歩は、業務のすべてをデジタルに切り替えることではありません。まず「写真」「日報」「請求書」の3つだけを置き換えることです。
なぜこの3つなのか。理由はシンプルです。
逆に言えば、この3つ以外は、今すぐ手をつけなくてかまいません。図面や契約書、元請から指定された様式の書類まで一気に変えようとすると、現場が混乱するだけで長続きしません。

置き換えに入る前に、もうひとつだけ大事な作業があります。それは「やめる紙」と「残す紙」を、自分の手で線引きすることです。
取引先の中には「FAXでしか受け付けない」と決めている資材屋さんや協力会社もあります。元請から「この書類は紙で」と指定されることもあるでしょう。そうした紙まで無理にやめる必要はありません。受信だけはFAXのまま残す、元請指定の書類はこれまでどおり紙で出す——それでいいのです。全部をゼロにすることが目的ではなく、自分たちの判断で減らせる紙から、減らしていくことが目的です。
最初に取り組みやすいのが、現場写真です。
これまでのやり方は、だいたいこんな流れではないでしょうか。現場でデジカメやスマホで撮る→事務所に戻ってプリンターで印刷する→台紙に日付と工事名を書いてのり付けする→ファイルにとじて保管する。あとで「あの現場の写真、どこだっけ」と探すときは、ファイルを1冊ずつめくることになります。
これを、撮った写真がそのまま現場ごと・日付ごとに自動で整理され、あとから検索して探せる状態に変えるのが、最初の置き換えです。印刷代もインク代も、貼る手間も、探す時間も減らせます。
つまずきやすいのは、私物のスマホで撮った写真の扱いです。「誰が撮ったどの写真を、どこに共有するか」というルールを最初に決めておかないと、写真が個人の携帯の中に散らばったままになってしまいます。難しいルールは要りません。「現場が終わったらその日のうちに送る」「共有先は決まったグループひとつだけ」という程度で十分です。
始め方も、いきなり専用のアプリを導入しなくてかまいません。まずは無料で使えるクラウドの写真共有サービスに、現場ごとのフォルダを作るところから試してみてください。それで物足りなくなった、あるいは現場数が増えて管理が追いつかなくなった、というタイミングで、工事写真に特化したアプリを検討すれば十分です。アプリ選びで迷ったら、工事写真アプリおすすめ4選にタイプ別の選び方をまとめています。写真だけでなく、現場管理そのものをひとつのアプリにまとめたい場合は、現場管理アプリ6選も参考になります。
次に取り組みやすいのが、日報です。
これまでは、職人さんが現場で手書きした日報を、帰社してから事務所でまとめて集める、あるいは現場からFAXで送ってもらう、というやり方が多いのではないでしょうか。字が読みにくくて何度も聞き直したり、FAXの受信を待ってから転記したり、地味に時間を取られる作業です。
これを、現場からスマホで、その日のうちに送ってもらう形に変えるのが2つ目の置き換えです。事務所に戻るのを待つ必要もなく、FAXの前で紙が出てくるのを待つ必要もありません。
ここでのつまずきポイントは、紙の日報の書式を、そのまま画面に持ち込んでしまうことです。紙の日報に書いていた項目を全部デジタルでも入力させようとすると、かえって手間が増え、「紙のほうが早かった」と現場から不満が出ます。まずは項目を思い切って減らし、「今日やった作業」「写真1枚」「一言メモ」くらいまで絞り込むのがコツです。職人さんに「入力してもらう」のではなく、「送ってもらうだけ」にする、という発想の転換が効きます。
日報にそもそも何を書くべきか、何のために作るのかを整理したい方は、建設業の作業日報の目的や記載内容、テンプレートもあわせてご覧ください。
3つ目は請求書です。
これまでは、請求書をパソコンで作成したあと、わざわざ紙に印刷し、封筒に入れ、切手を貼ってポストに投函する、という流れだったはずです。相手に届くまで数日かかりますし、月末になると封入作業だけでひと仕事になります。
これを、PDFを作ってメールで送るだけの形に変えるのが3つ目の置き換えです。印刷も封入も郵送も要らなくなり、相手にもその日のうちに届きます。
ここで、ひとつだけ知っておきたい制度の話があります。2024年1月から、メールなどでやり取りした請求書や領収書といった電子データは、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが求められるようになりました(出典:国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト)。準備が難しい事情がある場合の猶予措置も用意されていますが、これから請求書を電子化するのであれば、届いたPDFはプリントアウトせず、そのままフォルダに保存しておく習慣をつけておくと安心です。細かい保存要件まで気になる方は、国税庁のサイトや顧問の税理士さんに確認してみてください。
