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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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耐火被覆は、火災時に建物の骨組みを高温から守るために欠かせない施工です。 特に鉄骨造は高温で強度が低下しやすく、耐火被覆の有無が建物の安全性を大きく左右します。 本記事では、耐火被覆の役割から材料の種類、工法の違い、耐火構造との関係、施工の流れ、メリット・注意点まで分かりやすく解説します。
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まず、耐火被覆(たいかひふく)の役割や特徴などについて解説します。
耐火被覆とは、鉄骨造の柱や梁を耐火性のある材料で覆い、火災の熱が鋼材に直接伝わらないようにする施工のことです。
鉄は燃えませんが、熱には弱く、温度が上がるほど強度が落ちていきます。そのため鉄骨の建物では、鉄そのものを燃えない材料でくるみ、火災が起きても一定時間は建物が自立していられる状態をつくります。この「くるむ材料」が耐火被覆材、「くるむ工事」が耐火被覆工事です。
見積書や図面で並んで出てくる言葉を、先に整理しておきます。
言葉 | 指しているもの |
|---|---|
耐火被覆 | 鉄骨を熱から守るために覆うこと、およびその工事 |
耐火被覆材 | 覆うために使う材料。ロックウール、けい酸カルシウム板、耐火塗料など |
耐火構造 | 建築基準法上の区分。柱・壁・床などが、通常の火災による火熱に定められた時間耐えられると認められた構造 |
耐火被覆に使う材料と工法は、建築基準法にもとづいて定められたもの、または国土交通大臣の認定を受けたものを使います(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。工法はおおまかに5種類あり、どれを選ぶかで工期・粉じん・仕上がり・費用が変わります。工法ごとの違いは記事の後半で比較表にまとめています。
【画像: taika_tekiyo_bui】

耐火被覆は、鉄骨造の柱や梁をロックウール、モルタル、ケイ酸カルシウム板、耐火塗料などで覆い、火災時に鋼材が急激に加熱されないように保護する施工です。
加熱による構造部材の温度上昇を抑えることで、建物が自立できる時間を確保し、避難や消防活動を円滑に進められる状態を維持します。
建築基準法でも必須とされている施工であり、鉄骨建築における安全性を支える基本的な仕組みとして位置付けられています。
鉄骨造は強度が高く、広い空間を作りやすいことから、オフィスビルや商業施設、マンションなど多くの建築物に採用されています。
軽量鉄骨・重量鉄骨ともに耐震性に優れていますが、鋼材は450℃を超えると強度が急激に低下し、800℃付近では自重を支えにくくなります。
火災時には室温が数百度から千度近くまで上昇する可能性があるため、鉄骨が軟化して曲がるのを防ぐ目的で耐火被覆を施す必要があります。
建物に求められる耐火性能は、火災時に何分・何時間構造耐力を維持できるかで評価されます。30分・1時間・2時間・3時間といった区分があり、建物の規模や用途によって必要耐火時間が決まります。
この必要耐火時間は、建築基準法施行令第107条で部位ごと・階ごとに定められています。同じ建物でも、最上階から数えて下の階にいくほど長い時間が求められるのが特徴です。
その部分が存する階(最上階から数えた階数) | 柱・はり | 耐力壁・床 |
|---|---|---|
最上階、および2以上で4以内の階 | 1時間 | 1時間 |
5以上で9以内の階 | 1.5時間 | 1.5時間 |
10以上で14以内の階 | 2時間 | 2時間 |
15以上で19以内の階 | 2.5時間 | 2時間 |
20以上の階 | 3時間 | 2時間 |
