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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「家全体がどこにいても暖かい暮らしがしたい」そんな願いをかなえる暖房方式として注目されているものがセントラルヒーティングです。 欧米などでは一般的な全館暖房ですが、日本では仕組みや費用が分かりにくく、導入を迷う人も多いのではないでしょうか。 本記事では、セントラルヒーティングの特徴や温水式・温風式の違い、家が暖まる仕組み、メリット・デメリット、費用相場など分かりやすく解説します。
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まず、セントラルヒーティングについて基本的な情報を詳しく解説します。

セントラルヒーティングは、建物の一カ所に設けた熱源機でつくった熱を配管やダクトを通して各部屋へ届けることで、家全体を均一に暖める全館暖房システムです。
住まい全体を一体の空間として暖める点に特徴があります。欧米、特に寒さの厳しい地域で発達してきました。
「中央暖房」「全館集中暖房」と呼ばれることもあります。
日本でセントラルヒーティングが特に普及している地域として代表的な地域が北海道です。冬の厳しい寒さが長く続くため、家全体を均一に暖める仕組みが生活に適しており、新築戸建住宅の多くがこの方式を取り入れています。
各部屋を個別に暖める従来型の暖房では、廊下や脱衣所などに大きな温度差が生まれやすく、快適性や健康面での不安が残ります。対して、セントラルヒーティングは住宅全体を一定の温度に保てるため、移動するたびに寒さを感じるストレスを軽減できます。
また、北海道では断熱・気密性能の高い住宅が主流で、システムとの相性が良いことも普及を後押ししています。
セントラルヒーティングの種類は、次のとおりです。
● 温水式
● 温風式
それぞれを詳しく解説します。
温水式はセントラルヒーティングの中でも最も広く普及している方式です。
ボイラーやヒートポンプで加熱された温水が配管を通って住宅内を循環し、各部屋に設置されたパネルヒーターへと届けられます。パネル内部を通る温水が放つ放射熱は、部屋の空気だけでなく壁や床、家具などにも熱を広げるため、空間全体が均一に暖まりやすい構造です。
風を使わないため、暖房特有の乾燥感やホコリの舞い上がりがほとんどなく、静かな運転音である点も快適性を高めています。また、温水の熱がゆっくり冷める特性があるため、暖房を切った後も急に室温が落ちにくい点がメリットです。
温風式は、熱源機で温めた空気をダクトによって各部屋へ送り込む仕組みです。
構造としては、建物全体に大型の送風システムを組み込んだイメージで、温風を吹き出し口から供給し、室内の空気を一気に暖めます。立ち上がりが早い点が大きな特徴で、帰宅後すぐに暖かさを感じたい家庭や、短時間で暖房効果を得たいケースに向いています。
ただし、空気が直接暖まる方式のため、熱が逃げやすく、温水式に比べると室温が下がるのも早い傾向があります。また、温風の流れによってわずかに風切り音が発生したり、乾燥を感じやすい場合もあります。
そのため、広い住宅や長時間暖房が必要な地域よりも、小規模住宅や部分的な暖房用途に適しています。
セントラルヒーティングの仕組みは、次のとおりです。
● 熱源機で温水・温風をつくる
● 配管やダクトで各部屋へ熱を届ける
● 放熱器(ラジエーター)で室内を暖める
それぞれを詳しく解説します。
セントラルヒーティングの起点は「熱源機」です。
電気・ガス・石油などのエネルギーを利用し、ボイラーまたはヒートポンプが温水や温風をつくり出します。
住宅全体を暖めるため、安定して大量の熱を供給できることが求められます。熱源の種類は後から交換できる場合も多く、ランニングコストや地域の燃料事情に合わせて選択可能です。
熱源機でつくられた温水や温められた空気は、建物内部に設置された配管やダクトを通じて各部屋へ運ばれます。
