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監督者:白澤光純
株式会社コンクルー 代表取締役CEO
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蛇口を閉めた瞬間に「ドンッ」「ガンッ」と響く衝撃音に不安を感じたことがある方も多いのではないでしょうか。 ウォーターハンマーと呼ばれ、水道管の中で圧力が急変することで起こるトラブルです。そのまま放置すると、騒音だけでなく配管の破損や漏水、給湯器の故障など住宅設備に深刻な影響を与える場合があります。 本記事では、ウォーターハンマーが起こる仕組みや主な原因、具体的なリスク、場所別の予防策、そして今すぐできる対処法まで詳しく解説します。
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まず、ウォーターハンマーの基本的な情報を詳しく解説します。
ウォーターハンマー(Water Hammer)は、日本語では「水撃現象(水撃作用)」と呼ばれ、流体の流れが急に閉ざされたときに圧力が急激に上がることを指します。
物理学的な現象として広く知られており、水道設備だけでなく、工場の配管設備や冷暖房設備、ポンプ設備など、多くの流体系システムで起こり得ます。
正しく理解し対策を取らないと、設備トラブルの原因になる厄介な現象です。

ウォーターハンマーが発生すると、配管や壁の内部で次のような特徴的な音が鳴ります。
● 「ガンッ」
● 「ドンッ」
● 「バンッ」
● 「コンッ」
● 「カンカン…」
これらの音は、配管に衝撃が伝わることで生じる打撃音で、まさにハンマーでたたいたような音が特徴で、連続で鳴り響くこともあります。
特に「一度だけ大きな衝撃音がする」ケースは典型的なウォーターハンマーであり、繰り返し発生する場合は早めに原因を確認し、配管トラブルを防ぐための対策が必要です。
ウォーターハンマー現象が起こる主な原理は、次のとおりです。
● 急激な圧力上昇
● 水柱分離
それぞれを詳しく解説します。
急激な圧力上昇が最も一般的なウォーターハンマーの原理です。
水道管内を流れている水は一定の運動エネルギーを持っています。この流れが蛇口や電磁弁の動作によって一瞬で遮断されると、進んでいた水のエネルギーが行き場を失い、管の内部で急激な圧力上昇が起こります。
特に短い操作で水を急に止められるタイプは特に発生しやすく、金属管や固定が甘い配管では衝撃が増幅して「ガンッ」「ドンッ」といった打撃音が響くことがあります。
水は空気のように圧縮できないため、止められた際のエネルギーが衝撃波として配管に伝わります。この圧力の跳ね返りが振動や異音の正体です。
ウォーターハンマー現象のもう一つの原理は水柱分離です。
水柱分離によるウォーターハンマーは、配管内の水の流れが急に止まった際、圧力が異常に低下する部分が生じることで起こります。
水は通常連続して流れていますが、圧力が急低下するとその流れが途切れて小さな空隙ができる場合があります。この空隙を埋めようとして水が勢いよく流れ込むと、水同士が強く衝突し、その衝撃が振動や打撃音となって配管全体に伝わります。
衝撃が別の場所でも圧力変動を呼び起こし、連続して複数箇所で「ドンッ」「ガンッ」と響くこともあります。これは配管内の水圧が安定していない状態で起こりやすく、衝撃が連鎖すると配管への負担も増大します。
水柱分離によるウォーターハンマー現象は、発生地点から離れた場所でも異音として感じられることもあります。
ウォーターハンマーが起こる原因は、次のとおりです。
● 周辺環境の変化による水圧の変動
● 配管工事後の水量・水流の変化
● 水撃防止装置(アレスター)の劣化
それぞれを詳しく解説します。
