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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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毎年きびしくなる夏の現場の暑さ。2025年6月からは熱中症対策が会社の義務にもなりました。冷やす・測る・補給・休ませる・仕組みの5系統で、会社でまとめてそろえたい熱中症対策グッズを価格の目安つきで整理。従業員10名でいくらかかるかのモデル試算も載せました。
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毎年、夏が来るたびに現場の暑さは厳しくなっている——そう感じておられる社長は多いと思います。実際、2024年に職場で熱中症になり亡くなったり4日以上休んだりした人は全国で1,257人にのぼり、統計を取り始めて以降でもっとも多い数字になりました。業種で見ると建設業と製造業で全体の約4割を占め、亡くなった方は建設業がもっとも多くなっています(出典:厚生労働省)。しかも2025年6月からは、暑い環境での作業に対して会社が対策を取ることが、努力目標ではなく「義務」になりました。
とはいえ、いざ「今年こそ会社としてちゃんと熱中症対策のグッズを揃えよう」と思っても、現場で使えるものは種類が多く、何をどれだけ買えばいいのか分かりにくいですよね。個人でネッククーラーを一つ買うのとはわけが違い、社長の立場だと現場全員ぶん・複数の現場ぶんをどう揃えるか、いくらかかるか、義務にちゃんと対応できているかまで考えないといけません。
この記事は、そんな社長のための「買い物リスト」です。冷やす・測る・補給する・休ませる・仕組みで守る、という5つの系統に沿って、会社でまとめて揃えたい熱中症対策グッズを、価格の目安や向く現場とあわせて整理します。従業員10名の会社ならいくらかかるか、というモデル試算も載せました。毎年の夏の前に見返せる、定番の一覧として使ってもらえればうれしいです。
グッズの話に入る前に、まず土台になる制度を押さえておきましょう。2025年6月1日に労働安全衛生規則が改正され、一定の暑さのなかで作業をさせる会社には、熱中症への備えが義務づけられました。ここを知らずにいると、せっかくグッズを揃えても抜けが出てしまいます。
義務の対象になるのは、暑さ指数(WBGT)が28以上、または気温が31以上の環境で、連続して1時間以上、または1日に4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。真夏の屋外作業の多くは、これに当てはまると考えておいたほうがよいでしょう。暑さ指数(WBGT)は、気温だけでなく湿度や日差しも取り込んだ、熱中症の危険度を表すものさしです。28以上で「厳重警戒」、31以上で「危険」とされ、数字が上がるほど体への負担が大きくなります(出典:環境省 熱中症予防情報サイト)。
対象になる作業では、会社は次の3つをしておく必要があります。難しく考えず、「気づく・動ける・共有する」の3点だと考えると分かりやすいです。
この義務に違反した場合は、労働安全衛生法にもとづき、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になり得ます(出典:厚生労働省)。とはいえ、いきなり罰を受けるというより、まずは是正の指導が入るのが一般的です。過度に身構える必要はありませんが、「やるべきことは決まっている」と受け止めて、この記事のグッズと仕組みで着実に備えていきましょう。実際に対策を行った記録を残しておくと、いざというときに自社を守る材料にもなります。
熱中症対策グッズは、単品で「良さそうなもの」を買い足していくと、どうしても抜けが出ます。ネッククーラーは配ったのに、飲み物を冷やしておく場所がない。休憩用のテントはあるのに、暑さを測るものがない、といった具合ですね。そこでおすすめなのが、次の5つの系統でそろっているかを確認するやり方です。

この5つがそろって、はじめて現場を守る一式になります。下の表に、それぞれの系統で揃えたい主なグッズと、価格の目安、向く現場をまとめました。まずは全体像として眺めてみてください。
系統 | 主なグッズ(例) | 価格の目安(1つあたり) | 向く現場・使いどころ |
|---|---|---|---|
体を冷やす | 冷感インナー、ネッククーラー、冷却ベスト、(空調服) | 数百円〜1万円台 | 直射日光の下や、屋外での作業が長い現場 |
暑さを測る | WBGT計(携帯型・据置型) | 数千円〜1万円台 | すべての現場に、最低1台 |
水分と塩分を補給する | 経口補水液、塩飴・塩タブレット、クーラーボックス、保冷庫 | 飲料は箱単位/保冷庫は数千円〜 | すべての現場(毎年の消耗品として) |
