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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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「施工」という言葉を耳にしても、具体的にどんな作業を指すのかイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。 建物を建てたり設備を設置したりする際には、複数の専門職が関わり、工程管理や品質チェックなど多くのプロセスが同時に進みます。そのため、作業内容を誤解したまま進むと、工期の遅れや追加費用の発生につながることもあります。 本記事では、施工の正しい意味、施工管理の役割、流れ、よくあるトラブルと防止策、関連する資格やQ&Aまで、はじめての方にも分かりやすく丁寧に解説します。
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施工の基本的な意味について紹介します。
施工の基本的な意味は「設計されたものを実際に構築すること」です。「せこう」と読みます。
建設現場では、基礎工事や建方、内外装、設備工事など多くの工程が連続して進むため、施工はただ作業を行うだけでなく、品質・安全・工程・コストの4つを管理しながら進める総合的な活動です。
また、施工には多様な職種が関わり、それぞれが専門技術を発揮して一つの建物を完成させます。例えば、資材調達や職人手配、現場の段取りなど、裏側の調整も含めて施工の一部です。つまり施工とは、現場における「ものづくり」の中心となる業務全般を指します。
「着工(ちゃっこう)」とは、工事を正式に開始するタイミングを指します。
地鎮祭や近隣説明、仮囲いや仮設設備の準備が整い、いよいよ基礎工事に着手する段階が着工です。対して「施工」は、着工後から竣工まで続く「工事の実働プロセス全体」を指す広い概念です。
つまり、着工は工事のスタートを切る瞬間であり、施工はその先に続く作業の集合体といえます。着工と施工は関連しますが、着工は「始まる瞬間」、施工は「進めていく活動」という明確な違いがあります。
「竣工(しゅんこう)」とは、建物や施設が全て完成し、引き渡しが可能な状態になったことを表します。工事の仕上げが終わり、施主や監理者、行政などによる各種検査を通過することで、正式に竣工と認められます。
「施工」は、その竣工に至るまでの全工程を含む建設作業のプロセスそのものです。竣工はそのプロセスのゴールにあたり、施工はゴールへ向けて積み上げる過程と位置付けられます。
つまり施工が「つくる過程」であるのに対し、竣工は「完成した瞬間」を示す点が大きな違いです。
「工事(こうじ)」は、建設や修繕、改修などの物理的な作業を指す広い言葉で、道路工事やビルの修繕工事のように、実際の作業全般を表す場面で用いられます。
また、「改修工事が竣工した」のように計画から実行、完成までの一連の流れを示す場合にも使われます。
対して「施工」は、工事の中でも実際に建物をつくる工程そのものを指します。つまり、工事はプロジェクト全体を含む包括的な言葉であり、施工はその中の「つくる過程」を示す点に違いがあります。
施工を理解するのに重要な現場で頻繁に使われる専門用語について、分かりやすく解説します。
施工管理とは、工事を安全かつ計画どおりに進めるための管理業務を指します。
品質・工程・安全・原価の「4大管理」が柱で、現場監督が中心となって職人や協力会社と連携しながら現場を統括します。施工管理の目的は、図面どおりの品質を確保し、期限内に、安全に、かつ予算内で建物を完成させることです。
進捗(しんちょく)確認や安全パトロール、資材手配など業務は多岐にわたります。施工の裏側を支える司令塔といえる存在で、建設プロジェクトには欠かせない役割です。
施工図とは、設計図を基に現場で実際に施工するための詳細を示した図面です。
設計図だけでは明確でない寸法や納まり、材料の配置などを具体的に記すことで、職人が迷わず作業できます。建物の複雑な部分や衝突が起こりやすい箇所を事前に確認できるため、施工ミスの防止にも役立ちます。施工図は専門知識を持つ担当者が作成し、設計者との調整や現場での確認にも用いられます。