もうひとつ大事なのが、取引先への切り替えの伝え方です。ある日いきなり「今月からメールでお願いします」と一方的に変えると、相手が戸惑ってしまいます。事前に「来月からメールでの送付に切り替えたい」と一声かけ、しばらくは紙とメールを両方送る並行期間を置く、といった配慮があると、揉め事なくスムーズに移行できます。請求書そのものの書き方や記載項目から見直したい方は、一人親方の請求書の書き方も参考にしてみてください。
3つの置き換え方を紹介しましたが、いきなり全部を、全現場で同時に始めるのはおすすめしません。1つの業務を、1つの現場で、まず1か月だけ試してみてください。
順番はどれからでもかまいません。写真から始めると抵抗が少ない会社が多い印象ですが、請求書の郵送コストがかさんでいるなら請求書から、日報の転記に時間を取られているなら日報から、自社にとって効果を実感しやすいところから選んでください。
1か月試してみて、うまくいけば他の現場にも広げる。うまくいかなければ、やり方を変えるか、いったん元に戻してもかまいません。3つを同時に始めなければ、うまくいかなかったときの被害も小さくて済みます。
年配の職人さんが多い会社では、進め方にもうひと工夫あると安心です。まず、全員に一斉に「明日から変えます」と伝えるのではなく、教え役になる人を1人決めておくこと。分からないことがあったときに聞ける相手がいるだけで、抵抗感はだいぶ和らぎます。次に、電話でのやり取りは無理に減らそうとしないこと。写真や日報はデジタルに置き換えても、「ちょっと確認したいことがあるときは電話でいい」という安心感を残しておけば、変化そのものへの拒否感は薄まります。そして何より、覚えるのに時間がかかる人を責めないこと。「使えない」と決めつけず、「まだ慣れていないだけ」というスタンスで、根気よく付き合う姿勢が定着の分かれ目になります。

なお、写真・日報・請求書をバラバラのアプリで置き換えていくと、それぞれに同じ工事名や金額を入力し直す二重入力が発生しはじめます。3つとも軌道に乗ってきたら、たとえば「コンクルーAI」のような、写真も日報も請求も1つにまとめて扱える業務管理クラウドも、選択肢に入れてみるとよいでしょう。
3つを置き換えても、紙とFAXが完全にゼロになるわけではありません。それでいいのです。
取引先からのFAX受信は、無理にやめる必要はありません。複合機の中には、受信したFAXを自動でPDF化してパソコンやクラウドに保存できる機能を持つものもあります。紙で受け取ることそのものはやめられなくても、受け取ったあとの管理をデジタル化することはできます。
元請から指定された様式の書類、公共工事での提出書類なども、こちらの都合だけでは変えられません。これらは「やめられない紙」として、当面はこれまでどおり付き合っていくものだと割り切ってしまいましょう。
大事なのは、やめられない紙に使う時間を確保するために、やめられる紙をやめる、という考え方です。全部を変えようとすると疲れてしまいますが、「変えられるところだけ変える」であれば、無理なく続けられます。ツールの比較や、業務管理全体の効率化まで含めて考えたくなったら、建設業の業務管理を効率化するには?も参考にしてください。建設業全体のデジタル化の話を体系的に知りたい方は、建設DXとは?にまとめています。
費用はいくらからかかりますか。
写真の共有や日報の送信は、無料で使えるサービスから始められます。請求書のPDF化も、今お使いのパソコンとメールがあればすぐに始められます。専用のアプリやツールを検討する段階になって、初めて費用の話が出てくると考えておけば大丈夫です。金額は使うサービスによって幅があるので、複数のサービスを比較してから決めることをおすすめします。
職人が嫌がったら、どうすればいいですか。
「なぜ変えるのか」を先に伝えることが大切です。「事務所での作業時間を減らして、その分早く帰れるようにしたい」など、職人さん自身にとってのメリットを添えて伝えると、納得感が違います。それでも抵抗がある方には、無理強いせず、教え役を通じて少しずつ慣れてもらうくらいの気持ちで臨むとよいでしょう。
セキュリティは大丈夫ですか。
クラウドサービスは、多くの場合、自社のパソコン1台で管理するよりもセキュリティ対策がしっかりしている面があります。とはいえ、共有先の範囲を限定する、パスワードを使い回さないといった自社側のルールは必要です。何を・誰と・どこまで共有するかを、導入前に簡単にでも決めておくと安心です。
紙とFAXをやめる最初の一歩は、業務全部をデジタルに変えることではありません。写真・日報・請求書という、毎日発生していて紙の往復が多い3つだけに絞り、しかも1業務・1現場・1か月から試してみる。それだけで十分です。
進め方でつまずきやすいパターンについては、別記事「建設会社のDXが進まない本当の理由」でも整理する予定です。あわせて読むと、自社が同じ失敗を避けやすくなります。
今週、試しにひとつだけ選んでみてください。次の現場の写真を、印刷せずにクラウドで共有してみる。それだけでも、「この時間、何だったんだろう」と思っていた作業が、ひとつ減ります。