休ませる | ワンタッチテント・タープ、ミストファン、スポットクーラー | 数千円〜数万円 | 日陰が取りにくい現場、長時間の現場 |
仕組みで守る | 救急セット、緊急連絡カード、体調チェック表 | 数百円〜数千円 | すべての現場 |
価格はあくまで目安で、メーカーや仕様によって幅があります。ここからは、系統ごとに「何を・どう選ぶか」を具体的に見ていきましょう。
まずは体を直接冷やす、身につけるタイプのグッズです。ここは種類が多く価格帯も幅広いので、現場の過酷さと予算に合わせて選び分けるのがコツです。手軽なものから順に見ていきます。
汗をかくとひんやり感じる素材のインナーです。1枚あたり数百円から千円台と手ごろで、洗って繰り返し使えます。劇的に体温を下げるものではありませんが、肌に一番近いところの不快感を減らしてくれるので、まず全員に配る土台として向いています。汗を吸って乾きやすいものを選ぶと快適です。
太い血管が通る首もとを冷やすグッズです。凍らせずに常温で固まる保冷剤(PCM)を使ったリング型なら、冷蔵庫や氷がなくても繰り返し使え、価格も数千円ほど。ファンで風を送る電動タイプもあります。移動や短時間の作業で手軽に涼を取りたいときに便利で、インナーの次に配りやすい一品です。
保冷剤を入れて上半身を冷やすベストや、小型ファンで風を送る送風タイプがあります。冷やす力がしっかりしているぶん価格は数千円から1万円台と上がり、保冷剤の交換や充電といった手間もかかります。全員ぶんではなく、土工や解体、鉄骨の上など、とくに暑さが厳しい持ち場に絞って配ると、費用対効果が高くなります。
ファン付きのウェアに風を通して汗を蒸発させる、いわゆる空調服も強力な選択肢です。ただしバッテリーやファンの規格、ウェアの形など検討点が多く、ここで語り切れる範囲を超えます。全員ぶんをまとめて導入するなら、専用に比較検討したうえで選ぶことをおすすめします。この記事では「冷却グッズの系統の一つ」として位置づけておきます。

選び方の基本は、手軽なもの(インナー・ネッククーラー)を広く全員に、本格的なもの(冷却ベスト・空調服)を過酷な持ち場に絞ってという二段構えです。最初から高いものを全員ぶん揃える必要はありません。現場の反応を見ながら、効いている持ち場に厚く配っていくのが、無駄の少ないやり方です。
意外と後回しになりがちなのが、暑さそのものを測る道具です。ですが、これは命に直結するわりに安く揃えられる、費用対効果の高い一台です。
使うのはWBGT計(暑さ指数計)。気温だけの温度計と違い、湿度も取り込んで熱中症の危険度を表してくれます。数千円の携帯型から、現場に据え置く警報付きのタイプまであり、まずは各現場に1台あるだけで判断の基準ができます。「今日はWBGTが31を超えたから、休憩を増やそう」「28を超えたから、こまめに声をかけよう」というように、感覚ではなく数字で判断できるようになるのが大きい。前に触れたとおり、28以上で厳重警戒、31以上で危険が一つの目安です(出典:環境省 熱中症予防情報サイト)。環境省が出す「熱中症警戒アラート」も、その日の危険度を知る手がかりになります。
WBGT計そのものの選び方は奥が深いので、ここでは「現場に1台は置く」という位置づけにとどめます。測って初めて、次の補給や休憩の判断ができるようになる、という順番だけ押さえておいてください。
暑さを測ったら、次は補給です。ここは毎年の消耗品として、シーズン前にまとめて確保しておきたい系統です。
厚生労働省の要綱では、暑さ指数の基準値を超える環境では、0.1〜0.2%の食塩水(またはナトリウム40〜80mg/100mLのスポーツドリンクや経口補水液)を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度とるのが望ましいとされています(出典:厚生労働省)。喉が渇いてから飲むのでは遅く、こまめに、というのがポイントです。人数と作業時間から逆算すると、一日でかなりの量になるのが分かりますよね。だからこそ、会社としてまとめて備えておく意味があります。
迷いやすいのが、経口補水液と塩飴の使い分けです。ざっくり言うと、塩飴・塩タブレットは、作業の合間に塩分をこまめに足す日常づかい。ポケットに入れておいて、休憩のたびに口にする使い方です。いっぽう経口補水液は、大量に汗をかいたときや、ふらつき・立ちくらみなど早めのサインが出たときに、水分と塩分をすばやく補うためのものです。普段は塩飴で、あやしいときは経口補水液、と役割を分けて両方そろえておくと安心です。ただし持病で塩分制限がある方もいるので、そこは各自の体調に合わせてもらいましょう。
忘れがちですが、飲み物や塩飴を冷たく・すぐ手の届くところに置いておく場所も、立派な対策グッズです。現場ならクーラーボックスに氷と一緒に、事務所や詰所には小型の保冷庫を。ぬるい飲み物では飲む気も起きませんし、取りに戻るのが面倒だとつい後回しになります。「冷えていて、すぐそこにある」状態を作っておくことが、こまめな補給を続けるコツです。