温水式のセントラルヒーティングでは、循環パイプの中を温水が往復し、放熱器へ継続的に熱を届けます。一方、温風式ではダクトが空気の通路となり、熱源機で温められた空気を各室へ送り出します。
配管・ダクト網が、住宅全体に熱を分配する役割を担い、どの部屋でも大きな温度差が生まれないように働いています。
各部屋には、熱を室内へ放出するための放熱器が取り付けられています。
温水式の場合は、壁際に設置されたパネルヒーターに温水が流れ、そこから発生する放射熱と自然な空気の対流で室内がじんわりと暖まります。風を直接感じることがないため、優しい暖かさが続く点が特徴です。
一方、温風式ではダクトを通って送られた暖かい空気が吹き出し口から放出され、短時間で室温を上げられます。
セントラルヒーティングのメリットは、次のとおりです。
● 家全体が均一に温まり温度差が少ない
● 空気が乾燥しにくく体感がやわらかい
● 静かで生活音のストレスが少ない
● 安全性が高い
それぞれを詳しく解説します。
セントラルヒーティングは、家そのものを丸ごと暖める仕組みのため、部屋ごとに温度が大きく変わることがほとんどありません。
そのため、リビングだけ暖かく、廊下や洗面所は寒いといった温度差が生じにくく、家のどこにいても安定した暖かさが保たれます。
この「温度の均一さ」は日常の快適性を高めるだけでなく、寒暖差によって起こるヒートショックのリスクを抑えられる点でも大きなメリットです。
セントラルヒーティング、特に温水式の暖房は、風を使わずに室内を暖めるため、エアコン特有の乾燥しやすさが起こりにくい点が特徴です。
パネルヒーターから発生する放射熱や自然な空気の流れによってじんわりと暖まるため、肌や喉が荒れにくく、長時間暖房を使っていても快適さを保てます。
さらに、風が室内を強く循環しないため、ホコリが舞い上がりにくく、アレルギー対策を意識する家庭でも取り入れやすい暖房方式です。
セントラルヒーティングは、熱源機が機械室や屋外など生活空間から離れた場所に設置されるため、運転音が室内に伝わりにくい点が特徴です。
各部屋の放熱器も風を発生させない構造が多く、稼働中でもほとんど音が気になりません。エアコンのファン音やストーブの燃焼音が苦手な人でも快適に過ごせる静けさが保たれ、読書や勉強、在宅ワークなど集中したい時間にも影響を与えません。
音に敏感な家庭や静かな空間づくりを重視するライフスタイルにとって大きなメリットです。
セントラルヒーティングは、ストーブのように火が見える構造ではなく、高温になる部品もほとんど露出しないため、子どもや高齢者がいても安心して使える暖房方式です。
壁面に設置されるパネルヒーターは、表面温度が極端に高くならないよう設計されているものが多く、誤って触れてしまった場合でもやけどのリスクが低く抑えられます。
また、床に置く暖房器具が不要になるため、転倒させて火災につながったり、配線に足を引っかけたりといった事故も防ぎやすい点がメリットです。
セントラルヒーティングのデメリットは、次のとおりです。
● 初期費用が高い
● ランニングコストがかかる
● 部分暖房がしにくい
● 設置スペースが必要になる場合がある
それぞれを詳しく解説します。
セントラルヒーティングは、熱源機・配管・放熱器といった複数の設備を住宅全体に組み込む必要があるため、一般的な暖房器具よりも初期費用が高くなる傾向があります。
新築で取り入れる場合は建物の設計段階から配管ルートを確保できるため比較的導入しやすいものの、既存住宅に後付けするとなると壁や床を開ける大規模な工事が必要になることも多く、費用面・施工期間の両面で負担が大きい点がデメリットです。
セントラルヒーティングは、家全体を暖め続ける仕組みであるため、住宅の断熱性や使用する熱源によっては光熱費が高くなる点もデメリットです。
特に、石油やガスを熱源とするシステムでは、燃料価格の変動がそのまま暖房費に影響しやすく、年によってコストが大きく変わることもあります。電気式の場合でも、寒い時期には稼働時間が長くなり、電気代が増えます。