屋根と階段は、階数にかかわらず30分間とされています。また、階数を数えるときは地階の部分もすべて算入する点に注意が必要です(2026年7月時点の条文。出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」第107条)。
ここで求められているのは、通常の火災による火熱がこの時間加えられても、構造耐力上支障のある変形・溶融・破壊などの損傷を生じないことです。つまり「燃えないこと」ではなく「その時間、建物が持ちこたえること」が基準になっています。
耐火被覆で使用する材料や厚みは、この必要耐火時間に基づいて選定されるため、設計段階で適切な認定構造や工法を選ぶことが重要です。
耐火被覆を理解するには、建築基準法で定められた構造区分を押さえることが重要です。主な区分は次のとおりです。
それぞれについて詳しく解説します。
耐火構造とは、火災時でも一定時間、柱や梁、床、壁などが構造耐力を維持できると認められた構造を指します。建築基準法第2条第7号に定められた基準に適合し、国土交通大臣の認定を受けた耐火被覆を施すことで、鉄骨造の主要構造部は耐火構造として扱われます。
鉄骨造は高温で強度が低下しやすいため、耐火被覆が重要な要素です。近年は、認定された設計や工法を用いることで木造でも耐火構造を実現できるケースがありますが、木造の場合は鉄骨造のように被覆材を施す方法ではなく、専用の認定工法を用いて耐火性能を確保します。
準耐火構造は、耐火構造ほど高い性能は求められないものの、一定時間、火災の延焼を抑えることを目的とする構造です。住宅や小規模建物で採用されやすく、「崩壊を防止する」耐火構造に対し、「延焼を抑制する」ことに重点が置かれています。
木造の場合は、石膏ボードを複数枚張るなど、認定された仕様を用いることで準耐火構造を満たせます。鉄骨造のように耐火被覆を必要としない点が特徴で、用途や規模に応じて採用される機会が多い構造区分です。
耐火建築物は、建物全体として耐火性能を備えた建築物を指し、その主要構造部が耐火構造であることに加え、開口部には防火設備を設ける必要があります。
部材単位の性能である「耐火構造」と異なり、建物単位で火災による崩壊や周囲への延焼を防ぐ性能を備えている点が特徴です。建物の階数や規模が大きいほど、建築基準法により耐火建築物とすることが求められます。
また、防火地域や準防火地域に建つ一部の建築物も、耐火建築物または準耐火建築物とすることが義務付けられています。鉄骨造の場合は、主要構造部に適切な耐火被覆を施すことで耐火建築物として扱われ、都市部の中高層建築で一般的に採用されています。
耐火被覆に使われる主な材料は次のとおりです。なお、国土交通大臣の認定を受けた材料のみが使用されます。
それぞれを詳しく解説します。
ロックウールは、高炉スラグや天然岩石などの鉱物を高温で溶融し、繊維状に加工した人工繊維の不燃材です。耐火性と断熱性に優れ、鉄骨への吹き付けや巻き付けなど幅広い工法に対応できるため、耐火被覆材として最も一般的に使用されています。
軽量で湿気に強く、燃えにくい性質を持ち、経年劣化が少ない点も特徴です。施工箇所の形状を選ばず継ぎ目の少ない仕上がりにしやすいため、安定した耐火性能を確保できます。
また吸音性能もあり、機械室や商業施設の防音対策として利用される他、粉じんの発生を抑える工法を選ぶことで作業環境にも配慮できます。アスベストの代替素材として定着しており、安全性の面でも高く評価されています。

モルタルやセメントを主成分とする耐火被覆材は、耐熱性と耐久性に優れ、鉄骨や耐火壁の仕上げに用いられます。特にラス張りモルタル塗りの工法では、厚みのある被覆層を形成できるため、高い断熱性能を確保できます。くわしくはコンクリート・モルタル・セメントの違いをご覧ください。
湿式工法となるため養生期間が必要ですが、硬化後は衝撃や摩耗に強く、長期的な安定性を発揮します。商業施設や倉庫など、構造部が露出する環境でも利用しやすい点が特徴です。
成形板は、ケイ酸カルシウムや石膏を原料とした硬質の板材で、鉄骨を覆うように貼り付けて耐火性能を確保します。表面が平滑で仕上がりがきれいなため、被覆後に追加の仕上げ材を必要としない場合もあります。
