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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「ラッキングとは具体的にどんな作業なの?」といまいち違いが分からない方は多いのではないでしょうか。 実際、ラッキングを正しく行わないと保温材が劣化し、結露・腐食・漏水といったトラブルにつながることがあります。特に屋外配管では、雨水や紫外線による損傷が進みやすく、放置すると大きな修繕費が発生するケースもあります。 本記事では、ラッキングの意味や役割、使用する素材、施工の流れ、注意点までを解説します。
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ラッキングとは、配管やダクトに対して行われる板金仕上げのことで、保温・保冷材を巻いたあとに実施される外装工程を指します。
業務用空調設備の配管や工場の各種ラインなどで一般的に採用されており、規模の大きい建物だけでなく、古い住宅でも一部見られる工事です。
タンクやボイラー周りなど配管以外の設備機器に施される例も多く、建築分野の中でも広く利用されている仕上げ方法の一つといえます。
ラッキングの目的は、次のとおりです。
● 配管および保温・保冷材を守る
● 保温・保冷性能の補助
● 外観を整え、設備としての見栄えを良くする
● 配管から発生する音や振動をやわらげる
それぞれを詳しく解説します。
配管は金属製であっても、強い衝撃や度重なる摩耗に対して完全に耐えられるわけではありません。物が当たれば変形したり表面が傷ついたりすることがあり、特に屋外では紫外線・雨水・気温差といった自然環境の影響で老朽化が早まります。
さらに、配管の温度調整に使われる保温材・保冷材も外部からの刺激に弱く、そのままでは破れや劣化が発生しやすい状態です。
ラッキングを施して外装をつくることで、配管と断熱材のもろい部分を補い、設備全体の耐久性を高めます。使用する素材によっては火に強いものもあり、火災時の被害拡大を抑える効果が見込める点も特徴です。
配管の温度を適切に保つ役割は断熱材が担っていますが、その働きをより安定させるためにはラッキングによる外装仕上げが欠かせません。
外側に覆いを設けることで断熱材が固定されやすくなり、熱が伝わりにくい状態を保てるため、無駄なエネルギー損失を抑える効果が期待できます。
また、この外装によって結露が起こりにくくなったり、冬場の凍結を防げます。高温部に触れてしまう事故の防止にもつながり、設備全体の安全性向上にも貢献します。
配管に断熱材が巻かれた状態は、機能的には問題がなくてもどうしても雑然とした印象になりがちです。
特に配管が壁面や通路の近くなど、視界に入りやすい場所にある場合は、周囲の雰囲気と合わずに浮いてしまうこともあります。ラッキングを行うと外側の仕上げが整い、配管のラインがすっきりとした形で見えるようになり、建物全体のデザインと調和しやすいです。
そのため商業施設や公共空間、工場の公開エリアなど、見た目の印象が重視される場所で特に採用されます。
配管の内部では、流れる物質の種類や速度によって振動や摩擦音が発生することがあります。特に長い配管ラインや高圧・高速で流れる設備では、思った以上に大きな音となり、周囲の環境に影響を及ぼすことも珍しくありません。
こうした騒音を抑える手段としてラッキングは有効です。外装材で配管を包み込むことで音の伝達が弱まり、振動も外部に漏れにくくなります。
その結果、作業スペースの静粛性が高まり、より快適で集中しやすい環境づくりに貢献します。
ラッキングカバーの種類は、次のとおりです。
● ジャケット
● エルボーカバー
● バルブカバー
● フランジカバー
● フレキカバー
それぞれを詳しく解説します。
ジャケットは、直線状の配管に取り付ける際に使用される最も基本的なラッキングカバーです。まっすぐな配管部分は全体の施工量も多く、ラッキングの仕上がりに大きく影響するため、ジャケットはラッキング工事の中心となる部材といえます。
