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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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現場でブレーカーが落ちた、点検で「地絡」という言葉に出会った——漏電や短絡と何が違うのか、地絡電流とは何か、現場でどう原因箇所を調べるのか。用語の正確な区別から絶縁抵抗測定などの調べ方の手順まで、三者の比較表と図解で整理しました。
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地絡(ちらく)とは、電気が本来の回路から外れて大地(アース)へ流れてしまう異常のことです。感電や火災につながる危険があり、漏電・短絡との区別が対応の第一歩になります。この記事では、違いの比較表から現場での調べ方・初動対応までを順に整理します。
現場でブレーカー(漏電遮断器)が突然落ちた、点検や試験の場で「地絡」という言葉に出くわした——そんなとき、「漏電と何が違うんだ?」「短絡とどっちが危ないんだ?」と迷った経験はないでしょうか。言葉が似ているうえに現場でごちゃ混ぜに使われることも多く、正確に区別できている人は意外と少ないものです。
地絡とは、一言でいうと「電線や機器と大地が電気的につながり、大地へ電流が流れてしまう状態」です。英語では「ground fault」または「earth fault」と呼びます。電気の専門家の団体でも、地絡は「電線と大地が電気的に繋がり、大地へ電流が流れる事象」と定義されています(出典:電気学会 電力・エネルギー部門「用語解説 地絡・短絡」)。
電気には抵抗の低いところへ流れようとする性質があり、大地は非常に抵抗が小さいため、電線や機器が大地とつながると電流はそちらへ流れ込みます。本来、電気が流れるのはブレーカーから負荷(照明やモーターなど)へ至る決められた回路だけです。ところがケーブルの被覆が傷ついたり、電線に樹木や金属構造物が触れたりすると、回路と大地との間に「予定外の経路」ができてしまう。この予定外の経路に電流が流れている状態が地絡です。
正常な回路と、地絡が起きている回路を並べて見ると、電流の逃げ道の違いがひと目でわかります。

地絡は、屋外の配電線や高圧ケーブルが敷設されている場所で特に起こりやすい現象です。例えば、強風で飛んできたビニールシートが電線と電柱の金属部にまたがって引っかかったり、樹木の枝が成長して電線に触れたりすると、電線と大地の間に導通経路ができて地絡が発生します。
工場やプラントなどで広い敷地にケーブルを敷設している場合も注意が必要です。重機やクレーンのブームが誤って高所の電線に接触すると、金属製のブームを通じて電流が地面に流れ、地絡事故につながります。
さらに、屋内配線でも、長年使用したケーブルの被覆劣化や、ネズミなどの小動物によるかじり傷が原因で、露出した導体が建物の鉄骨や配管を介して大地とつながり、地絡が起こることがあります。
地絡と混同されやすいのが「漏電」と「短絡(ショート)」です。どれも電気が本来と違う流れ方をする点では共通していますが、電流の経路・主な原因・危険の種類・守る機器がそれぞれ異なります。まずは三者を一覧で押さえてください。

地絡 | 漏電 | 短絡(ショート) | |
|---|---|---|---|
定義 | 電線や機器と大地がつながり、 | 本来の経路以外へ電流が漏れ出す現象 | 電位差のある電線どうしが直接つながり、 |
電流の経路 | 回路 → 大地(アース線・ | 正規の回路以外(金属筐体・大地など) | 線と線(相と相、相と中性線) |
主な原因 | 絶縁劣化・被覆損傷、樹木や飛来物・重機の接触 | 絶縁劣化、湿気、被覆の傷 | 被覆破れによる導体の接触、金属片の混入 |
主な危険 | 感電(本来充電されない部分が充電状態になる) | 感電・火災 | 電線の溶断・機器焼損・火災(大電流) |
検知・保護する機器 | 漏電遮断器(低圧)/ | 漏電遮断器 | 配線用遮断器・ヒューズ |
