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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「アースって何のために必要なの?」と疑問を抱いたことがある方は多いのではないでしょうか。 家電を設置する場面で目にするアース線やアース端子は、普段あまり意識されることがないものの、感電や火災を防ぐ上で欠かせない安全装置です。 本記事では、アースの仕組みや役割、端子の種類、取り付け方法、注意点までを分かりやすく解説します。
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建築用語「アース」の基本的な意味と使い方を解説します。
建設業におけるアースとは、電気設備や金属部分を導線で地中の電極とつなぎ、電位を大地と同じ状態に整えるための接続方法を指します。
「アース(earth)」という名称は地面を意味しており、電気回路や機器の金属部分と地面を物理的に結ぶことから、この呼び名が使われています。
現場では、分電盤や仮設設備など多くの機器に設けられ、施工時に決められた方法で接地極へ配線されます。

アース線とは、電気機器の金属部分や回路の一部を地面につながる接地極へ結ぶための専用の電線のことです。
一般的に緑色、または緑と黄色のストライプで識別され、他の電線と区別できるように規格化されています。
建物の壁面にあるアース端子付きコンセントや分電盤・機器の接地端子から延びており、使用場所に応じて適切な太さや材質が選ばれます。
アース付きコンセントとは、通常の2つの差し込み口に加えて、アース線を接続するための専用穴や端子を備えたコンセントのことです。
一般的なコンセントは上下の2つの穴だけですが、アース付きタイプはもう1つ接地用の穴が設けられており、3つの口を持つことから「3口コンセント」と呼ばれる場合もあります。
この接地用の穴は、建物の内部で接地配線に直結しており、家電のアース線を差し込むことで、機器と接地極との間に専用の経路が確保される仕組みです。
アースが必要な理由は次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
電気製品の中で絶縁が弱くなったり不具合が生じたりすると、本来は電気が流れない金属部分に電流が移ってしまう場合があります。
この状態で人が触れると、体に電気が流れ込む危険が高まります。アースが確保されていれば、余分な電流は先に大地へ逃げるルートが用意されるため、感電のリスクを大きく下げられます。
特に水を扱う場所で使う家電や金属の外装を持つ機器では、アース接続の有無が安全性に直結する重要なポイントです。
絶縁不良などで漏電が発生すると、電気が本来流れるべきではない箇所に集中し、周辺の部材が急激に熱を帯びる場合があります。
温度が過度に上昇すると配線の被膜が焼けたり、内部パーツが損傷したりして、煙や火が出る原因になることもあります。アースが施されていれば、こうした異常な電流を地面へ逃がす通路が確保され、電気が一点にたまる状況を避けられます。
建物内での火災リスクを減らす上でも、アースは欠かすことのできない安全対策の一つです。
複数の機器が同じ環境で動いている場合、それぞれの筐体や回路にわずかな電位差が生じることがあります。
この差が大きくなると誤作動やノイズが発生しやすくなり、機器の性能や測定値にばらつきが出ることもあります。アースへ接続しておけば、各機器の電位が地面とそろいやすくなり、動作環境が安定します。
品質管理が求められる設備や精密機器では、この電位の基準をそろえることが安定稼働の土台です。
金属外装や内部基板に静電気がたまると、部品の破損や動作不良の原因になることがあります。
特に乾燥した環境や静電気が発生しやすい素材を扱う施設では、静電気によるトラブルが起きやすいです。アースを設けることで、帯電した電荷を自然に逃がすルートができ、静電気の蓄積を抑制できます。
パソコンや計測器など、静電気に弱い機器では非常に効果的な仕組みです。
周囲の電磁波が機器に入り込むと、映像の乱れや音声のノイズ、通信エラーなどを引き起こす場合があります。
また、機器自体が発する電磁ノイズが周囲に影響を与えることもあります。アースにつないでおくことで、不要な電磁エネルギーを大地へ逃がしやすくなり、外部・内部双方のノイズが抑えられます。
精密機器や通信設備が多い環境では、アースの有無が性能に大きく関わることも珍しくありません。
近くで雷が発生すると、一瞬だけ非常に大きな電圧が配線経路に入り込み、機器へ強い負荷がかかることがあります。
この高電圧(サージ)は電子部品にとって大きなダメージとなり、故障やデータ破損の原因になることも少なくありません。アースが設けられている場合、電線に入り込んだ余分な電荷を地面へ逃がす経路が確保されるため、機器への影響を大幅に抑えられます。
