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監修者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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現場から写真が送れない、日報は夜に打ち直し。その原因は回線かもしれません。テザリング・モバイルルーター・ホームルーター・衛星の使い分けと、複数現場を回す会社が何台をどう契約して誰が持つか、経費処理や紛失時の段取りまで整理します。
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職人さんから「写真が送れない」「図面が開かない」と電話が来て、結局その日の日報は夜に事務所で打ち直し。心当たりがありませんか。写真アプリも日報アプリも入れたのに現場で使われない原因をたどると、アプリではなく回線が細いだけ、ということがよくあります。
今は各自のスマホのテザリングでしのいでいるけれど、月の途中で通信量が足りなくなる人が出る。鉄骨の中や地下に入ると電波が切れる。現場事務所を構えた物件では「ルーターを買うのか借りるのか」で毎回止まる。ネットで調べても「おすすめポケットWi-Fi◯選」ばかりで、現場が3つも4つも同時に動く会社が「何台をどう契約して、誰が持つのか」を決められる情報は見つかりませんよね。
この記事では、工事現場のWi-Fiを回線の種類の選び方から、会社として揃える台数・支給ルール・経費処理・紛失や故障のときの段取りまで、社長の目線でまとめて整理します。価格や仕様は2026年9月時点の各社公式情報をもとに確認し、ドコモ・ソフトバンク・楽天・au回線(UQ WiMAX法人)で現行販売されている6機種を同じ軸で比較表にしました。
回線選びでつまずく一番の原因は、速度や料金の表を先に眺めてしまうことです。現場で何を送るかが決まっていないと判断の軸がありません。用途はだいたい次の4つです。
もっとも通信量を食うのが工事写真です。毎日撮ってその日のうちに上げるので、月間データ量の主因はほぼこれです。覚えておきたいのは、写真は「必要以上に大きく撮らなくてよい」こと。国土交通省のデジタル写真管理情報基準では、有効画素数は黒板の文字と撮影対象が確認できることを指標に100〜300万画素程度(1,200×900程度〜2,000×1,500程度)と示され、不要に大きくするとファイル容量が増えるだけ、と解説されています(出典:国土交通省 デジタル写真管理情報基準 令和5年3月)。写真アプリ側の画質設定を見直すだけで、通信量が下がることがあります。
図面のPDFは1ファイルが大きい一方、毎日何十枚も落とすものではありません。朝に一度ダウンロードすれば、あとは端末の中で開くだけ。求められるのは「朝の一発が待たずに落ちる速度」で、容量への影響は写真ほどではありません。
日報や勤怠の送信、事務所とのチャットは、データ量はごくわずかです。ただし「軽い代わりに、切れると仕事が止まる」用途でもあります。日報・写真・工程をまとめて扱う業務管理アプリ(コンクルーAIなど)も、この回線の上で動きます。アプリの選び方は建設業の日報アプリの選び方|出面・写真・原価で比較も参考にしつつ、回線は「軽くても途切れない」ことを優先して考えるとよいでしょう。
元請から「現場の様子をビデオ通話で見せてほしい」と言われる場面や、事務所とのWeb会議が加わると、容量と安定性の要求が一段跳ね上がります。写真とは桁が違うデータ量を使うので、月に何時間使うかが「テザリングで済ませていいか」の見極めに直結します。
用途が見えたら、月の使用量をざっくり計算しておきます。あくまで架空の例ですが、写真1枚を約3MB、1現場で1日100枚、月20日稼働と置くと、3MB×100枚×20日=6,000MB、つまり月6GB。これに図面と日報・チャットを足して、1現場あたり月10GB前後が一つの目安です。Web会議がある現場は時間分を上乗せし、前提の枚数は自社の写真アプリの実績で置き換えて検算してください。
現場にネットを引く方法は大きく4つ。「向く現場」がはっきり違います。
一番手軽なのが、職長や監督の法人スマホをアクセスポイントにするテザリングです。追加の契約も機器もいらず、人数が少ない現場、工期の短い現場ではこれで十分なことが多いです。
弱点は、親になるスマホの通信量とバッテリーを食うこと。写真をどんどん上げる現場では、月の後半に親スマホの容量が尽きることがあります。法人スマホの持ち方や通信量の考え方は法人携帯を格安にする方法|建設会社のスマホの持ち方で整理しているので、テザリング前提なら合わせて見ておくと安心です。