施工の品質と効率を左右する重要な資料です。
施工計画とは、工事開始前に「どのような手順で」「どれくらいの期間で」「どのような体制で」工事を進めるかをまとめた計画書です。
工程表や安全対策、仮設計画、資材搬入計画など、多くの項目が含まれています。施工管理者が中心となり、現場の状況や周辺環境を踏まえて計画を立案します。施工計画が不十分だと、工程遅延や安全トラブルの原因になるため、工事の成功を左右する重要な準備作業です。
着工前に入念な計画を立てることで、施工を円滑に進める土台が整います。
施工主とは、工事を実際に請け負い、現場で建物や構造物をつくる主体となる業者を指します。一般的には、施工会社や建設会社、工務店などが施工主としての役割を担い、発注者から契約を受けて工事を実施します。
施工主は、職人や協力会社を手配し、現場の安全管理や品質管理、工程管理などを行いながら、設計図どおりに建物を完成させる責任を負います。また、発注者や設計者との調整役としても重要で、追加工事や仕様変更が発生した際には適切な対応が求められます。
施工主は、工事全体を動かす中心的な存在であり、プロジェクトの成否を左右する重要な立場です。
施主とは、建物や設備の工事を依頼し、その完成物を最終的に受け取る「発注者」の立場にある人や企業を指します。
住宅であれば家を建てる本人、ビルや店舗であればその建設を依頼する企業が施主にあたります。施主は、建物の目的や予算、希望する仕様を施工会社や設計者に伝え、工事契約を締結する役割を担います。
また、計画段階から打ち合わせに参加し、必要に応じて設計内容の調整や追加工事の判断を行うこともあります。
実際の施工のプロセスは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
実際の工事に取りかかる前に、まず入念な計画づくりが必要です。設計図面や仕様書を細かく確認し、建物の構造や採用する工法を把握した上で、全体の進め方を整理します。
工事に必要な資材や職人、重機の確保だけでなく、搬入方法や現場内での作業動線も事前の検討が必要です。また、安全確保のためのルールづくりや、周辺環境への影響を抑えるための対策もこの段階で計画します。
こうした準備が整っていないと、途中でトラブルが起きたり工程が遅れたりする原因になります。
施工計画が整ったら、本格的な工事に入る前の「準備工」と呼ばれる工程に移ります。
準備工では、まず作業員が安全に動けるよう足場を設置し、現場周囲には仮囲いを設置して第三者の立ち入りを防ぎます。続いて、現場事務所や休憩スペース、仮設トイレなどの設備を整え、電気や水道、通信といった仮設インフラも確保します。また、資材の搬入ルートを整理し、騒音や粉じんを抑えるための防音シートや防塵対策を行う場合もあります。
これらの準備工は、安全性を確保するだけでなく、近隣住民への影響を最小限に抑え、工事を円滑に進めるための土台です。
準備工が完了すると、いよいよ建物そのものをつくる「本施工」に入ります。
基礎工事や鉄骨・鉄筋コンクリートによる躯体の構築、電気・給排水・空調といった設備工事、壁・床・天井の内装仕上げなど、多くの専門業種が関わる工程が並行して進みます。この段階では、適切な工程管理と品質管理が特に重要で、計画どおりに作業が進んでいるか日々確認する必要があります。
また、現場での事故を防ぐための安全管理や、資材の搬入タイミングの調整、協力会社との連携など、細かな調整作業も欠かせません。本施工は工事全体の中心であり、現場監督の判断力と調整力が最も問われるフェーズです。
本施工が終わると、建物が設計どおりに施工されているかを確認するため、複数の検査が行われます。
行政や第三者機関による法的な検査に加え、施工会社の自主検査、施主立ち会いの確認など、チェックの機会は多数あります。不備や改善点が見つかった場合には是正工事を行い、基準を満たすまで繰り返し確認します。これらをクリアすると、建物は正式に完成と認められ、施主へ引き渡されます。
引き渡し時には、設備の使用方法の説明や保証内容の確認を行い、建物が安全に利用できる状態であることを共有します。検査と是正のプロセスは、品質を確保するための最終関門として重要です。