板状のため加工が容易で、現場の柱や梁の形状に合わせた施工がしやすい点も利点です。衝撃に強く、高層建築やエントランスなど、意匠性を重視する場所でも採用されています。
耐火塗料(発泡型塗料)は、鉄骨に直接塗布することで火災時に塗膜が数十倍に膨張し、断熱層を形成する特殊な材料です。薄膜でありながら1時間以上の耐火性能を実現できるため、見た目を損なわずに耐火性を付与したい場面で活用されます。
色を塗り替えられるため、デザイン性が求められるホールやエントランスなどにも適しています。メンテナンスもしやすく、改修工事でも採用されるケースが増えています。
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耐火被覆の代表的な工法は次のとおりです。
それぞれの特徴を解説します。
個別に読む前に、全体像を一度つかんでおくと選びやすくなります。公共建築工事標準仕様書では、耐火被覆は「耐火材吹付け」「耐火板張り」「耐火材巻付け」「ラス張りモルタル塗り」「耐火塗料」の5つに整理されています(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。上に挙げた6工法も、この5分類のどこかに収まります。
工法(標準仕様書の呼び方) | 主な材料 | 施工のしかた | 見え掛かりに使えるか | 現場で効いてくる違い |
|---|---|---|---|---|
耐火材吹付け(吹付けロックウール) | ロックウール粒状綿+セメント | 専用の吹付け機で下地に吹き付け、被覆層をつくる | 通常は隠蔽部。表面押さえはするが仕上げ材で覆うことが多い | 粉じんが出るため養生と保護具が要る。形が複雑な部位にも回り込ませやすい |
耐火材巻付け | ロックウールのフェルト・ブランケット材 | 部材に巻き付け、専用ピンなどで固定する | 仕上がりが整いやすく、そのまま見せる例もある | 材料を空気で飛ばさないため、吹付けに比べて粉じんの面では扱いやすいとされる。狭い場所や改修で選ばれやすい |
耐火板張り | けい酸カルシウム板など | 部材の寸法に合わせて切った板を張り付ける | 見え掛かり面に使うものは塗装等の仕上げができるものとされている | 切断・加工の手間はかかるが、平滑な面が得られる |
ラス張りモルタル塗り | ラス+モルタル | ラスを張り、モルタルを塗り付ける(水を使う工法) | 見え隠れ部は中塗り程度の仕上りとされている | 硬化までの時間が要る。厚みのある層をつくれる |
耐火塗料 | 発泡性の塗料 | 鉄骨に直接塗る。火災時に塗膜が膨張して断熱層をつくる | 鉄骨をそのまま見せたい部位に使える | 薄い層で納まるため納まりの自由度が高い。塗装工事に準じた管理になる |
注意したいのは、工法が違っても求められる耐火性能そのものが変わるわけではないということです。どの工法も、建築基準法にもとづいて定められた仕様、または国土交通大臣の認定を受けた仕様のとおりに施工することが前提になります(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。見積の工法が違うのは「性能の差」ではなく、施工条件・仕上がり・手間の差だと考えると読み違えにくくなります。
【画像: taika_koho_hikaku】
吹き付け乾式工法(ふきつけかんしきこうほう)は、耐火被覆工事で広く採用されている代表的な工法です。ロックウールとセメントを事前に混合した材料を、水を加えながら吹き付けて成形する方法で、乾燥が早く工期を短縮しやすい特徴があります。くわしくは吹き付け塗装とはをご覧ください。
圧送できる距離に制限があるため、改修や部分補修などの小規模な現場で特に効果を発揮します。また下地の形状に左右されにくく、複雑な柱や梁にも施工しやすい点が強みです。
吹き付け半乾式工法(ふきつけはんかんしきこうほう)は、泥状に混ぜたセメントとロックウールを同時に吹き付ける方法で、厚みを均一に仕上げやすいことから大規模工事にも適した工法です。施工部分から離れた場所でも材料を圧送できるため、広い範囲を効率よく施工できます。
