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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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セメント・モルタル・コンクリートは、いずれも「灰色」で「固まる建築材料」ですが、実際には全く異なる役割を持つ材料です。 最も重要なポイントは、3つが同列の存在ではなく、セメントが原料、モルタルはその中間材料、コンクリートが最終的な構造材という階層構造でつながっていることです。 本記事では、これら3つの材料の関係性を分かりやすく解説しつつ、それぞれの材料構成や性質、種類、用途、価格を体系的に紹介します。 建物の基礎作りから仕上げ作業、小規模な補修まで、どの場面でどの材料を使うべきか理解するための基礎知識として、ぜひお役立てください。
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コンクリート・モルタル・セメントは全て「灰色」で「固まる材料」ですが、そもそもの役割と階層が異なります。ここではこれらの違いについて詳しく解説します。
3つの材料の関係性を理解する上で重要なのは、「セメント・モルタル・コンクリートは同列ではなく、加工段階の異なる材料」であるという点です。
セメントは粉体の原料、モルタルは仕上げや接着に使う中間材、コンクリートは構造体として用いる最終材という位置付けです。
セメントに砂と水を混ぜるとモルタルになり、さらに砂利を加えるとコンクリートになります。つまり、セメント → モルタル → コンクリートという順に加工される階層構造で、セメントだけが原料の粉体、モルタルとコンクリートは目的に応じて使う建材です。
この関係性を押さえると、各材料の用途と役割の違いが理解しやすくなります。
コンクリートとモルタル、セメントの違いは次の表のとおりです。
項目 | セメント | モルタル | コンクリート |
材料構成 | クリンカ+石膏 | セメント+砂+水 | セメント+砂+砂利+水 |
役割 | モルタル・コンクリートの原料 | 仕上げ・接着・補修 | 構造体・基礎となる建材 |
強度 | 粉体のため単体では強度なし | △中程度(10〜15N/mm²) | ◎最も高い(18〜36N/mm²) |
見た目 | 灰色の粉 | なめらかで均一 | 粗く、骨材が見える |
値段 | 比較的安価 | やや高め(セメント比率が高い) | 安価(大量施工に向く) |
主な用途 | 材料の原料・補修材 | 仕上げ・接着・補修 | 基礎・柱・梁・土間などの構造体 |
最も高い強度を持つのはコンクリートで、砂利(粗骨材)が入ることで高い圧縮強度を発揮します。
モルタルは砂のみを混ぜた材料で、仕上げや接着には十分ですが、構造体としての強度は確保できません。
セメント単体は粉体でもろいため、構造用途には使われず、原料としての役割を担います。
価格面では、一般的にモルタルの方がコンクリートより高くなる傾向があります。
モルタルはセメントの割合が大きく材料費が上がりやすい他、左官による手作業が多いため施工費も高くなりがちです。
一方、コンクリートは砂利が主体で材料単価を抑えられ、機械を使った大量生産や大量施工が可能です。このため、広い面積でも比較的低コストで仕上げられる点が特徴です。
セメントとは、水と反応して固まる粉体の建材で、モルタルやコンクリートの強度を生む基本材料です。ここではセメントの原料や性質、種類、用途、価格を簡潔に解説します。
セメントは、石灰石や粘土、けい石などを原料に焼成して生まれる「クリンカ」に石膏を加えて粉砕した、非常に細かな灰色の粉末です。原料を高温で焼き上げることで水と反応しやすい性質を獲得し、粉体の状態で保管や運搬がしやすい点も特徴です。
製造されたセメントは、現場で砂や砂利と混ぜてモルタルやコンクリートとして使用されます。単体では強度が十分でないため、骨材と組み合わせて初めて建材としての性能を発揮します。大規模工事では、生コン工場で配合されたコンクリートがミキサー車で運搬されるなど、需要に応じた形態で供給されます。
セメントの最大の特徴は、水と反応して固まる「水硬性」にあります。この性質が、モルタルやコンクリートに高い強度と耐久性をもたらします。硬化後は外力に強く、構造物の基礎を支える材料として安定した性能を発揮します。
同時に、周囲の材料をしっかり結び付ける「接着性」も備えており、タイルやブロックなどの固定にも有効です。粉末は強いアルカリ性を持ち、皮膚刺激を起こすことがあるため、施工時には保護具が必要です。また、硬化後のコンクリートが灰色を呈するのは、セメント自体の色によるものです。
セメントは数多くの種類がありますが、その体系は「JISに規定されている3つの区分」と「JIS規定外の特殊セメント」に大別できます。