このタイプは、一定の長さの板材を円筒形に加工して被せる構造になっており、配管の太さに合わせて寸法を調整しながら取り付けます。直管部は距離が長くなりやすいため、ジャケットを連続して使用することで見た目に統一感を持たせやすく、保温材の保護状態も均一に保てます。
また、取り付けや加工のしやすさから、屋内外問わず幅広い場面で採用されています。
エルボーカバーは、配管が曲がっている部分に取り付けるための専用カバーで、直線用のジャケットでは対応できない箇所に使われます。
配管の曲がり角度は現場によって異なるため、エルボーカバーはその形状に合わせて成形され、滑らかに配管へフィットするよう設計されています。
曲がり部は、保温材がずれやすかったり、外側から衝撃を受けやすかったりと損傷リスクが高いポイントでもあります。エルボーカバーを使用することで、こうした弱点を補い、断熱層を均一に保護できる点が大きなメリットです。また、配管全体のラインが整うため、美観面でも仕上がりがきれいです。
バルブカバーは、配管途中に設置されるバルブ(弁体)を覆うための専用カバーで、形状が複雑な部分にも対応できるよう大きめの構造で作られています。
バルブは点検や操作の必要があるため、バルブカバーは取り外しがしやすい構造になっている点が特徴です。作業時にカバーを開閉できるよう配慮されているため、メンテナンス性を損なわずに保護機能を維持できます。
また、バルブ部分は外観が特に目立ちやすい場所でもあり、ラッキングで覆うことで設備全体の統一感を持たせる効果もあります。
フランジカバーは、配管同士を接続する際に使用されるフランジ部分を覆うための専用カバーです。
フランジは円盤状の継手で、ボルトで固定される構造のため、直管とは異なる突出や凹凸があり、一般的なジャケットでは対応できません。そのため、形状に合わせて設計されたフランジカバーを使用することで、継ぎ目を含めて均一に覆えます。
この部分はボルト周りに隙間が生じやすく、雨水やゴミが入り込みやすい箇所でもあります。フランジカバーを取り付けることで、こうした侵入を防ぎ、配管の耐久性を高める効果が期待できます。
フレキカバーは、フレキシブルホース(フレキ管)に取り付けるためのラッキングカバーです。
フレキ管は配管の中でも柔軟性が高く、振動吸収や配管ルートの微調整に利用されるため、一般的な直管用のカバーでは形状にフィットしません。そのため、しなやかな動きに追従できる専用のフレキカバーが必要です。
フレキ管はねじれや振動が生じやすく、そのままでは保温材が摩耗したり外れやすくなったりすることがあります。フレキカバーを取り付けることで、管の動きに対応しつつ外装を安定して保持できるため、保温・保冷材の保護効果が向上します。また、外部からの衝撃やほこりの侵入を抑え、設備全体の耐久性にも寄与します。
ラッキングに使用される主な材料は、次のとおりです。
● アルミラッキング材
● ステンレスラッキング材
● カラー鋼板材
● ガルバリウム鋼板
それぞれを詳しく解説します。
アルミ製のカバーは非常に軽く、扱いやすさに優れているため、大規模なラッキング工事でも施工効率を高めやすい素材です。
金属の中では比較的柔らかく、現場での加工性が高いことから、多様な径の配管にフィットさせやすい特徴があります。
ただし、外気に長期間さらされると変色が進む場合があり、見た目の変化を避けたい場合は屋内での使用が適しています。
SUS304は、ステンレスの中でも高い耐食性と耐候性を持つ素材で、水分・薬品・塩分の影響を強く受ける環境でも劣化しにくい点が大きな魅力です。
高温多湿の空間でも安定した性能を発揮するため、衛生管理や安全性が重要視される施設で多く使われています。
価格は他の金属材に比べて高めですが、長期間メンテナンスが難しい設備や腐食リスクが高い場所では十分に投資価値のある材料です。
カラー鋼板は、表面に塗装を施した鋼板で、コストを抑えながら外観を整えられる素材として多くの現場で採用されています。
耐久性そのものはステンレスと比べると劣りますが、色付きの仕上げが可能なため、ライン識別・視認性の確保・空間デザインの調整など、多目的に活用できます。
配管が屋外や共用部に露出する場合でも、周囲の建築デザインと合わせて色を選べるため、景観を損なわずに施工できる点が評価されています。