冷やして補給しても、休む場所がなければ体は回復しません。休憩環境を整えるのも、会社の大事な備えです。義務化された対策のなかでも、涼しい休憩場所の確保は基本に位置づけられています。
まず基本になるのが日陰です。建物や木陰がない現場では、ワンタッチテントやタープを1〜2張り用意して、風が通る日陰を作りましょう。数千円から用意でき、費用のわりに効果が大きい投資です。そこにミストファン(霧と風を出す扇風機)を置けば、気化熱で体感温度をぐっと下げられます。電源が取れる現場や詰所なら、スポットクーラー(移動できる小型エアコン)で一角をしっかり冷やすのも効果的。数万円しますが、長期の現場や、体を冷やしてから作業に戻る「クールダウン場所」として重宝します。
道具と合わせて大切なのが、休憩のサイクルです。暑い日は「疲れたら休む」ではなく、「暑くなる前に、時間で区切って休む」に切り替えましょう。暑さ指数が高い日ほど休憩を増やす、というのを朝礼で決めておくと、現場任せにならずに済みます。日陰・風・冷たい飲み物の3つがそろった休憩所を作れれば、午後のばて方がずいぶん変わってきます。
最後は、グッズだけでは埋められない「仕組み」の系統です。どんなに良い道具をそろえても、体調の変化に気づけなければ意味がありません。ここはお金より段取りがものを言います。
いちばん大切なのが、作業前の体調確認です。寝不足や二日酔い、前日の疲れが残っていると、熱中症のリスクはぐっと上がります。朝礼で一人ひとりの顔色と体調をひと声かけて確かめる。これだけで、危ない兆候を早めにつかめます。毎日の体調確認は紙のチェック表でも回せますが、タブレットで記録すれば日々の変化も追いやすくなります(あわせて建設現場のタブレットの選び方も参考にしてください)。
熱中症が重くなるのは、たいてい一人で作業していて、異変に誰も気づけなかったときです。できるだけ2人以上で動く、離れて作業するときも定期的に声をかけ合う、という体制にしておきましょう。「大丈夫か」の一声が、いちばんの安全装置になります。毎日の体調確認や、誰がどこで作業しているかの共有は、ホワイトボードや紙でも回せますが、現場管理アプリ(コンクルーAIなど)にまとめれば記録と共有が一度に済みます。
いざというときのために、緊急連絡カードを用意しておきましょう。誰に・どの順番で連絡するか、現場の住所(救急車に伝える)、近くの医療機関を1枚にまとめ、現場に貼っておく・各自に持たせておくだけで、いざのときの動きが変わります。あわせて、体を冷やす保冷剤や、応急手当ての道具を入れた救急セットも現場に常備を。熱中症対策の手順やその日の体調確認は、現場の安全書類(グリーンファイルなどの安全書類)と同じ流れで記録・保管しておくと、現場全体の安全管理として一本化できて、義務への対応もスムーズになります。
気になるのは、結局いくらかかるのか、ですよね。あくまで一例ですが、従業員10名ほどの会社が一式そろえる場合のモデルを組んでみました。現場の種類やメーカーで大きく変わるので、金額感をつかむ「たたき台」として見てください。
品目 | 数量の考え方 | 金額の目安(例) |
|---|---|---|
冷感インナー | 10名×2枚 | 約3万円 |
ネッククーラー | 10個 | 約2万円 |
冷却ベスト | 過酷な持ち場に5着 | 約2.5万円 |
WBGT計 | 現場に2台 | 約1.5万円 |
経口補水液・塩飴 | 夏場のストック | 約3万円 |
クーラーボックス・保冷庫 | 1〜2台 | 約2万円 |
ミストファン | 1台 | 約1.5万円 |
スポットクーラー | 1台 | 約6万円 |
ワンタッチテント | 1〜2張 | 約2万円 |
救急セット・連絡カード | 一式 | 約1万円 |
合計 | 約24〜25万円 |
初年度でおおよそ20〜30万円、というのが一つの目安です。高そうに見えるかもしれませんが、スポットクーラーやWBGT計、テントなどは翌年以降も使える設備なので、2年目からは飲み物や塩飴、インナーの補充が中心になり、費用はぐっと下がります。しかもこの一式の多くは1つ10万円未満なので、買った年に消耗品費などとしてその年の経費に落とせることがほとんどです(高額なものや細かな処理は、顧問税理士に確認すると確実です)。人ひとりが倒れて現場が止まることを思えば、決して高い保険ではないはずです。
もし「全部いっぺんは厳しい」という場合は、優先順位をつけましょう。まず命に直結して安く済む「②測る(WBGT計)」と「③補給(経口補水液・塩飴・保冷)」から。次に「①冷やす」の手軽なグッズを全員に。そのうえで「④休ませる」の環境と「⑤仕組み」を整えていく——この順番なら、少ない予算でも効きどころから押さえられます。
熱中症対策は、一度そろえて終わりではなく、毎年の夏の前に見直していく定番の備えです。今年は義務化1年目。この5つの系統を一つずつ確認しながら、自社の現場に合った一式を用意して、暑い夏を全員で乗り切っていきましょう。