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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「大理石は高級な建材というイメージはあるけれど、実際どんな特徴があるの?」そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。 大理石は、石灰岩が高温・高圧で再結晶化して生まれる天然石で、独特の模様や光沢から 建築・インテリア素材として長く愛されてきました。一方でメリットだけでなく、デメリットもあります。 本記事では、大理石の定義や種類、特徴、メリット・デメリットなど、初めての方にも分かりやすく整理して解説します。
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天然の大理石は、海底に堆積した貝殻や微生物の殻などが固まり形成された石灰岩が、地下深くで高温・高圧を受けて再結晶化した岩石を指します。
元の石灰岩の成分が再び結晶として整うことで、磨くとガラスのような光沢が生まれ、内部の結晶が描く模様が浮かび上がります。主成分は炭酸カルシウムで、再結晶化の過程で混ざる物質の違いにより、白や黒、灰色に限らず、桃色や緑色など多様な色調が現れます。
こうした自然の作用によって生まれる大理石のことを、人工的に作られた素材と区別して「天然大理石」と呼びます。本来の意味での大理石は、この天然の再結晶化した石灰岩を指しますが、日本の建築分野では装飾的な石材を広く大理石として扱う場合もあります。
大理石は世界中で採掘されており、産地によって色味や模様の表情が大きく変わります。
中でもイタリアは高品質な大理石の産地として長い歴史を持ち、白さが際立つ石が多いことで知られています。特にカララ地方で採れる大理石は、建築や彫刻の分野で古くから重宝されてきました。
ギリシャも古代から大理石の名産地として知られ、透明感のある白系の石材が多く、古代建築や彫刻に多用された実績があります。トルコは採掘量が非常に豊富で、淡いクリーム色から濃色系まで幅広い石種がそろい、世界の石材市場でも大きなシェアを持っています。
スペインでは温かみのあるベージュ調や赤系の大理石が採れ、明るい内装材として人気があります。インドでは硬さと白さを兼ね備えた石が多く、アメリカではバーモント州を中心に明るいトーンの大理石が産出されます。
このように産地ごとに特徴が異なります。
天然大理石は産地や地層の成り立ちによって性質が大きく変わり、色柄や硬さ、質感などの幅広い違いが生まれます。そのため種類は非常に多く、世界中で数多くの大理石が流通していますが、正確な「〇種類」という数字を示すことは困難です。
よく知られている大理石としては、白を基調とした優しい模様が見られるカララ(Carrara)、独特の風合いを持つカラムビア(Columbian)、高級感のある柄で人気のカラカッタ(Calacatta)、深みのある色合いが特徴のセルペンティン(Serpentine)などがあります。
それぞれに固有の美しさがあり、建築仕上げ材から彫刻まで幅広い用途で活用されています。
天然石は、どのような環境で生まれたかによって「火成岩」「堆積岩」「変成岩」に大きく分けられます。
まず火成岩は、地中のマグマが冷え固まってできた岩石で、非常に丈夫な点が特徴です。代表例として御影石があり、屋外や床など強度が必要な場所に適しています。
堆積岩は、砂や泥、生物の殻などが重なり合って固まった岩石で、比較的やわらかいものが多く、加工しやすい一方で傷がつきやすい性質があります。大理石の原料となる石灰岩もこの仲間です。
変成岩は、既存の岩石が熱や圧力の影響を受けて別の岩石へと変わったものを指します。
花崗岩はマグマが固まってできた火成岩です。
御影石(みかげいし)ともいわれます。御影石という呼び名は日本特有のもので、兵庫県神戸市の東灘区にある「御影」という地名に由来します。
花崗岩は、石英や長石などの硬い鉱物を含むため、傷や汚れ、酸に強い点が特徴です。模様は粒状の斑点が主体で、色の変化も比較的少なく、外構やキッチンカウンターなど耐久性が求められる場所に適しています。
一方、大理石は石灰岩が再結晶化した変成岩で、柔らかく、酸や摩耗に弱い反面、流れるようなしま模様や豊かな色調が特徴です。装飾性が高く、ホテルのロビーや室内の壁材、カウンターなどデザイン性重視の空間に選ばれます。
大理石の特徴は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
大理石の最大の特徴は、自然が長い時間をかけて作り出した特有の模様です。
元となる石灰岩が地中で高温・高圧にさらされると、内部の鉱物が再び結晶として組み直されます。この再結晶化の過程で、不純物の量や分布が微妙に変化し、流れるようなラインや柔らかな雲状の模様が生まれます。
同じ産地・同じ石種であっても、模様の方向や太さ、色の強弱は全く異なり、同じ模様にはなりません。白地に繊細なグレーの筋が入るものから、濃色の地に力強いラインが走るものまでさまざまです。
