現場で発生した追加・変更工事を口頭のまま進めると、合意確認も請求も後回しになりがちです。この記事では、依頼日・工事内容・金額・確認状況・請求予定を一つにつなぐ管理表の項目と、着手前から月末までの運用を解説します。
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現場で「ここも追加で」と頼まれたとき、その場で返事をして作業を進める。忙しい現場なら自然な流れですが、見積や確認の記録があと回しになると、月末に「あの追加分は請求に入っているか」が分からなくなります。
追加工事の管理表は、相手を疑うためのものではありません。依頼、範囲・金額の確認、施工、請求予定という別々の作業を、工事番号でつなぐための社内記録です。この記事では、契約書面と役割を混同せず、追加・変更工事を請求漏れまで追わないための管理表と運用を整理します。
追加工事の請求漏れは、請求書を作る月末だけの問題ではありません。現場で依頼を受けた時点で、元の契約に含まれるのか、追加・変更として確認が必要なのか、誰が相手と条件を確認するのかが止まっていると、その行は後から見つけにくくなります。
そこで、追加・変更が一つ発生するたびに、管理表へ1行だけ起こします。最初から金額や請求可否を無理に確定させる必要はありません。「確認中」「書面手続を確認中」「請求予定」のように状態を分け、次に確認する人と期限を残すことが大切です。
この表で管理するのは、あくまで社内の進捗と確認対象です。取引先と取り交わす契約書面、注文書・請書、見積書そのものを代替するものではありません。両者を分けることで、現場の素早い記録と、必要な合意・契約手続を並行して進めやすくなります。
依頼が口頭だけで終わる。依頼者、依頼日、作業内容が残っていなければ、現場では終わった作業も事務からは見えません。作業写真だけでは、何の依頼に対する対応かを後から追いにくいことがあります。
金額が未確定の行を空欄のままにする。調査や数量確認が必要な追加工事では、着手時点で全体が決まらないことがあります。空欄にして表から消すのではなく、未確定の理由、次の確認日、単価や見積の根拠を残すほうが、確認漏れに気付きやすくなります。
施工済みと請求済みを同じ意味で扱う。施工が終わったこと、相手との確認が終わったこと、請求書を発行したこと、入金予定が立ったことは別の事実です。一つの「完了」チェックだけで済ませると、どこで止まっているかが分かりません。

使うソフトは、最初はExcelや共有表でも構いません。ただし、元契約の工事番号と追加番号を分け、1行に複数の追加依頼を詰め込まないルールにします。たとえば同じ現場でも、配線追加と設備の仕様変更は確認先や金額の根拠が違うため、別行にしたほうが追いやすくなります。
管理単位 | 表に残すこと | 混ぜないこと |
|---|---|---|
工事番号 | 元契約・現場・担当とのひも付け | 現場名だけでの管理 |
追加番号 | 追加・変更ごとの連番 | 複数の依頼を1行にまとめること |
確認状況 | 依頼受領、確認中、 | 施工済と請求済を同じ |
金額 | 見積番号、単価・ | 未確定を0円として閉じること |
保管先 | 見積、確認記録、 | 表そのものを契約書面として扱うこと |
このルールを先に決めておけば、担当者が変わっても「表のどこを見ればよいか」が揃います。工事全体の原価・入金も並べて見たい場合は、建設業の工事台帳テンプレートのような工事別の台帳へ、確定した追加額をつなぐと役割が分かれます。
項目を増やしすぎると、現場で入力されなくなります。まずは「誰から何を頼まれ、何を確認し、いつ事務へ渡すか」が分かる項目に絞りましょう。金額や契約の扱いに判断が必要な行は、状態と次の確認者を空欄にしないのがポイントです。

管理表を始めたのに、行の状態がすべて「対応中」では、月末に優先順位を付けられません。状態名は、工事の進み具合ではなく、次に何を確認するかが分かる言葉にします。会社ごとに用語は変えて構いませんが、少なくとも次の区別を保つと整理しやすくなります。
状態を変える人を一人に決める必要はありません。現場担当が依頼受領と施工日を、見積・契約担当が確認状況を、事務が請求済みを更新する、と分けても大丈夫です。その代わり、誰でも書き換えられる「完了」のような状態を減らし、更新した日と担当を残します。
入力が続かない会社では、表の項目よりも「いつ誰が開くか」が決まっていないことが多いです。日報のように毎日すべてを更新するより、現場・見積・事務の受け渡しに合わせて、短い確認を置くほうが現実的です。
タイミング | 主な担当 | 見る項目 |
|---|---|---|
依頼を受けた日 | 現場担当 | 工事番号、依頼者、 |