ガルバリウム鋼板は、優れた耐久性と比較的手頃な価格の両方を備え、コストパフォーマンスの高い素材として広く使用されています。
屋内外どちらにも適用しやすく、一般的な建築現場で最も採用されるケースが多い素材の一つです。
ただし、塩害地域のように塩分が多く飛散する環境では、ステンレスに比べて耐食性が十分でない場合があるため、使用場所の選定には注意が必要です。
ラッキングの施工方法は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
ラッキング作業は、まず配管の外側に断熱材を施すところから始まります。
これは熱の伝わりを抑えたり結露を防いだりするための基礎工程で、施工場所の温湿度や配管の太さに合わせて、発泡系の断熱材やグラスウールといった材質を選択します。
保温材は均等な厚みで巻くことが大切で、隙間があったり重なりが不均一だと後に取り付ける金属カバーの形状にも影響が出てしまいます。仕上げ精度を高めるためにも、この工程を丁寧に行うことが求められます。
保温材を巻き終えたら、次に金属カバーを正確に加工するための寸法取りに進みます。直線部分だけでなく、配管の曲がりや接続部など形状が変化する箇所も細かく確認し、必要な寸法を拾っていきます。
これらの情報を基に、板材へ線を描いて加工位置を示す作業が「けがき」です。
専用の定規やコンパスなどを使って基準線を引き、後の切断・成形の土台をつくります。わずかな誤差でも仕上がりに影響するため、慎重な測定と精度の高さが求められる重要な工程です。
けがきで示したラインを頼りに、使用する板金材を必要な大きさに切り分けます。
まっすぐな配管に取り付ける部分は比較的シンプルですが、曲がり角やバルブ周辺のように形状が変化する箇所では、複雑な加工が求められます。
職人は金切りバサミや、ベンダー、折り曲げ工具などを使い分けながら、配管表面へしっかり密着するように細かな調整を繰り返します。こうした加工精度の高さが、最終的な仕上がりや耐久性に直結するため、技術が問われる重要な工程です。
加工を終えた金属カバーを配管に沿わせるようにして装着します。直管部はスライドさせながら位置を合わせ、複数の部材を組み合わせる場合は継ぎ目が重なるように配置して、水分やごみが侵入しにくい構造に仕上げます。
曲がり部や端部に使用するキャップは、切り欠きを利用して配管へ差し込むことが一般的で、狭いスペースでは切り欠きの数を増やすなど、現場状況に応じた工夫が必要です。こうして各パーツを1つずつ丁寧に合わせることで、全体が滑らかにつながった外装になります。
カバーの位置を確定したら、ステンレスバンドやビス、専用テープなどを使って外装をしっかり固定します。特に屋外では、風雨や紫外線にさらされるため、耐候性の高い固定具を選ぶことが欠かせません。
固定が完了した後は、継ぎ目に段差や隙間がないか、表面が均一に整っているかを細かく確認します。水が入り込みそうな箇所を補修したり、カバーのズレを微調整したりすることで、見た目の美しさだけでなく、長期的な耐久性も確保できます。
最終チェックまで丁寧に行うことで、ラッキングとしての性能を最大限に発揮できる状態へと仕上がります。
ラッキングの費用について分かりやすく解説します。
ラッキング材の価格は、選ぶ金属の種類によって大きく差が出ます。
最も一般的に使われるカラー鋼板は、手頃な価格で施工しやすく、屋内外どちらの現場でも採用されるベーシックな素材です。
一方で、ガルバリウム鋼板はカラー鋼板とほぼ同等の価格帯でありながら、腐食への耐性がわずかに高く、長期的な耐久性を重視する現場で選ばれることがあります。
さらに、ステンレス鋼板になると価格帯が一気に上がり、他の素材の数倍になることも珍しくありません。しかし、耐食性や衛生面での優位性が高く、食品工場や海沿いなど、環境条件が厳しい場所ではステンレスが最適な選択となる場合も多いです。
このように、施工場所の環境や求められる性能によって素材の選択が異なり、それがラッキング費用にも直接影響します。
ラッキング材の費用は、配管の太さによっても大きく変わります。
細い配管ほど材料の使用量が少なく金額は抑えられますが、口径が大きくなるにつれて必要な板材の幅が増えるため、単価も段階的に高くなります。
