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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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倒産の増加、資材価格の再上昇、熱中症対策の義務化、2つの補助金——2026年7月の建設業界の動きから、町場の会社に関係する8本を選びました。それぞれ「うちの会社にどう関係あるの?」まで噛み砕いてまとめています。
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2026年7月、町場の建設会社に関係しそうな動きを8本に絞ってお届けします。倒産や資材の話はニュースで見かけても、「で、うちは何かやる必要があるの?」というところまでは、なかなか教えてもらえないですよね。この記事は、今月の発表のなかから従業員数十人までの会社の実務(見積・契約・現場・資金繰り・人の採用)に効くものだけを選び、事実と「うちの会社への影響」をセットで平易に訳しました。忙しい合間に、上から順に眺めるだけで今月の要点がつかめるようにしています。
数字はすべて官公庁の発表や企業の公式資料など、一次ソースにあたって確認したものだけを載せています。気になったニュースは、各項目末尾の出典リンクから元の資料も確認できます。

帝国データバンクが7月8日に発表した「全国企業倒産集計 2026年上半期報」によると、今年1〜6月の企業倒産は全体で5,335件(前年同期比6.6%増)、負債総額は7,247億3,600万円(同6.9%増)でした。件数は増加傾向が続いています。
なかでも目立つのが建設業です。上半期の建設業の倒産は1,043件(前年同期986件、5.8%増)で、半期として1,000件を超えるのは13年ぶり。内装や左官、電気といった専門工事を担う「職別工事」の倒産が522件と、こちらは14年ぶりに500件を上回りました。町場でよく見かける小さな専門工事の会社に、しわ寄せが来ていることがうかがえます。
要因もはっきりしています。人手が集まらずに事業をたためない「人手不足倒産」は全産業で227件と過去最多を更新し、その最多業種が建設業(65件)。資材や燃料の値上がりに耐えきれない「物価高倒産」も556件と過去最多を大きく更新し、こちらも建設業(151件)が最も多い業種でした。つまり建設業は、人手不足と物価高の両方でトップという苦しい位置にあります(出典:帝国データバンク)。
数字だけ見ると「大変だなあ」で終わってしまいますが、中身を見ると他人事ではありません。倒れているのは大きな会社ではなく、内装・左官・電気といった、まさに町場の専門工事の会社が中心だからです。仕事はあるのに、人件費と材料費が上がって利益が残らず、資金が回らなくなる——という流れは、どの会社にも起こりうるものです。
一次的な対策は地味ですが効果的です。ひとつは、見積の段階で上がった材料費・労務費をきちんと価格に乗せること(この後の「標準労務費」の話につながります)。もうひとつは、手元の資金がどれくらい持つかを、月単位でざっくりでも把握しておくこと。倒産の多くは赤字そのものより「支払いに現金が足りなくなる」ことで起きます。取引先の入金サイトが長い、材料の仕入れが先払い、といった資金の詰まりがないか、この機会に一度見直しておくと安心ですね。
日本銀行が7月10日に公表した「企業物価指数(2026年6月速報)」によると、企業どうしが取引するモノの価格を示す国内企業物価指数は前年同月比7.1%の上昇となりました。前月(5月)の6.6%から伸びが拡大し、上げ幅としては2023年3月以来、3年3か月ぶりの高さです。指数の水準は135.4(2020年平均=100)まで上がっています。
上昇の主な原因は、中東情勢の混乱による原材料価格の上昇です。品目別では、電線や配管などに使う非鉄金属(アルミなど)が前年比39.2%上昇、アスファルトや燃料に関わる石油・石炭製品が22.8%上昇、塗料や接着剤などの化学製品も14.4%上昇しました。調査対象515品目のうち418品目が値上がりしており、建設に使う資材や燃料も広く高止まりが続いています(出典:日本銀行)。
前の項目で触れたとおり、この資材高が原因で倒れる「物価高倒産」は建設業が最多です。値上がりは一時的なものではなく、しばらく高い水準が続くという前提で構えておく必要がありそうです。
いちばんの問題は、値上がりした分をお客さんや元請けに「言い出しにくい」ことですよね。特に長い付き合いの相手ほど、「材料が上がったので」と切り出すのに気が引けるものです。ですが、上がったコストを自分の会社だけで飲み込み続けると、利益はどんどん薄くなります。倒産の統計が示しているのは、まさにその結末です。