避雷器やサージ保護装置と併用することで、建物全体の保護性能がさらに高まり、雷によるトラブルを未然に防ぎやすくなります。
ネットワーク機器や電話回線は、わずかな電気的な揺らぎでも動作が不安定になることがあります。
通信線に電位差やノイズが入り込むと、データの処理が遅くなったり、接続が途切れやすくなったり、信号の誤判定が発生することもあります。アースを確保しておくことで、不要な電流が通信機器に影響を及ぼしにくくなり、安定した通信状態を保ちやすくなります。
オフィスのネットワーク設備や工場の制御システムなど、信頼性が求められる環境では欠かせない対策です。
漏電遮断器(漏電ブレーカー)は、回路の異常な電流の流れを検知して電源を自動的に切る安全装置です。
しかし、アースが正しく接続されていないと、漏電時の電流が十分に流れず、ブレーカーが異常を検知しにくくなる場合があります。アースを設けておけば、漏れた電流が確実に大地へ流れる経路が生まれ、遮断器が異常を判断しやすくなります。
その結果、故障が起きた際に素早く電源を遮断でき、感電事故や機器損傷のリスクを抑えられます。建物全体の安全性を維持する上で、アースと漏電遮断器の組み合わせは欠かせない仕組みです。
アースが使われる代表的な家電は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
洗濯機は水を扱う機器であり、内部で湿気がこもりやすい構造のため、アース接続が必須とされています。
絶縁が弱くなると金属部分に電気が流れやすく、漏電時に感電につながる恐れがあります。多くの洗濯機には本体背面にアース線が備わっており、近くのアース端子付きコンセントへ接続して使用します。
特に脱衣所は湿度が高いため、設置環境と安全性の観点からもアースの有無が重要です。
冷蔵庫は大型で金属面が多く、内部にコンプレッサーなどの電動部品を備えているため、電気的な負荷が大きい家電の一つです。
表面に触れる機会も多く、漏電時のリスクを軽減するためにアース接続が推奨されています。
また近年の冷蔵庫は精密な制御回路が搭載されているため、アースによって電位を安定させることで、誤作動を防ぎやすいという利点もあります。
電子レンジは高電圧を利用して庫内を加熱するため、異常時に電流が筐体へ伝わる可能性があります。
そのため、本体に備わるアース線を必ず接地端子へ接続することが前提になっています。
特にキッチンは水回りと近いため、安全性の観点からもアース接続は欠かせません。アースがあることで内部ノイズも逃がしやすく、安定した動作にもつながります。
エアコンは室内機・室外機の両方に電装部品があり、湿気・温度変化などの影響を受けやすい環境で使用されます。
そのため、多くのエアコンにはアース接続が求められます。専用コンセントの近くに設けられたアース端子に接続するか、必要に応じて電気工事が行われます。
安定運転だけでなく、漏電時の安全確保にも重要な設備です。
温水洗浄便座は、ヒーターやモーターなど複数の電装部品を備えており、水回りの中でも特に湿気が多い場所で使用されます。
便座内部の結露や水滴によって絶縁が弱くなると、漏電が発生するリスクが高まります。アースを接続しておくことで、万が一電流が金属部分へ流れた場合でも、人体ではなく大地側へ逃がす経路が確保され、安全性が大きく向上します。
メーカーもほぼ例外なくアース接続を推奨しています。
食器洗い機は庫内に水を循環させながら、高温で洗浄・乾燥を行うため、湿気・熱・蒸気が複合的に発生する家電です。
電装部が水分の影響を受けやすく、漏電事故を防ぐためにアース接続が欠かせません。
また高出力ヒーターで動作するため、電気的な負担が大きく、アースを施すことで電位の揺らぎを抑え、安定した動作にもつながります。
テレビは以前のブラウン管方式でもアースがよく使われていましたが、薄型テレビでもノイズ対策の観点からアースが推奨される場合があります。
内部には複数の電子基板が搭載され、微弱信号を扱うため、電磁ノイズや外部からの電位差によって映像や音声に乱れが生じることがあります。
アースを接続しておくことで、不要な電荷が逃がされ、安定した画像・音質を保ちやすくなります。
パソコンは精密なデジタル回路で構成され、わずかな電気的ノイズでも動作が影響を受ける機器です。
アースがあると、電源周りの電位を一定に保ち、不要な電気がたまるのを防げます。これにより、処理性能の低下・USB機器の誤作動・オーディオ出力のノイズが軽減される効果も期待できます。
特にデスクトップPCやオーディオ/映像系の作業用PCでは、アースの重要性が高まります。
アース線を接続する端子には、住宅のコンセント周りでよく使われる形状として、次の3種類があり、取り付け方が異なります。
それぞれを詳しく解説します。