周囲の住宅が増えたり、地域全体の利用水量が変化すると、給水システムにかかる負荷が変わり、水圧が以前とは異なる状態になることがあります。こうした水圧の変動は、水を止めたときの反動を強めてしまうことが、ウォーターハンマーが起こる原因です。
特に新築が増えるエリアや、大規模な宅地開発が行われた地域では、開発前と比べて水圧が高くなるケースも珍しくありません。
そのため、引っ越し後や近隣の建設ラッシュの時期に突然「ドン」と響く音が気になり始めた場合、周辺環境の変化による水圧調整の影響が疑われます。
建物内の配管を更新したり、道路下の上水道管が改修されたりすると、水の流れる経路や水量が工事前とは異なる状態になることがあります。
配管の太さや形状が変わるだけで水の勢いが強くなる場合があり、その結果、水を止めた瞬間の反動が大きくなり、ウォーターハンマーが発生しやすくなることがあります。
工事完了後から「ドン」という衝撃音が聞こえるようになった場合は、こうした水流の変化が原因として考えられます。新しい配管がスムーズに水を流すようになることで、逆に圧力変動が大きくなるケースもあるため注意が必要です。
ウォーターハンマーを抑えるために取り付けられる水撃防止装置(アレスター)は、内部の空室や緩衝部材が衝撃を吸収する仕組みになっています。
しかし、この装置も長期間使用すると内部部品が傷んだり、空気層が失われたりして吸収性能が落ちていきます。そのため、設置当初は問題がなかった住宅でも、年数がたつにつれて衝撃を緩和できなくなり、再びウォーターハンマーが発生するケースがあります。
最近になって音が大きくなった、以前より衝撃が気になるといった状況がある場合は、アレスターが寿命を迎えている可能性が高く、交換を検討する必要があります。
ウォーターハンマーによるリスクは、次のとおりです。
● 騒音トラブルの発生
● 配管の損傷と漏水
● 給湯設備に生じる不具合
それぞれを詳しく解説します。
ウォーターハンマーが起きると、建物に「ドン」「ガン」といった強い衝撃音が響きます。
これは配管内で発生した圧力の跳ね返りが、壁・床・構造体へと伝わるためです。特にマンションや住宅密集地では、音が隣室や隣家にまで広がり、思わぬ騒音トラブルの原因になることがあります。
夜間の発生は住民の睡眠を妨げるケースも多く、深刻な問題として扱われる場合もあります。配管の固定が弱いと振動が増し、音量がさらに大きくなることもあります。
ウォーターハンマーによって発生する圧力の衝撃は、配管システムに少しずつ負荷を与えます。
特に衝撃が頻繁に起こる環境では、配管本体や継手部分に微細なゆがみやひびが蓄積し、次第に材料の強度が低下していきます。経年劣化が進んだ住宅では、配管の耐久性が元々弱っているため、わずかな衝撃でも損傷が表面化しやすいです。
こうした損傷が進むと、最終的に水漏れとして現れることがあります。漏水が発生すると、床材や壁内部に水がしみ込み、腐食やカビの発生を招き、建物の寿命そのものを縮める恐れがあります。さらに気づかないまま放置されれば、水道料金の負担増や大規模な修繕工事が必要になる場合もあります。
ウォーターハンマーによる急激な圧力変動は、給湯器の内部構造にも少なからず影響を与えます。
給湯器の内部には細い配管やセンサー、バルブなど精密な部品が複数組み込まれており、強い衝撃が加わるとこれらの部品がダメージを受けやすい構造です。そのため、水道管で起きた圧力の跳ね返りが給湯器側に伝わると、内部パーツの変形や破損、誤作動につながることがあります。
特に長期間使用している給湯器では、部品の劣化が進んでいるため、通常よりも衝撃に弱くなっており、ささいな圧力変動でも故障の原因になる可能性があります。給湯器が停止するとお湯が使えなくなるだけでなく、修理や交換には高額な費用がかかるため、ウォーターハンマー発生時には注意が必要です。
ウォーターハンマーの対処法は、次のとおりです。
● 水道の元栓を少し絞って水圧を調整する
● 水栓の操作をゆっくり行う