手のひらサイズで持ち回りができ、複数の端末を同時につなげるのがモバイルルーターです。バッテリー駆動なので電源のない現場でも使え、人数が数人以上いる現場、タブレットとスマホの両方をつなぎたい現場ではこれが基本形です。タブレットをWi-Fi版で揃えている会社は、ルーターの有無でタブレットが使えるかが決まるので、建設現場のタブレットの選び方とおすすめ6機種【2026年版】で触れたセルラー版かWi-Fi版かの判断とセットで考えてください。
コンセントにつないで使う据置型で、同時接続台数が多く、電池切れの心配がありません。プレハブの現場事務所や車両を拠点にする現場に「置きっぱなしにする1台」という位置づけです。契約先によっては登録住所以外での利用に条件がある場合があるので、現場に移して使う前提なら契約時に確認しておきましょう。
工期が1年、2年と長く、事務所の場所も動かないなら光回線という選択肢もあります。ただし開通までの期間や工事費・最低利用期間の条件があるので、工期と照らして検討することになります。
一方、山間部やトンネルなど携帯の電波が入らない現場では、法人向けの衛星通信サービスという選択肢があります。たとえばKDDIの「Starlink Business」は法人向けの衛星ブロードバンドで、山間部・離島や有線回線を引きにくい場所、建設現場を用途として挙げています(出典:KDDI Starlink Business)。機器代や月額の条件は公式ページで確認してください。
レンタルWi-Fiは、工期3か月未満の単発の現場や繁忙期だけ台数を増やしたいときの手段です。現場が途切れず続く会社なら、購入して法人契約を結ぶほうが手間が減ります。どちらも、契約期間と工期のズレ(工期が早く終わったときに契約だけ残らないか)は申し込む前に確認したい点です。

4つを見比べると「全部の現場に専用回線を引くべきでは」と思うかもしれません。ですが、従業員50名以下の町場の会社に私たちがおすすめしたい現実解は、もっと軽い組み合わせです。
この組み合わせを推す理由は3つあります。
一つ目は初期費用です。全員分・全現場分のルーターを買うと、本体代も月額も台数倍になります。本当に要る現場にだけ置けば、入口の負担をぐっと下げられます。
二つ目は、すぐ代わりが効くことです。ルーターが1台壊れても、会社の予備を回せばその日のうちに復旧できます。予備がないと故障した現場は職長のテザリングに戻すしかなく、その間は写真も日報も滞ります。
三つ目は、職人さんが操作を覚えなくてよいことです。ルーターは電源を入れてWi-Fiにつなぐだけ、テザリングは普段のスマホの延長。道具は使ってもらえてはじめて意味を持ちますよね。
では、どこまでテザリングで済ませてよいのか。次のどれかに当てはまったら、その現場にはルーターを置く、と決めておくと迷いません。
置く現場が決まったら、いよいよ機種と契約です。現場用として見るべき点は限られています。
「最大17台」といった数字は、Wi-Fiでつなげる台数と有線LANやUSBでつなげる台数の合計であることが多いです。たとえばドコモのAterm CM51FDは「17台(Wi-Fi16台/有線LAN1台またはUSB1台)」という書き方。現場で使うのはほぼWi-Fi側なので、見るべきはWi-Fiの台数です。
モバイルルーターはバッテリーで動くので、公表の連続通信時間が朝から夕方までの作業時間を超えているかが判断の軸です。同じ機種でも5GはLTEより短くなるのが普通で、たとえばCM51FDは5Gで約540分、LTEで約600分。一日中つけっぱなしの現場では、モバイルバッテリーを一緒に持たせると安心です。
「5G対応」の文字に目が行きがちですが、現場での速さはエリアで決まります。契約前に各社のエリアマップで現場の住所を確かめてください(出典:NTTドコモ サービスエリア)(出典:ソフトバンク サービスエリア)(出典:au サービスエリア)(出典:楽天モバイル サービスエリア)。
Wi-Fiには2.4GHz帯と5GHz帯があり、5GHz帯はさらに5.2GHz・5.3GHz・5.6GHz帯に分かれます。気をつけたいのは、屋外で使ってはいけない帯域があることです。
周波数帯 | 屋内 | 屋外 |
|---|---|---|
2.4GHz帯 | ○ | ○ |
5.2GHz帯 | ○ | 条件付(一般機器は不可) |
5.3GHz帯 | ○ | × |
5.6GHz帯 | ○ | ○ |
5.2GHz帯の「条件付」は、総合通信局で登録局の手続きをした高出力のシステムに限った話で、モバイルルーターやスマートフォンのテザリングは5.2GHz帯を屋外で使えない、と総務省が明記しています(出典:総務省 電波利用ポータル 無線LANの屋外利用/上空利用について)。つまり、会社が普通に買えるルーターやテザリングを屋外で使うなら、Wi-Fiの設定を2.4GHz帯にしておくのが無難です。プレハブ事務所の中は屋内なので5GHz帯を使って構いません。多くのルーターは設定画面で帯域を切り替えられるので、屋外で使う機体は2.4GHz帯に固定しておきましょう。