つまみタイプのアース端子は、コンセントに備え付けられた小さなつまみにアース線を引っ掛けて固定する方式です。構造がシンプルで、手作業だけで取り付けできる点が特徴です。作業の際は手を保護するため、必ず手袋を着用してください。
まず、アース線を付ける準備ができたら、端子のつまみを指で回して緩め、線を差し込めるだけのスペースをつくります。次に、アース線の先端を軽く曲げ、逆J字のような形状に整えてから端子に引っ掛けるように差し込みます。より線タイプのアース線を使用している場合は、銅線が広がらないよう先端を軽くねじってまとめておくと作業しやすくなります。
最後に、緩めておいたつまみを再度しっかり締めて、アース線が動かないよう固定します。この手順で正しく取り付ければ、アース線が外れにくく、安全に接続できます。
ふたタイプのアース端子は、カバーを開くと内部に固定用のネジが現れる構造になっています。取り付けにはドライバーが必要となるため、事前に工具を準備してから作業を始めましょう。
まず、コンセントについている小さなふたを開け、アース端子のネジにアクセスします。続いて、ドライバーでネジをゆるめ、アース線を差し込めるだけのスペースを確保します。アース線の先端は、逆J字のように軽く曲げて形を整えておくと、端子へ巻き付けやすくなります。より線タイプの場合は、銅線が広がらないよう軽くより合わせておくと作業がスムーズです。
線を端子の内側に巻き付けたら、ネジを再び締めてしっかり固定します。
最後にふたを閉めれば取り付けは完了です。ネジによる締め込みで確実に固定できるため、安全性が高い方式として広く採用されています。
ワンタッチタイプのアース端子は、工具を使わずに取り付けられる簡易式の構造が特徴です。カバー内部に差込口が設けられており、アース線を差し込んでレバーを下げるだけで固定できるため、短時間で作業を終えたい場合に適しています。
まず、アース端子部分のレバーを上方向へ持ち上げ、アース線を挿入できる穴を露出させます。次に、アース線の先端をそのまま穴へ差し込みます。このタイプでは線端を曲げる必要がなく、まっすぐの状態で問題ありません。より線の場合も、軽くまとめておけばそのまま入れられます。
線を差し込んだら、レバーを元の位置へ戻してしっかり固定します。レバーが下がると内部の金具が線を押さえ込み、確実にロックされる仕組みです。
煩雑な操作が不要なため、初心者でも扱いやすい端子形式といえます。
アース線取り付けによくあるトラブルと対処法を紹介します。
キッチンでは冷蔵庫や電子レンジなど、アース接続が推奨される家電を同時に使うことがよくあります。その結果、接続したい線が複数あるのに、コンセント側の端子が1つしかないという状況が起こりやすいです。
この場合、複数のアース線を1つの端子にまとめて固定して構いません。確実に締め付けさえすれば、問題なく使用できます。
しかし、そもそもコンセントにアース端子自体がない場合は、端子付きのコンセントに交換する必要があります。こうした交換作業や増設工事は資格が必要なため、必ず電気工事士へ依頼しましょう。自己判断での改造は感電や火災の原因になるため避けてください。
アース線が端子まで届かないケースもよくあるトラブルの一つです。
短いからといって途中に別の線を足して延長する方法は、接触不良や過熱を招き、重大事故につながる危険性があります。継ぎ足しは絶対に行ってはいけません。
正しい対処方法は、家電本体についているアース線を取り外し、長さのある専用のアース線に交換することです。交換用のアース線は家電量販店やホームセンターで購入でき、製品の仕様に合わせて選べます。
取り外し方は製品ごとに異なるため、必ず説明書で確認し、安全に作業を行いましょう。
最後に、アースに関するよくある質問とその回答を紹介します。
電源を入れれば通常どおり動作しますが、万が一のときの安全性が大きく損なわれます。
前述のとおり、本来アース線は、漏電した電気を人ではなく地面へ逃がすための仕組みなので、未接続のまま使用すると感電事故や機器の不具合につながる可能性が高まります。
アース線がついている家電はつないで使用しましょう。
アース線は、ガス管・水道管・電話線用のアース・避雷針などへの接続はできません。
ガス管へアース線を巻きつけると、漏電時に火花が発生し、最悪の場合は引火や爆発につながる危険性があります。また、電話設備のアース線や避雷針に接続すると、落雷のエネルギーが室内側に流れ込む恐れがあり、大きな事故を招きかねません。
さらに、近年の水道管は樹脂製が多いため、見た目が金属でも実際には接地として機能しないケースがあります。このような場所にアース線をつないでも電気を逃がす効果は得られず、かえってリスクが高まります。
これらの誤接続は電気設備の技術基準でも禁止されており、法令上も認められていません。必ず建物の接地工事とつながった「正しいアース端子」にのみ接続するようにしましょう。