一般的によく使われるカラー鋼板・ガルバリウム鋼板・ステンレス鋼板それぞれの1m当たりのおおよその価格は次のとおりです。
配管の口径 | カラー鋼板 | ガルバリウム鋼板 | ステンレス鋼板 |
15A | 550円 | 558円 | 1,722円 |
25A | 614円 | 613円 | 1,892円 |
32A | 660円 | 662円 | 2,035円 |
40A | 704円 | 705円 | 2,156円 |
65A | 847円 | 842円 | 2,618円 |
80A | 908円 | 913円 | 2,789円 |
ラッキング施工の注意点は、次のとおりです。
● 安全点検を徹底する
● 細部の仕上げをしっかり行う
● 現場環境に合わせて適切に素材を選ぶ
それぞれを詳しく解説します。
ラッキング作業は、天井近くの足場の不安定な場所や身動きが取りづらい狭いスペースで行われることも多く、現場には常に転倒・落下・衝突といったリスクが伴います。
そのため、作業者の安全を守る取り組みは最優先事項です。高所では墜落防止器具の使用や作業床の点検が欠かせず、狭い範囲での施工では工具の置き場所や移動経路を整理するなど、細かな部分まで安全対策を講じる必要があります。
こうした危険を未然に防ぐためには、現場ごとのリスクを事前に把握し、作業手順の共有や安全教育を継続的に行うことが不可欠です。安全対策が徹底されてこそ、品質の高い施工を安定して提供できます。
ラッキングの施工品質は、外側の金属カバーだけでなく、その下地となる保温材の状態によって大きく左右されます。
断熱材が均等に巻かれていなかったり、金属カバー同士の合わせ目にわずかな隙間が生じたりすると、断熱性能が低下するだけでなく、結露の発生や腐食の進行を招きやすいです。実際、仕上げの精度が不十分なまま施工されたために十分な断熱効果が得られず、後からラッキングをやり直さなければならなくなったケースも多いです。
一度施工不良が発生すると、手直しに時間も費用もかかるため、最初の工程から正確な寸法取りと丁寧な仕上げを徹底することが非常に重要です。
ラッキング材は、多様な環境条件に耐えられるよう複数の素材が用意されていますが、どの現場にも同じ材料が適しているわけではありません。
温度が高い環境では耐熱性の高い素材が必要となり、湿度や腐食のリスクが高い場所ではステンレスなど耐食性のある材質を選ぶことが重要です。
不適切な素材を使用すると、早期劣化や断熱性能の低下を引き起こし、配管全体の寿命を縮める恐れがあります。こうしたトラブルを回避するには、現場の温度条件・湿度・外部環境を把握した上で最適な材料を選定することが不可欠です。
最後に、業界別のラッキングの意味と使い方を紹介します。
ITの分野で「ラッキング」とは、サーバー機器やネットワーク装置をラックと呼ばれる専用の収納架台に組み込み、運用できる状態に配置する作業のことです。
単に棚に置くだけではなく、機器の固定、配線の整理、冷却効率やメンテナンス性を考慮したレイアウト調整まで含まれるため、サーバールーム構築の重要なプロセスといえます。
トレーニングにおける「ラッキング」とは、荷重を加えたバックパックを背負って歩くことで負荷を高める運動のことを指します。
元々は軍隊で行われてきた訓練方法で、兵士が長距離を装備とともに移動できるように体力を養う目的で取り入れられてきました。
近年では一般のフィットネスにも応用され、筋力向上や持久力の強化を目指す人に人気があります。通常のウォーキングに比べて消費エネルギーが増すため、効率よく全身を鍛えられるエクササイズとして注目されています。
ワインづくりにおけるラッキングとは、熟成中に容器の底へ沈んだ澱(おり)を取り除くために、ワインを別の容器へ移し替える工程を指します。
澱をそのままにしておくと風味に影響が出ることもあるため、クリアな味わいを保つ上で欠かせない作業です。
ワインは低温ほど澱が沈みやすくなるため、温度を調整して静置した上で沈殿を促し、下部から澱だけを抜き取る方法や、上澄み部分のみを移す方法が取られます。また、必要に応じてフィルターを使い、より細かな不純物を除く場合もあります。