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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「照査って何をする作業?検査や承認とどう違うの?」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。 建設業界では日常的に使われる言葉ですが、正確な意味や役割を理解していないと、判断ミスや品質トラブルにつながる可能性があります。照査は、成果物が基準や仕様に適合しているかを確認し、ミスを未然に防ぐための重要な工程です。 本記事では、照査の意味や建設業での使われ方、種類、メリット・デメリット、具体的な手順まで、分かりやすく解説します。
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まず、調査の基本的な意味を紹介します。
照査とは、資料や数値、図面などの内容を、定められた基準や規格に照らして妥当性を確認する行為を指します。
「照査」は「しょうさ」と読み、英語では一般的に「verification」と訳されます。文脈によっては「cross-checking」や「review」、「validation」などの表現が用いられる場合もあります。
単なる確認やチェックよりも深いレベルの作業であり、形式的な誤りだけでなく、論理的な整合性や安全性への影響まで評価する点が特徴です。
建設や医療、監査、行政など幅広い分野で用いられ、成果物の品質保証やリスク防止のために不可欠なプロセスであるといえます。
建設業における照査は、設計・施工・品質管理の各段階で、成果物が法令や技術基準、契約内容に適合しているかを確認する重要な工程です。
代表的な使い方としては、「設計業務照査」があります。「設計業務照査」は、設計者が作成した図面や構造計算書について、発注者が基準に照らして妥当性を確認する作業です。これは設計ミスのみを探す作業ではなく、安全性や仕様との整合性を早期に把握し、品質を確保するために行われるものです。
他にも、構造計算の安全性を確認する「構造照査」や、現場の施工状況を検証する「施工照査」などがあり、いずれも建設プロジェクト全体の信頼性を支える役割を担っています。
照査と似た主な言葉は次のとおりです。
それぞれの違いを分かりやすく解説します。
検査とは、対象物が規格や基準に適合しているかを、測定・試験・観察などの方法で直接確認する行為を指します。
建設業でいえば、コンクリート強度試験など、材料や施工状況そのものを確認するプロセスが典型例です。
照査が図面・計算書・仕様書などの資料を基準に照らして妥当性を評価する「書類上の確認」であるのに対し、検査は実際の現物を対象に適否を判断する点が大きく異なります。
調査とは、必要な情報を収集し分析することで、状況や原因、傾向を明らかにするための行為です。
市場調査や地盤調査のように、現状を把握し理解することが主目的であり、その結果を基に判断材料をそろえる役割を担います。調査は情報収集が中心で、必ずしも特定の基準や規格に照らして適否を判定するものではありません。
照査が「基準適合の確認」であるのに対し、調査は「事実を集めて状況を理解するプロセス」であり、目的も判断軸も大きく異なります。
審査とは、提出された書類や計画、申請内容などを基準に基づいて評価し、適否や可否を判断する行為です。
補助金申請や建築確認申請のように、審査には「承認するかどうか」という明確な結論が求められ、判断には責任が伴います。
照査が主に内容の整合性や適合性をチェックする工程なのに対し、審査はその結果を踏まえて「承認」「不承認」といった最終的な判断を下す点が大きく異なります。
承認は、成果物を「正式に認める」ために責任者が行う最終判断の工程です。
照査は、数値の誤りや整合性の欠如などを洗い出し、改善点を指摘することが主な役割で、最終判断の責任は持ちません。つまり、照査は技術的な確認作業、承認は成果物を最終的に認める意思決定という位置付けです。
建設業では「照査で内容を確認し、承認で決裁する」という流れが一般的です。
照査の種類は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
初期照査は、プロジェクトの立ち上がり段階で行われる基本的な確認作業です。