ざっくり整理すると、地絡は「線と大地の異常接触」、短絡は「線と線の異常接触」と覚えると混乱しにくくなります。危険の質にも違いがあり、地絡は感電事故につながりやすく、短絡は大電流による電線溶断や機器の焼損など火災事故につながりやすい、という整理が電気学会でも示されています(出典:電気学会 電力・エネルギー部門「用語解説 地絡・短絡」)。漏電については、次章と後半の用語解説であらためて掘り下げます。
「地絡電流とは何か」も、現場でよく引っかかるポイントです。地絡電流とは、配線や機器の絶縁不良によって大地へ流れる電流のことを指します(出典:三菱電機FA よくあるご質問「漏洩電流と地絡電流の違い」)。地絡が起きると回路と大地の間に電位差が生じ、そこを流れる電流が地絡電流、大地と回路の間に現れる電圧が地絡電圧です。
よく似た言葉に「漏洩電流」があります。漏洩電流は、絶縁不良がない状態でも設備の充電部から大地へ流れるごくわずかな電流を指し、理論上は地絡電流と区別されます。ただし、日本国内では実務上、地絡電流も「漏洩電流」と呼ばれることが多い、とメーカーも公式に注記しています(出典:三菱電機FA よくあるご質問「漏洩電流と地絡電流の違い」)。呼び方が現場でぶれるのは、こうした事情があるためです。
地絡電流の大きさは一定ではなく、系統の構成、地絡が起きた位置、中性点の接地方式、地絡点の抵抗などによって変わります。低圧の電路では非常に微小な電流で地絡が発生することもあり、この微小な電流をいかに早く検出するかが保護のカギになります。
三相交流回路では、一線が大地に接触すると三相のバランスが崩れ、零相電流や零相電圧と呼ばれる異常な成分が現れます。これらを検出するために、零相変流器(ZCT)や接地形計器用変圧器(EVT/GPTとも呼ばれます)が設置されます。地絡電流や零相電流を検知すると遮断器を動作させ、回路を素早く切り離して事故の拡大を防ぎます。
地絡が引き起こす主なリスクは次のとおりです。
それぞれについて解説します。
地絡が起こると、本来は電圧がかからない部材や構造物が充電状態になる場合があります。露出した金属部分や鉄筋、架台などが電気を帯びると、触れた人の体を電流が通過し、強い痛みから筋肉の硬直、最悪の場合は呼吸困難や心停止に至る危険性があります。
特に湿度の高い環境や屋外での作業では体の抵抗が下がり、感電のリスクがさらに高まります。このように、地絡は作業者の生命に直接関わる重大な事故につながります。
地絡が発生すると、電流が大地へ流れ込む際に熱が発生し、ケーブルの被覆が溶けたり、周囲の可燃物が加熱されたりすることがあります。劣化した配線や設備が地絡を起こすと、局所的な発熱が進み、発火へ至る可能性が高まります。
また、屋外では木の枝や枯れ草、建材などが近くにある場合、地絡による小さな火花が引火するケースも考えられます。火災は建物全体や広範囲の停電を引き起こすため、早期検知と迅速な遮断が欠かせません。
電流が正常な経路を流れなくなると、機器に必要な電力が届かず、誤動作や停止が生じます。特に変圧器や分電盤、制御盤などの重要設備で地絡が起こった場合、内部部品が損傷し、大規模な故障につながることがあります。
さらに、保護機器が異常を検知して回路を遮断すると、建物全体の停電や生産ラインの停止といった二次的な被害が発生します。これらは復旧に時間と費用がかかるため、事業活動にも大きな影響を及ぼします。
地絡は、電気設備や配線の絶縁が弱まったり、外部から物理的な力が加わったりして、大地へ電流が流れる経路が生まれることで発生します。主な発生要因は次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
電線やケーブルは絶縁被覆によって導体が保護されていますが、経年劣化や紫外線、湿気、熱などの影響で絶縁性能が低下します。被覆が破れたり薄くなったりすると、導体が外部と接触しやすくなり、漏れた電流が大地へ流れて地絡となります。屋外設備や長期間交換されていない配線では、このリスクが特に高まります。
電線に樹木の枝が触れたり、鳥の巣やビニールシートなどの飛来物が覆いかぶさったりすると、電線と大地の間に低抵抗の経路が形成されることがあります。さらに、ネズミやリスがケーブルをかじって被覆を損傷するケースも多く、これが漏電を引き起こし、そのまま地絡につながることがあります。自然環境が近い場所では、定期的な目視点検が欠かせません。
