経営事項審査で新設された「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」のW点5点加点を解説。審査基準日と宣言日・取組開始日の関係、元請・下請の違い、必須・任意項目、有効期間、申請前の準備手順を公式資料で整理します。
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公共工事の入札参加を続ける会社にとって、経営事項審査(経審)の改正は見落としにくい話です。2026年7月1日以降に申請する経審では、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言状況が、W1の新しい評価項目として加わりました。要件を満たすとW点は5点です。
ただし、申請を出せば自動で加点される制度ではありません。宣言する立場、審査基準日と宣言日の前後関係、取組開始日、誓約書をまとめて確認する必要があります。この記事では、国土交通省の改正資料と制度ポータルのFAQに沿って、判断の順番を整理します。
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」は、建設技能者の処遇改善に取り組む事業者が、その内容を内外へ宣言・公表する仕組みです。宣言企業はシンボルマークを使え、企業一覧と宣言内容がポータルサイトで公表されます(出典:国土交通省「自主宣言制度について」)。
経審では、総合評定値PをX1、X2、Y、Z、Wの各指標で算出します。Wは「その他審査項目(社会性等)」です。2026年7月1日以降の申請で、W1の中に「自主宣言制度の宣言の有無」が新設され、評価は5点となりました(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」PDF p.2〜4)。経審・CCUSの確認時期をまとめて見たい場合は、中小建設会社の制度期限カレンダー|許可・税務・労務も参考にしてください。
ここでいう5点はWの評価項目の点数です。総合評定値Pは複数の指標を加重して求めるため、「Pが一律に5点上がる」「5点で入札が有利になる」とは言えません。実際の格付や入札参加資格は、発注者ごとの基準も確認してください。
国土交通省の改正資料では、加点の条件を「審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていること」としています。誓約する内容は、宣言した取組を取組開始日以降に行う、または行っていることです(出典:国土交通省「経営事項審査の主な改正事項」PDF p.1・p.4)。

確認する順番は、次のとおりです。
元請と下請のいずれの立場での宣言も経審の加点対象ですが、発注者の立場での宣言は対象外です。制度ポータルは、元請・下請・発注者の3つから1つの立場を選び、重複して宣言できないと案内しています(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「申請」)。
元請と下請の両方を行う会社は迷うかもしれません。公式FAQは、基本的には現場に入る立場の比率が高い方を選び、半々程度なら任意の立場でよいとしています。どちらで出すかは、会社の実態と必須項目を確認して決めましょう(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「FAQ」)。
自主宣言では、必須項目に記載がないものがあると宣言できません。一方、任意項目は、必須項目に加えてアピールしたい取組を書く欄で、無記載でも宣言できます(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「FAQ」)。
公式資料で示されている必須項目の柱は、次の3つです。
必須項目の柱 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
労務費の確保・行き渡り等 | 労務費・材料費等の内訳が明示された見積書、 | 立場に応じて確認すべき内容が異なる |
CCUSの活用 | 就業履歴を蓄積できる環境整備、 | 元請・下請、技能者を雇用するかで細目が異なる |
宣言企業との取引優先 | 取引先の選定にあたり、 | 発注を保証する意味ではない |
たとえば元請事業者のCCUS項目では、就業履歴を蓄積する環境整備に関する選択肢があり、技能者を雇用する場合には詳細型の技能者登録が必須と示されています。下請事業者は、雇用するすべての技能者について詳細型の技能者登録を行うことが示されています(出典:国土交通省「自主宣言制度に関する検討資料」PDF p.7)。
このように細目は立場や雇用状況で変わります。記事の表だけで申請可否を決めず、申請画面と「制度主旨と宣言手順」で自社に該当する必須項目を最終確認してください。任意項目は、会社独自の取組や、必須欄だけでは書き切れない追加の取組を示す用途です。公式FAQでは任意項目を無記載でも宣言できるとしており、「9分野から最大5項目を選ぶ」といった固定の数え方は現行資料で確認できません。
自主宣言は、申請時点ですべての取組が始まっていなくても申請できます。ただし、申請時に設定する取組開始日(宣言日から1年以内)までに、すべての取組を開始する必要があります。すべて実施済みであれば、宣言日と取組開始日は同日にできます(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「申請」)。
有効期間は「申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末まで」です。単純に申請日から2年ではないため、更新時期はポータル上の有効期間を確認してください(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「FAQ」)。
また、申請内容の確認からポータル掲載までは、内容により最大1か月程度かかると案内されています。経審の審査基準日との前後関係を誤らないよう、決算日・経審申請予定日・取組開始日を先に並べて、余裕を持って申請するのが安全です(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「FAQ」)。
制度対応を「加点の書類を1枚出す仕事」として扱うと、取組開始日以降の運用で困りがちです。次の4点を、経理・総務・現場の担当者で一緒に確認しましょう。
直近の決算日、次回の経審申請予定日、宣言日、取組開始日を同じ表に置きます。審査基準日より宣言日が後になると、この項目の加点条件を満たしません。
現場への入り方、雇用する技能者、CCUSの登録・履歴蓄積の実態を確認します。実態に合わない立場を選ぶのではなく、選ぶ立場で必須項目を継続できるかを確認します。
見積書の内訳、CCUSの登録状況、就業履歴を蓄積する運用、取引先選定の考え方など、宣言文の根拠を社内で説明できるようにします。将来開始する取組は、担当者・開始日・確認方法まで決めます。
誓約書など、加点に必要な書類の様式・掲載場所は、公式FAQでも所管の審査行政庁へ問い合わせるよう案内されています。一般的な解説だけで済ませず、自社の許可行政庁の最新案内を確認してください(出典:建設技能者を大切にする企業の自主宣言ポータル「FAQ」)。
建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度は、2026年7月1日以降の経審申請でW1に新設された5点の評価項目です。加点対象は元請または下請の立場での宣言であり、発注者の立場は対象外です。
重要なのは、宣言日・審査基準日・取組開始日の関係と、宣言した内容を実際に続けられる体制です。必須項目を満たし、誓約書をそろえたうえで、所管の審査行政庁の書式を確認する。この順で準備すれば、加点の見落としと、宣言後の運用漏れの両方を減らせます。