こうした唯一無二の模様は、大理石が持つ大きな特徴といえます。
大理石は、石灰岩が再結晶化して形成された岩石で、内部には大小さまざまな結晶が密に集まっています。
表面を研磨すると、光が結晶の表層だけでなく内部にも入り込み、多方向に反射するため、表面に特有の光沢が生じます。この光沢は素材固有の構造によって発生するもので、大理石の組成に由来する物理的な性質です。
光の当たり方によって見え方が変わる点も特徴です。光源の角度や距離、種類によって反射の仕方が変化し、同じ石でも時間帯や照明環境が異なると表面の明暗や輝度の出方が変わります。
大理石は、石材の中では比較的低い硬度で成形しやすいという特徴があります。
内部の結晶が細かく均一に近い構造をしていることから、直線だけでなく曲線を含む加工や、表面に細部の彫り込みを施す作業が可能です。
歴史的にも、大理石の成形のしやすさを利用して彫刻や建材に使用されてきた例が多く、古代の石造作品にも同様の特徴が確認されています。
大理石が高価な理由は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
前述のとおり、大理石は石灰岩が高温・高圧下でゆっくりと再結晶化してできる石です。
形成には数億年単位の時間を要し、自然が長い時間をかけて生んだ限られた資源です。
採掘できる量にも限りがあるため、希少性そのものが価格を押し上げています。
大理石の採石場は山岳地帯や岩壁など過酷な場所にあることが多く、巨大なブロックを切り出すには機械と燃料、専門工の確保が不可欠です。
さらに、重量が大きいため運搬コストも高額になりやすく、産地が海外であれば輸送費が上乗せされます。
こうした物理的なコストが最終価格に反映されていると考えられます。
大理石は御影石に比べて柔らかく、欠けやすい性質があります。
そのため、切断や研磨、曲線加工には高度な技術が求められます。鏡面仕上げのような美しい光沢を出すには、複数工程を丁寧に仕上げる手間が必要です。
加工にかかる時間と職人のスキルは、品質と価格の両方に影響します。
大理石と呼ばれる素材には、岩石としての天然大理石だけでなく、石の質感を再現した人工素材も含まれます。
天然大理石以外の主な種類は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。

人工大理石は、細かく砕いた大理石粉にアクリル樹脂やポリエステル樹脂を混ぜ合わせてつくられる人工素材です。
天然石のような見た目を保ちながら、加工しやすく、模様や色を自由に調整できる点が大きな特徴です。住まいではキッチン天板や洗面カウンターなど、デザイン性と扱いやすさが求められる場所でよく使われています。
この素材には「人工大理石」と「人造大理石」という2つの表記がありますが、両者は別物ではありません。メーカーごとに採用している呼び方が異なるだけで、樹脂に無機物を混ぜて成形するという基本的な構造は同じです。

テラゾーは、大理石の破片を細かく砕いたチップに、セメントまたは樹脂を加えて固めることで作られる人工的な石材です。
結合材がセメントの場合は「セメントテラゾー」、樹脂を使う場合は「レジンテラゾー」と呼ばれることがあります。近年では、大理石チップに加えてガラス片やタイル片を混ぜ込んだタイプも登場しており、独特の表情を楽しめる素材として注目されています。
チップの大きさや色の組み合わせによって模様を自在に変えられるため、装飾性が高く、商業施設の床材や住宅のアクセント仕上げとして再び人気が高まっています。
クォーツストーンは、細かく砕いた天然の水晶(クォーツ)を主成分とし、樹脂を加えて固めて作られる人工素材です。
天然石のような質感を持ちながら、樹脂によって均一で安定した仕上がりになる点が特徴です。自然素材だけでは再現が難しい色や柄を表現しやすく、デザインの幅が広い点も評価されています。
硬度が高く、衝撃や摩耗に強いため、キッチンの天板や洗面カウンターなど、日常的に負荷がかかる場所で多く採用されています。また、吸水率が低いためシミがつきにくく、日々の手入れがしやすい実用性も魅力です。
大理石のメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
大理石は、表面の微細な結晶が光を複雑に反射することで、空間に柔らかな輝きを与えます。
人工素材のように均一ではなく、自然由来の模様や色の揺らぎが重なることで、奥行きのある質感が生まれる点が特徴です。床や壁に使うと光の当たり方によって見え方が変わり、時間帯ごとに異なる雰囲気を楽しめます。
また、重厚感と落ち着きを併せ持つ素材のため、住宅だけでなく、ホテルロビーやギャラリーなど「品格」を求められる空間にも適しています。素材そのものが持つ存在感が、空間の印象を一段階引き上げてくれる点が大理石の大きな魅力です。
大理石の魅力の1つは、同じ石種であっても全く同じ模様が存在しない点です。
色の濃淡や、ラインの入り方、結晶の粒の大きさなどが自然の環境によって変化するため、選ぶ一枚一枚が「一点物」としての価値を持ちます。住宅リノベーションで個性的なアクセントを加えたい場合や店舗デザインで他にはない雰囲気を演出したいときに効果的です。