原料が無機質であるため火災時に有毒ガスが発生しにくく、安全性の高さも特徴です。細かな部分にも密着して吹き付けられるため継ぎ目のない仕上がりになり、施工後は多くの場合、石膏ボードなどで表面を覆って仕上げます。
吹付湿式工法(ふきつけしっしきこうほう)は、無機質系材料を施工現場で水と混合し、湿った状態で均一に吹き付ける工法です。材料に含んだ水分によって粉じんが抑えられ、作業環境を汚しにくい点がメリットです。
湿式のため乾燥工程が必要ですが、ムラが少なく安定した仕上がりが得られます。大規模施設や屋内工事で採用されることが多い工法です。
仕様書や打ち合わせで「乾式」「半乾式」「湿式」という言葉が出てきて、どれのことか分からなくなることがあります。資料によって分類の粒度が違うため、混乱しやすいところです。ここは元の資料に当たって整理します。
ロックウール工業会の資料では、現在の吹付けロックウールは吹付け工法の違いによって次の2つに分類されています。
分類 | 材料をどこで混ぜるか | 吹付けのしかた |
|---|---|---|
乾式工法(工場配合材料を用いる工法) | あらかじめ工場でロックウールとセメントを配合しておく | 配合済みの材料を吹付け施工機械で圧送し、ノズル先端の周囲から噴霧される清水で包み込み、材料を湿潤させながら下地面に吹き付ける |
半乾式工法(セメントスラリーを用いる現場配合工法) | 現場で清水とセメントをスラリー槽で混合し、セメントスラリーをつくる | セメントスラリーとロックウールを別々に圧送し、ノズル先端部で混合しながら下地面に吹き付ける |
(出典:ロックウール工業会「Q&A」「吹付けロックウール」Q2-1)
ポイントは、半乾式工法が「半湿式工法」とも呼ばれることです。現場で「湿式でお願い」と言われて話が噛み合わないときは、この呼び方の揺れが原因であることがあります。なお同工業会は、半乾式工法は1976年の開発当初から施工方法が変わっていないとしています。
一方で、同じ資料には「現在の吹付けロックウールにおいては、湿式工法はありません」と明記されています。湿式工法は、アスベストを含む吹付け材が使われていた時代の工法で、エレベーターシャフト内のコアまわりのように風圧で剥離するおそれのある場所、人が触れて欠損するおそれのある露出部、粉じんを嫌う施工場所などで採用されていたものです(出典:ロックウール工業会「Q&A」「ロックウール全般」Q3-3)。
そのため、図面や見積で「湿式」という語に出会ったときは、次のどれを指しているのかを確認しておくと安全です。
言葉のすれ違いは、そのまま見積の金額差や工程の食い違いになります。材料名と工法名は、認定番号まで含めて確認しておくのが確実です(分類は2026年7月時点の同工業会資料による)。
巻き付け工法(まきつけこうほう)は、ロックウールのフェルト材を柱や梁に巻き付け、専用ピンで固定する方法です。粉じんの発生が少なく周囲への影響を抑えられるため、他の工事と併行しやすい点が特徴です。
仕上がりが整いやすく、場合によっては追加の仕上げ材を必要としません。狭いスペースでも施工しやすいことから、改修現場で採用されるケースが多くあります。
一方で、吹き付け工法に比べると費用が高くなる傾向がありますが、専用ピンでしっかり固定するため見栄えの良い仕上がりが期待できます。
成形板張り工法(せいけいばんはりこうほう)は、ケイ酸カルシウム板などの耐火板を柱や梁の寸法に合わせて貼り付ける方法です。板材は表面が平らで硬く、そのまま仕上げとして利用できるため、見た目の美しさが求められる場所で多く採用されます。
加工性が高く、複雑な形状の部位にも対応しやすい点が特徴です。ペイントやクロス仕上げにも適しており、意匠性を重視した空間でも柔軟に活用できます。また耐久性や耐衝撃性にも優れており、長期的に安定した性能を発揮します。
耐火塗料工法(たいかとりょうこうほう)は、鉄骨に直接塗料を塗り、火災時に塗膜が膨張して断熱層を形成する仕組みを活用した工法です。薄膜でも1時間以上の耐火性能を確保でき、鉄骨の意匠性を損なわずに耐火性を付加できる点が特徴です。
塗装仕上げのためデザインの自由度が高く、色を付けやすいことからエントランスなど人目につきやすい場所で多く採用されています。部分補修がしやすく、メンテナンス性に優れている点もメリットです。
