改修工事の仕様書に「DP」「DP-2」と書いてあっても、何の塗装で何年もつのか分かりにくいものです。耐候性塗装の定義から1級・2級・3級ごとの対応塗料・耐久年数の目安、見積前に確認すべきポイントまで比較表で整理しました。
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耐候性塗装(DP)とは、公共建築工事標準仕様書などの仕様書・図面で使われる塗装記号のひとつで、屋外の鉄部や亜鉛めっき鋼面、コンクリート面などに用いる、耐候性の高い上塗り塗料による塗装仕様を指します。「DP」は「耐候性塗料塗り」を表す略号で、フッ素樹脂・シリコーン樹脂・ポリウレタン樹脂のいずれかを主原料とする上塗り塗料を使い、等級によって耐候性能が変わります。
この記号は、官庁営繕の改修工事仕様書や設計図面のほか、橋梁・高架道路といったインフラ構造物、プラントや港湾施設、大型の公共建築物など、長期間の耐候性・防食性が求められる部位でよく登場します。耐候性に優れた塗膜を形成することで、紫外線や雨水による劣化を抑え、塗り替えの周期を延ばせる点がメリットです。
なお、DPの英字の由来について「Durable Paint(デュラブル・ペイント)」の頭文字とする説明を見かけることがありますが、公共建築工事標準仕様書やJIS規格の公式な文書にその由来を明記した記載は見当たりません。あくまで一説として捉えておくのがよさそうです。
塗料における耐候性とは、屋外で使用したときに、紫外線・雨水・温度変化などにさらされてもどの程度性能を維持できるかを示す指標です。耐候性が不足すると、色あせやチョーキング(白亜化)が進み、保護機能が弱まって下地にまで影響が及ぶことがあります。そのため建築用塗料では、屋外環境に対する強さを測る基準として耐候性が重視されます。
DPは、国土交通省大臣官房官庁営繕部が監修する公共建築工事標準仕様書 建築工事編では18章塗装工事7節、公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編では7章塗装改修工事8節として、それぞれ「耐候性塗料塗り(DP)」の名称で規定されています(令和7年版)。対象は屋外の鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面・コンクリート面・押出成形セメント板面で、上塗り塗料の等級(1級・2級・3級)は標準仕様書そのものではなく、個別の特記仕様書で指定する建付けになっています(出典:公共建築工事標準仕様書 建築工事編 令和7年版)。
対応する規格は、鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面が「JIS K 5659(鋼構造物用耐候性塗料)」、コンクリート面・押出成形セメント板面が「JIS K 5658(建築用耐候性上塗り塗料)」です。中塗りには日本建築学会の材料規格であるJASS 18(M-403〜M-405)が使われます(出典:JIS K 5658:2010 建築用耐候性上塗り塗料)。
耐候性の高い上塗り塗料を使うDP塗装には、主に次のようなメリットがあります。
一方で、等級が上がるほど材料費も上がります。次の比較表で紹介する耐久年数の目安とコストのバランスを見ながら選ぶことになります。
DP塗装は、耐候性能の違いによって1級・2級・3級の3段階に分かれます。等級が上がるほど紫外線や雨風への耐性は高まりますが、上塗り塗料の単価も上がるため、立地条件やメンテナンス計画とのバランスで選ぶことになります。現場や見積書では「DP-1」「DP-2」のように、DPと等級数字を組み合わせて略記されることもありますが、標準仕様書上の正式な表記は「1級」「2級」「3級」です。特記仕様書に等級の指定が見当たらない場合は、発注者・設計者への確認をおすすめします。
等級 | 主要原料(上塗り) | 耐久年数の目安 | 主な使いどころ |
|---|---|---|---|
1級 | フッ素樹脂系 | 15年以上(目安) | 海岸部・高層建築・インフラ設備など、 |
2級 | シリコーン樹脂系 | 10〜12年程度(目安) | 一般的な建物・標準的な環境条件下 |
3級 | ポリウレタン樹脂系 | 7〜8年程度(目安) | 定期メンテナンスを前提とした部位・仮設的な構造物 |

等級の判定基準は、JIS規格が定める促進耐候性試験(キセノンランプ法)です。コンクリート面等に使うJIS K 5658では、1級は照射2,500時間で光沢保持率80%以上、2級は1,200時間で80%以上、3級は600時間で70%以上が基準です。鋼面用のJIS K 5659でも、1級2,000時間・2級1,000時間・3級500時間という段階的な基準が設けられています(出典:JIS K 5659:2018 鋼構造物用耐候性塗料)。JIS規格そのものは年数ではなく、この促進試験の基準で等級を規定している点に注意してください。