JISの分類では、まず最も一般的な「ポルトランドセメント」があり、続いて副産物などを混合して性能を高めた「混合セメント」、さらにこれらに該当しない「その他のセメント」という3つの枠組みが設けられています。これらに加えて、特定の目的のために設計された「特殊セメント」が独立したカテゴリーとして扱われ、この4つの分類がセメント全体の体系を形成しています。
日常的に「セメント」と呼ばれるものの多くは、このうちのポルトランドセメント、特に「普通ポルトランドセメント」を指します。この種類は用途範囲が広く、住宅の基礎から橋脚、道路まで幅広い分野で使われる、いわば標準的なセメントです。
セメントは、モルタルやコンクリートの原料として建築や土木の基礎を形成し、住宅基礎、壁、床、道路、橋梁など多様な構造物に強度を与える役割を担います。骨材との混合比を調整することで、基礎や仕上げ、補修など用途に合わせた性能を発揮できる点が大きな強みです。
タイルやブロックの固定材としても広く使われ、仕上げ工程における接着力の確保にも欠かせません。細かな欠損部分の補修にも適しており、外壁から土間、屋外構造物まで幅広い場面で利用されています。
また、水と混ぜて高い流動性を持たせた「セメントミルク」は、ひび割れ注入や地盤改良のグラウト材として重要です。接合部の補強や既存構造物の耐久性向上など、維持管理の工程でも活用されます。
セメントは粉体のまま保管や運搬が容易で、小規模工事から大規模施工まで安定した価格帯で利用できます。
ただし、セメントミルクなど特殊な用途で使用する場合は、施工方法が複雑になり、材料費以外の工事費が増えることがあります。用途に応じてコスト構造が変わるため、単価だけでなく施工条件を合わせて検討することが重要です。
モルタルとは、セメントに砂と水を混ぜた建材で、仕上げや接着、補修に使われます。ここでは材料や性質、用途、価格を簡潔に解説します。

モルタルは、セメントと砂、水を混合して作られます。一般的な配合比は「セメント1:砂3:水適量」が基本です。砂利(粗骨材)が入らないため粒子が細かく、なめらかなペースト状になり、均一な面を作りやすい点が特徴です。用途によっては砂の量や水の量を調整し、硬さや流動性を変えることもあります。
現場では、トロ舟やプラ舟と呼ばれる容器に材料を入れてスコップなどで手練りする方法の他、モルタルミキサーを使用して大量に練り上げる方法が一般的です。ミキサーを使うことで撹拌ムラを抑え、外構工事や左官工事などで均質なモルタルを安定して供給できます。
モルタルは、細かな砂粒によってなめらかで密着性が高く、左官のコテで均一に広げやすい加工性を持ちます。硬化後はつるりとした表面に仕上がるため、見た目を整えたい外壁や塀、門柱などに適しています。一方で、圧縮強度はおおむね10〜15N/mm²とコンクリートより低く、建物の主要な構造体を支える用途には向きません。
また、セメント比率が高いことから一定の強度は得られるものの、乾燥収縮によりひび割れ(クラック)が生じやすい性質があります。この収縮特性を踏まえ、床や外壁ではひび割れをコントロールするために目地を設ける設計が行われます。防水性は比較的高いものの、外部に使用する場合は防水材や防凍剤を併用して耐久性を高めることも一般的です。
モルタルには、用途や求める性能に応じて複数の種類があり、仕上げや補修、接着など目的に合わせて使い分けられます。
一般に「モルタル」というと、最も基本的な「セメントモルタル」を指すことがほとんどですが、実際には性能や用途に特化したさまざまなモルタルが存在します。
最も標準的なモルタルは、セメントと砂、水のみで作る「セメントモルタル」で、左官仕上げや外構の下地作りなど、住宅から土木まで幅広い現場で使われる基本形です。
細部補修や付着性の向上が求められる場面では、合成樹脂を加えた「樹脂モルタル」が使用されます。セメントの一部を樹脂で置き換えることで付着性や伸び性能が高まり、ひび割れや欠けの補修、小さな穴埋めなどに適した材料となります。
補修に特化した材料としては、硬化時に収縮がほとんど発生しない「無収縮モルタル」があります。セメントモルタルよりも粘度が低く流動性が高いため、コンクリート壁の隙間充填(じゅうてん)やひび割れ補修などに適しています。ひび割れの再発を抑えやすい反面、コストが高く、広範囲で使用されることはあまりありません。
また、下地作りに多く使われる「ポリマーセメントモルタル」は、セメントモルタルにポリマーを加えることで衝撃への強さや付着性を高めたタイプです。塗り重ねやタイル張りの下地など、強度や密着性が求められる工程で利用されるケースが多い材料です。
モルタルは、仕上げや接着、補修の3つの分野で特に活躍する、細部施工に強い材料です。外壁やブロック塀、門柱の上塗りなどでは、コテで塗り広げて表面を整える左官仕上げに用いられ、下地の凹凸を隠しながら均一な質感を作り出します。
また、タイルやレンガ、ブロックを固定する接着材としても重要な役割を果たします。必要な厚みで塗り付け、部材を押し込むことで高い密着性を確保できるため、床や壁の仕上げ、門柱や外構の装飾など、多くの場面で利用されています。
