この記事は約9分で読めます。
.png&w=3840&q=75)
監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
この投稿をシェアする
建設業では近年、AI(人工知能)の活用が大きな注目を集めています。 しかし、「建設業でAIは本当に使えるのか」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。AIは現場作業そのものを完全に置き換えるものではなく、設計や施工管理、見積、事務作業などの業務を支援する技術として活用されるケースが中心です。 本記事では、建設業でAIが注目されている背景から、現在の活用状況、導入するメリット・デメリット、具体的な活用分野や事例までを分かりやすく解説します。
AI搭載
コンクルーCloud
顧客管理・見積作成・原価管理・電子受発注・請求支払いなど全ての業務がコンクルーCloudひとつで完結

まず、建設業でAIが注目されている主な背景について解説します。
建設業界では、慢性的な人材不足が長年の課題となっています。少子高齢化の影響によって労働人口が減少する中、建設分野では特に若年層の入職が少なく、人材の確保が難しい状況が続いています。さらに、体力的な負担が大きい作業や不規則な勤務形態などが原因となり、他産業と比べて離職率が高い傾向にあることも課題の1つです。
また、現場を支えてきた熟練技能者の高齢化も進んでおり、長年の経験によって培われた技術や判断をどのように次世代へ引き継ぐかが重要なテーマとなっています。建設現場では職人の経験や勘が品質を左右する場面も多いため、技能の継承が滞ると施工品質にも影響が出る可能性があります。
そのため、AIを活用して熟練者の作業データや判断プロセスを記録・分析することで、教育や技能伝承に役立てようとする取り組みが注目されています。
近年の建設プロジェクトは、建物の高機能化や大型化に伴い、以前よりも高度な管理が求められています。環境対策や安全基準への対応など、設計や施工の段階で考慮すべき条件も増加しています。
さらに、建設プロジェクトには設計者や施工会社、協力会社、資材メーカーなど多くの関係者が関わるため、情報共有や意思決定の調整も複雑です。こうした状況では、膨大なデータを整理し、適切な判断を行う必要があります。
AIは大量のデータを短時間で処理し、最適な施工計画やリスク分析を行えるため、複雑化する建設プロジェクトの管理を支える技術として期待されています。
建設業界では、長年にわたり生産性の向上が課題とされてきました。多くの業務が現場作業を中心としており、設計図の修正や書類作成などの業務も人の手によって行われるケースが多いためです。
また、関係者間の情報共有が紙書類や個別のデータ送付で行われることもあり、確認作業や再入力といった非効率な業務が発生しやすい状況があります。こうした業務の積み重ねが、長時間労働の一因にもなっています。建設業にも時間外労働の上限規制が適用されており、労働時間の削減と業務効率化は重要です。
AIを活用した設計支援や業務自動化は、こうした課題の解決策としても注目されています。
建設業界では、国によるデジタル化推進の取り組みもAI導入を後押ししています。国土交通省が進めている「i-Construction」は、ICTやデジタル技術を活用して建設生産プロセス全体の効率化を図る政策です。
この取り組みでは、測量、設計、施工、検査、維持管理といった各工程でデジタル技術を活用し、建設現場の生産性を高めることを目標としています。
こうした政策の推進により、建設業界ではAIやICTの導入が加速しています。
ここでは、調査データを基に建設業界におけるAI活用の現状について解説します。
AIはさまざまな業界で注目されていますが、企業の業務での活用はまだ広く普及しているとはいえません。
帝国データバンクが実施した調査によると、生成AIを実際の業務で活用している企業は17.3%にとどまっています。つまり、多くの企業では本格的な導入が進んでいない段階にあるといえます。
一方で、AIを活用している企業の多くは、一定の効果を実感していると回答しています。活用用途としては情報収集や業務補助などが多く、業務効率化のツールとして利用されているケースが目立ちます。
AIの導入はまだ限定的であるものの、企業の間では活用に向けた準備が進みつつあります。
同調査では、AIの利用に関する指針やガイドラインの策定について、半数以上の企業が前向きな姿勢を示しています。また、生成AIの推進体制については、自社内で活用を進める体制を整える企業も多く見られます。
