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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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溶剤塗装は、工業製品や建築分野など幅広い場面で採用されている、代表的な塗装方法の1つです。しかし、「粉体塗装や電着塗装との違いがわからない」などと感じている方も多いのではないでしょうか。 塗装は単なる色付けではなく、製品の耐久性や防錆性、美観を左右する重要な工程です。その中でも溶剤塗装は、表現力や柔軟性に優れる一方で、環境面や施工面での注意点も存在します。 本記事では、溶剤塗装の基本的な仕組みから、膜厚の考え方、他の塗装方法との違い、メリット・デメリット、使用される塗料の種類、具体的な施工手順まで詳しく解説します。
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まず、溶剤塗装の基礎知識について解説します。
溶剤塗装とは、シンナーなどの有機溶剤で塗料を希釈し、その塗料を使って被塗物の表面をコーティングする塗装方法です。塗装後は、空気中で自然に乾燥させる方法に加え、一定の温度で加熱して硬化させる焼き付け乾燥を行うことで、表面に塗膜を形成します。
この工法は、対応できる素材や用途の幅が広く、さまざまな分野で長年使われてきた実績があります。そのため、現在でも塗装方法の中では非常に汎用性が高く、代表的な手法として位置付けられています。
なお、溶剤塗装は英語では「Solvent-based coating」といいます。
塗装とは、刷毛やローラー、スプレーなどを用いて塗料を表面に塗布し、対象物の上に薄い膜(塗膜)を形成する表面処理の一種です。
この塗膜には大きく2つの役割があります。1つは見た目を整えることで、色や質感を加えることで製品の外観価値を高める役割です。もう1つは、外部環境から対象物を守る保護機能で、サビや腐食、劣化の進行を抑える働きがあります。
このように塗装は、単なる色付けではなく寿命や性能にも関わる重要な工程として位置付けられています。
溶剤塗装の膜厚(まくあつ)について、詳しく解説します。
膜厚とは、塗料を塗布したあとに乾燥・硬化して形成される塗膜の厚さを指します。
一見すると見落とされがちな要素ですが、仕上がりの品質や耐久性に直結するため、塗装工程では重要な管理項目です。
膜厚が適切でない場合、さまざまな不具合が生じます。例えば、厚く塗りすぎると塗料の無駄が増えるだけでなく、乾燥不良やひび割れの原因になることがあります。一方で、薄すぎる場合は色ムラや光沢の低下が起こりやすく、さらに下地が十分に保護されず、サビや劣化を招くリスクが高まります。
そのため実務では、膜厚計と呼ばれる測定機器を用いて塗膜の厚さを数値で確認しながら、適切な範囲に収まるよう管理することが一般的です。
溶剤塗装では、比較的薄い塗膜で仕上げるのが基本となり、一般的には10〜30μm程度に設定されることが多いです。
ただし、塗料の種類や使用目的によっては膜厚を調整することも可能であり、求められる性能に応じて仕様が決められます。
それでも、溶剤塗装はあくまで薄膜での仕上げを前提とした工法であるため、厚みそのものを重視するケースには適さない場合があります。
塗装にはさまざまな種類があり、「使用する塗料」「塗装の方法」「硬化の仕組み」といった複数の観点で分類されます。
ここでは、溶剤塗装とよく比較される代表的な塗装方法について、それぞれの特徴と違いを整理します。
焼付塗装は、塗料を塗布した後に加熱することで塗膜を硬化させる方法です。溶剤塗装が自然乾燥でも対応できるのに対し、焼付塗装は加熱による硬化を前提としている点が大きな違いです。
加熱によって塗膜が強固に定着するため、耐久性や耐摩耗性に優れた仕上がりが得られます。このため、自動車部品や金属製品など、強度や耐久性が求められる分野で多く採用されています。