耐火被覆工事の主な流れとポイントは次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
工事の開始前には、建物の用途や階数に応じて必要耐火時間を決定します。柱や梁、床、壁などの部位ごとに設定された1時間・2時間・3時間といった区分に合わせ、適切な材料や厚さを選定します。
認定された仕様に基づいて設計を行うことで、法令に適合した耐火性能を確保できます。設計段階での正確な条件設定は、後の施工品質を左右する重要なプロセスです。
耐火被覆工事は、下地確認や清掃から始まり、材料の準備、吹付けや巻き付けなどの作業、そして仕上げの工程へと進みます。
吹付け工法では、ロックウールやセメントスラリーを専用機械で送り、均一な厚さになるよう調整しながら施工します。巻き付けや成形板張りの場合は、ピンや金物を使用して確実に固定します。
いずれの工法でも、設計で指定された厚さや密着性を確保しながら丁寧に作業を進めることが、耐火性能の維持につながります。
施工後は、耐火性能が計画どおり確保されているか確認します。厚さ検査では専用ゲージを用いて複数箇所を測定し、設計値との差がないかを判断します。
吹付け材料の場合は、かさ密度の測定が重要で、規定の比重を満たしていない場合は性能が発揮できません。また、使用した材料や工法が国土交通大臣の認定番号に基づく仕様と一致しているかも、あわせて確認します。
「設計値」が具体的にどのくらいの数字なのかは、採用する認定仕様で決まります。参考として、ロックウール工業会の会員各社が連名で取得している吹付けロックウール被覆耐火構造の仕様は次のとおりです(比重0.28以上)。
部位 | 耐火時間 | 厚さ | 認定番号 |
|---|---|---|---|
柱 | 1時間 | 25mm | FP060CN-9460 |
柱 | 2時間 | 45mm | FP120CN-9463 |
柱 | 3時間 | 65mm | FP180CN-9466 |
はり | 1時間 | 25mm | FP060BM-9408 |
はり | 2時間 | 45mm | FP120BM-9411 |
はり | 3時間 | 60mm | FP180BM-9414 |
床は1時間で15mm・2時間で20mm、外壁は30分で20mm・1時間で30mm(比重0.30以上)、屋根は30分で10mmとされています(出典:ロックウール工業会「吹付けロックウール耐火被覆材」)。耐火時間が1段階上がると厚さがおおよそ倍近くになる、という感覚がつかめると、見積の数量の妥当性も読みやすくなります。
ただし、これはあくまで工業会会員各社の連名認定の仕様であり、数値は2026年7月時点の公表値です。耐火構造の認定は平成14年5月に、工業会の通則的指定(仕様規定)から会員各社の個別的認定(性能規定)へ移行しているため、実際の工事では採用する製品の認定仕様に従ってください(出典:ロックウール工業会「吹付けロックウール耐火被覆材」)。
これらの検査を適切に行うことで、設計で求めた耐火性能が現場で確保されているかを確認できます。
改修工事では、既存部分との厚さの差や材料の違いによって性能が変わるため、認定仕様に合わせた補修が不可欠です。吹付け工法が難しい環境では、巻き付け工法や耐火塗料工法が選ばれることもあります。
また、施工範囲が限定される現場では、粉じんや騒音の影響を最小限に抑える工法を選択することが求められます。既存建物の耐火性能を維持しながら施工を行うためには、現場条件に応じた柔軟な判断が重要です。
カタログの性能表だけでは工法は決まりません。実際の現場では、次のような条件で選び分けています。見積を受け取る側・出す側のどちらにとっても、金額差の理由を読み解く手がかりになります。
最初の分かれ道は、その部位が仕上げで隠れるか、そのまま見えるかです。公共建築工事標準仕様書では、耐火板張りのうち見え掛かり面に使うものは塗装等の仕上げができるものとされ、ラス張りモルタル塗りの見え隠れ部は中塗り程度の仕上りでよいとされています(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。エントランスや吹き抜けのように鉄骨を意匠として見せたい部位では、薄い層で納まる耐火塗料や、面がきれいに出る板張りが選ばれやすくなります。