海外の通販サイトで安いルーターを見つけたら、本体に「技適マーク」が付いているかを確認してください。技適マークの付いていない無線機を使うと電波法違反になる場合があり、その場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になるとされています(出典:総務省 電波利用ポータル 技適マークのQ&A)。会社として何台も配る機器ですから、国内キャリアやメーカーの正規品を選ぶのが安全です。
契約条件で見るのは次の4点です。
法人契約は個人向けとルールが異なる場合があるので、申し込み前に条件を一式もらっておくと安心です。
2026年9月時点で各社の公式ページで現行販売を確認できた6機種を比較表にまとめました。同時接続台数と連続通信時間はメーカー公表値をそのまま転記し、本体価格は公式に税込表記があるものだけ金額を書き、掲載のないものは「要見積」としています。
機種 | メーカー・回線 | 種別 | 通信規格 | 同時接続台数(内訳) | バッテリー・連続通信時間 | 本体価格 | 向く現場 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
Aterm CM51FD | NEC製・NTTドコモ | モバイル | 5G(SA/NSA)・4G LTE | 17台(Wi-Fi16+有線LAN1またはUSB1) | 4,000mAh・約540分 | 38,280円(税込・数量限定表示) | 少人数の移動現場・持ち回り |
Pocket WiFi 5G A401ZT | ZTE製・ソフトバンク法人 | モバイル | 5G(Sub6)・4G LTE | 65台(Wi-Fi64+USB1またはLAN1) | 5,500mAh・約8.2時間 | 要見積(公式に掲載なし) | 事務所で複数人が同時接続 |
Pocket WiFi 5G A503SH | シャープ製・ソフトバンク法人 | モバイル | 5G(Sub6)・4G LTE | 17台(Wi-Fi16+USB1またはLAN1) | 4,000mAh・約9.5時間 | 要見積(公式に掲載なし) | 移動現場・軽くて長時間 |
Rakuten WiFi Pocket 5G | 楽天モバイル | モバイル | 5G(Sub6)・LTE | 24台(メイン16+ゲスト16、 | 4,000mAh・約9時間 | 16,800円(税込・通常価格) | コストを抑えて台数を揃える |
Speed Wi-Fi DOCK 5G 01 | UQ WiMAX法人(au回線) | モバイル | WiMAX +5G・4G LTE | 49台(Wi-Fi48+有線LAN1またはUSB1) | 連続通信 約540分 | 要見積(月額は法人ページ参考:通常5,280円税込) | au回線で事務所・移動兼用 |
home 5G HR02 | NTTドコモ | 据置 | 5G・4G | 66台(Wi-Fi64+有線LAN2) | AC電源(バッテリーなし) | 73,260円(税込・ドコモ公式) | 電源のある現場事務所・プレハブ |
表の出典は次のとおりです(出典:ドコモ Aterm CM51FD スペック)(出典:ドコモビジネスオンラインショップ)(出典:ソフトバンク法人 A401ZT)(出典:ソフトバンク法人 A503SH)(出典:楽天モバイル Rakuten WiFi Pocket 5G)(出典:UQ WiMAX 法人のお客さま)(出典:ドコモ home 5G HR02)

ドコモ回線は、持ち回り用のAterm CM51FDと据置のhome 5G HR02で、移動現場と事務所現場を1つのキャリアで揃えられる系統です。CM51FDは約174gと軽く、Wi-Fi16台で少人数の現場には十分。HR02はWi-Fi64台+有線2台と据置型らしい余裕があります。どちらも公式に税込価格が出ていますが、CM51FDはドコモビジネスオンラインショップで「数量限定」の表示があるので、まとめて買う前に在庫を確かめてください。
ソフトバンク法人は、旧型のA401ZTと新型のA503SHが併売されています。違いは同時接続台数で、A401ZTがWi-Fi64台、A503SHがWi-Fi16台。複数人が同時につなぐ事務所用途ならA401ZT、軽さを取るならA503SH(約168g)という選び分けです。本体価格は公式に掲載がなく、法人窓口での見積になります。
楽天モバイルのRakuten WiFi Pocket 5Gは、通常価格16,800円(税込)と本体の入口が低く、台数を揃えやすい系統です。同時接続はメインSSID16台+ゲストSSID16台で合計24台までと、協力会社さんにゲスト側を配る運用と相性がよい作りです。