なお、焼付塗装は「塗料の種類」ではなく「乾燥・硬化の方法」を指す概念であり、溶剤塗装であっても焼付工程を行えば焼付塗装に該当します。
粉体塗装は、粉末状の塗料を対象物に付着させ、加熱によって溶融・硬化させる塗装方法です。溶剤塗装が液体塗料を使用するのに対し、粉体塗装は溶剤を含まない点が大きな違いです。
厚みのある塗膜を形成しやすく、防錆性や耐久性に優れているため、屋外設備や建築部材などに適しています。また、有機溶剤を使用しないため、環境負荷や健康リスクを抑えられる点も特徴です。
一方で、細かな色調整や繊細な外観仕上げにはやや不向きであり、用途に応じた使い分けが必要です。
静電塗装は、塗料に電荷を与え、被塗物との間に働く静電気の力で塗料を付着させる塗装方法です。これは塗料の種類ではなく、「塗料をどのように付着させるか」という塗装技術の一種です。
塗料が対象物に引き寄せられるため付着効率が高く、ムラの少ない均一な塗膜を形成しやすい点が特徴です。また、塗料の飛散が少ないため、材料ロスを抑えられるメリットもあります。
溶剤塗装でもこの静電塗装が併用されることが多く、特に工業製品の塗装では一般的な手法となっています。
電着塗装は、水性塗料の中に対象物を浸し、電気を流すことで塗料を付着させる方法です。静電塗装と同様に電気の力を利用しますが、液中で塗装を行う点が大きく異なります。
この方法は塗料の付着効率が非常に高く、複雑な形状でも均一な塗膜を形成できる点が特徴です。特に防錆性に優れているため、自動車部品の下地処理などで広く採用されています。
ただし、電気を通す必要があるため、金属以外の素材には適用できない点には注意が必要です。
溶剤塗装のメリットは、次のとおりです。
それぞれを解説します。
溶剤塗装は、使用できる塗料の種類が非常に多く、被塗物の材質や用途に応じて最適な塗料を選びやすい点が強みです。
アクリルやウレタン、メラミンなど複数の樹脂系塗料に対応しており、耐久性・耐候性・外観などの性能要件に合わせて設計できます。
また、調色の自由度が高く、細かな色指定や質感のコントロールがしやすい点も特徴です。メタリック調や落ち着いたマット仕上げなど、意匠性を重視した塗装にも対応できるため、外観品質が求められる製品に適しています。
こうした表現力の高さが、幅広い分野で採用されている理由の1つです。
溶剤塗装は、必要な分だけ塗料を準備しやすく、材料の無駄を抑えやすいという特徴があります。
塗料自体の価格も比較的手頃なものが多く、全体のコストをコントロールしやすい点がメリットです。
さらに、入手性が高い点もコスト面に寄与しています。専門業者向けの製品だけでなく、一般向けの製品も流通しているため、用途や品質に応じて選択肢を広く持てます。こうした要素が、コストパフォーマンスの良さにつながっています。
溶剤塗装は単独で仕上げるだけでなく、他の塗装方法と併用できます。
例えば、下地処理として別の塗装を施した上で仕上げに溶剤塗装を行うなど、工程の一部として取り入れることが可能です。また、必要な箇所だけ部分的に施工することもできるため、製品の仕様や用途に応じた最適な塗装設計ができます。
このように、他の工法と組み合わせることで、機能性とデザイン性の両立を図れる点も大きな利点といえるでしょう。
溶剤塗装のデメリットは、次のとおりです。
それぞれを解説します。
溶剤塗装で使用される塗料には、トルエンやキシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)が含まれている場合があります。
これらの成分は揮発して空気中に拡散しやすく、一定量以上を吸い込むと、神経系への影響や内臓への負担など、健康被害につながる恐れがあるといわれています、
また、特有の強い臭気が発生するため、作業者だけでなく周囲の環境にも影響を与える可能性があります。そのため、換気設備の整備や防護具の着用など安全対策を前提とした運用が不可欠です。