見落としが起きやすいのが、部材と部材の境目です。標準仕様書は、貫通孔部、デッキプレートと梁の隙間、主要部材の取付け金物等を適切に被覆するものと定めています(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。柱と梁の面は施工されていても、こうした隙間が空いたままだとそこから熱が回ります。設備の配管・ダクトが後から通る部位は、施工順とセットで押さえておきたいところです。
吹付け工法は、養生の手間が金額と工程に直結します。標準仕様書も、吹付けに当たっては十分な養生を行い、周辺への飛散防止に努めることを求めています(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。ロックウール工業会の測定でも、吹付け作業場では粉じん濃度が基準を超えている場合が多く、防じんマスク・防じんメガネなどの保護具の着用が必要とされています。一方、敷地境界付近への飛散そのものは非常に少ないとされ、養生シートによる密閉などの工夫が有効とされています(出典:ロックウール工業会「Q&A」「吹付けロックウール」Q1-3・Q1-4)。
耐火被覆工事の見積を受け取ったら、金額の前に次の3点を確認すると、比較できる状態になります。
工法名だけが違う2社の見積は、たいていこの3点のどこかが揃っていません。揃えてから比べると、本当の差が見えてきます。
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耐火被覆の主なメリットは次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
耐火被覆の最大のメリットは、火災時に構造体の温度上昇を抑え、建物の倒壊を防ぐことです。鉄骨は高温下では急激に強度が低下するため、被覆材によって熱を遮断し、一定時間、構造耐力を保持する役割があります。
これにより、避難時間の確保や消防活動の実施が可能になり、建物内外の人命や財産を守ることにつながります。高層建築や集客施設では特に重要な性能といえます。
耐火性能が高い建物は、火災保険料を抑えられる場合があります。建物は構造に応じて保険区分が設けられており、耐火性が高いほど火災による損害リスクが低いと判断されるためです。
耐火被覆を施すことで、鉄骨造がT構造やM構造として扱われるケースがあり、保険区分の変更によって保険料が軽減されます。長期的な維持コストの観点でも、耐火性能を確保する効果があります。
住宅物件・一般物件共に、耐火性の高い構造ほど保険料が低くなる傾向があります。
住宅物件の構造区分は次のとおりです。下にいくほど保険料が高くなります。集合住宅は特に保険料が低くなる傾向があります。
区分 | 対応する建物の例 |
M構造(マンション構造) | RC造、コンクリートブロック造、レンガ造、石造、耐火建築物の共同住宅 |
T構造(耐火被覆構造) | RC造、鉄骨造、耐火建築物(共同住宅以外)、準耐火建築物、省令準耐火建物 |
H構造(非耐火構造) | 木造、土蔵造、上記以外の建物 |
一般物件の構造区分は次のとおりです。下にいくほど保険料が高くなります。
区分 | 対応する建物の例 |
1級 | RC造、レンガ造、石造、耐火被覆鉄骨造、耐火建築物 |
2級 | 鉄骨造、準耐火建築物、省令準耐火建物 |
3級 | 上記に該当しない建物 |
ロックウールをはじめとする耐火被覆材には、断熱性や吸音性を備えたものがあります。機械室や商業施設では騒音対策として有効であり、内部の温度変化を抑える効果も期待できます。
また、吹付け材は下地と密着しやすく、吸放湿性のある材料では結露の発生を抑えられる点もメリットです。こうした付加機能によって、快適性や設備保全にも貢献します。
耐火被覆の注意点は次のとおりです。
それぞれを解説します。