また、スラブの切り取り方によっても表情が大きく変わるため、仕上がりをイメージしながら石を選ぶプロセスそのものが、オーダーメイドに近い体験になります。
大理石は、時間とともに表情がゆっくりと変化していく素材です。
日常の使用によって微細な擦れや艶の差が生まれ、表面の光沢がより落ち着いた深みを帯びるようになります。人工素材のように均一な状態を保つのではなく、環境や使われ方によって少しずつ個性が育っていくため、住まいに歴史が刻まれていく感覚を楽しめます。
また、アンティークの家具や自然素材との相性がよく、年月を重ねた空間ほど独特の重厚さと温かみが感じられるようになる点も魅力です。
大理石のデメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
大理石の主成分である炭酸カルシウムは酸と反応しやすく、レモン汁・酢・ワインなどが触れると表面が白く曇ったりツヤが失われることがあります。
また、吸水率が比較的高いため、油分や色素が染み込むと跡が残りやすく、こまめな拭き取りや専用コーティングが欠かせません。
キッチンカウンターや飲食スペースに使う場合は、特に取り扱いに注意が必要です。
大理石は柔らかめの石質で、見た目の高級感とは裏腹にキズや欠けが起きやすい素材です。
特に御影石などの硬質な天然石と比べると表面が傷つきやすく、日常的な摩擦でも細かな線キズが蓄積します。重いものを落とした際には角が欠けたり割れが生じることもあり、動線の多い床や作業台として使う場合は注意が必要です。
家具の脚裏に保護材を付けたり、荷物の移動時に養生を行うなど、物理的な衝撃を避ける工夫が欠かせません。大理石の質感を長く楽しむためには、日常的な扱い方そのものに配慮が求められます。
天然大理石は密度が高く重量も大きいため、運搬から設置までに多くの人手と専門的な作業が求められます。
特に厚みのある板材や大判サイズは扱いが難しく、現場での微調整や固定にも高度な技術が必要です。そのため、軽量素材に比べると施工費用が上がりやすいです。さらに、重量負担が大きい場所では床の強度確認や補強が必要になるケースもあり、設計段階での検討が欠かせません。
素材そのものの価格だけでなく、施工まで含めた総コストを把握することが重要です。
大理石をメンテナンスするときのポイントは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
大理石は炭酸カルシウムが主体のため、酸に触れると表面が溶けたり白く曇ったりしやすい性質があります。
レモンや酢といった食品の酸だけでなく、カビ取り剤などの酸性洗剤も表面を傷める原因になるため避けましょう。
また、強アルカリ性の洗剤も同様にダメージを与える可能性があります。日常の手入れは、薄めた中性洗剤を使うか、水拭きが基本です。
大理石は水分が染み込みやすい性質があり、ぬれたままにしておくと輪ジミや色ムラが発生し、美観を損ねる原因になります。
水拭きや中性洗剤での清掃後は、仕上げとして 乾拭きで表面の水分をしっかり取り除くことが必須です。
日頃から水分を残さない習慣をつけることで、自然な光沢が持続しやすいです。
大理石の仕上げ拭きには、吸水性と汚れ落ちに優れたマイクロファイバークロスがおすすめです。
極細の繊維が表面の汚れをしっかりキャッチするため、強い洗剤を使わなくても日常の汚れを落とせる点が大きな利点です。
また、洗剤成分が石の表面に残らないため、大理石を傷めるリスクも軽減できます。普段のメンテナンスに取り入れることで、素材の輝きを長く保ちやすいです。
最後に、大理石に関するよくある質問とその回答を紹介します。
完全ではありませんが、触感の違いから判断の手がかりを得られます。
天然大理石は鉱物結晶が密に詰まっているため、触れた瞬間に明確な冷たさを感じます。これは熱を奪いやすい天然石特有の性質によるものです。一方、人工大理石は樹脂が多く含まれるため、表面温度が上がりやすく、やや温かみのある手触りです。
ただし、室温や環境条件によって感じ方が変わることもあるため、手触りだけで確実に判別するのは難しいといえます。
使用できますが、屋内よりも慎重な選択とメンテナンスが必要です。
大理石は風雨や紫外線、酸性雨、さらに寒冷地では凍結融解の影響を受けやすく、表面の光沢が薄れたり、風化が進みやすい素材です。そのため、テラス・外壁・門柱などに採用する場合は、耐候性の高い種類を選ぶ必要があります。
加えて、屋外では汚れや劣化が起きやすいため、防汚コーティングやはっ水剤の塗布、定期的な洗浄 といった保護処理を行うことが重要です。
大理石はある程度の耐熱性はありますが、急激な温度変化には弱い素材です。
特に天然大理石は、日常生活の温度変化には比較的耐えられます。しかし、高温の鍋やケトルを直接置くと内部の結晶構造に負担がかかり、ひび割れや変色を引き起こすことがあります。「熱い物 → 冷たい表面」「冷えた天板 → 熱い鍋」といった急激な温度差は劣化を早める原因です。
長くきれいに使うためには、鍋敷きや耐熱マットを併用することが安全です。