設計方針や要件整理の段階で生じやすい誤り、前提条件の不一致、仕様の抜け漏れを早い段階で見つけ出し、後工程での大きな手戻りやリスクを防ぐことを目的としています。
プロジェクト全体の方向性を決める重要なフェーズであり、基礎部分を正しく整えることで、その後の作業品質と進行効率に大きく寄与します。
中間照査は、プロジェクトが進行している段階で実施する詳細な確認作業です。
図面・計算・仕様の内容が計画どおりに進んでいるか、技術基準や要件に適合しているかを丁寧に検証し、不整合や抜け漏れがあればこの時点で修正します。
中盤で課題を発見して是正することで、後工程での重大なミスや手戻りを防ぎ、全体の品質と進行管理の確実性を高める役割を果たします。
最終照査は、完成した成果物全体の品質と整合性を最終的に確認する工程です。
図面・計算書・仕様書などが基準に適合しているか、内容に矛盾や誤記がないかを丁寧にチェックし、納品・施工・運用へ進むための妥当性を総合的に判断します。
この段階で確実に確認を行うことで、後のトラブルを防ぎ、成果物としての完成度を保証します。
照査を行う目的は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
照査を行う最大の効果は、プロジェクト初期の段階で誤りや不整合を発見できる点にあります。
設計や計画の段階で発生した小さなミスは、放置すると後工程で大きな手戻りや工期遅延、コスト増加につながります。照査によって前提条件や仕様、図面の整合性を丁寧に確認しておくことで、問題を未然に防ぎ、プロジェクト全体の作業効率を高められます。
結果として、工程全体の安定性と信頼性向上にも寄与します。
照査は、成果物が技術基準・仕様・法令に適合しているかを確認することで、品質確保の土台を築く重要な工程です。
特に建設業や医療分野のように、人命や社会インフラに関わる領域では、基準不適合が事故や重大トラブルに直結する可能性があるため、照査による安全性の確認は欠かせません。施工不良の兆候や構造上の弱点、手順上の誤解といったリスクを早期に把握し是正できる点は大きなメリットです。
また、照査を丁寧に行うことで成果物全体の信頼性が高まり、利用者やクライアントに対しても高い品質を保証できるため、ブランド価値や評価向上にもつながります。
照査を記録として体系的に残しておくことで、プロジェクトの透明性が高まり、後から説明責任を果たしやすくなります。
どの工程で何を確認し、どのような判断に至ったのかが明確化されれば、関係者への報告や外部からの監査、トラブル発生時の原因究明もスムーズに進みます。また、照査の記録はリスク管理における重要な資料ともなり、問題の予兆やパターンを把握したり、改善点を抽出したりする際にも活用できます。
こうした蓄積により、組織としての対応力や再発防止策の精度が向上し、プロジェクト運営全体の信頼性強化につながります。
照査を継続的に実施することで、チーム全体が基準や手順を共通の尺度で理解でき、作業者ごとの解釈の違いや判断のばらつきを防げる点もメリットです。
照査項目や判断基準が明確になると、業務プロセスが体系化され、作業の標準化が進み、誰が担当しても一定の品質を維持しやすくなります。また、照査手順は新人教育や業務引き継ぎにも有効で、経験や個人スキルに依存しない仕組みを作ることで属人化のリスクを軽減できます。
結果として、チーム全体の生産性向上や品質管理の安定につながる点も大きなメリットといえるでしょう。
建設業における照査の手順は、次のとおりです。
それぞれのフローを解説します。
照査を的確に進めるには、まず準備段階で必要な資料を過不足なくそろえることが重要です。
対象となる図面や計算書、仕様書、関連基準書などの一次資料に加え、過去の類似事例や検討履歴があれば合わせて確認します。また、照査で見るべき観点(安全性、整合性、基準・法令適合、施工性など)を事前に整理し、担当者の役割分担も明確にします。
さらに、照査の範囲や締切をあらかじめ設定しておくことで、作業全体が計画的に進み、効率的なチェック体制を整えられます。
照査の実施段階では、図面・計算書・仕様書などの内容を基準や法令に照らし合わせながら、一つ一つ丁寧に確認します。
図面間で寸法や数量に矛盾がないか、計算値に誤差や抜けがないか、設計意図が仕様書と一致しているかといったポイントの重点的なチェックが重要です。疑問点や不整合を見つけた場合は、具体的な箇所と内容を記録に残し、後で振り返りやすいように整理しておきます。