● 家電の使用方法を工夫する
● 水撃防止装置(アレスター)を取り付ける
● 配管の改修を行う
それぞれを分かりやすく解説します。
ウォーターハンマーが起きたとき、まず試しやすいのは元栓や止水栓を少し締めて水圧を下げる方法です。水の流れが穏やかになることで、洗濯機や食洗機が給水を止めた瞬間の衝撃が和らぎ、配管へ伝わる圧力の波が小さくなります。
ただし、水圧を下げすぎると次の不都合が生じる場合があります。
● シャワーの勢いが弱くなる
● 給湯器が必要な水量を確保できず、着火しないことがある
そのため、一度に大きく絞らず、少しずつ調整しながら最適な水圧を探すことが重要です。
ハンドルを急に閉めると配管内の水が一気に止まり、その反動でウォーターハンマーが起こりやすいです。
そのため、水を止める際はレバーをゆっくり下げて圧力の変化を緩やかにすることが効果的です。わずかな操作の違いでも、衝撃音がほとんど気にならなくなる場合があります。
家族全員が意識すればすぐに取り組める対策で、特別な道具も必要ありません。小さな子どもや高齢者にも説明しやすく、日常的なウォーターハンマーの予防に役立ちます。
洗濯機や食器洗い機などの給水は、内部の電磁弁によって瞬間的に停止する仕組みであり、その急激な水の遮断がウォーターハンマーを誘発しやすい要因です。
そのため、次の工夫を行うことで衝撃音の発生を抑えられる可能性があります。
● 給水ホースに水撃防止器を取り付けて衝撃を吸収する
● 夜間など水圧が上がりやすい時間帯の使用を避ける
● 複数の水まわり機器を同時に使わず、使用時間を分散する
これらの対策を組み合わせることで、急止水による圧力変動が緩和され、ウォーターハンマーが大きく改善する可能性があります。
ウォーターハンマーを根本的に抑える方法として特に効果が高いのは、水撃防止器(アレスター)の設置です。
この装置は、配管内で生じる急激な圧力変動を吸収し、衝撃音が配管全体に伝わるのを防ぐ役割を持っています。水撃防止器には、空気の圧縮力を利用して衝撃を和らげるエア式や、バネの弾性を使って圧力を逃がすタイプなど、構造の異なる複数の方式があります。また、水栓の直前に取り付けるものや、配管の途中に設置するものなど、設置位置によって形状や性能が異なる点も特徴です。
ウォーターハンマーがどの地点で発生しているかによって最適な種類や取り付け場所が変わるため、住宅環境に合わせて適切なものを選ぶことが重要です。水栓に取り付ける簡易タイプであればDIYでも取り付けられます。
簡易的な対策や水撃防止器の設置でもウォーターハンマーが解消しない場合、配管そのものに問題がある可能性が高いです。
そのようなケースでは、より根本的な改善策として配管の改修を検討しましょう。
さらに、配管を支える固定金具が弱っていると振動が大きく伝わり、音が増幅されてしまいます。適切に配管を保持できるよう固定具を補強することで、衝撃が建物に響きにくく安定した状態を保てます。
配管改修は専門的な判断と施工が必要ですが、一度改善すれば長期的なトラブル予防にもつながるため、繰り返しウォーターハンマーが起きる住宅では有力な対策です。
次に、場所別のウォーターハンマー対策法を紹介します。
トイレは頻繁に給水・止水を繰り返すため、ウォーターハンマーが起こりやすい場所の一つです。
対策として効果的なのが、止水栓に水撃防止装置(アレスター)を取り付ける方法です。
設置は、止水栓を閉じて給水ホースを外し、その間に水撃防止装置を挟むだけのシンプルな手順で済みます。大がかりな配管工事が不要なため、比較的手軽に実施できる点も魅力です。価格は5,000〜20,000円ほどで、ホームセンターや通販で入手できます。
洗濯機は内部バルブが瞬間的に閉じる構造のため、ウォーターハンマーの発生源になりやすい設備です。
洗濯機用水栓に水撃防止装置を取り付けると、急な止水による圧力変動を吸収でき、衝撃音の防止に大きな効果があります。