一方で、高断熱・高気密の住宅では熱が逃げにくく、エネルギー効率が高まるため、比較的低い光熱費で運用できるケースもあります。逆に断熱性能が低い住宅では暖房負荷が大きくなり、コスト面のデメリットが表れやすくなる点に注意が必要です。
セントラルヒーティングは、住宅全体を均一に暖めることを目的としたシステムのため、「特定の部屋だけ暖房したい」といった部分的な使い方がしにくい点がデメリットとして挙げられます。
近年はエリアごとに温度を制御できるタイプもありますが、基本的には全館暖房としての特性を生かす設計になっているため、個別暖房のように細かい調整を繰り返す使用にはあまり向いていません。
必要な場所だけを短時間で暖めたいライフスタイルの場合、暖房の稼働範囲が広い分、効率面で不便さを感じるケースがあります。
セントラルヒーティングを導入する場合は、熱源機や配管を収めるための場所を確保する必要があります。
ボイラーやヒートポンプを設置するために専用のスペースを用意したり、収納内部に機器を組み込んだりと、一定の面積が求められる点が一般的です。さらに、排気が必要なタイプでは屋外に排気ルートや設備スペースを確保しなければならず、敷地条件によっては設置計画が制約を受けることもあります。
限られた広さの住宅では、機器の置き場所や間取りとの兼ね合いを慎重に検討する必要があります。
セントラルヒーティングの費用相場について分かりやすく解説します。
セントラルヒーティングを導入する際の費用は、熱源機の購入費、各部屋に設置するパネルヒーターなどの暖房端末、そして建物全体に配管を通す工事費を合わせて決まります。
一般的な戸建てではおよそ100万〜150万円前後を目安とするケースが多く、住宅の広さや部屋数、必要な端末の数によって総額は大きく変動します。
また、既存の住宅に追加する場合は、壁や床を開けて配管ルートを確保する必要があるため、新築よりも費用が高くなることが少なくありません。事前に複数社から見積もりを取り、施工内容を比較しておくことが重要です。
セントラルヒーティングは、冬の期間ほぼ連続して稼働するため、運転にかかる電気代が大きな割合を占めます。
実際の金額は、住んでいる地域の寒さや住宅の断熱性、建物の広さによって左右されますが、一般的な家庭では年間で約30万円前後になることが多いといわれています。
特に寒冷地では一日中暖房を入れっぱなしにすることも多く、断熱性能の低い家ではさらに負担が増えやすいです。逆に、高効率の熱源機や断熱性の高い住宅と組み合わせることで、電力消費を抑えて運転コストを下げられる可能性もあります。
セントラルヒーティングを長く快適に使うためには、定期的な点検が欠かせません。
一般的なメンテナンスの費用は年1万〜2万円ほどが相場で、熱源機や配管まわりの状態を確認したり、異常がないかチェックしたりする作業が含まれます。温水式のシステムでは、数年に一度、不凍液の入れ替え作業が必要となり、これによって配管内部の腐食や凍結トラブルを予防できます。こうした定期的なケアを行うことで、システム全体の寿命を延ばし、突然の故障リスクも抑えられます。
大きな部品交換や修理が発生しない限り、維持費は比較的安定しており、計画的に管理しやすいといえます。
セントラルヒーティングは欧米では一般的な暖房方式ですが、日本では北海道などの寒さが厳しい地域を除くと、広く普及しているとはいえません。
日本でセントラルヒーティングが普及しない理由として考えられるのは、次のとおりです。
● 気候と生活文化が欧米と大きく異なる
● 断熱性能が低い
● 冷房ができない
それぞれを解説します。
日本でセントラルヒーティングが一般化しなかった背景には、欧米とは大きく異なる気候と生活文化があります。
高温多湿の日本では、古くから「夏をどう涼しく過ごすか」が住宅設計の最優先課題で、風通しを確保したり湿気を逃がしたりする工夫が重視されてきました。その一方、冬の寒さに対しては「寒いところだけ暖める」考え方が根強く、家全体を一定温度に保つという発想自体が家庭に広まりにくい状況でした。