ただし、企業規模が大きくなるほど外部の専門企業やサービスを活用する傾向も見られます。さらに、AIに対する理解度については、経営層と一般社員の間で認識に差があることも指摘されており、AI活用を進めるためには組織全体での理解促進や教育が重要です。
建設業でAIを活用するメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
建設業でAIを活用すると、これまで手作業で行っていた業務の一部をAIが処理できるようになり、作業時間を大幅に短縮できる点が大きなメリットです。
例えば、施工記録の整理や報告書の作成、工程情報の集計など、定型的な業務を自動化することで、日々の業務負担を軽減できます。
また、ルーチン業務をAIに任せることで、技術者や現場管理者は計画立案や課題対応など、より重要な業務に集中できます。
業務全体の効率が高まり、限られた人員でもプロジェクトを円滑に進めやすくなるため、結果として建設現場の生産性向上につながります。
建設プロジェクトでは、図面データや施工記録、工程情報、現場写真など、さまざまなデータが日々蓄積されます。AIはこれらの大量のデータを分析し、傾向やパターンを把握できます。
人の経験や勘だけに頼るのではなく、データを根拠として判断できるようになることで、より合理的な意思決定が可能です。例えば、過去の施工データを分析することで工程の遅れやトラブルの発生傾向を把握でき、施工計画の見直しやリスク対策に役立てられます。
また、データ分析によって現場の状況を客観的に把握できるようになるため、管理者はより適切なタイミングで対応や判断を行えます。
建設業においてAIは、安全性の向上にも役立ちます。
建設現場では、高所作業や重機の使用など危険を伴う業務が多く、労働災害のリスクが常に存在します。AIを活用することで、現場の危険箇所の把握や安全管理の精度を高められます。
例えば、撮影した現場映像をAIが解析することで、危険な場所や異常の可能性がある箇所を早期発見が可能です。また、AIを活用した監視システムによって作業状況を把握することで、安全対策の強化にもつながります。
建設工事では、作業者の経験や判断によって仕上がりに差が生じることがあり、品質のばらつきが課題になる場合があります。AIを活用することで、データや基準に基づいた管理が可能になり、品質の安定化につながる点もメリットです。
例えば、AIによる画像解析を利用すれば、施工状況や設備の状態をデータとして確認できます。これにより、人の目だけでは見逃してしまう可能性がある小さな異常や不具合を早期に発見できます。
また、施工データや点検結果を蓄積・分析することで、品質管理の基準を明確にすることも可能です。AIを活用した品質管理は、施工ミスの防止や作業の標準化につながり、建設プロジェクト全体の品質向上に役立ちます。
建設プロジェクトでは、資材費や人件費、設備費など多くの費用が発生するため、コスト管理は重要な課題の一つです。AIを活用することで、データに基づいた効率的な資源配分や工程管理ができる点もメリットといえます。
例えば、過去の施工データや工程情報をAIが分析することで、資材の使用量や作業工程を最適化できます。これにより、資材の無駄を減らし、効率的な施工計画を立てられます。
また、工程管理の精度が高まることで、工期の遅延を防ぎやすくなる点もメリットです。工期が短縮されれば、人件費や設備費の削減にもつながります。
建設業でAIを活用するデメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
AIシステムを導入するには、初期費用や運用費用が発生します。
AIソフトウエアの導入費用だけでなく、システム環境の整備やデータの準備、既存の業務システムとの連携などにもコストがかかる場合もあります。
また、AIは導入して終わりではなく、継続的な運用や改善が必要なため、長期的な運用コストも考慮しなければなりません。特に中小の建設会社では、投資効果を十分に検討した上で導入を進めることが重要です。
AIを導入しても、それを適切に活用できる人材がいないと十分な効果を得ることが難しい場合があります。
さらに、建設業では現場の状況や施工プロセスを理解した上での活用が重要です。そのため、AIを使いこなせるだけではなく、建設業務への理解を兼ね備えた人材が求められることもあります。
既存の従業員への教育や研修を行い、AIを使いこなせる人材を育成していく必要がある点がデメリットです。