上表の耐久年数は、専門の解説記事などで紹介されている目安の数値です(出典:岐阜橋梁塗装 塗装の耐候性と橋梁DP塗装等級を解説)。公共建築工事標準仕様書やJIS規格そのものは年数を保証しておらず、実際の耐用年数は立地環境(沿岸部かどうか、日射量)・下地の状態・塗膜の厚みといった条件で変わります。資料によっては1級を20年程度とするものもあり、幅を持って捉えるのが実務的です。正確な年数を確認したい場合は、使用する塗料メーカーの技術資料を個別に当たることをおすすめします。
DP塗装は、素地調整(ケレン)→下塗り→中塗り→上塗りの順で進みます。鋼面では既存の錆や汚れを除去したうえで防錆塗料を塗り、亜鉛めっき鋼面では専用のプライマーで密着性を確保します。コンクリート面では吸込止めや下地調整塗材でひび割れ・不陸を直してから、中塗り・上塗りへと進みます(出典:公共建築改修工事標準仕様書 建築工事編 令和7年版)。
素地調整が不十分だと、どれだけ性能のよい上塗り塗料を使っても早期の剥離や膨れの原因になります。ケレンの工程は特に丁寧に行いたいところです。また、気温・湿度・降雨といった環境条件や、工程間の乾燥時間を守ることも、耐候性塗装の性能を発揮させるうえで欠かせません。
改修工事の特記仕様書に「DP」「DP-2」とだけ書かれていて、単価がまるで違う1級〜3級のどれを指すのか読み取れない、というケースは珍しくありません。見積の前に、次の点を確認しておくと手戻りを防げます。
等級の指定が曖昧なまま見積を出すと、想定より安価な3級で積算してしまい、あとから差額が発生するといったトラブルにつながりかねません。判断に迷う場合は、コストと耐久年数の目安を並べて示したうえで、上位グレードを提案する形で発注者に質疑を出すのも一つの方法です。
等級ごとの単価や実績データを毎回手作業で照合するのは手間がかかるため、過去の見積もりデータをAIで整理して積算の精度を上げる取り組みも進んでいます。塗装業界でのAI活用の具体例は塗装業のAI活用の方法を解説した記事で紹介しています。
なお、公共建築工事標準仕様書は新築用(18章7節)と改修用(7章8節)で章・節番号が異なるうえ、版が改まると内容が更新されることもあります。仕様書や特記仕様書を確認する際は、どの年版に基づく記載かも合わせてチェックすると、記号の対応関係を読み違えずに済みます。
公共建築工事標準仕様書の塗装工事の章には、DPのほかにも合成樹脂調合ペイント塗り(SOP)、クリヤラッカー塗り(CL)、アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD)、つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G)、合成樹脂エマルションペイント塗り(EP)など、複数の記号が並んでいます。改修現場では、これらに加えて「AEP」という表記もよく使われます。DPとAEPは同じ塗装記号でも指す内容が異なるため、AEP塗装とEP塗装の違いを解説した記事で違いを確認しておくと、仕様書を読み違えずに済みます。
上塗りに使う樹脂そのものをより詳しく知りたい場合は、フッ素樹脂塗料の特徴を解説した記事やウレタン塗装の特徴を解説した記事、塗料全体の分類は塗料の種類を成分別に整理した記事も参考にしてください。
DP塗装の単価は、等級(1級〜3級)や施工面積、下地の状態、施工環境によって変わります。一般的には重防食塗装に近い仕様となるため、通常の外壁塗装より高めの価格帯になる傾向があります。正確な金額は、現地調査を踏まえた見積もりで確認するのが確実です。
鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面のDP塗装では、下塗り工程で防錆性能を持つ塗料を使うのが標準的な流れです。下地の防食層が不十分だと、上塗りに高耐候性の塗料を使っても内部で腐食が進み、短期間で塗装全体の性能が落ちるおそれがあります。
DPは「耐候性塗料塗り」を表す仕様書上の記号で、1級(フッ素樹脂系)・2級(シリコーン樹脂系)・3級(ポリウレタン樹脂系)の3等級に分かれます。等級が上がるほど耐候性能と耐久年数の目安は高まりますが、標準仕様書は等級そのものを規定しておらず、実際に使う等級は特記仕様書で確認する必要があります。仕様書に「DP」とだけ書かれていたら、まずは等級の指定の有無から確認してみてください。