実務としておすすめしたいのは、見積書のなかで材料費・燃料費を「一式」でまとめず、できる範囲で分けて書いておくことです。項目が分かれていれば、価格改定のときに「この材料がこれだけ上がったので」と根拠を示して交渉しやすくなります。工期が長い工事では、契約の段階で「着工後に主要資材が一定以上値上がりした場合は請負金額を見直す」という一文(いわゆる価格変動・スライドの取り決め)を入れておくと、途中の値上がりを一人で抱え込まずに済みます。
国も後述の「標準労務費」など、上がったコストを価格に転嫁できる仕組みづくりを進めています。値上げ交渉は後ろめたいことではなく、会社を続けるための正当な行為だと考えて大丈夫です。むしろ、原価が上がっているのに単価を据え置くことのほうが、じわじわと会社の体力を削っていきます。
2024年に成立した改正建設業法が、2025年12月12日に全面施行されました。その目玉が「標準労務費」の仕組みです。中央建設業審議会が2025年12月2日に「労務費に関する基準」を勧告し、これを著しく下回る労務費での見積りや契約締結が、公共工事・民間工事を問わず、下請取引を含むすべての建設工事の請負契約で禁止されました。
「標準労務費」とは、ざっくり言えば「この工事なら、これくらいの人件費は最低限みておくべき」という国が示す目安のことです。1日8時間あたりの職種別の公共工事設計労務単価に、その工事に必要な作業量(歩掛)を掛けて計算します。2025年12月時点で、13の職種分野について99種類の基準値が公表されており、この基準値は2026年6月にも改定・追加が行われています(出典:国土交通省)。
さらに国土交通省は2026年度、この基準どおりに労務費が確保され、実際に技能者の賃金として支払われているかを確かめるフォローアップ調査を新たに拡充する方針です。見積額や賃金の支払い状況を、アンケートや聞き取りで調べるとされています(出典:日経クロステック)。
これは下請け・専門工事の会社にとって、じつは追い風になりうる制度です。これまで「他がもっと安くやると言っている」と言われて泣く泣く値段を下げていた場面で、「国が示す標準労務費を著しく下回る契約は法律で禁止されている」という後ろ盾ができたからです。買いたたきに対して、断る理由を国が用意してくれた、と考えると分かりやすいですね。
逆に、元請けとして下請けに発注する立場のときは、注意が必要です。相場より極端に安く叩いて発注すると、法律に触れる可能性が出てきます。どちらの立場でも、見積書に労務費(人件費)をきちんと項目立てして示しておくことが、これからの標準になります。「一式いくら」ではなく、労務費が見える見積りに切り替えていく——今のうちに社内の見積フォーマットを見直しておくと、慌てずに済みます。
毎年10月ごろに改定される最低賃金について、2026年度の議論が進んでいます。改定額の目安を決める国の「中央最低賃金審議会」では、7月10日の第2回小委員会で、労働側・使用者側の双方が「引き上げは必要」という点で一致しました。上げ幅そのものはこれからの議論ですが、目安は7月下旬に示される見込みです(出典:厚生労働省)。
参考までに、2025年度の改定では全国加重平均が1,121円(前年から66円・6.3%の引き上げ)と大幅に上がりました。2026年度もこの流れを引き継ぐ方向で議論されており、パートやアルバイト、若手の時給に関わる会社は、秋の改定を織り込んでおく必要があります。
技能者の賃金の目安となる、公共工事の設計労務単価も上がり続けています。2026年3月から適用されている労務単価は、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%の引き上げとなり、全国全職種の加重平均が初めて1日あたり25,000円を超えました。国土交通省と建設業の主要4団体は、2026年の技能者賃上げについて「おおむね6%」を目指すことでも申し合わせています(出典:国土交通省)。
人件費が上がること自体は、避けられない前提として受け止めるしかありません。最低賃金は毎年10月に上がり、職人さんの相場も上昇が続いています。ここで大事なのは、「人件費が上がる → だから見積りの労務費も上げてよい」という当たり前の関係を、遠慮せずに実行することです。
公共工事の労務単価が過去最高を更新し、国自身が「6%賃上げ」を掲げているという事実は、民間工事の値段交渉でも使える材料になります。「国の労務単価もこれだけ上がっているので」と一言添えるだけで、説得力が変わってきます。賃上げは、若手を採り、辞めさせないための投資でもあります。