建設現場や屋外作業では、クレーンのブームや高所作業車が誤って配電線に接触し、地絡が発生する事故が後を絶ちません。重機は金属製で電気をよく通すため、接触した瞬間に重機本体から地面へ電流が流れます。このような事故は作業員の感電や広範囲の停電につながるため、重機操作時の周囲確認が極めて重要です。
配線工事の際にケーブルが鋭利な箇所へ押し付けられたり、余計な力をかけて無理に引き回したりすると、内部で被覆が傷ついて地絡の原因になることがあります。また、アース線の誤配線や機器の取り付け不備によって、大地へ不要な導通が生じるケースもあります。施工時の丁寧な取り扱いや配線チェックが事故防止に不可欠です。
地絡は見た目だけでは判断できない場合が多く、誤った推測で作業を進めると感電や設備損傷につながります。安全に復旧するには、決まった順番で状態を切り分けていくのが基本です。次の流れを頭に入れておくと、現場で慌てずに動けます。

ここで大切な前提が一つあります。絶縁抵抗の測定そのものは特別な資格を必要としない場合もありますが、充電部の接続・取り外しや、電路の遮断・復旧といった電気工事に該当する作業には電気工事士の資格が必要です(出典:日置電機(HIOKI)サポート「絶縁抵抗測定に必要な資格」)。「自分で全部調べて直せる」と安易に考えず、無資格でできる範囲と有資格者に任せる範囲を切り分けてください。感電のリスクがある作業は、迷ったら止める判断が正解です。
最初のステップは、配線や機器の周辺を目視で確認する作業です。被覆が剥がれて導体が露出していないか、配線が切れかかっていないか、湿気や腐食がないかを丁寧にチェックします。外部設備では木の枝や鳥の巣、ビニールシートなど、電線に触れて電流経路を作りそうなものがないかを確認します。重機が近づいた形跡やケーブルの擦れ跡も地絡の手がかりになります。
地絡が発生すると、モーターが回らない、照明が点滅するなど、機器の挙動に異常が出ることがあります。漏電遮断器や配線用遮断器が頻繁に落ちる場合も、電流が正常に流れていないサインです。該当する回路を1つずつ切り離し、どの回路で異常が再現するかを確認することで、地絡箇所を絞り込めます。設備の動作ログが残っていれば、異常発生のタイミングを把握することもできます。
回路を切り分けたら、メガー(絶縁抵抗計)やテスターを用いた抵抗測定で確認します。測定対象の配線とアース間の抵抗値を確認し、値が異常に低い場合は大地と導通している可能性があります。絶縁抵抗がほぼゼロに近い場合は、導体が大地と直接つながっている状態であり、地絡が強く疑われます。測定の前には回路を遮断し、安全を確保したうえで行います。
工場設備や大規模な電気設備では、零相変流器(ZCT)や地絡継電器が導入されています。これらの機器は、電流の不平衡や零相電流を検出して異常を自動的に知らせます。警報が作動した場合は、対象回路を切り分けながら異常箇所を特定します。設備が多い現場では、ZCTの履歴や遮断器の動作記録を確認することで、地絡の発生位置を絞り込めます。
地絡が発生した場合、迅速かつ安全に対応しなければ、感電や火災、機器損傷といった二次被害が拡大します。現場での初動対応から原因箇所の切り分け、設備の保護対策まで、一連の手順を正しく行うことが重要です。
地絡の疑いがある場合は、まず該当回路のブレーカーを確実に遮断します。電源が入ったまま点検を行うと、感電の危険性が高まるだけでなく、機器が追加的なダメージを受ける可能性があります。遮断後は、周囲に感電の恐れがある場所へ近づかないよう注意喚起を行い、安全な状態で調査を進めます。屋外では雨や湿気があると危険性が増すため、状況に応じて作業を一時中断する判断も必要です。
遮断後は、配線や設備を回路ごとに切り分け、どの箇所に地絡が発生しているかを特定します。メガーによる絶縁抵抗測定やZCTの警報履歴の確認を行い、異常値を示す区間を特定します。原因がケーブルの損傷であれば交換し、端子の緩みや湿気による漏電であれば清掃・乾燥を行います。修理後は絶縁状態を再測定し、安全が確認できた段階で通電試験を行い、正常動作を確認します。