建物を引き渡した後も、施工会社のサポートは続きます。
竣工後には保証期間が設定され、施工会社は保証書の発行とともに、設備の不具合や仕上げの不良などが発生した際には適切に対応します。また、建物の状態を継続的に確認するため、定期点検を行うケースも一般的です。これにより、施工段階では気付かなかった不具合の早期発見や建物の長期的な維持管理につながります。
アフター対応は施主の満足度を大きく左右し、施工会社への信頼にも直結するため、非常に重要な業務です。長期的なフォローが行われることで、建物の価値を維持し、施主との関係も良好に保つことができます。
施工に関係するよくあるトラブルは、次のとおりです。
それぞれを防止策と併せて解説します。
工期が予定どおり進まない原因には、職人の確保不足や資材納入の遅れ、天候による作業停止、設計変更などが挙げられます。また、複数業種の作業が同日に重なり、現場スペースが不足して進行が滞るケースも珍しくありません。
遅延を防ぐには、初期段階で工程を詳細に組み立て、協力会社とのスケジュール共有を徹底することが重要です。
資材の納期管理や天候リスクを想定した余裕のある計画づくりも有効で、リスクに備えた代替手段を用意しておくことで、工期の乱れを最小限に抑えられます。
現場で発生する施工不良の多くは、図面の読み違いや指示内容の食い違い、施工図の精度不足といった情報面の問題が原因になります。
また、作業者ごとの判断差や材料手配のミスが重なると、仕上がりの精度が落ち、補修ややり直しが必要になるケースもあります。
これらを防ぐには、着工前の段階で図面の整合性を細かく確認し、要点となる箇所を関係者で共有しておくことが重要です。作業中は写真やチェックシートを使った進捗(しんちょく)記録、区切りごとの中間検査を行うことで、初期段階の不具合を見逃さずに対応できます。
施工現場では、高所からの転落や、重機との接触、電動工具の誤操作など、さまざまな事故が発生する可能性があります。安全対策が不十分なまま作業を続けると、小さなヒヤリハットが重大な災害に発展することもあり、現場にとって大きなリスクです。
事故を防ぐためには、毎日の安全朝礼や危険予知活動(KY活動)を習慣化し、作業前にリスクを共有することが重要です。また、ヘルメットや安全帯、保護具の確実な着用、作業通路や足場の点検、重機周辺での誘導員配置など、基本的なルールの徹底も欠かせません。現場の整頓や動線の確保も安全性を高める上で効果があります。
施工において安全は最優先であり、いかなる工程よりも優先して取り組むべき最重要事項です。
施工現場は、どうしても騒音や振動、粉じんが発生しやすく、近隣住民とのトラブルにつながることがあります。特に解体と掘削作業は影響が大きく、苦情が入る前に対策を講じる必要があります。
トラブルの防止には、着工前の近隣あいさつや工事内容の説明が効果的です。また、防音シートの設置、散水による粉じん抑制、作業時間帯の調整など、現場環境に合わせた配慮を行うことで、周囲の理解を得やすくなります。
工事の途中で仕様変更や追加の施工が発生すると、工期や費用に影響が出るため、施主との認識のズレからトラブルになりやすいポイントです。
図面の確認不足や「言った・言わない」といった口頭ベースのやり取りが原因で、後になって請求内容を巡る問題が起こるケースも少なくありません。
こうした問題を避けるには、変更が生じた際にその内容を必ず書面にまとめ、追加費用や工期の延長がどれくらい発生するのかを明確に示した上で、施主の正式な承諾を得ることが重要です。
建設現場には多くの専門業者が出入りするため、情報共有が不十分だと「誰が、いつ、何を行うのか」という認識がずれやすくなります。
作業順序の食い違いや指示の伝達漏れが起きると、工程の停滞や施工ミスにつながり、全体の進行に大きな影響を及ぼすこともあります。
こうしたトラブルを防ぐには、毎日の朝礼や定期的な工程打ち合わせを行い、作業内容や危険箇所、当日の動きを全員で確認することが重要です。また、各業者の担当範囲や報告ルートを明確にし、問い合わせ先を一本化することで、現場内のコミュニケーションがスムーズになります。
施工に関係する資格は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