建設現場は天候や地盤条件、周辺環境などの影響を受けやすく、状況が常に変化します。そのため、AIが分析した結果が必ずしも現場の実情と一致するとは限りません。
データに基づいた分析は有効ですが、現場特有の条件を完全に反映できない場合もあります。また、AIが学習したデータの内容や量によっては、分析結果の精度にばらつきが生じる可能性もあります。
AIと人の判断をバランスよく取り入れることで、より実用的な運用が可能です。
AIシステムに依存しすぎると、システムトラブルが発生した際に業務に影響が出る可能性があります。
例えば、システム障害や通信トラブルが起きた場合、AIによる分析や管理機能が利用できなくなってしまいます。また、AIの判断に頼りすぎると、現場での判断力や経験が十分に生かされなくなる可能性もあります。
AIはあくまで業務を支援するツールとして活用し、人の判断と組み合わせた運用が重要です。
建設業におけるAIの主な活用分野は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
設計業務では、建物のデザイン検討や仕様書の作成など多くの作業が発生します。AIを活用すると、設計段階のアイデア出しや資料作成の効率化が可能です。
例えば、画像生成AIを活用すれば、建物の特徴やコンセプトをテキストで入力するだけで、複数のデザイン案やイメージパースを作成できます。これにより、施主とのイメージ共有がスムーズになり、設計段階での認識のずれを減らせます。
また、生成AIは文章作成にも活用できるため、設計条件書や仕様書などのドラフト作成にも役立ちます。AIが作成した下書きをベースに内容を調整することで、設計関連の文書作成にかかる時間を短縮できます。
見積や積算は、工事費を算出する重要な業務であり、過去の施工データや担当者の経験に大きく依存する傾向があります。AIを活用すると、過去の見積データや工事情報を分析しながら見積作成できます。
例えば、類似する工事の見積データを参考にして、必要な項目や単価を自動で提示する仕組みがあります。また、数量や単価の入力内容をチェックし、入力漏れや計算ミスを防ぐ機能もあります。
こうした仕組みにより、見積作成にかかる時間を短縮できるだけでなく、見積内容のばらつきを抑える効果が期待できます。特に、見積業務を担当できる人材が限られている企業では、AIによる支援が業務負担の軽減につながります。
施工管理では、工事の進捗(しんちょく)状況を把握しながら工程を管理する必要があります。AIを活用することで、工程データや実績データを分析し、進捗の遅れやリスクを早期に把握できます。
例えば、工程表と実際の作業実績を比較し、予定より遅れている工程を検知する仕組みがあります。また、過去の作業履歴や天候データなどを分析することで、工程遅延につながる要因の予測が可能です。
施工管理者が全ての工程を目視や経験だけで管理するのは難しいため、AIは状況判断の材料を提供する補助ツールとして活用されています。
建設現場では事故防止のための安全管理が欠かせません。AIを活用すると、事故データやヒヤリハット事例を分析し、危険要因を把握できます。
例えば、その日の作業内容や現場の状況を入力すると、事故が起こりやすいポイントや注意すべき作業をAIが提示する仕組みがあります。これにより、KY活動(危険予知活動)の内容をより具体化できます。
また、現場に設置されたカメラの映像をAIが解析し、安全装備の未着用や危険エリアへの侵入を検知するシステムもあります。こうした仕組みを活用することで、現場の安全管理をより強化できます。
建設業では、工事写真や図面、施工記録など多くの資料が発生します。これらのデータ管理は手間がかかり、必要な資料を探すのにも時間がかかることも珍しくありません。
AIを活用すると、工事写真を自動で分類して整理したり、図面や書類をキーワード検索で探せます。資料整理や検索にかかる時間が減ることで、現場作業や管理業務に集中できます。
特に、写真管理や書類整理の負担が大きい企業では効果を実感しやすい分野です。
建設業では、現場業務だけでなく契約管理や各種報告書の作成など、多くの事務作業が発生します。AIはこうしたバックオフィス業務の効率化にも活用されています。
例えば、データ入力や転記作業の補助、書類内容のチェック、管理データの集計などをAIが支援することで、事務作業の負担を減らせます。
さらに、翻訳機能を利用することで、多言語対応が必要な現場でもスムーズなコミュニケーションを実現できます。AIは、現場業務だけでなく事務管理業務の効率化にも大きく貢献する技術です。