au回線は、au本体のポケット型ルーター(Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03)が2026年9月時点でau Online Shopの在庫状況「販売終了」の表示になっているため、法人でau回線のモバイルルーターを新たに揃えるならUQ WiMAX法人のSpeed Wi-Fi DOCK 5G 01が中心になります(出典:au Speed Wi-Fi 5G X12 NAR03 製品ページ)。Wi-Fi48台・連続通信約540分で、事務所と移動の兼用向きです。据置型のSpeed Wi-Fi HOME 5G L13(Wi-Fi32台+有線LAN2台)もUQ WiMAX法人で扱われています。本体価格はau公式のデータ通信端末一覧で48,600円(税込・2026年9月時点)です。法人契約の場合は窓口で最新の金額と在庫を確認してください(出典:au データ通信端末一覧)。
ここからが社長ならではの検討事項です。先に決めておくと導入後に慌てずに済みます。
台数は職人さんの人数ではなく「現場の型」で数えます。事務所のある現場は据置か大人数向けモバイルを1台、少人数の移動現場はテザリングで0台、会社の予備を1台。架空の例で、現場が4つ(事務所あり1・移動3)動いている会社なら、ルーターは事務所現場の1台+予備1台=2台、移動現場3つは職長のスマホのテザリング3回線、という数え方です。職人全員分を買う必要はなく、現場の数が増減してもこの型に当てはめれば台数は機械的に出せます。
ルーターは会社支給、回線は法人名義を原則にすることをおすすめします。理由は、紛失時に会社の担当者が回線を止められること、退職や配置換えで返却と引き継ぎがきれいにできること、通信量と請求を会社で一括して見られることの3つ。買ったら資産番号を振り、誰がどの機体を持っているかの貸出台帳を1枚作っておきましょう。
個人のスマホのテザリングを業務に使ってもらう場合は、通信費を手当で払うのか実費精算にするのかを決める必要があります。負担のしかたで給与として課税されるかの扱いが変わりうるため、顧問税理士に確認してください。
取得価額が10万円未満のものは、消耗品費などとして買った年に全額を経費(損金)にできます。ただし、事業に使い始めた年度に取得価額の全額を損金経理(費用として処理)していることが条件で、いったん資産に計上してから後の年度で費用に振り替えても認められません(出典:国税庁タックスアンサー No.5403)。比較表で公式価格が出ている3機種(CM51FD・Rakuten WiFi Pocket 5G・HR02)はいずれも10万円未満なので、1台ずつ買う分にはこの枠に収まる計算です。
10万円以上の機器でも、青色申告をしている中小企業者等には「少額減価償却資産の特例」があります。租税特別措置法第67条の5では、取得価額40万円未満の減価償却資産を令和11年(2029年)3月31日までに取得して事業に使った場合、その事業年度の合計300万円までを損金に算入できるとされています(出典:租税特別措置法 第67条の5)。月額は通信費、レンタルは賃借料など、科目は自社の処理に合わせます。
置き忘れる・落とす・濡らす、はいつか起きるものです。次の5つを先に決めておきます。
モバイルルーターはバッテリーが消耗品なので、いつか「朝フル充電しても夕方まで持たない」日が来ます。更新は、契約期間の満了とバッテリーの持ちが落ちたタイミングの重なるところで見直す、と決めておくと迷いません。そのとき、5G対応の有無、現場エリアのキャリア、ファームウェア更新が続いているかも一緒に確かめると、次の機種選びが楽になります。据置型は通信規格の世代が変わったタイミングで見直すとよいでしょう。
最後に「まずこれで始める」を一つに絞ります。
少人数の移動現場は、職長の法人スマホでテザリング。事務所を構える現場は、電源があるならホームルーター、なければ大人数向けのモバイルルーターを1台。会社で予備を1台。
機種は「回線の系統→機種」の順で決めます。ドコモ回線なら移動用にAterm CM51FD、事務所用にhome 5G HR02。ソフトバンク回線で同時接続を重視するならA401ZT。コストを抑えて台数を揃えるならRakuten WiFi Pocket 5G。au回線ならUQ WiMAX法人のSpeed Wi-Fi DOCK 5G 01。系統は、自社の現場が多い地域で強いキャリアをエリアマップで確かめてから決めてください。
そして、いきなり全現場に配らないこと。まず事務所のある現場1つに1台入れて、写真と日報が止まらなくなったのを確かめてから次の現場へ横展開する。回線は道具の中でも地味ですが、これが整うと写真アプリも日報アプリも、ようやく現場で使われる道具になります。