見落としがちなのが、外注費です。自社の社員だけでなく、応援を頼む一人親方や下請けへの支払いも、相場の上昇とともに上がっていきます。「自社の給料は上げたけれど、外注に払う単価は去年のまま」だと、いい職人さんから声がかからなくなってしまいます。人件費と外注費の両方が上がる前提で、請負金額にきちんと反映できているか——この夏のうちに、自社の見積りと単価を点検しておきたいところですね。

2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、職場の熱中症対策が事業者の「義務」になりました。2026年6月でちょうど1年、施行後2度目の夏を迎えています。対象となるのは、暑さ指数(WBGT)28度以上、または気温31度以上の環境で、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。屋外の建設現場の多くが、夏場はこの条件に当てはまります。
事業者に義務づけられているのは、大きく2つです。1つ目は、熱中症の自覚症状がある人や、その疑いがある人を見つけたときに、すぐ報告できる体制をあらかじめ決めて現場に周知すること。2つ目は、症状が悪化しないための対応手順(作業からの離脱、身体の冷却、医師の診察・処置、緊急連絡網や搬送先の連絡先・所在地)を、あらかじめ定めて周知することです(出典:厚生労働省)。
この義務には罰則もあります。報告体制の整備や手順の周知を怠ると、労働安全衛生法に基づき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる可能性があります。「気をつけようね」という努力目標ではなく、法律上のルールになった点が大きな変化です。
「うちは小さいから関係ない」ということはありません。この義務は会社の規模を問わず、対象作業を行うすべての事業者にかかります。一人親方でも、人を雇って現場に出している以上は対象です。ただ、身構えすぎる必要もなく、やることはシンプルです。「体調が悪くなったら誰に連絡するか」「そのとき何をするか(日陰で休ませ、冷やし、必要なら救急へ)」を紙1枚にまとめ、朝礼で全員に共有しておく。基本はこれで形になります。
むしろ2年目の今年、問われるのは「本当に運用できているか」です。去年つくった手順書が机の引き出しに眠ったままになっていないか、新しく入った人にも共有されているか。もし労働基準監督署の調査が入ったときに、「決めて、周知している」と示せる状態かどうかがポイントになります。梅雨明けの本格的な暑さが来る前に、去年の手順を一度アップデートしておくと安心ですね。

人手不足に悩む中小企業の設備投資を後押しする「中小企業省力化投資補助金」の公募が続いています。これは、機械やソフトウェアを導入して少ない人手でも仕事を回せるようにする(=省力化する)ための投資に対して、費用の一部を補助する制度です。
補助率は原則2分の1以下で、補助の上限額は従業員数によって変わります。従業員5名以下の会社なら200万円(賃上げの要件を達成すれば300万円)、6〜20名なら500万円(同750万円)、21名以上なら1,000万円(同1,500万円)が上限です。町場の会社の多くは、200万〜750万円の枠が現実的な目安になります。
申請の型は2つあります。あらかじめ登録された汎用製品を「カタログ」から選んで導入するカタログ注文型は、手続きが比較的シンプルで、現在は随時受付が行われています。もうひとつの一般型は、自社の現場や業務に合わせた設備導入・システム構築など、より幅広い省力化投資が対象です。対象となる製品はカタログに順次追加されているので、自社の作業に合うものがあるか、公式サイトで確認してみるとよいでしょう(出典:中小企業省力化投資補助金事務局)。
「人が採れないなら、機械やソフトで一人分の仕事を減らす」という発想は、これからの町場の生き残りに直結します。この補助金は、まさにその投資を半額で後押ししてくれるものです。たとえば、測量や検査を効率化する機器、事務作業を減らすソフト、資材の運搬や加工を楽にする機械など、「人手を減らせるもの」が広く対象になります。
ポイントは、賃上げの要件を達成すると補助の上限が上がる仕組みになっていることです。前の項目で見たとおり、どのみち人件費は上がっていく時代です。どうせ賃上げするなら、その計画とセットで省力化投資を申請すれば、補助枠を大きく使えて一石二鳥になります。カタログ注文型は締切に追われにくい随時受付なので、まずはどんな製品が載っているかを眺めてみるところから始めるのがおすすめです。