溶剤塗装は、有機溶剤の揮発により大気中へ化学物質が放出されるため、環境負荷の観点でも課題があります。
近年は環境意識の高まりにより、VOC排出に関する規制が強化される傾向にあり、対応コストや運用負担が増すケースも見られます。
また、環境配慮の観点から水性塗料や粉体塗装への切り替えが進む場面もあり、用途によっては溶剤塗装が選択しにくくなる可能性があります。
有機溶剤は可燃性を持つものが多く、取り扱いには十分な注意が必要です。
作業中に火気が近くにある場合、引火のリスクが高まるため、現場では防爆対策や火気管理が求められます。
さらに、塗装された製品についても火災時には燃焼を助長する要因となる可能性があるため、使用環境によっては注意が必要です。安全面の管理が前提となる点は、溶剤塗装のデメリットといえます。
溶剤塗装は、塗料の粘度調整や吹き付けの技術によって仕上がりが大きく変わる特徴があります。
特に気温や湿度の影響を受けやすく、条件に応じて適切に調整できない場合、液だれやムラなどの不具合が発生しやすくなります。
また、塗着効率も高いとはいえず、塗料の飛散やロスが発生しやすい点も課題です。そのため、安定した品質を確保するには、一定以上の経験や技術力が求められます。
溶剤塗装に使われる塗料の種類は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
アクリル樹脂塗料は、アクリル樹脂をベースにした塗料で、扱いやすさと色の鮮やかさに優れています。塗膜は比較的しっかりとした硬さがあり、仕上がりの発色が良いため、見た目を重視する用途に適しています。
コスト面でも導入しやすく、施工の難易度も高くないことから、住宅の外装や屋根、家具、各種工業製品など、幅広い分野で使用されています。特に、初期費用を抑えながら一定の品質を確保したい場合に選ばれるケースが多い塗料です。
また、乾燥が早く作業効率を高めやすい点も特徴の1つです。紫外線に対して一定の耐性を持つ製品もありますが、他の高耐久塗料と比べると寿命はやや短い傾向にあります。そのため、長期間の使用を前提とする場合は、定期的な塗り替えを視野に入れておく必要があります。
メラミン塗料は、メラミン樹脂とアルキド樹脂などを組み合わせた塗料で、主に焼付塗装で使用されます。金属製品や内装材、日用品などに幅広く採用されています。
比較的低い温度で短時間に硬化できる点が特徴で、効率的な生産に適しています。硬化後は耐水性や耐薬品性を持ち、実用性の高い塗膜を形成します。また、光沢感のある仕上がりになりやすく、外観品質の調整もしやすい塗料です。
一方で、紫外線に弱く、屋外で使用すると劣化やチョーキングが起こりやすいため、主に屋内や日光の影響を受けにくい環境で使用されます。
溶剤塗装が使われる場面は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
溶剤塗装は汎用性が高く、多様な工業製品や設備部品に利用されています。
具体的には、車両や建設機械、産業機械といった大型製品から、配電盤や制御盤などの電気機器、さらには店舗設備や小型発電機の部品まで、幅広い分野で採用されています。
また、自動車部品や事務機器、金属雑貨、家具など、外観品質と耐久性の両方が求められる製品にも適しており、仕上がりの美しさと機能性を両立できる点が評価されています。
溶剤塗装は、屋外で長期間使用される製品にも多く用いられています。
紫外線や雨風にさらされる環境でも、塗膜によって下地を保護できるため、耐久性が求められる場面に適しています。
特に、沿岸部のように塩害の影響を受けやすい環境では、防錆性や耐候性が重要となるため、適切な塗料と組み合わせた溶剤塗装が選ばれるケースがあります。使用環境に応じて塗料を選定できる柔軟性が、こうした用途での強みです。
フッ素樹脂塗料は、フッ素樹脂を主成分とした塗料で、非常に高い耐候性と耐久性を持つ点が特徴です。
紫外線や雨風の影響を受けにくく、長期間にわたり劣化しにくいため、建築外装や屋外設備などに多く使用されています。