地絡による事故を防ぐには、保護機器の導入と適切な設定が重要です。漏電遮断器(RCD)は、漏れ電流を検知すると自動的に回路を遮断し、感電や火災を未然に防ぎます。技術的には、配線用遮断器に「地絡電流に応じて遮断器を引き外す漏電引外し装置」を加えた構造で、微小な地絡電流を検出できるよう作られています(出典:日本電気技術者協会「漏電遮断器の構造、動作原理」)。工場やビルなど大規模設備では、零相変流器(ZCT)と地絡継電器(GR)が設置され、微小な地絡でも早期に検出できる仕組みになっています。これらの保護装置は定期的に試験を行い、確実に作動する状態を維持することが求められます。
なお、一定の条件を満たす低圧の電路には、地絡発生時に自動で電路を遮断する装置(漏電遮断器など)の設置が法令で義務づけられています(出典:経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」)。新設・改修時には、対象となる電路かどうかを確認しておくと安心です。
地絡は予防が最も効果的な対策です。特に絶縁劣化が進んだケーブルや長期間交換していない設備は地絡のリスクが高く、早めの更新が求められます。また、屋外配線では樹木や飛来物が接触しないよう周囲を整備し、工事現場では重機が電線に接触しないよう安全管理を徹底します。定期的な絶縁測定や目視点検を実施し、異常を早期に発見することで事故を防げます。
比較表で三者の違いを整理しましたが、現場では「天絡」「アース」といった言葉も飛び交います。ここでは、地絡と混同されやすい用語を一つずつ補足します。
漏電(ろうでん)は「本来流れるはずの経路以外に電流が漏れる現象」を意味し、電流の行き先は大地に限りません。金属筐体や機器内部など、さまざまな場所へ電気が漏れる可能性があります。このため一般には、漏電という広い概念の中に「大地へ電流が流れている状態(地絡)」が含まれる、と整理されることが多いです。
もっとも、実務では地絡と漏電がほぼ同じ意味で使われる場面も多く、メーカーの公式資料でも両者が同義語的に扱われることがあります。文献によって整理の仕方が分かれる用語なので、どちらか一方を唯一の正解と決めつけず、文脈で読み取るのが安全です。漏電遮断器(RCD)は漏電・地絡の両方に対処できますが、地絡では遮断までの時間が特に重要になります。
短絡(たんらく)はいわゆる「ショート」のことで、「電位差のある2点が直接つながって大電流が流れる現象」です。被覆が破れて導体同士が接触した場合や、金属片が落下して相間をまたぐ形で触れた場合に発生します。抵抗が極端に小さくなるため、非常に大きな電流(短絡電流)が一気に流れ、電線の溶断や発火、設備焼損など重大事故を引き起こします。
これに対し、地絡は「相線と大地が接触する」現象であり、短絡ほどの大電流にはなりにくいものの、通常より大きな地絡電流が流れます。短絡は「線と線の異常接触」、地絡は「線と大地の異常接触」と覚えると理解しやすくなります。
天絡(てんらく)は「意図しない形で電気回路が電源側に接続されてしまう現象」を指します。地絡が電気を大地へ逃がす異常なのに対し、天絡は電源側へ直接流れ込む点が違いです。
ただし、天絡という言葉は主に半導体・電子回路や自動車の電装設計といった分野で使われるもので、電気工事や建設設備の実務ではあまり登場しません。設計仕様書で「地絡・天絡で損傷しないこと」といった要件として目にする程度、と押さえておけば十分です。
アース(接地)は「安全のために意図的に電気を大地へ流す仕組み」です。漏れ電流を安全に逃がすことで機器の故障や感電を防ぎます。コンセントに付いているアース端子や、設備の接地工事がその例です。
一方、地絡は「意図せず電気が大地へ流れてしまう異常状態」であり、目的を持って電気を逃がすアースとは正反対の現象です。アース線は地絡や漏電が起きたときに電流が流れる経路にもなるため、適切に施工されていないと感電リスクが高まります。アースは安全のための仕組み、地絡は事故そのもの、と明確に区別してください。
最後に、三者の違いを3行で振り返ります。
地絡電流は絶縁不良によって大地へ流れる電流で、その大きさは系統構成や接地方式などで変わります。現場での調べ方は、目視 → ブレーカー・機器の確認 → 絶縁抵抗測定 → 保護継電器の記録確認、という順で切り分けるのが基本です。ただし電路の遮断・復旧などの電気工事は有資格者の作業であり、感電のリスクがある場面では無理をしないことが何より大切です。用語を正しく区別し、正しい手順で臨むことが、事故を防ぐ第一歩になります。
電気まわりの用語をまとめて確認したい方は、建設業の用語辞典【全108語】もあわせてどうぞ。