建設業でのAIの活用事例を紹介します。
それぞれを詳しく解説します。
秋津道路株式会社では、従来FAXで提出された日報を担当者がExcelへ入力して集計しており、月に10時間以上の作業負担が発生していました。
AIを活用した新しいシステムを導入したことで、労働時間データをリアルタイムで共有できるようになり、管理業務の効率化を実現しています。
さらに、残業時間が一定の基準を超えそうな場合に通知する機能も導入されており、時間外労働の上限規制への対応や法令順守の強化にもつながっています。
鹿島建設株式会社では、従業員向けの専用対話型AIを開発し、社内で運用を開始しました。
このAIは、情報検索やデータ分析、企画書や議事録の作成、メール文書の作成など幅広い業務で利用されています。プログラミング作業などの技術業務にも活用されており、作業時間の大幅な短縮につながったという声も報告されています。
また、外部のAIサービスではなく社内専用のAIを使用することで、情報漏えいのリスクを抑えながら安全に利用できる環境を整えています。
株式会社安藤ハザマでは、建設分野に特化した生成AIを導入し、社内の技術資料や施工計画書などのデータを学習させています。
このAIは、現場に関する質問に対して社内資料を基に回答を提示する仕組みになっており、回答の根拠となる資料も同時に表示されます。これにより、若手社員でも専門的な知識にアクセスしやすくなり、技術の共有が進みやすくなります。
AIを活用した知識共有は、技術伝承と業務効率化の両面で効果が期待されています。
池田建設株式会社では、AIアプリを導入することでこうした業務の効率化を進めています。
AIが工事写真を自動で整理し、図面と関連付けることで、従来多くの時間を要していた作業を大幅に短縮できました。また、現場での打ち合わせや情報共有もスムーズになり、働き方の改善にもつながっています。
AIの導入により、効率性と品質の両立を実現した事例といえます。
建設AIと組み合わせて活用される技術は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
建設業では、危険を伴う作業や重労働をロボットが補助する技術の開発が進んでいます。AIとロボット技術を組み合わせることで、作業の自動化や安全性の向上が期待されています。
例えば、溶接や資材運搬などの作業をロボットが行うことで、作業者の負担を軽減できます。AIが作業状況を分析しながら最適な動作を判断することで、作業の精度を高めることも可能です。
また、危険な環境での作業をロボットが代替することで、労働災害のリスクを減らす効果も期待されています。AIとロボットの連携は、建設現場の安全性向上や省人化を進める重要な技術です。
ドローンは、建設現場の測量や点検、進捗(しんちょく)確認などに活用される技術です。AIと組み合わせることで、空撮データの分析や異常検知などを自動化できます。
例えば、ドローンで撮影した現場の画像をAIが解析することで、施工状況の確認や地形データの取得を効率的に行えます。また、橋梁や外壁などの点検では、AIが画像を分析して劣化や損傷の可能性を検知する仕組みもあります。
これにより、人が危険な場所に立ち入る必要が減り、安全性の向上や点検作業の効率化につながります。
BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)は、建物や土木構造物の情報を3次元モデルとして管理する技術です。設計から施工、維持管理までの情報を一元的に扱える点が特徴です。
AIとBIM/CIMを組み合わせることで、設計データや施工データを分析し、工程管理や施工計画の最適化に活用できます。例えば、施工データをAIが分析することで、工程の遅延リスクを予測したり、施工計画の改善に役立ちます。
BIM/CIMは建設プロジェクト全体の情報基盤となるため、AIと連携することで建設DXの中核的な役割を担う技術です。
IoT(Internet of Things)は、センサーや機器をインターネットにつなぎ、データを収集・共有する技術です。建設現場では、重機や設備、作業環境などの情報をリアルタイムで取得するために活用されています。
AIとIoTを組み合わせることで、現場のデータを分析しながら状況を把握できます。例えば、センサーで取得した温度や振動、作業状況などのデータをAIが分析し、異常の兆候を早期に検知する仕組みがあります。
また、設備の稼働状況を監視することで、故障の予測やメンテナンスの最適化にも活用できます。