また、汚れが付着しにくく、付着しても落ちやすい性質があり、美観を維持しやすい点もメリットです。メンテナンス頻度を抑えられるため、長期的な視点で見るとコストメリットが期待できます。
一方で、他の塗料と比較して価格が高く、施工にも一定の技術が求められるため、用途や予算に応じた検討が必要です。
エポキシ樹脂系塗料は、エポキシ樹脂をベースとした合成樹脂塗料の一種で、防錆性と密着性に優れている点が特徴です。
特に金属との相性が良く、下地を保護する目的で広く使用されています。中でも、樹脂に改良を加えた変性エポキシ樹脂を用いた防錆塗料は、耐食性と付着力のバランスに優れており、現在ではさび止め塗装の主流です。
鉄鋼構造物や配管、機械部品など、腐食対策が重要となる場面で多く採用されています。
ウレタン樹脂塗料は、ポリオール(多価アルコール)とポリイソシアネートを反応させて形成される塗料で、組み合わせによってさまざまな性能を持たせられる点が特徴です。
耐候性や柔軟性、密着性のバランスに優れており、外装用途の上塗りとして広く使用されています。また、ひび割れに追従しやすい性質を持つため、さまざまな素材に対応しやすい塗料です。
さらに、湿気で硬化する一液タイプや低温でも硬化可能なタイプなどもあり、施工条件に応じて選択できる柔軟性も備えています。そのため、建築から工業分野まで幅広く採用されています。
溶剤塗装の手順は、次のとおりです。
それぞれのステップを詳しく解説します。
最初に行うのは、素材表面に付着している油分や汚れを除去する工程です。
専用の洗浄剤を使用して洗い流し、その後水洗によって残留成分を取り除きます。
油分が残っていると塗料が弾かれてしまい、密着不良や塗膜の剥がれにつながるため、丁寧な処理が不可欠です。
金属製品の場合は、表面に発生したサビを除去します。
除錆剤には酸性・アルカリ性・中性などがあり、素材やサビの状態に応じて適切なものを選びます。サビを確実に取り除くことで、塗膜の密着性と防錆性能を高められます。
処理後は薬剤を残さないよう水洗を行い、表面を安定した状態に整えます。
化成皮膜処理では、素材の表面に化学反応を利用した保護層を形成します。
この処理により、塗料の付着性が向上するとともに、防錆性能の強化が期待できます。特に金属塗装においては重要な工程であり、後工程の品質を左右するポイントです。
処理後は余分な薬剤を洗い流し、均一な状態に仕上げます。
前処理で付着した水分を完全に除去するための工程です。水分が残っていると、塗装時に気泡や密着不良が発生する原因となるため、確実な乾燥が求められます。
乾燥条件は設備や素材によって異なりますが、安定した塗装品質を確保するための重要な準備工程です。
乾燥後は、下塗りとしてプライマーを塗布します。
プライマーは素材と上塗り塗料の密着性を高める役割を持ち、塗装全体の耐久性を左右します。また、防錆性や下地保護の機能も担うため、用途に応じた適切な塗料選定が重要です。
この工程が不十分だと、上塗り塗膜の剥離や劣化を引き起こす可能性があります。
上塗り工程では、静電塗装が用いられることが多くあります。これは、被塗物と塗料にそれぞれ異なる電荷を与え、引き合う力を利用して塗料を付着させる方法です。
塗料が効率よく付着するため、ムラが少なく均一な仕上がりが得られます。また、塗料の飛散を抑えられるため、材料ロスの低減にもつながります。
一般的にはスプレーガンを用いた吹き付け方式で行われ、大量生産品や金属製品の塗装に広く採用されています。
機械による塗装では対応しきれない細部については、職人による手作業で補正を行います。
複雑な形状や塗り残しが生じやすい部分を中心に、仕上がりを整える工程です。
細部まで均一な塗膜を形成するためには、この補正作業が欠かせません。
塗装後は、加熱によって塗膜を硬化させる焼付乾燥を行います。適切な温度と時間で処理することで、塗膜の密着性や耐久性が向上します。
塗料によって必要な条件は異なりますが、この工程によって最終的な塗膜性能が決まるため、重要な仕上げ工程です。