建築施工管理技士は、建築工事における現場全体を統括するための国家資格で、工事の進行を安全かつ計画どおりに導く役割を担います。
資格は1級と2級に分かれ、扱える工事の規模や担当できる技術者区分が異なります。1級を取得すると、大規模建築や公共工事で必要とされる監理技術者として配置可能になり、より責任の大きいポジションで業務に携われます。
一方、2級は戸建てや中規模の建築物などを中心に、主任技術者として現場運営を担当します。建築施工管理技士は、工期の管理や品質の確保、安全対策、コスト調整など、多方面の管理業務を担うため、建設プロジェクトにおいて欠かせない存在です。
建物内の電気設備工事を管理するための国家資格です。
照明や配電盤、弱電設備など、電気工事の品質と安全を担保する役割を持っています。1級を取得すると、特定建設業で専任技術者や監理技術者として配置されるなど、担当できる範囲が大きく広がります。
2級は一般建設業で必要とされる立場で活躍でき、電気分野のキャリア形成に欠かせない資格といえます。
建設機械施工技士は、油圧ショベルやブルドーザーといった建設機械を使用する工事を適切に管理するための国家資格です。重機を使った作業は作業効率が高い一方で、安全確保が最も重要となる分野であり、わずかな操作ミスが重大事故につながる可能性があります。
そのため、建設機械施工技士には、現場に応じた作業計画の立案や、施工手順の整備、品質管理、安全対策など、幅広い管理能力が求められます。専門知識を持った技術者が現場を指揮することで、建設機械を利用した工事を安全かつ確実に進められます。
建築や土木を問わずさまざまな工事で活躍できる点も、この資格の大きな特徴です。
配管技能士は、給排水設備や冷暖房設備などの配管工事を正確に施工できる技能を証明する国家資格です。
資格は等級ごとに分かれ、扱える作業内容や求められる技術レベルが異なります。現場では、配管の切断や接合、曲げ加工、取り付けといった作業を行い、建物の機能を支える重要な部分を担当します。
配管工事は図面どおりに施工しても現場状況に応じた微調整が必要になるため、高度な判断力と確かな技術が求められます。また、配管が正しく施工されていないと漏水や設備トラブルに発展する可能性があるため、安全性と品質を確保できる技能士の存在が欠かせません。
最後に、施工に関するよくある質問とその回答を紹介します。
「施工」とは、建物を新しく建てる工事だけでなく、補修や改修、設備交換などを含む工事全体を指す最も広い概念です。一方で、リフォームとリノベーションは、建物にどのような変化を加えるかという目的によって区別されています。
リフォームは、老朽化した部分の修繕や設備の取り換えなど、元の状態に近付けることを目的とした比較的小規模な改善工事”です。それに対し、リノベーションは、間取り変更や性能向上など、建物に新たな価値を付け加える「大規模な改修工事」を指します。
つまり、リフォームもリノベーションも「施工」の一種であり、施工という言葉が最も広い範囲をカバーします。工事の目的や規模によって、呼び分けが行われているというイメージです。
施工期間は、建物の大きさや構造、採用する工法、使用する材料の納期、現場で作業にあたる人数など、複数の要素を踏まえて決定されます。
まず施工会社が現地調査や図面を基に工程表を作成し、どの工程にどれだけの時間が必要かを細かく算出します。さらに、施主との打ち合わせ回数や確認作業、行政手続きの必要性、近隣への配慮から作業時間が限定されるケースなども工期に影響します。
これらの条件を総合し、無理のないスケジュールとして提示されるのが施工期間です。万が一、設計変更や追加工事が発生した場合は、工期が延びることもあります。
施工中の現場は、資材が散乱していたり重機が動いていたりと、一般の方には危険が多いため、施主であっても自由に出入りできません。
ただし、事前に連絡を入れて許可を得れば、現場担当者の立ち会いの下で見学することは可能です。担当者が安全ルートを案内し、作業を中断しなくても良い時間帯を調整してくれます。
無断で立ち入ると転倒や落下、衝突などの事故につながる恐れがあるだけでなく、現場の作業が止まってしまう場合もあります。そのため、見学したい場合は、事前に伝えておくことが現場側にとっても施主にとっても最も安全でスムーズです。