見積・確認を出す前 | 見積・契約担当 | 元契約との関係、範囲、数量、 |
週次の打合せ | 現場責任者・社長 | 確認中の行、期限超過、 |
月末の請求準備 | 事務担当 | 請求予定月、施工済みで未引渡しの行、 |
特に、現場担当が「見積を出したはず」と思い、事務が「請求対象だと知らない」というずれを防ぐには、請求予定へ変えた日と引渡し先を残します。逆に、事務だけが表を埋めようとすると、依頼の背景や施工状況が抜けやすくなります。現場から最初の1行を起こし、事務は月末にその行を確認する、という分担が基本です。
工事が複数動く会社では、日中にすべてを完成させようとすると続きません。依頼当日の仮登録、週に一度の確認更新、月末の請求予定確認と、更新のタイミングを分けると回しやすくなります。
追加工事は、社内で「追加らしい」と判断しただけで請求の結論が出るものではありません。契約関係、当初契約の定め、工事内容、相手との合意経緯によって、必要な書面や手続は変わります。
国土交通省の発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)は、建設業法第19条第2項に関して、当初契約書に掲げる事項を変更する追加工事等では、災害時などやむを得ない場合を除き、原則として着工前に書面による契約変更を行う必要があると示しています。施主と直接契約する場合を含め、このガイドラインの対象範囲や個別契約の内容を確認してください(出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」)。
元請・下請間については、同省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)が、追加工事等の着工前に変更内容を書面に記載し相互に交付する考え方を示しています。どちらの関係でも、メールやチャット、写真、管理表は日々の連絡・記録として役に立ちますが、それだけで必要な契約書面を満たすと一律にはいえません(出典:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」)。
追加工事の全体数量などが着手前に直ちに確定できない場合について、第8版は、着工前に具体的な作業内容、契約変更等の対象であることと手続の時期、契約単価の額を記載した書面を取り交わし、内容が確定した時点で遅滞なく手続を行う対応を示しています。管理表には、その3点を確認する欄を設け、正式な書面や見積の保管先をひも付ける使い方に留めましょう。
注文書・注文請書や工事請負契約書の書式と位置付けを確認したい場合は、建設業の注文書・注文請書・工事請負契約書テンプレートも参考にしてください。管理表の項目や文例をそのまま契約条項に転用するのではなく、判断に迷う案件は契約の相手方・専門家へ確認するのが安全です。
追加工事管理表の役目は、請求書を自動で作ることではありません。確認が進んだ追加・変更を、事務が請求対象を確認する一覧へ正しく渡すことです。請求書を発行した後は、請求済み・入金予定・入金実績を別の状態で管理します。
月末には、追加工事管理表から「請求予定月が当月」「確認中のまま期限を過ぎた」「施工済みだが請求予定が空欄」の行を見ます。その後、工事全体の完工・出来高、請求、入金予定と照合する手順は、建設業の請求漏れ防止|月末に回す4点チェックリストで整理しています。
ここで大事なのは、未確定の追加を無理に請求対象へ入れないことです。金額、範囲、合意・書面手続の状況が確認できない行は、請求済みに塗り替えるのではなく、確認待ちとして担当と期限を残します。請求漏れを防ぐことと、確認前の請求を急ぐことは別の仕事です。
すでに追加工事の代金や範囲で認識が食い違っている場合は、管理表を後から「証拠を作る」ために使うのではなく、事実を整理するために使います。依頼、見積・連絡、施工、写真、請求の順に時系列を並べ、誰が何を確認するかを分けます。
請求の可否や金額を記事だけで断定することはできません。話合いで解決しない建設工事の請負契約に関する紛争には、建設工事紛争審査会によるあっせん・調停・仲裁という制度があります。契約関係や事案に応じて、相談先を確認してください(出典:国土交通省「建設工事紛争審査会」)。
追加・変更工事は、依頼を受けた時点で1行を作り、元契約との違い、確認状況、施工、請求予定を同じ工事番号でつなぐと追いやすくなります。金額が未確定の行も、0円や完了にせず、理由・担当・期限を残すのがポイントです。
管理表は、契約書面や見積書の代わりではありません。取引先との合意・変更手続は別に確認し、その記録の保管先と社内の次の行動を管理表につなぐ。現場の対応を月末の請求漏れまで埋もれさせないために、まず今週発生した追加・変更を1行ずつ書き出してみてください。