これまで「IT導入補助金」の名前で親しまれてきた制度が、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」へと名称・内容ともに刷新されました。中小企業・小規模事業者が業務用のソフトウェアやパソコンなどを導入する費用の一部を補助する、という基本の枠組みは引き継がれています。
公式のスケジュールによると、直近の1次締切は2026年7月21日(火)17時です。この締切は、通常枠、インボイス対応類型、電子取引類型、セキュリティ対策推進枠に共通で適用されます。交付決定は9月2日ごろの予定です。年に複数回の公募が予定されているので、今回に間に合わなくても次の回を狙うことができます(出典:デジタル化・AI導入補助金事務局)。
建設業に関わりが深いのは、なかでも「インボイス対応類型」です。これは、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済の機能を持つソフトや、それに使うパソコン・タブレットなどのハードウェアの導入を補助するものです。見積・請求まわりのデジタル化を考えている会社にとって、費用負担を軽くできる選択肢になります。
「ソフトを入れたいけれど、初期費用が重くて踏み切れない」という会社にとって、これは背中を押してくれる制度です。手書きやエクセルでやっている見積・請求・原価管理を専用ソフトに切り替える、現場写真や書類をクラウドで共有できるようにする——といった投資の費用が、補助の対象になりえます。インボイスや電子帳簿保存法への対応に頭を悩ませている会社なら、その対応と設備投資を一度にまとめられます。
注意したいのは、申請には登録された「IT導入支援事業者」との連携が必要で、締切直前は申請サイトが混み合いやすいことです。7月21日の締切を狙うなら、早めに導入したいソフトの提供会社に相談しておくのが安全です。今回が難しくても年内にまた公募があるので、「次はこの枠で申請する」と当たりをつけておくだけでも動きやすくなりますね。
現場監督の負担を減らすAIの開発が、一歩前に進みました。鉄建建設は2026年6月22日、現場データを扱うMODEと組んで、生成AIを使った「現場作業示唆AI」の実証実験(PoC)を始めたと発表しました。
この仕組みは、現場で使うコミュニケーションツール上のやり取りと、センサーなどから集めた現場データを、生成AIが横断的に分析するものです。AIが現場の状況を自動で整理・判断し、現場のサマリー(要約)づくり、昼夜の交代時の申し送り情報の自動作成、気象や現場条件を踏まえた注意喚起などを、自動で提示します。狙いは、施工管理の負担軽減と、品質・安全管理の高度化です(出典:鉄建建設)。
これはまだ大手ゼネコンでの実証段階の話で、明日から町場の現場で使えるものではありません。ただ、こうした「現場の情報を整理し、日報や申し送りを肩代わりする」技術が、確実に実用に近づいていることを示す動きです。
大手の実験と聞くと遠い話に感じますが、AIが肩代わりしようとしている「日報を書く」「申し送りをまとめる」「危ないポイントを注意喚起する」といった作業は、町場の現場監督が毎日やっていることそのものです。今は大きな会社で試している技術が、数年のうちに月額数千円〜数万円で使える手頃なツールに姿を変えて降りてくる、というのはよくある流れです。
今すぐ何かを導入する必要はありません。ただ、「うちの現場でいちばん時間を食っている事務作業は何か」を意識しておくと、いざ手頃なAIツールが出てきたときに、すぐ判断できます。日報、写真の整理、報告書づくり——このあたりは、いずれAIが得意とする領域です。逆に、段取りの判断や職人さんとの信頼関係といった「人にしかできない仕事」に、その分の時間を回せるようになる、というのが本来の狙いです。
そして、こうしたツールの導入費には、前の項目で紹介した補助金が使える可能性もあります。「AIは大手のもの」と身構えず、まずは情報を集めておく段階、という気持ちで、こうしたニュースを眺めておくとよいですね。技術の進み方を知っておくこと自体が、これからの経営判断の土台になります。
2026年7月は、「守り」と「攻め」の両方でニュースが動いた月でした。倒産の増加や資材高という守りの課題がある一方で、標準労務費や賃上げ、補助金といった、会社を強くするための材料も出そろっています。全部に一度に取り組む必要はありませんが、今月のうちに手をつけておくと差がつくものを、3つに絞って挙げておきます。
業界の大きな流れは、「人件費も材料費も上がる。だから、上がったコストをきちんと価格に乗せ、人手を減らす投資には国の補助を使う」という方向ではっきりしてきました。ニュースを追う時間がなくても、この大枠だけ押さえておけば、今月の判断はぶれません。来月もまた、町場に効く動きだけを選んでお届けします。