補修分野では、段差の調整や小さな欠損部の埋め戻し、ひび割れの充填(じゅうてん)などに使われ、既存コンクリートの表面を整えたり、勾配をつけたりする際にも重宝されます。こうした用途に合わせて、厚みや配合、施工方法を変えることで、モルタルは仕上げ材や接着材、補修材として柔軟に機能します。
さらに、住宅の外構工事やDIYでも扱いやすく、花壇の縁石や簡易的な棚、インテリアの下地づくりなど、手工具のみで行う小規模な施工にも向いています。コンクリートほどの構造強度はないものの、「見た目を整え、細部を仕上げる」役割において欠かせない材料です。
モルタルは、コンクリートに比べて材料単価と施工単価がともに高くなる傾向があります。砂利を使わずセメント比率が高いため、材料費が相対的に上がりやすいことに加え、左官による手作業が主体となるため人件費もかかりやすいからです。同じ面積を仕上げる場合、コンクリート施工の1.5〜2倍程度の費用になるケースも見られます。
一方で、材料そのものはホームセンターなどでも入手しやすく、少量であればDIYでも扱いやすい点も特徴です。小規模な補修や装飾的な仕上げであれば、材料費を抑えつつ目的に合った仕上がりを得られます。施工規模や仕上げ品質によって必要な手間と費用が大きく変わる点が、モルタルの価格面での特徴といえます。
コンクリートとは、セメントに砂と砂利、水を混ぜて作る高強度の構造用建材で、建物や道路、橋など大規模構造物に使われます。ここではコンクリートの材料や性質、種類、用途、価格を解説します。

コンクリートは「セメント+水+細骨材(砂)+粗骨材(砂利)」で構成され、特に粗骨材が加わることで材料同士がかみ合い、硬化後の高い圧縮強度が生まれます。一般的な配合は「セメント1:砂2:砂利4:水適量」が基本で、求められる強度や施工条件に応じて設計値が細かく調整されます。
施工現場では、生コン工場で練り混ぜた生コンクリートがミキサー車で運搬され、型枠へ打ち込み、振動締固めを行い、適切な養生によって性能を発現させます。
コンクリートの最大の特徴は、高い圧縮強度と優れた耐久性や耐火性にあります。普通コンクリートで24〜36N/mm²ほどの圧縮強度を持ち、建物の主要構造体として十分な性能を発揮します。一方で、引張力には弱く、曲げや引張が作用するとひび割れが生じやすい弱点があります。この性質を補うため、鉄筋と組み合わせる「鉄筋コンクリート(RC造)」が一般的に採用されます。
また、硬化に時間を要すること、自重が大きいこと、適切な締固めや養生が必要な点もコンクリートの特性です。意匠性は高くないため、仕上げ材としては使われず、必要に応じてモルタルやタイル、塗装などで表面を仕上げます。
コンクリートは、使用環境や目的、要求性能に合わせて多くの種類があり、おおむね「標準」「気温対応」「大型構造向け」「性能補強型」「特殊用途」の5つに分類できます。
標準的な「普通コンクリート」は建築や土木を問わず最も広く用いられ、一般的な強度と施工性を備えています。気温条件に適応する種類として、凍結を防ぐ「寒中コンクリート」や、急激な硬化を抑える「暑中コンクリート」があります。
大型構造物では、水和熱を抑制する「マスコンクリート」や、型枠への充填(じゅうてん)性を高めた「高流動コンクリート」、高層ビルなどで使用される「高強度コンクリート」が選ばれます。性能補強型としては、ひび割れを抑える「膨張コンクリート」や、あらかじめ圧縮力を導入した「プレストレストコンクリート(PC)」などがあります。
さらに、水中施工に適した「水中コンクリート」や、水はけを良くする「透水性コンクリート」など、特定の環境や条件に特化した種類も存在します。
コンクリートは、構造用建材として建築や土木のあらゆる分野で最も広く活用されています。建築では、基礎や柱、梁、床スラブ、耐力壁など主要構造体に用いられ、戸建住宅から高層ビルまでほぼ全ての建築物で採用されます。
土木分野では、道路舗装や橋梁、ダム、トンネル、擁壁、護岸など、長期耐久性が求められる構造物に幅広く使用されます。また、工場で製造されるプレキャスト製品(ブロックやパイル、床版)として大量に供給され、施工効率と品質安定にも寄与しています。
コンクリートは、モルタルより材料単価が安価になりやすい建材です。砂利をはじめとする骨材の割合が大きく、セメントの使用量が相対的に少ないため、高価な材料が抑えられることが主な理由です。生コンクリートとして1m³単位で供給されるため、広い面積を短時間で施工でき、面積当たりの費用効率にも優れています。
実務上は、同じ範囲を施工した場合、モルタルに比べて1.5〜2倍ほど安くなるケースも少なくありません。駐車場の土間、基礎、広い床スラブなど、強度と広さが求められる場面で特に採用しやすい価格帯です。一方で、使用する強度区分や混和材の種類、現場条件によって価格は変動するため、仕様選定と積算の段階での判断が重要です。