洗濯機を買い替えても配管側の問題が解消されない限り、ウォーターハンマーは再発します。そのため、家電よりも先に給水設備側を見直すことが重要です。
食洗機を使用している家庭では、給水停止が急激に行われるため、キッチンでウォーターハンマーが発生しやすくなります。
対策としては、蛇口に分岐水栓を取り付けて給水ルートを安定させる方法が一般的です。
水栓の種類によって取り付け方法が異なり、それぞれで必要な道具や手順が変わります。共通して、止水栓を閉じて作業し、取り外した部品は紛失しないよう保管することがポイントです。
作業に不安がある場合や水栓の構造が複雑な場合は、無理をせず専門業者に依頼すると良いでしょう。
最後に、ウォーターハンマーに関するよくある質問とその回答を紹介します。
自動車で起こるウォーターハンマーとは、エンジン内部に水が浸入した状態でクランクシャフトを回してしまうことで発生する重大なトラブルを指します。
シリンダー内に入り込んだ水は空気のように圧縮できないため、ピストンが上昇すると圧力が行き場を失い、コンロッドの変形や折損、シリンダー壁の破損といった深刻なダメージを引き起こします。
特に冠水路を走行した後や大量の水を吸い込んだ際に起こりやすく、一度発生するとエンジン内部の損傷は広範囲に及ぶことが多いです。
多くの場合、修理では対応できず、エンジン載せ替えが必要になるほど致命的な故障につながります。
消防活動で消火栓やホースのバルブを急激に開閉すると、水の流れが一瞬で止まり、配管内部の圧力が大きく跳ね上がることがあります。これが「ウォーターハンマー」で、強い衝撃が管路全体に伝わり、振動音や打撃音として現れます。
この衝撃は水質にも影響し、配管内の錆が剥がれて赤水が出る原因になったり、老朽化した水道管・バルブ・継ぎ手の破損を招いたりする場合もあります。
消防現場では迅速な行動が求められますが、可能な範囲でバルブを段階的に操作することで、こうした二次的な被害を抑えられます。
減圧弁は、水道管にかかる圧力を適切な水準に保つための調整装置で、水圧が必要以上に高い場所でよく用いられます。
減圧弁を設置すると、水圧そのものが一定値に抑えられるため、圧力変動も緩やかになり、衝撃音や振動の発生を大幅に抑制できます。
特に、高層住宅や水圧の強い地域では、減圧弁がウォーターハンマー予防として有効に働くケースが多く見られます。
ウォーターハンマーは室内だけでなく、振動や衝撃音が壁や床を伝わって隣家に響くことがあり、集合住宅ではトラブルに発展するケースも珍しくありません。
まずは、どの時間帯・どのような音が気になっているのかを確認します。ウォーターハンマーは給水設備の使い方や水圧の状態で変化するため、情報を整理することで原因特定がスムーズになります。
次に、自宅側で取り組める対策を実施します。例えば、水栓をゆっくり閉める、元栓の圧力を調整する、水撃防止装置を取り付けるなど、比較的簡単に改善できる方法があります。マンションの場合は、管理会社に相談して建物全体の水圧調整や設備点検を依頼することも重要です。
それでも改善しない場合は、専門業者に調査を依頼し、配管の状態や設備の故障がないか確認します。
苦情対応では、放置しない・事実確認を丁寧に行う・専門家の意見を取り入れるの3点がポイントです。
賃貸物件では、老朽化した配管や水撃防止装置未設置など設備側の問題であれば、建物の維持管理を行うオーナー・管理会社が対応するケースが一般的です。
持ち家の場合は、配管・給湯設備・減圧弁など全ての管理責任は所有者にあり、修理や交換は自費対応です。
また、リフォーム直後や工事後にウォーターハンマーが起きた場合は、施工不良や調整不足が原因なら業者の責任となる可能性もありますが、建物自体の経年劣化に原因がある場合は必ずしも業者が負うとは限りません。
状況ごとに専門業者の診断を受け、原因を明確にすることが重要です。