必要に応じて写真や図解を添えることで、関係者と情報共有するときの伝達精度が高まり、修正作業がスムーズに進みます。
照査で発見した問題点は、そのまま列挙するのではなく、重要度や影響範囲ごとに分類して整理します。
施工に大きく影響するもの、設計方針の見直しが必要なもの、軽微な修正で済むものなど、優先度を明確にすることで対応がスムーズになります。整理した内容は、設計者やプロジェクト担当者に分かりやすく共有し、必要に応じて改善案や代替案も併せて提示します。
このプロセスにより、修正が効率的に進むだけでなく、関係者間で認識をそろえることにもつながり、プロジェクト全体の品質向上に寄与します。
修正が完了した成果物は、指摘事項が正しく反映されているかを必ず再度確認します。
具体的には、問題点が解消されているかだけでなく、修正によって別の箇所に影響が出ていないか、整合性が崩れていないかまで丁寧にチェックすることが重要です。特に図面や計算書は一部の修正が全体に波及することがあるため、関連する項目も含めて見直します。
必要に応じて複数回の照査を行い、最終段階での抜け漏れや誤りを防ぐことで、成果物の品質と信頼性を確実に担保できます。
照査の注意点は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
照査は、図面や計算書、基準書などの内容を丁寧に読み解き、整合性や適合性を確認する工程のため、一定の工数が必ず発生します。
専門知識を持つ担当者が時間をかけて行う必要があるため、プロジェクト全体のスケジュールに影響が出ることもあります。また、照査者の人件費や記録作業などの事務コストも増えやすく、特に工期が短いプロジェクトでは時間確保そのものが課題です。
事前に照査の工数を見積もり、計画的に進めるようにしましょう。
照査を適切に行うためには、基準の解釈や設計内容を正しく判断できる高度な専門知識と実務経験が必要です。
しかし、建設業界全体で技術者不足が深刻化していることから、十分なスキルを備えた照査担当者を確保できないケースが増えています。特に構造・設備・地盤といった専門性の高い分野では、任せられる人材が限られ、照査体制の構築そのものが難航することもあります。
こうした状況では、照査に時間を要したり精度にばらつきが出たりするリスクが高まります。対策として、人材育成の強化や手順の標準化により属人化を抑える仕組みづくりが求められます。
照査と設計が別担当で行われる場合、問題発生時に「どこまでが設計者の責任で、どこからが照査者の責任なのか」が曖昧になることがあります。
照査が確認作業にとどまるのか、判断をどの程度担保するのかが明確でないまま進めると、トラブル時に責任の押し付け合いが起きやすくなります。
このようなリスクを防ぐためには、照査の範囲や役割、最終責任の所在を事前に文書化し、関係者で共有しておくことが不可欠です。
最後に、照査に関するよくある質問とその回答を紹介します。
照査技術者とは、図面・計算書・仕様書などの内容が基準や法令に適合しているかを確認する専門担当者のことです。
設計内容を第三者的な立場でチェックする役割を持ち、構造・設備・土木など、担当分野の技術基準に精通している必要があります。照査技術者は、設計者とは別の視点で妥当性を判断するため、ミスの早期発見や品質向上に大きく貢献します。
特に公共工事や専門性の高いプロジェクトでは、資格や経験が求められる場合もあり、技術力だけでなく論理的な判断力や記録能力も重視されます。
照査報告書とは、照査を行った結果をまとめた文書で、確認した項目・発見した問題点・修正の必要性などを整理して記録するものです。
照査報告書は、照査の実施証明としてだけでなく、後工程での修正対応や責任範囲の明確化にも役立ちます。内容には、照査日や担当者、照査範囲、指摘事項、改善案、最終判断などが含まれることが一般的です。
プロジェクトの品質保証やトレーサビリティ(追跡性)を確保する上で重要な書類であり、施主や関係機関に提出を求められる場合もあります。
あらゆる業務に照査を義務付ける必要はありません。
照査が求められるのは、ミスが大きな影響を及ぼす可能性がある作業や法令順守や安全性が強く問われる工程など、リスクの高い領域が中心です。例えば、重大事故につながる恐れがある工程や契約条件、設計基準に厳密な適合が必要な業務では、第三者の視点での照査が不可欠といえます。
業務の性質や重要度に応じて、照査を実施すべき範囲を見極めることが大切です。