建設業で変形労働時間制を導入すると、雨天や繁忙期へ柔軟に対応できるのでしょうか。全建の2026年調査と厚労省の資料から、導入状況、後から予定を変える際の注意点、勤務カレンダー・協定・勤怠管理を整える順番を解説します。
AI搭載
コンクルーAI
中小建設会社のためのAIオールインワン業務管理ツール
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーAIひとつで完結


建設業の変形労働時間制は、繁忙期と閑散期に合わせて労働時間を配分する選択肢です。ただし「雨が降った日の分を、後から晴れた日に自由に付け替えられる制度」と考えると、実際の運用と食い違います。
全国建設業協会が2026年9月に公表した調査でも、天候の影響が導入を難しくする理由として挙がりました。調査結果と現行制度のルールを分け、自社で予定を立てられる範囲、元請との調整、勤怠管理の準備から確認していきましょう。
全国建設業協会の「労働環境の整備に関するアンケート」は、都道府県建設業協会の会員企業3,781社が回答した調査です。2026年6月1日現在の状況について、同年6〜7月に調べています。建設会社全体や、20名以下の会社だけを対象にした数字ではありません。
導入状況 | 回答割合 |
|---|---|
1か月以内の変形労働時間制を導入 | 8.7% |
1か月超1年以内の変形労働時間制を導入 | 30.4% |
導入を検討している | 3.5% |
導入していない | 57.4% |
導入済みの2区分を足すと39.1%で、約4割です。図の集計ではフレックスタイム制度を除いています。「約4割だから自社も導入すべき」と結論づける数字ではなく、自社の働き方と制度の相性を確認する材料として捉えます。(出典:全国建設業協会・2026年度調査、3ページ・16ページ)
未導入の理由では、天候などの影響で計画的な運用が難しいとの回答が48.6%でした。これは調査全体の全企業が同じ質問に単一回答した割合ではなく、未導入理由を尋ねた複数回答の結果です。
また、導入を検討している企業への運用改善の質問では、天候に応じて直前・事後に決められる制度を望む回答が57.9%でした。この数字は要望であって、そのような変更がすでに制度上認められたという意味ではありません。同じ資料の中でも、質問の対象と意味を分けて読みましょう。

厚生労働省の建設業向け資料は、1年単位の制度を、業務の繁閑に合わせて年間の労働時間を配分し、総労働時間の短縮を図る仕組みとして説明しています。対象期間は1か月を超え1年以内で、期間を平均した週の労働時間など、法令上の条件を満たす必要があります。
ここで重要なのは、実際に忙しかった日を後から長い所定労働時間の日に直すのではなく、労働日とその日の労働時間を前もって特定することです。兵庫労働局も、特定済みの労働日・労働時間を任意に変更できないと案内しています。(出典:厚生労働省「建設業における1年単位の変形労働時間制のポイント」、兵庫労働局・1年単位の変形労働時間制)
厚労省の建設業向け資料には、協定締結時に1年分を定める方法のほか、最初の1か月分を定め、2か月目以降を各月の30日前までに定める方法が示されています。ただし、後者でも月ごとの所定労働日数と所定労働時間数は協定締結時に定める必要があります。
つまり、翌日の天気予報を見て自由に予定を書き換える仕組みではありません。所定の手続、休日の振替などの扱い、突発的な事情への対応は区別が必要です。自社のケースでどう扱えるかは、労働基準監督署や社会保険労務士等へ確認してください。
変形労働時間制を採用しても、時間外労働の把握や割増賃金の支払いは必要です。設定した日・週の時間や、対象期間の法定労働時間の総枠を超える場合などについて、制度に沿った確認を行います。
「年間平均が収まれば、毎日の超過は見なくてよい」と処理すると誤りにつながります。時間外・休日労働を行わせる場合の36協定も、変形労働時間制の労使協定とは別に確認する必要があります。勤怠システムを使っていても、設定が自社の協定内容と一致しているかを点検しましょう。(出典:厚生労働省・同資料1〜2ページ)
確認すること | 集める資料・話し合う相手 |
|---|---|
繁忙期と閑散期を予測できるか | 過去の勤怠、受注予定、工程表 |
現場の稼働日と自社の勤務日を調整できるか | 元請・協力会社の工程担当 |
対象者と勤務カレンダーを定められるか | 対象業務、現場・事務の勤務実態 |
労使協議と届出の準備ができるか | 就業規則、労働条件、労使協定 |
予定と実績の差を給与計算へ反映できるか | 勤怠記録、給与計算の設定・担当者 |
まず過去の勤怠を工程表と並べ、「繁忙の時期を前から予測できたのか」「天候や追加工事で急に変わったのか」を分けてみます。ここが曖昧なままカレンダーだけを作ると、現場の実態と運用が離れてしまいます。
例えば、毎年の一定の季節に休みを多く確保する計画は検討の入口になります。一方、複数の元請から直前の応援要請が続く会社では、自社だけで勤務日を決めても実行しにくいかもしれません。制度を選ぶ前に、相手先との調整ができる範囲を確かめます。
1年単位の制度では、対象労働者、対象期間と起算日、特定期間、労働日と日ごとの労働時間、協定の有効期間を整理します。厚労省資料は、就業規則等への規定、労使協定の締結・届出、労働者への周知などを案内しています。会社規模や既存の規程を踏まえ、必要な手続を確認してください。
同じ会社でも、現場作業と事務で繁閑が違う場合があります。全員をひとまとめにする前に、対象業務と労働条件の整合を確認しましょう。書類の作成担当を決めるだけでなく、運用開始後に予定と実績を点検する担当も必要です。
全建調査は、制度を導入済みの会社だけでなく、天候や工程調整に難しさを感じる会社もあることを示しています。制度導入が目的になると、カレンダーを守るための無理な現場運用につながりかねません。
最初に、自社の工程と勤怠を突き合わせ、計画できる繁閑と突発的な変動を分けてみてください。そのうえで制度が合うか、どの手続や運用変更が必要かを相談する順番が現実的です。現場に入る人や必要書類の管理は、工事書類の一覧とも合わせて整理できます。
本記事は2026年9月21日に公式調査・厚労省資料を確認して作成しました。個別の協定や給与計算の適法性を保証するものではありません。導入・変更時は、管轄の労働基準監督署等で確認してください。