冬場の寒さはある程度我慢するものという価値観も浸透しており、暖房効率よりも日常的な運用の簡便さが優先されてきたことも影響しています。国の調査でも、こうした気候や生活意識が日本で全館暖房が普及しなかった要因として指摘されています。
セントラルヒーティングは、高断熱の住宅ほど効率よく稼働する仕組みですが、日本では長いあいだ断熱性能が住宅づくりの優先項目として扱われず、結果的にこの方式との相性が良くない住まいが多数を占めてきました。
壁や窓から熱が逃げやすい住宅では、家全体を暖めるために大量のエネルギーが必要となり、光熱費が膨らみます。国際的に見ても、日本の住宅の断熱水準は先進国の中で低い位置にあり、特に既存住宅では省エネ基準を満たしていない物件が大多数です。
そのため、セントラルヒーティングを導入しても効果に見合った暖房効率が得られず、費用対効果の面から選ばれにくい状況が続いていました。こうした住宅性能の課題が、普及を妨げる大きな要因の一つと考えられます。
セントラルヒーティングが普及しにくいもう1つの理由は、暖房専用のシステムである点です。
日本では年々猛暑日が増えており、北海道のような寒冷地でも真夏の暑さが深刻化しています。住宅内の熱中症が発生していることからも分かるように、夏場の室温管理は大きな課題です。
暖房しかできないシステムでは冷房需要を満たせず、エアコンを別途設置しなければならないため、設備投資や光熱費が二重に発生します。この点は日本の気候において大きなデメリットとなり、セントラルヒーティング単体では一年を通じた快適性を十分に確保できないという課題を抱えています。
セントラルヒーティングの節約方法は、次のとおりです。
● つけたり消したりせず連続運転する
● 設定温度を低めに設定する
● 断熱・気密を見直し熱の流出を防ぐ
それぞれを分かりやすく解説します。
セントラルヒーティングは、起動時に最も大きなエネルギーを消費する暖房方式です。
そのため、短時間の外出や就寝時に電源を切ってしまうと、再起動時に室温を一気に引き上げる必要があり、かえって電気代が増える傾向があります。
むしろ、設定温度を少し下げた状態で連続運転する方が、ボイラーや循環ポンプに無理な負荷がかからず、エネルギー効率も安定します。
セントラルヒーティングの光熱費を抑えるには、熱源機やパネルヒーターの温度を必要以上に高く設定しないことが重要です。
一般的に、冬の快適な室温は20℃前後とされており、この水準を目安にすると暖かさと省エネのバランスが取りやすいです。外気温に合わせて熱源機の設定温度を適度に見直すことで、無駄なエネルギー消費を防げます。
どれほど暖房を効率よく使っても、住まいの断熱性能が低ければ室内に留まった熱が外へ逃げてしまいます。
特に熱が最も失われやすい窓周りは、断熱カーテンや内窓の設置が効果的で、施工が簡易なものでも体感温度が大きく変わります。
ドアや壁の隙間をふさぐだけでも暖房効率は高まり、設定温度を上げずに快適な室温を維持できます。
最後に、セントラルヒーティングに関するよくある質問とその回答を紹介します。
併用自体は可能ですが、使い方には注意が必要です。
セントラルヒーティングは家全体を均一に暖める仕組みのため、追加でストーブを使うと室温が過剰に上がり、結露や乾燥を招くことがあります。
補助暖房として短時間だけ使うぶんには問題ありませんが、長時間の併用は避けた方が安全です。
セントラルヒーティングの主要部である熱源機(ボイラー)は、一般的に10年前後が交換の目安とされています。
また、温水式に欠かせない不凍液は長期間使うと性能が落ちるため、3〜5年ごとの入れ替えが推奨されています。
システム全体を長持ちさせるには、ボイラーの年1回の点検や不凍液の定期交換を欠かさず行うことが重要です。
セントラルヒーティングは、ボイラーやヒートポンプといった熱源機だけでなく、温水や温風を巡らせる循環ポンプも電気で動いています。
そのため、停電が起きるとシステム全体が停止し、暖房として機能しません。
特に厳しい寒さが続く地域では、万が一の停電に備え、ポータブル電源や小型の補助暖房器具を用意しておくと安心です。