現在の耐火被覆材は、安全性が確認されたロックウールなどが主流です。しかし、高度成長期と呼ばれる1955年〜1960年代頃には、アスベストを原料とした耐火材が広く使用されていた時期がありました。
当時のアスベストは髪の毛より細い繊維で、吸い込むと体内に残りやすい性質があり、健康への悪影響が指摘されています。そのため現在では使用が禁止され、ロックウールなど安全性に配慮した材料が採用されています。
既存建物の改修や解体では、アスベストが含まれている可能性があるため、事前調査を行い、適切な処理方法を確認する必要があります。安全対策を怠ると作業者や周囲の人に健康リスクが及ぶため、慎重な対応が求められます。
耐火被覆は建物の安全性向上に大きく貢献しますが、材料や工法によって初期コストに差があります。吹付け工法は比較的安価ですが、巻き付け工法や成形板張り工法は費用が高くなる場合があります。
また、改修工事では既存の被覆状態や劣化具合によって追加費用が発生する可能性があります。長期的な維持管理を踏まえ、建物の用途や環境に適した工法を選定することが重要です。
耐火被覆は「鉄骨を覆う施工そのもの」、耐火構造は「建築基準法上の構造の区分」です。建築基準法第2条第7号では、耐火構造を、通常の火災が終了するまでの間、火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために必要な性能に関する技術的基準に適合し、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの、または国土交通大臣の認定を受けたものと定めています(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」第2条)。鉄骨造では、認定を受けた耐火被覆を施すことで主要構造部が耐火構造として扱われる、という関係になります。
まず確認が必要です。ロックウール工業会の資料では、現在の吹付けロックウールに湿式工法はなく、乾式工法と半乾式工法の2つに分類されています。半乾式工法は「半湿式工法」とも呼ばれるため、この呼び方を指している場合があります。ほかに、ラス張りモルタル塗りのように水を使う工法を広く「湿式」と呼んでいる場合や、ロックウール以外の吹付け材を指している場合もあります(出典:ロックウール工業会「Q&A」)。
必要な部位は建物によって異なります。建築基準法施行令第107条は、耐力壁・外壁・柱・床・はり・屋根・階段のそれぞれについて必要な時間を定めています(出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」第107条)。また施工上は、柱・梁の面だけでなく、貫通孔部やデッキプレートと梁の隙間、主要部材の取付け金物なども適切に被覆する必要があります(出典:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章9節)。どこまでが工事範囲かは、設計図書で確認してください。
見ただけでは判断できません。ロックウール工業会も、アスベスト含有の吹付けロックウールとそうでないものは外観では区別できず、石綿を分析できる機関での判断が必要としています(出典:ロックウール工業会「Q&A」「ロックウール全般」Q3-2)。あわせて、2022年4月1日以降に着工する工事では、建築物の解体で床面積の合計80平方メートル以上、改修で請負代金の合計額100万円以上(税込)などの場合に、事前調査結果を都道府県等と労働基準監督署へ報告することが義務づけられています(出典:環境省「石綿の事前調査結果の報告制度」報道発表)。既存建物の改修・解体を請けるときは、着工前の段取りとして組み込んでおいてください。
改修工事として施工される例はあります。ただし、既存部分と厚さや材料が違うと性能が変わるため、認定仕様に合わせた補修が前提になります。稼働中の建物では吹付けが難しいことも多く、その場合は巻付けや耐火塗料が検討されます。いずれにしても、どの認定仕様で何時間の性能を確保するのかを設計側と決めてから、工法を選ぶ順番になります。あわせて建設業の用語辞典もご覧ください。